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決 着 · Amber Ice Dance ·
しおりを挟むガゥ!オオオオオオオオオッ!
キギョォォォォァァァアアァ!
アンバーニオン オーストの咆哮に、
大ガルンシュタエンが応える。
ボッ!フッッッ!
アンバーニオン オーストは、ほぼ瞬間的に大ガルンシュタエンに接近し、アンバーニオン ニーは青い残像を残してその場から消えた。
「!!」
ドゴッッッッ!
一瞬、エシュタガは何が起きたのか分からなかった。
アンバーニオン オーストが、大ガルンシュタエンの右脇腹に膝を当てて脇の下を通り抜けて行った事に気付くのと、ガルンの回避予測プランが事後報告になってしまったのは同時だった。
ボゴォン!
一呼吸置いて大ガルンシュタエンの氷モドキパワードスーツの右脇腹が砕け散る。
「!」
続けて左足が傾く。エシュタガがこれまでの繰り返しの人生の中で何度も経験してきた嫌悪感。吸血昆虫が体に掴まっている時のあの感覚。視線を下ろすとアンバーニオンのブーメランを両手に持った青い腕がフッと死角へと逃れると共に、ゴロッと足首が大きなブロック数個に斬り刻まれて崩れる。
「く!」
膝を着いた大ガルンシュタエンは、上半身のみを回転させて後ろの様子を見た。
エシュタガが瞬きをした瞬間。ガルンシュタエンの操玉内ディスプレイがホワイトアウトする。
その純白の正体はアンバーニオン オーストの顔。
人間の感覚で光速と思える一瞬で、ガルンシュタエンの眼前にそれはあった。
「わああっ!」
バァン!
叫んだガルンは、アンバーニオン オーストの輝く背部スタビライザーがシュッと動いた事に動揺し、大ガルンシュタエンの第一装甲として纏っていた表層部の氷モドキを切り離して散弾のように全方向に撒き飛ばした。
その時、アンバーニオン オーストの背部スタビライザーの先端を掴み、そのしなりを利用して大ガルンシュタエンの頭上に飛び上がっていたアンバーニオン ニーは、氷モドキ散弾ブロックの上を飛び石のように跳ね回り、避けられないものは全てブーメランが変化したクナイで全て斬り伏せつつ大ガルンシュタエンと距離を開ける。
一方、アンバーニオン オーストは最初の散弾ブロックこそガードで凌いでいたが、いつしか放たれていた連続パンチの乱打で全て叩き落としていた。
「ぬぅああああっっ!」
「?」
連打を終え、呼吸を整えているであろうアンバーニオン オーストに向かって、ハンマーから巨大な手に変わっていた氷の右拳が迫る。
有り余る威力に、腕の芯になっていた神霧の鞭がブチブチと千切れ、巨大な腕だけが飛んで来た。
ドシッ!
「!」
巨大な腕を左片手だけで受け止めるアンバーニオン オースト。掴んだ一瞬、パアッと一際強く全身が輝く。
ガアアアアアアアアアアアア!
アンバーニオン オーストが吠えると共に、掴まれ宙に浮く腕はたちまち光のヒビにシキシキと侵食されていく。
シャッ!キキン!
その腕が目にも止まらない速さで二度の斬撃を受け爆発する。
ボッ!グァッンッ···!
左手を下ろして無言で大ガルンシュタエンを見詰めるアンバーニオン オーストと、その傍らに並び立つアンバーニオン ニー。
その程度か?
「!?」
宇留は何も言っていなかったが、アンバーニオン オーストの目はそう言っていた。
エシュタガの一番嫌いな男の声。余裕で脳内再生されたその台詞はエシュタガを焦らせる。
「ぬぅ!···速い!だがッ!」
ギィン!
