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しずかに動き出す
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「ねえねえ! 誰に買うの!?」
「…家庭教師して教えてやってる子。テストでいい点取ったから」
「…僕は書道関係で知り合った人の娘さんに」
「え? 何? プライベートなラブじゃないの?」
「仕事の一環だし、ラブでもねえよ」
「あはは…」
なーんだ。義理というか社交辞令のようなプレゼントか。けど私は何だか納得してしまった。女の子の為にプレゼントというのは何だか柄じゃない。師範代はおかしくないけど、先生は不自然すぎる。
なんて事を考えていると私は先生にジロッと睨まれた。
「何か腹立つこと考えただろ?」
「べっつにー」
そうやって惚けながら、四人はとりあえず各々のドリンクを口にした。すると私は師匠の不思議そうな、それでいて驚いたような目線に気がつく。
「あれ? どうかしましたか?」
「あ、いえ。何とも生き生きとしたお顔をなさっているなと思いまして。稽古場ではどちらかというと張り付めたような堅い表情をしていましたから」
「…いえ。まだ緊張とかありますし、他意はないといいますか」
「いいんですよ。お若い方が舞踊の稽古をするとどうしてもそうなってしまうと聞いたことがあります」
それもあるけど、やっぱりイケメンと密室で二人きり、しかも稽古の性質上あれだけ接近されて手取り足取りされたら緊張しますって。まだ二回目だし。
「へえ。やっぱりそうなんだぁ。確かに若い人で日本舞踊やってる人は少なそう」
「お前らも若い部類だけどな」
と、先生はツッコミを入れてコーヒーをすすった。
何となくだけど普段のこの三人の関係や雰囲気が垣間見得た気がする。天然ボケの師匠に、純粋な師範代がすっとぼけた合いの手を入れて、それを先生がツッコミでまとめる…うん、大学でもそうやって会話している光景が目に浮かんだ。
すると三人は話が転がりだしてそのままお喋りを続けた。置いてきぼりを食らったと言えばその通りなのだが、三人とも私には見せないような普段とは違う表情や声を出すのが面白かったから問題ない。
それにしても…。
こうしてみると三人とも中々に顔立ちが整っているなと、しみじみ思ってみたりもする。
先生はチャラ男そのものの見た目をしているけどがり勉だし、人見知りが激しい。むしろこの外見はそれを悟らせないための防衛手段に感じる。クールでぶっきらぼう、あまり笑ったりしないで冷たくも思えるけど、付き合ってみるとかなり面倒見がいいし優しいことはすぐにわかるだろう。いわゆるところの猫タイプの典型のような感じだ。
先生が猫となると、連鎖的に師範代は犬系だと結論が出てしまう。
人懐っこいし誰とでもすぐ仲良くなる。純朴さと若干の天然が入っていることも加味すれば柴犬みたいな中型犬といった具合か…かわいいな、おい。うっかり犬耳で尻尾をブンブンと振り回す師範代の姿を想像してしまった。怖いくらいに似合っているのが面白い。
けど、犬系というのはいいえて妙だ。そんな可愛く優しいだけではない。師範代は責任感も人一倍強いし、超がつくほどの真面目な性格をしている。ま、ウブってだけかもしれないけどね。
先生が猫で師範代が犬だとしたら、師匠を動物に例えたら??
なんだろう…錦鯉とか?
自分で言っておいて何だが吹き出してしまいそうなほどに似合っている。
水棲生物って時点で他とは一線を画しているし、掴み所がなく、何考えているのかが分からないないところもそっくりだ。その癖、見た目は綺麗っていうところまで似ている。
よし。三人のイメージアニマルが決まった。
そんなことを想像しながら楽しんでいると、師範代が私が手持ちぶさたになっていることに気がついた。
「あ、ごめん。静花ちゃんがいるのに大学の話ばっかりして」
「いいんですよ。三人とも楽しそうだし」
「しかし私たちだけで話し合っていてはいつものと変わりありません。そろそろ本題に入りましょう」
「…だな。プレゼントってどんなのが喜ぶんだ?」
そんな殊勝な事を恥ずかしげに聞いてくる。しかも他ならぬ私にだ。思わずニヤニヤと勝ち誇ったような顔になってしまう。
「っぷ、くくっ…」
「おい、こら」
「だって先生が私にプレゼントがどうとか聞いてくるんだもん」
「そういう集まりだろうが!」
「ま、アドバイスはするけどさ。漠然としすぎてて分かんないよ。そのプレゼントを渡すのはどんな人なの?」
「…ノーコメント」
「なんで!? 選びようないじゃん」
「個人情報保護法により」
なにが個人情報だ。顔も名前も性格も見た目も知らない女の子のプレゼントをどうやって選べと?
私は仕方なく師範代を見た。
「なら師範代は? どういう人なの?」
「僕も…ノーコメントで」
「なんでよ!? 漫才? 二人してからかってんの?」
「ちょっと言いづらいというか。けど、優しくて元気な子かな?」
「それはそこら辺を歩いている子供にだって言える感想だよ」
何なんだ一体。本当に相談する気があるのか?
