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「おおっ!? 召喚の儀が成功したぞっ!」
それがアタシ達二人がこの世界に来て初めて聞いた言葉だった。
アタシ事、住吉架純は大学時代から交際をして、つい先日にプロポーズをしてくれた門倉彩斗とのデートの最中。二人で奇妙な光の幕に包まれたかと思いきや、否応なしにへんてこりんな場所に移動していた。
冷たい鼠色の壁。
それを照らす無数の燭台とテレビでしか見たことのないようなローブに身を包む集団。
足元には青白い魔法陣。
アタシは声も出さず反射的に彩斗に抱き着いていた。すると彩斗はアタシを庇うように抱きしめ返してくれた。こんな状況なのに、それがとても嬉しかったのを覚えている。
「スミちゃんッ…!」
「危害を加えるつもりはありません。どうか、落ち着いて私達の話を聞いてください」
どう見ても怯えているアタシ達に向かって、ローブ姿の初老の男性が必死に優しく諭すように言う。言葉を鵜呑みにはできなかったがそれでも、とりあえず話が通じそうな雰囲気に安心した。
そして。
それからすぐにアタシ達は自分の身に起こった事を理解することになる。
◇
まず大前提として、ここは今までいた世界はとは違う場所にあるらしい。まあ、それは心のどこかで察していた。反対にそうでないと言われたら困る様な状況と状態であることも手伝って、自分でもビックリするくらいにその事実を受け止めてしまったのだ。
ここは異世界にある国の一つで、名前を『エオイル国』といった。
王族が統治して、貴族諸侯と共に政治を行い、軍事、宗教、商業活動などなどを行っている。しかも例によって剣が現役で戦争に使われて、おまけに科学技術の代わりに魔法が発達しているのだ。
その上、召喚された時の影響でアタシと彩斗の二人には神聖なる退魔の力が宿っているらしく聖女英傑として極めて恭しく国に迎え入れたい、というのがエオイル国の要望の第一だった。
ここまではいい。けれど問題だったのは…。
何故、面倒な手段である召喚術まで使って、アタシ達二人をここに招いたのかという事だ。
答えは簡単。エオイル国は戦争の真っ只中だったから。しかも人間同士の戦争ではない。相手は夜に生き、人間の血を啜る『吸血鬼』だと言うのである。国に伝わる古の予言によると、召喚された者には往々にして魔を退ける力が宿りやすく、防戦一方であったエオイル国は藁にも縋る思いでそれを試みた。
その結果…。
何の不幸か、アタシ達に白羽の矢が当たってしまったというのが全ての経緯だった。
正直な感想を言えば、まず「家に帰して」という言葉が先んじて頭の中に浮かんだ。しかしアタシ達はそれを口に出すことはしなかった。と、いうよりも彩斗が質疑応答をしていたので、アタシは口を挟む暇がなかったのだ。
彩斗曰く、現状では元の世界に変える手段が分からない。その上、危害を加えるつもりがないのなら彼らの言う事にひとまず大人しく従って情報収集と一端の衣食住を保証してもらった方が得策だというのだ。
二つ年上の彩斗は必然的にアタシよりも二年早く大学を卒業し、社会人になった。元々大人びた人だとは思っていたけれど、普通の営業系の会社員である。こんな不測過ぎる事態にも冷静に対応している姿を見て、今まで以上に彼に対して信頼感を持ったアタシを誰が咎められようか。
後々に聞けば彩斗はこういった状況を描いた小説作品を常々読んでいたらしく、寝る前に妄想をしたりして勝手に頭の中でシュミレーションいていたのだそうな。
何はともあれ、友好的な態度を見せた彩斗の考えは目論見通りに行った。
冷たい地下室のようなところからすぐに地上に上げられたアタシ達は、正しく国王の城にある来賓室へと通された。
何人ものメイドが宛がわれ、アタシ達はあれよあれよという間に見たこともないようなや品格のある服に着替えさせられ、これまた見たこともないような装飾品で飾り立てられた。大勢に見られながら着替えると言うのは少し恥ずかしかったが、彩斗から離れるよりも同じ部屋にいた方が何倍もマシだ。
そうして着替え終わり、差し出されたお茶をひたすら静かに飲んでいた。
すると彩斗が囁くように聞いてきた。
