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堀宮樹
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しおりを挟む「すみません、ご馳走になってしまって……」
結局、押し切られてご馳走してもらう形になってしまった。結構粘ったつもりなんだけど「かっこつけさせてよ」なんて爽やかな笑みで言われたら、「お願いします」としかいえなかった。
「今日は楽しんでもらえた?」
「はい! それはもう……楽しかったです」
料理は高級すぎて「おいしい」を通り越していた気がするけれど。間違いなく楽しい時間を過ごすことができた。達央さんは「よかった」と微笑みかけてくれる。その笑顔にどきっと胸が高鳴った。
「えっと……」
「樹くんさえよければなんだけど、また会わない?」
「え!」
これは次も会ってくれるのかな? そう思っていたから達央さんから切り出してくれて嬉しかった。ま、また会ってくれるんだ……達央さんも楽しんでくれてたってことかな。
「あ……会いたいです」
「俺も。また会いたい」
「……」
「連絡先、交換しよっか」
マッチングアプリを通さず連絡先を交換してメッセージのやり取りをする。……こういうものなんだろうか。みんな一回会ったら連絡先交換するもの? 戸惑いながらもここで断ったらもう会えないような気がしたから、スマホを取り出して連絡先を交換することにした。
「……ありがとう。また連絡するよ」
「は、はいっ」
「駅まで送ろうか?」
「あ、いえいえ! 大丈夫です!」
ここから駅まで歩いてすぐだし、女の子でもないんだから送ってもらわなくたって平気。それでも気遣ってくれる達央さんに対して胸のドキドキが鳴り止まなかった。
なんていうか……まだ会ったばかりだしわかんないけど、大切にしてくれてる感じが伝わってくるというか。俺ってちょろいのかなぁ。
「そう? 気をつけて帰ってね」
「はい! 達央さんも。今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとう。またね」
手を振ったあと立ち去っていく達央さん。少しだけ別れるのが惜しい気がした。たった一回会っただけの人にこんな感情を抱くのはおかしいかも。……また会いたいな。
*
なんていう俺の願いは思っていたよりも早く叶った。あの日からも達央さんとのメッセージのやり取りは絶えないし、ご飯に行く回数も増えていった。週に二、三回は会っていると思う。会うたびにご飯を奢ってくれるから申し訳ない気持ちもあったけれど、一緒に過ごせて嬉しいという気持ちのほうが勝っていた。
達央さんと連絡先を交換してからはマッチングアプリを開くこともなくなった。
「今日はもう少し一緒にいたいなぁ」
何度目かの食事。いつもだったらご飯を食べて少しお話ししてからお別れ。だけどこの日、達央さんはそんなことを言い出した。もう少し一緒に……
「どう?」
「え……」
「時間とか、大丈夫?」
「あ、じ、時間は……大丈夫ですけど」
もう少し一緒に、ってどういう? どこか別のお店に行くとかそういうこと? それとも……。
俺もいい大人だし俺たちが知り合ったのはマッチングアプリ。このあとどこに連れていかれるかなんて、なんとなく想像はつく。
「じゃあ一緒にいよ」
「……」
「嫌なら断ってもいいよ」
あ、ほら。やっぱり。そういうことだ。
えっと……でも、そういうのってお付き合いしてからすることじゃないの? 俺たちまだ一緒にご飯しか食べたことないし、付き合うなんていう話も出てない。
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