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堀宮樹
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しおりを挟む物心ついたときからずっと求めていた「もの」がある。それは車のおもちゃでもゲームソフトなんかでもなくて──理想の王子様。
絵本の世界に出てくるような白馬に乗った素敵な王子様に出会えますように、って。夜、眠る前に祈っていたくらい。
自分でも不思議だった。男なのに男の人に惹かれるなんて変な感じ。それでも柔らかそうで丸みを帯びた女性よりも、硬くてしっかりとした体つきの男の人に抱かれたい。
けど……物語のような運命的な出会いなんて起きない。男女でも難しいと言われているのだから男同士なんて余計に。
この世に生まれ落ちて二十年と少し。今まで誰ともお付き合いしたことはないし、キュンとすることはあっても恋に落ちたことはない。理想の王子様……運命の人は待っていても現れないということを、さすがに知ってしまった。
そういうわけで手を出してしまったマッチングアプリ。もうここしかないと思った。待っていても王子様が来てくれないのなら、俺が見つけ出すしかない。
マッチングアプリなんて使ったことがないから最初は戸惑った。自己紹介文なんてなにを書いたらいいかわからないし、プロフィール画像だってどんな写真にすればいいのかかなり悩んだ。
失敗しないようにネットでいろいろ調べて、それを参考にプロフィールを作り上げていく。
「これでいいのかな……」
趣味や休日の過ごし方、そして理想の相手像を簡潔に入力するのがいいらしい。正直、自分の好みのタイプはよくわからない。かっこいいなと思っても「好き」とはならないし、特別好みの顔の相手じゃなくてもキュンとくることもある。
「……」
とりあえず……無事に登録できたことだし、早速相手を探してみよう! 一体どんな人がいるんだろう。俺と同じで運命の人を探している人に出会えたらいいな。
しばらく画面をスワイプしてたくさんの男の人なプロフィールを覗いて回った。やっぱり写真だけじゃピンとこなくて……だけど闇雲にいいねは押したくなかった。
「もー! 難しすぎる!」
べつに一刻も早く誰かと出会いたいわけじゃないけれど……焦ってるわけでもないけど! せっかくやったらいい人見つけて食事くらいはしてみたいし!
ベッドの上にごろんと寝転がって黙々とスマホの画面をスワイプしていく。じーっとスマホの画面を眺めていると、どんどん瞼が重たくなっていって──気がついたら眠りに落ちてしまっていた。
「……はっ」
ごとん、という鈍い音で目が覚める。慌ててベッドから起き上がり床を見てみると、握っていたはずのスマホが転がっていた。それを拾い上げて時刻を確認する。一時間くらい寝ちゃってたみたい。
「あれ……」
スマホのロックを解除するとマッチングアプリが表示されていた。相手を探しているうちに寝落ちしてしまったから、画面がこのまま……ってあれ? なんか通知きてる!
通知が一件届いてたからそこをタップしてみると「たつひささんとマッチしました!」というメッセージが届いていて、どきっとした。
「え! ま、マッチ!? なんで!?」
マッチってたしかお互いにいいねしたら成立するやつじゃ……あ! もしかしたら寝落ち寸前に間違えて押しちゃったのかも? うわあ、どんな人にいいねしちゃったんだろ。
ちょっと不安になりつつ、そのたつひささんとやらのプロフィールを覗きにいくことにした。
「……」
三十代の会社員。趣味はゲーム……まあ、なんか普通かな? 自己紹介文も特に変な感じはないし、まともそうな人。プロフィール写真はシンプルな服装に柔らかい笑顔。優しそうな雰囲気が写真から滲み出ていた。
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