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神霧、再び
しおりを挟むT都湾海上に、湾口から北に向かって唐突に現れた一筋のモーニンググローリーは、夕方の賑わい始めた都内で人々の大きな関心を持って迎えられた。
誰かが 晴れていたら最高だったのに! と、その日の曇り空に不満を述べる一方。国防隊は、直近では最大級の警戒を敷いてこの気象現象を怪しんでいた。
「······!今、夕方だぞ?損害は?」
メインモニターのモーニンググローリーのライブ映像を見つめながら洗毬が中央指揮所に入る。
「はい、サンプル採取のリサーチャードローン一機がロストしました」
「有識者見識報告。高い確率で今回も気象条件が整っていない状況との事です」
「······」
「司令長?」
隣席の高官に顔色を伺われた洗毬は、難しそうな表情で慎重に判断のカードを選んでいた。
「···関東方面全隊、第一警戒態勢!沿岸部の市民の先行避難開始!移動中の全公共交通機関車両はシェルターホームへ強制移動、のち続けて本避難準備!アノ帝国案件緊急連絡を上申!」
「わかりました!」
命令が浸透していく中、最高指令部との連絡準備完了を待つ洗毬は、衛星映像のやけに直線的なモーニンググローリーを眺めていた。
「王···道?」
洗毬が、だとしたら何が来る?と思っていると、デスクの受話器が鳴った。
街頭テレビジョンには、落ち着いて行動して下さい。の文字が踊り、都民達の殆どが冷静にそれに従っていた。
T都民は大半がかつての超震災、怪獣災害、怪戦争経験者の末裔である。彼らの家族の教えはまだ生きている······そう感心している一人の髭面に巨漢の中年男性は徒歩避難の列から一時外れ、スマホでどこかへと連絡を取った。
災害の度にITインフラは強化を続け、最近ようやくこういう時でも回線がほぼ混雑しにくくなった···
中年男性、護ノ森諸店探偵事業部、ゴノモリリサーチ所長、社務崎はその事に感謝しながら相手が電話に出るのを待っていた。
同時刻、衣懐学園前駐車場。
緊急下校指示で部活動も止まり、慌ただしくなっている学園。
宇留の護衛に入っていたわんちィとパニぃは、社務崎から関東沿岸部の避難勧告の一報、そして敵出現の可能性が濃厚と聞き、更に交代に来たSP達と護ノ森諸店のある問題について話していた。
「こんな時に!」
わんちィの眉間に思わず力が入る。
護ノ森諸店では、関連店舗に勤めていた今は消息不明となっている女性店員が、帝国側のスパイとして潜入していた可能性が浮上し、内々に調査を行っていた段階だった。
関連店舗は一切国防隊との接点は無いものの、安全が認められるまでの間、念の為に社長である護森の判断で国防隊との連携を一時遮断する事が午後一で決定したばかりであった。
流出したと思われる情報。それは、かつてヒメナが眠っていた洞窟にしてアンバーニオンの琥珀の泉、流珠倉洞の情報······他
「鍵村や縞雨がその情報で動いたんだとしたら···悔しいなぁ···」
「パニぃ?あいつらがしくじってこっちにアンバーニオンが来てくれたからこそちゃんとした社内調査が出来たんだよ。所長の受け売りだけどモーケモンだって!じゃ無かったら···?」
「皆さん、ご迷惑をおかけしまして······」
恐縮するパニぃに、交代のSP達の一人、蛍沼が告げる。
「いえそんな!でも護ノ森諸店としては彼のサポートが終わる訳じゃ無いんでしょう?確かに国防隊と共闘こそ出来なくなりますが、ウチも似たようなモンです。バイトスパイから帝国の戦士を名乗って拘束された者までわんさかですよ?···つらい時ですがお互い頑張りましょう!今日は我々におまかせをー!」
蛍沼が一段落の交代の挨拶で締めようとした時、アルキ先生がわんちィ達の元へ慌ててやって来た。
「皆さん!須舞くんが!他の残っていた生徒達が所在不明です!」
「「!」」
「こんな時に!」
わんちィとパニぃ、SP達は弾かれたように学園内に向かって走った。
関東地方、I県、磁区之浜。
「おい!ちょッと待てッたら!」
砂浜とほぼ地続きの駐車場から、逃げる愛犬の柴犬を追いかけて来た男性は、波打ち際でけたたましく空に向かって吠え狂う愛犬をなだめようとして、ふと上空を向いた。
「な!んだありゃー!」
超巨大な三角形のUFOが三機。それぞれが頂点の角を向かい合わせ、南下して行く所だった。よく見ると向かい合わせた頂点の中心には、巨大人型ロボットのようなものが挟まっている。
飛行物体、超巨大アクプタンと、それに輸送されるエギデガイジュは、モーニンググローリーの端と思われる雲塊に向かって飛んで行った。
中央指揮所。
「コードネーム、アクプタン出現!機数三!」
「これまでに確認されている中で最大サイズとの事です!」
「司令長!海上警備隊より連絡!T都湾内に氷解が浮かんでいるとの報告です!」
「なんだと?何をするつもりだ?」
「敵機編成に人型機動兵器を確認しました!コードネーム、フェイクサニアンBです!」
「!!」
超巨大アクプタンに身を任せ飛ぶエギデガイジュの背中には巨大なレンズのようなものが収まっている。
そしてモーニンググローリーのある場所で琥珀色の両目がフッと輝く。
その度にT都湾では、凄まじいスピードで氷結現象が進んでいた。
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