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4 呼び出しと旅立ち④
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「この家を出ていかれるにしてはずいぶん軽装だとお見受けするが」
「…」
「一体どこまで行かれなさるのかはよく存じないが、せいぜい生き延びられること天に祈っているよ。神のカゴがもらえんことを」
「………」
どう見ても意図的に相手を不快にさせるであろう態度を取り続けるアーブルに対峙しながらも、リリアはゆっくりと腕を組み薄笑いを浮かべるだけだった。
反対に、アーブルの方に苛立ちが募っていく。
「おい、何か答えたらどうなんだ。この私がわざわざお見送りにはぜ参じたのだぞ」
「ぷっ、くっ、くくく、は、はぜ参じ…!あっはははははっっ!!」
「な、なんだよ急に!」
「あははっははっ、神のカゴって何!? あははははは、おなか痛いよー!」
「お、おい! 笑いすぎだろ姉さん!!」
とうとう我慢ができず腹を抱えて笑いだすリリアの姿を見て、アーブルはバタバタと手を振り止めようとするが、まるで効果はない。
アンネリースも隣でにこやかな表情をしているだけで、止める様子はないのだった。
「はー、おかしい。アンタね、無理に難しい言葉を使おうとしないでよ。言い間違いがおもしろくって話が全然頭に入ってこないんだけど」
「え!? どれだ、どれが間違ってた!?」
「気づいてないの? くくく、ダメだ、思い出したらまた笑えてきた」
「教えろよ!」
「嫌よ、ちゃんと自分で勉強しなさーい」
顔を真っ赤にして食ってかかるアーブルを横目に、リリアは再び門に向かおうと踵を返した。
「姉さ…いや姉上! 本当に出て行くんだな?」
「もちろん。父様の命令だもの」
「まったく、誰も彼も父上の命令は絶対だなどと言うが…まあいいさ、これで屋敷に残る後継者はこの私だけだ。いいか姉上、貴方がいつか屋敷に帰りたくなったとしても、その時に居場所があると思わないことだ」
「お気になさらず。初めから戻る気なんてないし」
「ふん、どうだかな? 外の世界の生活がどれほど厳しいか、ずっと貴族として生きてきた姉上に耐えられるとは思えない」
「それはアンタも一緒でしょうが」
「そうだ、だから私は貴族として堂々と胸を張って生きていくのだ! 後ろめたいことなど何もない!」
「何の話よ? あのねぇ、私は別に後ろめたいことがあって家を出てくわけじゃないんだからさ。アンタこそ、何か貴族の地位を危うくさせるようなことやってんじゃないでしょうね?」
「私はいつだって清廉潔白だ」
「そこは噛まずに言えるんだ…」
「ええい、うるさいな! とにかくだ! 私はベルガルド家次期当主として貴方を見送りに来たのだと言っている!」
リリアの顔に向かって真っ直ぐに人差し指を伸ばし、アーブルがますます顔を上気させる。
その様子を見てふっと息を吐き、リリアは困ったように微笑んだ。
「それはどうも、わざわざありがとう。私はアンタのお母さんが嫌いだけど、アンタはお母さんのこと好きでしょ? 私のリリィ母様も、エルメダ母様も、きっと優しくしてくれるから。しっかりやんなさいね。風邪ひくなよー」
「な…っ、そんなことはわかっている! 子ども扱いすんな!」
「13歳なんてガキよガキ。じゃ、またいつかねアーブル。バイバーイ」
リリアはアーブルに向かって軽く手を振ると、さっさと門に向かって歩き出した。外には馬車が待機しているはずだ。
腹違いとは言えリリアにとってアーブルはたった一人の弟であり、歳も近く、共に過ごした時間は決して短くない。
一人残った弟にはこれからどんなことが起こるのだろう。今まさに屋敷を飛び出す自分のことよりも彼の未来の方が気にはなったが…その不安はアンネリースの「大丈夫ですよ」という一言で幾分和らげられたのだった。
「よし。じゃあ行きましょう、懐かしのバージンレイク!」
