最低で最悪で、最愛のあなた

しらこ魂

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堀宮樹

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「えっと、その」

どうしよう。俺、そういうことしたことない。したことないし、そういう大切なことは……運命の人としかしたくない。これから先、俺だけを見ていてくれる王子様としか。
正直、達央さんが俺の運命の人かどうかなんてまだわからないし。ちょっと……大人の関係に踏み込むのは怖いかも。

「……」

けど、ここで断ったらどうなるんだろう。もしかしたらもう会ってくれないかも……って待って。そもそも達央さんはなんで今日、俺にそれを? 何度か食事の回数を重ねたから? そろそろ大丈夫かもって?
それとも……単純に俺に好意を持ってくれているとか。

「ごめんね、怖がらせるつもりじゃなかったんだけど」

「あっ、い、いや、こちらこそすみません……」

感情が思いっきり顔に出ていたらしい。達央さんは申し訳なさそうにしていた。俺はよく顔に出やすいって言われるから、そういうとこがまだまだ子どもだなって自分でも思う。気をつけないと。

「……あの」

「ん?」

「達央さんは、なんで、その」

「ただ帰したくないだけだよ」

俺の目を見てはっきりとそう言い切った。帰したくない、って言われてもそれこそなんで? って感じなんだけど……。

「俺、好きになっちゃったみたい」

「……え?」

「樹くんのこと」

「……え!?」

それはあまりにも突然すぎる「好き」。まさかいきなり告白されるなんて思ってもいなかったから、つい大きな声をあげてしまった。慌てて手のひらで口を押さえたけど、すでに周りの人たちからの視線は突き刺さっている。

「す、好きって……」

「ずっと一緒にご飯食べててさ、それだけじゃ物足りないなぁって」

「え、えっと」

ほ、本当に告白? 達央さんが俺のこと好きって本当にそんな……。気がつけば伏せ目がちになっていたから、恐る恐る顔をあげる。ばっちり目が合った瞬間、体中がかーっと熱くなっていくのを感じた。

「ふはっ、やば、真っ赤っか」

「え!」

「かわいい~」

顔の赤さを指摘されて咄嗟に両手で頬を隠した。手のひらに触れる頬がびっくりするほど熱くて、しっとりと汗が滲んでいる。

「耐性なさすぎ」

「すっ、すみません……」

「いやいや、謝んなくていいから。ごめんね? かわいくてつい、いじめちゃう」

かわいいなんて言われ慣れてなさすぎて、より一層からだに熱を帯びてしまう。いまめちゃくちゃ赤くなってるんだろうなと思うと、さらに汗が止まらない。

「ちょっと急ぎすぎちゃったかな」

「え……」

「返事はまた今度聞かせて。今日はもう帰ろうか」

そう言っ帰ろうとしてしまう達央さん。その姿を見た途端、俺の中で別の感情が生まれた。「帰らないでほしい」って、そう思ってしまった。

「あ……ま、待ってくださいっ」

「どうかした?」

ここで引き止めるってことは……俺は達央さんを受け入れることになる。大丈夫だよね? きっと。だってこんな俺を好きになってくれる人、なかなかいないだろうし。
もしかしたら、もしかして。本当に達央さんが俺の運命の人なのかもしれない。
可能性は、ゼロじゃない。

「あ、あの……」

「うん」

「……ま、まだ、帰りたくないです」

それを伝えるとき、またぶわっと汗が吹き出したような気がして。それが恥ずかしくて咄嗟に下を向く。

「そっか」

達央さんの声が近くで聞こえる。そして、ぽんっと頭の上に手を置かれ優しく撫でてくれた。

「嬉しいな」

「……」

頭を撫でられた瞬間、大袈裟かもしれないけど体に電気が走ったかのような衝撃を感じた。決して不快な衝撃じゃなくて、なんだったら心地いいくらいの。
鼓動がどんどん速くなっていく。次に目が合ったとき、俺は達央さんの虜になっていた。









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