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Episode2

誘い出す勇者

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 つけてくる理由は未だ不明だが、その理由を持っている可能性はオレが一番高い。ともすれば四人で固まっている内は、相手としても出るに出られないはず。



 すかさずオレはテレパシーで三人に、それぞればらけて行動するように指示を出した。地理は疎いが小さい町だ。はぐれても合流は容易なはず。おまけに精神感応を得意とする奴が二人もいるのだから心配はいらないだろう。



「然る後に合流してくれ」



「承知した」



 ルージュの応答をきっかけに、まずラスキャブとアーコが人気のない路地へと入って姿を消した。その後にオレとルージュが角を曲がり、相手の視界から消えたところを見計らってルージュを剣に戻す。これなら散り散りになったと誤認させられるはず。オレが一人になったと思わせたいが、ルージュを手放す訳にはいかない。得体の知れない相手に丸腰なんていくらなんでも無謀が過ぎる。



(そうだ、主よ。私もこれを返しておく)



(え?)



 返事を返す間もなく、自分の身体に力が満ちていくのが分かった。



 これはオレがルージュに預けていた本来の力だ。



(いいのか?)



(無論だ。主が魔王の首を私を使って刎ねてくれるまで、この旅路を逸れることはないと確信した。その代わり、アーコの術を使う機会は極力減らして頂きたい)



 ルージュのその言葉と態度にオレはついおかしくなってしまい、思わず笑みがこぼれてしまった。



 そして、その時。自分の行為に自分で驚いてしまった。女と、それも魔族とのやり取りに戯れて笑みをこぼすなんて、かつてのオレには考えられない事だったからだ。ルージュと会ってからこんな会話はしていたし何度か笑いあったこともあるし、ラスキャブやアーコとの事もある。何故、今この場面でそんな考えが生まれたのかはわからない。



 ひょっとしたらルージュに本来の実力を正式に返されて、肉体と精神がギャップを感じ取ったからかも知れない。その上、オレは同時に心の中に芽生えた何とも形容し難い感情にも気が付いていた。無理から表現するとすれば、心の余裕とでも言えばいいのだろうか。ここまでどこかくすぐったいような感覚は、憎むべきかつてのパーティにいた時にも感じたことがなかった。



 これは成長したんだと好意的に捉えておこうか。それでも口に出さない分、狼になった時よりかはマシだ。狼の時の言動は、後々振り返ると思わず叫びたくなることもある。



 ◇



 そんな余計な事を考えていたせいで、オレは追跡者の気配が変わったことに気が付くのが遅れてしまっていた。目的は自分だと思い込んでいたのも殊更まずかった。



 オレ達が気配を見失っている最中、追跡者は本命のラスキャブを追い詰める間際だった。
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