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Episode3
尋ねられた勇者
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下で言ったことが怪しまれないように、オレ達はルージュとそれ以外に分かれて部屋に入った。ルージュのテレパスは、この程度の厚さの壁ならないのも同然だ。『囲む大地の者』に出会うという予想外の事はあったが、依然としてこの町が怪しく、そして町民のほとんどが敵になり得るという状況に変わりはない。大事な会話はこの形が基本となるだろう。オレは頭で全員にそれを命じた。
『けど、無事に宿屋に入れてよかったね』
すぐにピオンスコの無邪気な思考が頭の中に反響した。
『無事、かどうかは分かりませんけどね』
『え? なんで?』
『ザ、ザートレさんも言ってたでしょう。罠かも知れないって』
『最悪の場合、この町の連中全員と戦う事になるかも知れないぞ。油断するなよ、ピオンスコ』
オレはそんな脅し文句を言う。冗談のような軽口だが、これは事実だ。てっきり顔をこわばらせるくらいはするかと思ったが、
『大丈夫。アタシの毒でみんなやっつけるから』
と、頼もしい返事が返ってくる。むしろ、その隣にいたラスキャブの方が青い顔になっているのが面白かった。
しかし、オレもそうだが戦うつもりになっているのは少々本筋からずれている気がしたので、自分にも戒めるつもりで全員と目的を共有することにした。
『この町で何が起こっているのか、興味はあるし、恐らくだがこのまま平穏無事で過ごせはしないだろう。ただ、あくまでオレ達の目的はこの町から船で『螺旋の大地』に渡る事だ。状況がそれを許したなら、優先すべきは船を出す事だ。そこは間違えてくれるなよ』
その時である、ルージュを除いたオレ達五人組の部屋の戸を誰かが叩いてきた。
◇
「…誰だ?」
部屋の中に緊張が走った。ベットの上のあぐらを掻いていたアーコも立ち上がり、オレは他の四人を庇うように前に陣取った。
すると、聞き覚えのある声が扉の外から聞こえてきた。
「ナハメウといいます。先ほど、この宿を紹介した者です」
さっきの小僧か。声を潜めているという事は、十中八九隣にいる女主人に聞かせたくはない話をしたいという事だろう。罠か、もしくは違うのか。虎穴に入らざれば虎子を得ずという通り、多少は冒険してみなくはいけないかも知れない。
オレが目線で指示を出すと、ラスキャブが扉を開けてくれた。彼女の防御力なら、万が一の事があっても他の誰かよりは安心できる。だが部屋に入ってきたナハメウという小僧の顔を見て、オレは敵意や悪意はないことを何となく悟った。もしこれが芝居だというならとんだ名優だ。だまし討ちされたとしても、諦めがつく。
ナウメハはおどおどとオレ達の顔色を伺いながらもゆっくりと部屋に入ってきた。
「で、何の用だ?」
「皆さんにお話があります」
「話だと?」
すうっと、鼻から肺に深呼吸する音が静まりかえった部屋にはやけに響く。そしてゆっくりとナウメハは言った。
「あのフォルポスの女から逃げ出したくはないですか?」
『けど、無事に宿屋に入れてよかったね』
すぐにピオンスコの無邪気な思考が頭の中に反響した。
『無事、かどうかは分かりませんけどね』
『え? なんで?』
『ザ、ザートレさんも言ってたでしょう。罠かも知れないって』
『最悪の場合、この町の連中全員と戦う事になるかも知れないぞ。油断するなよ、ピオンスコ』
オレはそんな脅し文句を言う。冗談のような軽口だが、これは事実だ。てっきり顔をこわばらせるくらいはするかと思ったが、
『大丈夫。アタシの毒でみんなやっつけるから』
と、頼もしい返事が返ってくる。むしろ、その隣にいたラスキャブの方が青い顔になっているのが面白かった。
しかし、オレもそうだが戦うつもりになっているのは少々本筋からずれている気がしたので、自分にも戒めるつもりで全員と目的を共有することにした。
『この町で何が起こっているのか、興味はあるし、恐らくだがこのまま平穏無事で過ごせはしないだろう。ただ、あくまでオレ達の目的はこの町から船で『螺旋の大地』に渡る事だ。状況がそれを許したなら、優先すべきは船を出す事だ。そこは間違えてくれるなよ』
その時である、ルージュを除いたオレ達五人組の部屋の戸を誰かが叩いてきた。
◇
「…誰だ?」
部屋の中に緊張が走った。ベットの上のあぐらを掻いていたアーコも立ち上がり、オレは他の四人を庇うように前に陣取った。
すると、聞き覚えのある声が扉の外から聞こえてきた。
「ナハメウといいます。先ほど、この宿を紹介した者です」
さっきの小僧か。声を潜めているという事は、十中八九隣にいる女主人に聞かせたくはない話をしたいという事だろう。罠か、もしくは違うのか。虎穴に入らざれば虎子を得ずという通り、多少は冒険してみなくはいけないかも知れない。
オレが目線で指示を出すと、ラスキャブが扉を開けてくれた。彼女の防御力なら、万が一の事があっても他の誰かよりは安心できる。だが部屋に入ってきたナハメウという小僧の顔を見て、オレは敵意や悪意はないことを何となく悟った。もしこれが芝居だというならとんだ名優だ。だまし討ちされたとしても、諦めがつく。
ナウメハはおどおどとオレ達の顔色を伺いながらもゆっくりと部屋に入ってきた。
「で、何の用だ?」
「皆さんにお話があります」
「話だと?」
すうっと、鼻から肺に深呼吸する音が静まりかえった部屋にはやけに響く。そしてゆっくりとナウメハは言った。
「あのフォルポスの女から逃げ出したくはないですか?」
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