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堀宮樹
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しおりを挟む平日の夜、たつひささんとご飯に行くことになった。好きなお店があるから連れていってくれるという。歳上の男性とご飯なんて緊張するけど、せっかくだから楽しまないと。
約束の時間まであと少し。待ち合わせ場所でスマホをいじりながら、たつひささんを待っていた。たつひささんは仕事終わりで来てくれるみたいだからスーツ姿かな。
「こんばんは」
たつひささんとのメッセージを読み返していると不意に声をかけられた。慌てて顔をあげて声がしたほうに目を向ける。
そこには写真で見たとおりのスーツ姿の男性が立っていた。スーツを着ているのに不思議と堅苦しい感じはしないのは、写真からも滲み出ていた雰囲気のおかげなのかな。
「ほりみーくん……だよね?」
「あ、はい! ほ、ほりみーです!」
ううーん、やっぱりこの名前で自己紹介って結構恥ずかしいかもしれない。
ぺこっと頭を下げたあともう一度たつひささんを観察してみる。背は俺よりちょっと大きいくらいかな?
「たつひさです。今日はよろしくね」
そして思っていたよりフランクな感じ。よかった……話しやすそうな人で。変に緊張しなくて済むかも。
「お腹空いたでしょ? 早速行こうか」
「は、はい」
たつひささん、マッチングアプリでは数人程度しかご飯に行ったことないって言ってたけど……なんか慣れてるように見える。俺よりも大人だから余裕があるように見えちゃうだけなのかな。
*
たつひささんが連れてきてくれたのは、ちょっぴりお高めのレストランだった。友だちとだったら絶対来ないような……ああ、もう少しちゃんとした服装で来るべきだった。おしゃれはしてきたつもりだけど、これじゃちょっとラフすぎる。
「す、すごいオシャレなお店ですね」
「せっかくの初デートだから思い出に残るものにしたくてさ。たくさん食べてよ」
まるでご馳走してくれるような口ぶり……。い、いやいや。さすがにそれは申し訳ない。お金は下ろしてきたし大丈夫! 俺だって払える。
「ほりみーくんは……」
「あ、いや、あの! すみません、その名前ちょっと恥ずかしくて」
自分でほりみーと登録しておいてなんだけど、何度も呼ばれると……。あれは友だちに呼ばれるから許されているものがあると思う。
「名前……樹って言うんです。できればそう呼んでほしいなって」
「ああ、もちろん。樹くん、かわいい名前だね」
「そ、そうですかね……」
かわいい名前なんて初めて言われた。お世辞かな? 普段からこうやって相手を褒めてるんだろうなぁ。
「俺の『たつひさ』は本名だよ」
「漢字ではどう書くんですか?」
「達観の『達』に、中央の『央』で達央」
達央さん……本名で登録してる人もいるんだ。まあ、たつひさって名前はたくさんいるだろうし。そもそも顔写真載せてるからべつに身バレしてもいいのかな。
「よく『たつお』って間違われるんだよね~」
「ああ……」
「樹くんは間違えちゃだめだよ?」
「間違えませんよっ」
うん、やっぱり思ってたより緊張しないかも。歳上なのは間違いないと思うんだけど……多分俺に合わせてくれてるんじゃないかなって思った。相手の雰囲気に合わせられる大人って素敵だな。
食事をしながら達央さんとたくさんお話をした。メッセージでのやり取りをなぞったり、メッセージでは引き出せなかったお互いの一面を見つけ合ったり。すごく濃い時間を過ごせた。濃すぎてあっという間に時間が経っちゃったんだけど……。
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