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Episode3
意外な勇者
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ルーノズアの街の中は至って静かなモノだった。街は明るいのに極端に人通りが少ない。その数少ない通行人も、やはり魔族だけだ。ここまでくれば、馬鹿でも街の様子がおかしいことに気が付きそうなものだが、それはオレが思っているだけの事なので定かではない。
しばらく表の通りを歩いていると、一人の魔族の子供がこちらに近づいてきた。如何にも街の使い走りのような綺麗とも汚いとも言えない服を着ている。そいつはオレ達の前に出てくると、へつらいながら聞いてきた。
「宿をお探しではないですか?」
「ああ、探している。見ての通り六人だが、空いているのか?」
「勿論です。お決まりでないなら、是非うちの宿屋へ。お安くしますよ?」
「丁度いい。歩き回って探すのも面倒だ、お前のところを使ってやろう。案内しろ」
ルージュはわざと高圧的な態度を見せた。微細なところから魔族に反感を持たせ、出方を伺うつもりなのだろう。その子供は、一瞬だけ面食らったような顔をしたがすぐにへらへらと笑って宿へと案内してくれた。
◇
「…らっしゃい」
店に入った時、そうして声をかけてきた店主らしき男を見て、オレ達は少し動揺した。その宿屋の主は、老年とは言え紛れもなくオレと同じくフォルポス族だったからだ。
(…気配が感じられないからといって。『囲む大地の者』全員が存在しないと考えるのは早計だったか…?)
そんな事を考えた。
ルージュはずいずいと宿の中に入ると、すぐに部屋の状況を確認する。
「隣り合わせの部屋を二部屋用意してくれ」
「部屋の内訳はお客様と、そっちの五人でよろしいので?」
「無論だ。食事は私の部屋にだけ運んでくれればいい」
「…畏まりました。二階の角の部屋をお取りします」
ごそごそとカウンターの奥から二本の鍵を出して、こちらに手渡してくる。確かにニアリィ族ではあるのだが、何か様子がおかしい。確かに長らく旅をしているとこのような具合の偏屈な老店主に出くわすこともあるのだが、あの老人の場合は、偏屈というよりも全てを諦めて投げだしているような、そんな雰囲気を感じ取ってしまう。
だが、それは今ここで詮索すべき事ではない。まずは落ち着き次の手立てを考える暇が欲しい。その為にもいち早く部屋に入ってしまいたい。
その上、『囲む大地の者』の存在が確認できたせいでこの町の謎が一層膨らんでしまった。複雑な事情が絡んでいる事は間違いない。
意外だったのは、フォルポス族の姿であれば確実に頭が痛くなり煩わしくなるような事態なのに、むしろあれこれと知恵を巡らせるのが楽しみに感じている自分がいた事だ。この魔族の姿は、そういう性格になるらしい。
オレは考え事をするのに便利そうだなと、少々暢気な事を考えながら階段を登って行った。
しばらく表の通りを歩いていると、一人の魔族の子供がこちらに近づいてきた。如何にも街の使い走りのような綺麗とも汚いとも言えない服を着ている。そいつはオレ達の前に出てくると、へつらいながら聞いてきた。
「宿をお探しではないですか?」
「ああ、探している。見ての通り六人だが、空いているのか?」
「勿論です。お決まりでないなら、是非うちの宿屋へ。お安くしますよ?」
「丁度いい。歩き回って探すのも面倒だ、お前のところを使ってやろう。案内しろ」
ルージュはわざと高圧的な態度を見せた。微細なところから魔族に反感を持たせ、出方を伺うつもりなのだろう。その子供は、一瞬だけ面食らったような顔をしたがすぐにへらへらと笑って宿へと案内してくれた。
◇
「…らっしゃい」
店に入った時、そうして声をかけてきた店主らしき男を見て、オレ達は少し動揺した。その宿屋の主は、老年とは言え紛れもなくオレと同じくフォルポス族だったからだ。
(…気配が感じられないからといって。『囲む大地の者』全員が存在しないと考えるのは早計だったか…?)
そんな事を考えた。
ルージュはずいずいと宿の中に入ると、すぐに部屋の状況を確認する。
「隣り合わせの部屋を二部屋用意してくれ」
「部屋の内訳はお客様と、そっちの五人でよろしいので?」
「無論だ。食事は私の部屋にだけ運んでくれればいい」
「…畏まりました。二階の角の部屋をお取りします」
ごそごそとカウンターの奥から二本の鍵を出して、こちらに手渡してくる。確かにニアリィ族ではあるのだが、何か様子がおかしい。確かに長らく旅をしているとこのような具合の偏屈な老店主に出くわすこともあるのだが、あの老人の場合は、偏屈というよりも全てを諦めて投げだしているような、そんな雰囲気を感じ取ってしまう。
だが、それは今ここで詮索すべき事ではない。まずは落ち着き次の手立てを考える暇が欲しい。その為にもいち早く部屋に入ってしまいたい。
その上、『囲む大地の者』の存在が確認できたせいでこの町の謎が一層膨らんでしまった。複雑な事情が絡んでいる事は間違いない。
意外だったのは、フォルポス族の姿であれば確実に頭が痛くなり煩わしくなるような事態なのに、むしろあれこれと知恵を巡らせるのが楽しみに感じている自分がいた事だ。この魔族の姿は、そういう性格になるらしい。
オレは考え事をするのに便利そうだなと、少々暢気な事を考えながら階段を登って行った。
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