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Episode4
波に乗る勇者
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波に視界を阻まれていたせいで、それを乗り越えた先にあった風景は今まで生きてきた中で最も開放感を与えてくれた。大波から飛び出して落下を始めるまでの一秒にも満たない間は、まるで鳥にでもなったかのようだ。ササス族はこんな景色を普段から見ているのだろうか。
だが、オレには当然ながら翼がない。
なので再びアーコの盾を駆使して波に着水した後は、一転して波を下り始めた。しかもレイク・サーペントが湖面に生み出した波は次々に襲い掛かってくる。波乗りだって何度もうまくいく確証はない。早くこの状況を打開しなくては。
オレは頭の中で二人に策を相談する。すると待ってましたと言わんばかりに、ルージュが次の手を提案してきた。オレにその作戦の可否を判断する余裕はない。迷うよりも先にそれを実行する。
ルージュの示したイメージ通りに俺はアーコを踏みしめ、大きく跳躍した。盾は魔法で生み出したもので本体は左手のブレスレットだ。素早くアーコの盾を光に変えて引き寄せるとオレは再び魔族の姿に変わり、自分の頭上に向かって広範囲に再展開した。アーコが教えてくれた話では、この盾はオレの指定したものを遮蔽する効果があるらしい。そこでこの盾に最大限、空気の流動を妨げるように設定をした。結果、盾は落下傘のように機能してオレに空中に滞在する猶予をもたらしてくれた。
「うまく行ったな」
(ああ。盾など主の戦闘スタイルに合わないと思っていたが、この盾は使い道が多そうだ)
(ふざけんな、テメーら。いきなり俺を足蹴にするたぁどういうつもりだ、コラ)
(吠えるな。主の命を救えたのだから、盾の本望だろう)
「文句なら後で山ほど聞くさ。それよりもレイク・サーペントの撃破だ」
オレは改めてレイク・サーペントの事を見た。先ほど与えた裂傷は見事に再生してしまっている。通常の方法ではダメージを与えられないようだ。流石は伝説級の魔物と言ったところだろうか。
こうなると、こちらの取り得る手段で一番有効打になりそうなのは…。
((ピオンスコの毒だな))
と、見事に重なった二人の声が頭の中にこだました。確かに二人の言う通り、それが一番確実性がありそうだ。
問題はそれをどう使うか、だ。手元にあるのは小瓶一つ分。確実に奴を討伐できる使い方をしなければ勝ち目はなくなってしまう。
だがそんな心配もすぐに解決策をルージュに提示された。
今回の戦いに関してはいいとこなしだ。オレからレイク・サーペントと対峙するのを申し出ておいたのにと、何んだか恥ずかしく申し訳ない気持ちになっていた。
そんなオレの気持ちを払拭するかのように、アーコのいたずらな声も届いてきた。
(それなら面白いこと思いついたんだけど)
だが、オレには当然ながら翼がない。
なので再びアーコの盾を駆使して波に着水した後は、一転して波を下り始めた。しかもレイク・サーペントが湖面に生み出した波は次々に襲い掛かってくる。波乗りだって何度もうまくいく確証はない。早くこの状況を打開しなくては。
オレは頭の中で二人に策を相談する。すると待ってましたと言わんばかりに、ルージュが次の手を提案してきた。オレにその作戦の可否を判断する余裕はない。迷うよりも先にそれを実行する。
ルージュの示したイメージ通りに俺はアーコを踏みしめ、大きく跳躍した。盾は魔法で生み出したもので本体は左手のブレスレットだ。素早くアーコの盾を光に変えて引き寄せるとオレは再び魔族の姿に変わり、自分の頭上に向かって広範囲に再展開した。アーコが教えてくれた話では、この盾はオレの指定したものを遮蔽する効果があるらしい。そこでこの盾に最大限、空気の流動を妨げるように設定をした。結果、盾は落下傘のように機能してオレに空中に滞在する猶予をもたらしてくれた。
「うまく行ったな」
(ああ。盾など主の戦闘スタイルに合わないと思っていたが、この盾は使い道が多そうだ)
(ふざけんな、テメーら。いきなり俺を足蹴にするたぁどういうつもりだ、コラ)
(吠えるな。主の命を救えたのだから、盾の本望だろう)
「文句なら後で山ほど聞くさ。それよりもレイク・サーペントの撃破だ」
オレは改めてレイク・サーペントの事を見た。先ほど与えた裂傷は見事に再生してしまっている。通常の方法ではダメージを与えられないようだ。流石は伝説級の魔物と言ったところだろうか。
こうなると、こちらの取り得る手段で一番有効打になりそうなのは…。
((ピオンスコの毒だな))
と、見事に重なった二人の声が頭の中にこだました。確かに二人の言う通り、それが一番確実性がありそうだ。
問題はそれをどう使うか、だ。手元にあるのは小瓶一つ分。確実に奴を討伐できる使い方をしなければ勝ち目はなくなってしまう。
だがそんな心配もすぐに解決策をルージュに提示された。
今回の戦いに関してはいいとこなしだ。オレからレイク・サーペントと対峙するのを申し出ておいたのにと、何んだか恥ずかしく申し訳ない気持ちになっていた。
そんなオレの気持ちを払拭するかのように、アーコのいたずらな声も届いてきた。
(それなら面白いこと思いついたんだけど)
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