大ガルンシュタエンの目が輝き、氷結島の表面から急造されたアクプタン達のようなものが無数に出撃する。
アンバーニオン達は二手に別れ、氷結島の地面を超高速で滑り始めた。
氷結島のリンクをフィギュアスケーターのようにホバー走行で縦横無尽に走り回るアンバーニオン達は、向かって来るアクプタン達を次から次へと破壊していく。
気が付けば、人型に合体したアクプタンもいたが、それすらも焼け石に水。アンバーニオン達のスピードを殺す事すらままならずに倒されていった。
そんなアンバーニオン達の死角で霧のカーテンが開いた。
既にレールガンのチャージを終えた人型が三体。アクプタン達のあしらいに没頭しているアンバーニオン達に照準を合わせる。
バババギュン!
「!」
赤熱化したアクプタン弾が三発、アンバーニオン オーストに迫る。
しかしアンバーニオン オーストはあえてその弾道に乗り、三体の人型に向かって行く。
着弾の瞬間、胴体の宝甲の鎧はバラけて外側に円を描くように集い、その円の中心を素通りした三発のアクプタン弾は、アンバーニオン オーストの後方で大爆発を起こした。
バラけた鎧が元の位置に戻ろうとした一瞬。横から並走してきたアンバーニオン ニーがその円の中心に飛び込み、二体のアンバーニオンは再び一つになり、宝甲が輝く一体のアンバーニオンに戻った。
「「でりゃあああっっっ!」」
そのままジャンプしたアンバーニオンは、超高速の飛び蹴りを三体の人型アクプタンに向かって当てた。
三体同時に、重ね合わせに蹴り込まれた人型アクプタン達は、バックアップ要員として後方に隠れていた更なるもう三体をも巻き込み倒れ、少々抉れて窪みになっている地面に叩き付けられた六体は纏めて大爆発を起こす。
白煙の大爆発の内部が明滅し、再び分離した二体のアンバーニオン達が元来たルートをホバー走行で戻っていく。
そんなアンバーニオン達を、いきなり吹き付けてきた雪崩の爆風のような霧がボフッと包んだ。
「!」
霧の向こうで、大ガルンシュタエンらしきシルエットがドズンドズンと走って彼らに向かって来た。シルエットは再び巨大化して、手にも巨大ハンマーを型取った氷モドキブロックが集結し再構成を終えているようであった。アクプタン達を相手にさせたのは補給の時間を稼ぐ為だったらしい。
(ヒメナッ!)
「!」
ヒメナに宇留のプランが想文で届いた。まるで自分の考えであるかのように一瞬でそのプランを認識したヒメナは了解の返事を返す。
(ええ!)
ガアアッ!
アンバーニオン オーストが一度吠えると、一瞬広がった輝く宝甲の鎧は体の中心にギャシッ!と凝集し、輝く球体となって浮かんだ。小型の太陽を思わせるそのボールを大ガルンシュタエンの胴体に向かってボレーシュートするアンバーニオン ニー。
ドコォォォッ!
太陽ボールが大ガルンシュタエンの胴体を貫くと同時に、再びジャンプしたアンバーニオン ニーが頭部付近を踏み抜ける。
「あ!」
大ガルンシュタエンの胴体にはガルンシュタエンが収まっていなかった。
霧に紛れ、襲いかかって来たのは氷モドキのパワードスーツだけだった。
「ウリュ!」
「うん!見えた!」
着地の瞬間、太陽ボールはアンバーニオン オースト形態に戻りホバー走行を始める。続いて上から降って来たアンバーニオン ニーを、アンバーニオン オーストがお姫様抱っこで受け止めると同時に、背後でパワードスーツが転倒し大爆発を起こした。
アンバーニオン オーストがスッと抱えていたアンバーニオン ニーの足下を地面に下ろす。オーストはしばらく取っていたニーの手を離す事を躊躇っていたようだが、その指先が離れるや否や二体は何事も無かったかのように並走を再開した。
「「!」」
濃霧を抜けたその視線の先。
ガルンシュタエンが二体を待ち受けていた。
破損した右腕は氷モドキのブロックで仮の腕が装着され、若干の増加装甲も纏っていた。何より氷モドキの長い尾が背後に揺らぎ、そのスタイルは怪獣を思わせる。
口部の琥珀は上下にギザギザと音を立てて割れ、琥珀の牙を見せ付けながら大口を開けてアンバーニオン達に向かって吠える。
キギョォォォォオオオン!