「ねえ、スミちゃん。気が付いてる?」
「え? 何に?」
「体の調子がいいっていうか…何となく軽くない? 俺だけなのかな?」
「…あ。ホントだ。何か不思議な感じがする」
「やっぱりか。これがさっきの話で出てきた不思議な能力か…? どんなことができるんだろう?」
そう言って彩斗は微笑んだ。
この状況を楽しんでいるようにも見える。それが楽観的にも思えたが取り乱してネガティブな思考に陥るよりもありがたい。事実、彩斗が取り乱していたらアタシもどうなっていたかは想像に難くない。
すると来賓室にぞろぞろとインテリ系の雰囲気を醸し出す人たちが数名入ってくる。皆が巻物や書類や本などを両手いっぱいに抱えていた。
「彩斗様、架純様。召喚者の歴史や付与された可能性高い能力の特徴をまとめた資料をお持ちしました。お待ちの間、お暇でしょうから是非ご一読願います」
「助かります。ありがとうございます」
他にすることもないアタシ達は彼らの提案に逆らわず、それらの文献に目を通し始めた。しかし読み始めるよりも前にアタシは驚くべき事に気が付いた。
「…この紙、漢字で書いてある」
「え? あ、本当だ」
「それは我が国のロストワードなのですが…読めるのですか?」
「ええ…何とか」
「彼女は書道の先生になって塾を開くのが夢なんで、字に関しての知識が凄いんですよ」
アタシはまじまじと、その一際異質なその紙の束とにらめっこを始めた。
ただ、そうは言ってもこれは文章にはなっていない。まるで規則性のない漢和辞典のよう出鱈目に文字が整列して埋まっているだけ。新字だけでなく繁体字も散見されるが、全ての文字がとてもきれいに書かれていた。しかも明らかに筆と墨で書かれている。
ただの落書きには思えない。けれど何をどう考えても何かしらの法則やメッセージ性は感じ取れなかった。
それからしばらくの間、アタシ達二人は用意された資料を読みふけることに集中した。他の媒体は異世界の文字で書かれていたのにも拘らず、まるで母国語のようにスラスラと解読できるのが不思議だった。
粗方を読み終わった頃。
窓から夕陽が差し込んでアタシの顔を照らし出す。その光で時間を忘れるほどに集中していた事に気が付いた。何か作業をして考えるという行動で、こんな意味の分からない状況から現実逃避したかったのかも知れない。
ホントに何となくだが自分たちの置かれている状況を受け入れ出した。
アタシは彩斗の横顔を見る。すると何やら深刻そうな顔をしてブツブツと何かを考えていた。
「彩斗。どうかした?」
「ちょっと待って」
こちらに顔を向ける事もなく、彩斗は手だけでアタシを制した。
「すみません。大きめの紙とペンを貸してもらえませんか?」
「え? す、すぐに準備いたします」
すぐに用意された紙を大きなテーブルに敷くと一気に文字と魔法陣のようなものを認め始めた。紙面の下部に円が描かれ、それを取り囲むように様々な式が散りばめられている。
「…これは何?」
「うん。俺もよくわからないんだけど、この資料を読んでたら頭に浮かんできてさ。この丸に手を置くと自分に付与された能力のイメージが沸くはず」
そう言って彩斗は手を紙の上に置く。するとしばらくの沈黙の後、ニコリと微笑んだ。
「うまく行った」
「え?」
「スミちゃんもやってみて」
「わ、分かった」
アタシは恐る恐る彩斗の真似をした。するとアタシの中に二つのイメージが沸いて出てきた。
一つは青葉色の草原を吹き抜ける風と『癒』という文字。
もう一つは夜よりも黒く見える液体と『墨』という文字。
ハッとなってアタシはもう一度だけ彩斗と顔を見合わせた。
「どう?」
「なんだか変な感じ。癒しって文字と墨って文字が見えた気がするけど…」
「うん。俺は剣って文字と炎って文字が見えた。多分それが答えだ」
「答え?」
「聖女英傑としての能力の片鱗って奴だよ」
彩斗がそう言うと、集まっていた学者たちがこぞって驚嘆の言葉を口にする。
「そのような事が可能なのですか!?」
「しかも、こんな複雑な装置を一瞬で…!?」
何の事か分からず置いてけ堀を食らっているアタシを他所に、彩斗は爛々に輝く目をエオイルの人たちに向けた。
「確かめたい事があります…今度は剣と試し切りできるようなモノを用意して頂けませんか?」
