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腐った果実、あるいは神の土地改革

 全次元を統べる俺の視界に、広大な農園を焼く炎と、奪われた大地の土を噛み締める人々の絶望が映り込んだ。

 1954年、グアテマラ。貧しい農民に土地を分け与えようとした民主政権を、ある巨大な米系企業が「自社の権益を損なう」という理由だけで目の敵にした。彼らは国家の諜報機関(CIA)を動かし、偽の情報を流し、民主主義を「共産化」という嘘で塗り潰して軍事クーデターを演出した――PBSUCCESS作戦。

「……バナナの利益を守るために、一国の自由を腐らせたか。商人の帳簿を埋めるために、数万の命を血で染めた罪。高くつくぞ」

 俺の隣で、エルゼが軽蔑の眼差しをその暗黒の歴史に向ける。

 生命の根源である俺にとって、命を育む『土』を強欲のために独占し、それを奪い返そうとする正義を暴力で踏みにじる行為は、断じて許されぬ大罪だ。

「エルゼ、行くぞ。……『実りの収穫』がどれほど過酷なものか、その身で味わわせてやる」

 俺は時空を穿ち、利権を守るために工作を依頼した企業の重役室と、それを受理して侵略を指揮した Langley(ラングレー)の深部へ同時に降臨した。

$$Authority: \text{The Harvest of Retribution}$$
$$Effect: \text{Resource Reversion / Perpetual Starvation}$$
「な、なんだこの黄金のツタは……!? ビルの窓を突き破って、部屋中を埋め尽くしているぞ!」

 贅沢な調度品に囲まれた重役たちが叫ぶ。彼らの手元にあった膨大な「利益」を記した書類は、俺が指を一鳴らしした瞬間、真っ黒に腐敗した果実へと姿を変えた。

「君たちは、大地が生み出す恵みを他者から奪い、独占した。……ならば、君たちの肉体そのものを、君たちが搾取した農地の『肥料』に変えてやろう」

 俺が掌をかざすと、謀略を主導した工作員や、利権のために国を売った資本家たちの肉体から、あらゆる生命エネルギーが逆流し始めた。彼らの豪華なスーツの下からは根が伸び、彼ら自身の寿命を吸い上げながら、黄金の「裁きの果実」を実らせていく。

 彼らは死ぬことも、飢えから逃れることもできない。

 ただ永遠に、自分が奪った土地の土を一粒ずつ数え続け、自分が汚した農地が完全に浄化されるまで、その命を搾取され続ける『生きた肥料』として、次元の底に繋がれる。

 一方で、俺は蹂躙されたグアテマラの大地に生命の光を降り注いだ。

 独裁政権が敷いた暗雲はアルカディアの「不滅の風」によって吹き飛ばされ、奪われた農地は、元々の持ち主である農民たちの手へと強制的に再配分される。

 そこにはもう、一企業のロゴが入った旗などない。代わりに、誰にも奪われることのない『神の守護を受けた果樹園』が、未来永劫にわたる豊かな実りを約束した。

「主……。一企業の身勝手な欲望で焼かれた大地が、今、貴方様の慈悲によって本当の意味で解放されましたね」

 エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。

 俺は、自らの命を搾り取られ、枯れ木のように干からびていく「謀略者」たちの断末魔を見捨て、再び至高の座へと戻った。

 神となった俺の前で、不当な利権は砂へと還り、真の労働には輝かしい実りが与えられる。

 俺の庭において、大地を私物化し、自由を売り払う不遜な者には、ただ永劫の飢餓と搾取こそが相応しい。


著者の完結済代表作はこちら
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/889736250/758036840
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