「ウリュ!」
「うん!」
アンバーニオン ニーがブーメランクナイを一振、アンバーニオン オーストに投げ渡す。
一振ずつの武器を持ったアンバーニオン達は、ガルンシュタエンに向かって加速する。
ガルンシュタエンの側を超高速で何度も行き来し、氷モドキのアーマーにダメージを与えて行くアンバーニオン達。ガルンシュタエンは、まるで幻でも相手にしているかのように攻撃が当たらない。
「!」
ターンして戻ろうとしたアンバーニオン ニーの目前に、地面からいきなりトゲが生えて進路を塞ぐ。だがアンバーニオン ニーは冷静にトゲの側面を掴むと、それを軸にグルンと周りターンに利用する。
(くっ!ヤツの方は装甲を失って防御力が低いハズだ!一撃でも与えられれば······)
そんなガルンの思惑が通らない原因。
ヒメナの手には、磨瑠香と共に折子から貰った龍剣山神社のお守り(ヒメナ用)が握られていた。
お守りからは機械的な折子の声で未来予測のアナウンスが流れ、攻防ナビゲーションに徹している。スピーカーの音質も、このサイズにしては上等なものだった。
バガァァァァーーン!
ガルンシュタエンの尾がアンバーニオン オーストを捉え、輝く宝甲の鎧がバラバラに弾け飛ぶ。
「ぐあっ!」
「ウリュー!」
「ふぅッ!」
ニヤリとするエシュタガ。
「ぐ···おおおおおお!」
しかしバラバラになったアンバーニオン オーストは、宇留の気合いによってガルンシュタエンを後ろから羽交い締めにするように、無理矢理人型にガチガチと再合体する。
「ヒメナーーー!」
ドギュッ!
ガルンシュタエンの右太股にブーメランクナイが深々と突き刺さる。本来ヒメナはガルンシュタエンの腹部を狙ったのであろうが、ガルンシュタエンがもがいた為に狙いは逸れたようだ。
アンバーニオン ニーはすぐにブーメランクナイを太股から引き抜き、アンバーニオン オーストと共に離脱する。
ブンッ!
真っ赤に赤熱化したガルンシュタエンの尾が、一瞬前まで彼らの居た付近を振り抜ける。
ッッココココ···!
怒りの形相のガルンシュタエンは、よろけながら歯噛みをする。
しかし容赦無く次の素通り斬りが通り抜け、遂にガルンシュタエンの操玉内に損害警報が響く。
「ば!バカな!···」
「ヒメナ!まずはあのロボットの体を壊そう!エシュタガを捕まえるんだ!」
「わかった!」
ザシュ!ガキン!ジェキン!
アンバーニオン達最後のエネルギーも残り少ない。だが宇留達は更なる加速を続ける。
ザシュ!ジェシュ!ザンッッ!
(諦めるな!油断するな!···)
エギデガイジュパーツを中心にダメージを与えて行くアンバーニオン達。既にガルンシュタエンの尾も原型を保っていない。
ギギン!ガカカカ···
「なんだと!ガルンシュタエンが···!」
「「こッ!こだーー!」」
ズガッ! シュキィーーン!
ガルンシュタエンを中心に両サイドへと斬り抜けるアンバーニオン オーストとアンバーニオン ニー。
二体はガルンシュタエンと距離を置くように離れ、合流する。
「ウリュー!」
「ヒメナッ!」
ズグァァーーーーーーーーーン!
アンバーニオン達の背後で大爆発を起こすガルンシュタエン。
出会ったアンバーニオン達は抱き合うように重なり、まるで長い時を経て再会した恋人達のようにクルクルと回転しながら輝きの中へ融けて行く。
輝きが治まると、そこには通常形態のアンバーニオンが現れ、倒れ込みたい所を耐えるように胸を張ってその場に立ち尽くしていた。
再び重なり合い、通常の操玉に戻ったアンバーニオンの内部。
抱き合ったままの宇留と半透明な琥珀のヒメナは、ガルンシュタエンの爆煙を見つめていた。
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