すると錦鯉が楽しそうに言う。
「ふふふ。何だか謎解きのようでワクワクしますね」
「…そうですね」
まあ、二人が言いたくない理由は何となく察しがつく。要するに私に知られるのが恥ずかしいんだろう。二人にしてみれば、まさか師匠が私を連れてくるなんて夢にも思っていなかっただろうし。
「…家庭教師して教えてやってる子。テストでいい点取ったから」
「…僕は書道関係で知り合った人の娘さんに」
「え? 何? プライベートなラブじゃないの?」
「仕事の一環だし、ラブでもねえよ」
「あはは…」
なーんだ。義理というか社交辞令のようなプレゼントか。けど私は何だか納得してしまった。女の子の為にプレゼントというのは何だか柄じゃない。師範代はおかしくないけど、先生は不自然すぎる。
なんて事を考えていると私は先生にジロッと睨まれた。
「何か腹立つこと考えただろ?」
「べっつにー」
そうやって惚けながら、四人はとりあえず各々のドリンクを口にした。すると私は師匠の不思議そうな、それでいて驚いたような目線に気がつく。
「あれ? どうかしましたか?」
「あ、いえ。何とも生き生きとしたお顔をなさっているなと思いまして。稽古場ではどちらかというと張り付めたような堅い表情をしていましたから」
「…いえ。まだ緊張とかありますし、他意はないといいますか」
「いいんですよ。お若い方が舞踊の稽古をするとどうしてもそうなってしまうと聞いたことがあります」
それもあるけど、やっぱりイケメンと密室で二人きり、しかも稽古の性質上あれだけ接近されて手取り足取りされたら緊張しますって。まだ二回目だし。
「へえ。やっぱりそうなんだぁ。確かに若い人で日本舞踊やってる人は少なそう」
「お前らも若い部類だけどな」
と、先生はツッコミを入れてコーヒーをすすった。
何となくだけど普段のこの三人の関係や雰囲気が垣間見得た気がする。天然ボケの師匠に、純粋な師範代がすっとぼけた合いの手を入れて、それを先生がツッコミでまとめる…うん、大学でもそうやって会話している光景が目に浮かんだ。
すると三人は話が転がりだしてそのままお喋りを続けた。置いてきぼりを食らったと言えばその通りなのだが、三人とも私には見せないような普段とは違う表情や声を出すのが面白かったから問題ない。
それにしても…。
こうしてみると三人とも中々に顔立ちが整っているなと、しみじみ思ってみたりもする。
先生はチャラ男そのものの見た目をしているけどがり勉だし、人見知りが激しい。むしろこの外見はそれを悟らせないための防衛手段に感じる。クールでぶっきらぼう、あまり笑ったりしないで冷たくも思えるけど、付き合ってみるとかなり面倒見がいいし優しいことはすぐにわかるだろう。いわゆるところの猫タイプの典型のような感じだ。
先生が猫となると、連鎖的に師範代は犬系だと結論が出てしまう。
人懐っこいし誰とでもすぐ仲良くなる。純朴さと若干の天然が入っていることも加味すれば柴犬みたいな中型犬といった具合か…かわいいな、おい。うっかり犬耳で尻尾をブンブンと振り回す師範代の姿を想像してしまった。怖いくらいに似合っているのが面白い。
けど、犬系というのはいいえて妙だ。そんな可愛く優しいだけではない。師範代は責任感も人一倍強いし、超がつくほどの真面目な性格をしている。ま、ウブってだけかもしれないけどね。
先生が猫で師範代が犬だとしたら、師匠を動物に例えたら??
なんだろう…錦鯉とか?
自分で言っておいて何だが吹き出してしまいそうなほどに似合っている。
水棲生物って時点で他とは一線を画しているし、掴み所がなく、何考えているのかが分からないないところもそっくりだ。その癖、見た目は綺麗っていうところまで似ている。
よし。三人のイメージアニマルが決まった。
そんなことを想像しながら楽しんでいると、師範代が私が手持ちぶさたになっていることに気がついた。
「あ、ごめん。静花ちゃんがいるのに大学の話ばっかりして」
「いいんですよ。三人とも楽しそうだし」
「しかし私たちだけで話し合っていてはいつものと変わりありません。そろそろ本題に入りましょう」
「…だな。プレゼントってどんなのが喜ぶんだ?」
そんな殊勝な事を恥ずかしげに聞いてくる。しかも他ならぬ私にだ。思わずニヤニヤと勝ち誇ったような顔になってしまう。
「っぷ、くくっ…」
「おい、こら」
「だって先生が私にプレゼントがどうとか聞いてくるんだもん」
「そういう集まりだろうが!」
「ま、アドバイスはするけどさ。漠然としすぎてて分かんないよ。そのプレゼントを渡すのはどんな人なの?」
「…ノーコメント」
「なんで!? 選びようないじゃん」
「個人情報保護法により」
なにが個人情報だ。顔も名前も性格も見た目も知らない女の子のプレゼントをどうやって選べと?
私は仕方なく師範代を見た。
「なら師範代は? どういう人なの?」
「僕も…ノーコメントで」
「なんでよ!? 漫才? 二人してからかってんの?」
「ちょっと言いづらいというか。けど、優しくて元気な子かな?」
「それはそこら辺を歩いている子供にだって言える感想だよ」
何なんだ一体。本当に相談する気があるのか?
すると錦鯉が楽しそうに言う。
「ふふふ。何だか謎解きのようでワクワクしますね」
「…そうですね」
まあ、二人が言いたくない理由は何となく察しがつく。要するに私に知られるのが恥ずかしいんだろう。二人にしてみれば、まさか師匠が私を連れてくるなんて夢にも思っていなかっただろうし。
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