それがアタシ達二人がこの世界に来て初めて聞いた言葉だった。
アタシ事、住吉架純は大学時代から交際をして、つい先日にプロポーズをしてくれた門倉彩斗とのデートの最中。二人で奇妙な光の幕に包まれたかと思いきや、否応なしにへんてこりんな場所に移動していた。
冷たい鼠色の壁。
それを照らす無数の燭台とテレビでしか見たことのないようなローブに身を包む集団。
足元には青白い魔法陣。
アタシは声も出さず反射的に彩斗に抱き着いていた。すると彩斗はアタシを庇うように抱きしめ返してくれた。こんな状況なのに、それがとても嬉しかったのを覚えている。
「スミちゃんッ…!」
「危害を加えるつもりはありません。どうか、落ち着いて私達の話を聞いてください」
どう見ても怯えているアタシ達に向かって、ローブ姿の初老の男性が必死に優しく諭すように言う。言葉を鵜呑みにはできなかったがそれでも、とりあえず話が通じそうな雰囲気に安心した。
そして。
それからすぐにアタシ達は自分の身に起こった事を理解することになる。
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まず大前提として、ここは今までいた世界はとは違う場所にあるらしい。まあ、それは心のどこかで察していた。反対にそうでないと言われたら困る様な状況と状態であることも手伝って、自分でもビックリするくらいにその事実を受け止めてしまったのだ。
ここは異世界にある国の一つで、名前を『エオイル国』といった。
王族が統治して、貴族諸侯と共に政治を行い、軍事、宗教、商業活動などなどを行っている。しかも例によって剣が現役で戦争に使われて、おまけに科学技術の代わりに魔法が発達しているのだ。
その上、召喚された時の影響でアタシと彩斗の二人には神聖なる退魔の力が宿っているらしく聖女英傑として極めて恭しく国に迎え入れたい、というのがエオイル国の要望の第一だった。
ここまではいい。けれど問題だったのは…。
何故、面倒な手段である召喚術まで使って、アタシ達二人をここに招いたのかという事だ。
答えは簡単。エオイル国は戦争の真っ只中だったから。しかも人間同士の戦争ではない。相手は夜に生き、人間の血を啜る『吸血鬼』だと言うのである。国に伝わる古の予言によると、召喚された者には往々にして魔を退ける力が宿りやすく、防戦一方であったエオイル国は藁にも縋る思いでそれを試みた。
その結果…。
何の不幸か、アタシ達に白羽の矢が当たってしまったというのが全ての経緯だった。
正直な感想を言えば、まず「家に帰して」という言葉が先んじて頭の中に浮かんだ。しかしアタシ達はそれを口に出すことはしなかった。と、いうよりも彩斗が質疑応答をしていたので、アタシは口を挟む暇がなかったのだ。
彩斗曰く、現状では元の世界に変える手段が分からない。その上、危害を加えるつもりがないのなら彼らの言う事にひとまず大人しく従って情報収集と一端の衣食住を保証してもらった方が得策だというのだ。
二つ年上の彩斗は必然的にアタシよりも二年早く大学を卒業し、社会人になった。元々大人びた人だとは思っていたけれど、普通の営業系の会社員である。こんな不測過ぎる事態にも冷静に対応している姿を見て、今まで以上に彼に対して信頼感を持ったアタシを誰が咎められようか。
後々に聞けば彩斗はこういった状況を描いた小説作品を常々読んでいたらしく、寝る前に妄想をしたりして勝手に頭の中でシュミレーションいていたのだそうな。
何はともあれ、友好的な態度を見せた彩斗の考えは目論見通りに行った。
冷たい地下室のようなところからすぐに地上に上げられたアタシ達は、正しく国王の城にある来賓室へと通された。
何人ものメイドが宛がわれ、アタシ達はあれよあれよという間に見たこともないようなや品格のある服に着替えさせられ、これまた見たこともないような装飾品で飾り立てられた。大勢に見られながら着替えると言うのは少し恥ずかしかったが、彩斗から離れるよりも同じ部屋にいた方が何倍もマシだ。
そうして着替え終わり、差し出されたお茶をひたすら静かに飲んでいた。
すると彩斗が囁くように聞いてきた。
「ねえ、スミちゃん。気が付いてる?」