御者の合図とともに、馬車がカタカタと音を立てて走り出す。
だんだんと小さくなるその姿を、アレクサンダー、そして妻たちが屋敷二階の窓辺から見下ろしていた。
「…」
「一体どこまで行かれなさるのかはよく存じないが、せいぜい生き延びられること天に祈っているよ。神のカゴがもらえんことを」
「………」
どう見ても意図的に相手を不快にさせるであろう態度を取り続けるアーブルに対峙しながらも、リリアはゆっくりと腕を組み薄笑いを浮かべるだけだった。
反対に、アーブルの方に苛立ちが募っていく。
「おい、何か答えたらどうなんだ。この私がわざわざお見送りにはぜ参じたのだぞ」
「ぷっ、くっ、くくく、は、はぜ参じ…!あっはははははっっ!!」
「な、なんだよ急に!」
「あははっははっ、神のカゴって何!? あははははは、おなか痛いよー!」
「お、おい! 笑いすぎだろ姉さん!!」
とうとう我慢ができず腹を抱えて笑いだすリリアの姿を見て、アーブルはバタバタと手を振り止めようとするが、まるで効果はない。
アンネリースも隣でにこやかな表情をしているだけで、止める様子はないのだった。
「はー、おかしい。アンタね、無理に難しい言葉を使おうとしないでよ。言い間違いがおもしろくって話が全然頭に入ってこないんだけど」
「え!? どれだ、どれが間違ってた!?」
「気づいてないの? くくく、ダメだ、思い出したらまた笑えてきた」
「教えろよ!」
「嫌よ、ちゃんと自分で勉強しなさーい」
顔を真っ赤にして食ってかかるアーブルを横目に、リリアは再び門に向かおうと踵を返した。
「姉さ…いや姉上! 本当に出て行くんだな?」
「もちろん。父様の命令だもの」
「まったく、誰も彼も父上の命令は絶対だなどと言うが…まあいいさ、これで屋敷に残る後継者はこの私だけだ。いいか姉上、貴方がいつか屋敷に帰りたくなったとしても、その時に居場所があると思わないことだ」
「お気になさらず。初めから戻る気なんてないし」
「ふん、どうだかな? 外の世界の生活がどれほど厳しいか、ずっと貴族として生きてきた姉上に耐えられるとは思えない」
「それはアンタも一緒でしょうが」
「そうだ、だから私は貴族として堂々と胸を張って生きていくのだ! 後ろめたいことなど何もない!」
「何の話よ? あのねぇ、私は別に後ろめたいことがあって家を出てくわけじゃないんだからさ。アンタこそ、何か貴族の地位を危うくさせるようなことやってんじゃないでしょうね?」
「私はいつだって清廉潔白だ」
「そこは噛まずに言えるんだ…」
「ええい、うるさいな! とにかくだ! 私はベルガルド家次期当主として貴方を見送りに来たのだと言っている!」
リリアの顔に向かって真っ直ぐに人差し指を伸ばし、アーブルがますます顔を上気させる。
その様子を見てふっと息を吐き、リリアは困ったように微笑んだ。
「それはどうも、わざわざありがとう。私はアンタのお母さんが嫌いだけど、アンタはお母さんのこと好きでしょ? 私のリリィ母様も、エルメダ母様も、きっと優しくしてくれるから。しっかりやんなさいね。風邪ひくなよー」
「な…っ、そんなことはわかっている! 子ども扱いすんな!」
「13歳なんてガキよガキ。じゃ、またいつかねアーブル。バイバーイ」
リリアはアーブルに向かって軽く手を振ると、さっさと門に向かって歩き出した。外には馬車が待機しているはずだ。
腹違いとは言えリリアにとってアーブルはたった一人の弟であり、歳も近く、共に過ごした時間は決して短くない。
一人残った弟にはこれからどんなことが起こるのだろう。今まさに屋敷を飛び出す自分のことよりも彼の未来の方が気にはなったが…その不安はアンネリースの「大丈夫ですよ」という一言で幾分和らげられたのだった。
「よし。じゃあ行きましょう、懐かしのバージンレイク!」
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