「え? 何に?」
「体の調子がいいっていうか…何となく軽くない? 俺だけなのかな?」
「…あ。ホントだ。何か不思議な感じがする」
「やっぱりか。これがさっきの話で出てきた不思議な能力か…? どんなことができるんだろう?」
そう言って彩斗は微笑んだ。
この状況を楽しんでいるようにも見える。それが楽観的にも思えたが取り乱してネガティブな思考に陥るよりもありがたい。事実、彩斗が取り乱していたらアタシもどうなっていたかは想像に難くない。
すると来賓室にぞろぞろとインテリ系の雰囲気を醸し出す人たちが数名入ってくる。皆が巻物や書類や本などを両手いっぱいに抱えていた。
「彩斗様、架純様。召喚者の歴史や付与された可能性高い能力の特徴をまとめた資料をお持ちしました。お待ちの間、お暇でしょうから是非ご一読願います」
「助かります。ありがとうございます」
他にすることもないアタシ達は彼らの提案に逆らわず、それらの文献に目を通し始めた。しかし読み始めるよりも前にアタシは驚くべき事に気が付いた。
「…この紙、漢字で書いてある」
「え? あ、本当だ」
「それは我が国のロストワードなのですが…読めるのですか?」
「ええ…何とか」
「彼女は書道の先生になって塾を開くのが夢なんで、字に関しての知識が凄いんですよ」
アタシはまじまじと、その一際異質なその紙の束とにらめっこを始めた。
ただ、そうは言ってもこれは文章にはなっていない。まるで規則性のない漢和辞典のよう出鱈目に文字が整列して埋まっているだけ。新字だけでなく繁体字も散見されるが、全ての文字がとてもきれいに書かれていた。しかも明らかに筆と墨で書かれている。
ただの落書きには思えない。けれど何をどう考えても何かしらの法則やメッセージ性は感じ取れなかった。
それからしばらくの間、アタシ達二人は用意された資料を読みふけることに集中した。他の媒体は異世界の文字で書かれていたのにも拘らず、まるで母国語のようにスラスラと解読できるのが不思議だった。
粗方を読み終わった頃。
窓から夕陽が差し込んでアタシの顔を照らし出す。その光で時間を忘れるほどに集中していた事に気が付いた。何か作業をして考えるという行動で、こんな意味の分からない状況から現実逃避したかったのかも知れない。
ホントに何となくだが自分たちの置かれている状況を受け入れ出した。
アタシは彩斗の横顔を見る。すると何やら深刻そうな顔をしてブツブツと何かを考えていた。
「彩斗。どうかした?」
「ちょっと待って」
こちらに顔を向ける事もなく、彩斗は手だけでアタシを制した。
「すみません。大きめの紙とペンを貸してもらえませんか?」
「え? す、すぐに準備いたします」
すぐに用意された紙を大きなテーブルに敷くと一気に文字と魔法陣のようなものを認め始めた。紙面の下部に円が描かれ、それを取り囲むように様々な式が散りばめられている。
「…これは何?」
「うん。俺もよくわからないんだけど、この資料を読んでたら頭に浮かんできてさ。この丸に手を置くと自分に付与された能力のイメージが沸くはず」
そう言って彩斗は手を紙の上に置く。するとしばらくの沈黙の後、ニコリと微笑んだ。
「うまく行った」
「え?」
「スミちゃんもやってみて」
「わ、分かった」
アタシは恐る恐る彩斗の真似をした。するとアタシの中に二つのイメージが沸いて出てきた。
一つは青葉色の草原を吹き抜ける風と『癒』という文字。
もう一つは夜よりも黒く見える液体と『墨』という文字。
ハッとなってアタシはもう一度だけ彩斗と顔を見合わせた。
「どう?」
「なんだか変な感じ。癒しって文字と墨って文字が見えた気がするけど…」
「うん。俺は剣って文字と炎って文字が見えた。多分それが答えだ」
「答え?」
「聖女英傑としての能力の片鱗って奴だよ」
彩斗がそう言うと、集まっていた学者たちがこぞって驚嘆の言葉を口にする。
「そのような事が可能なのですか!?」
「しかも、こんな複雑な装置を一瞬で…!?」
何の事か分からず置いてけ堀を食らっているアタシを他所に、彩斗は爛々に輝く目をエオイルの人たちに向けた。
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