うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

文字の大きさ
25 / 166
第1章 中立自由都市エラリア

レッサードラゴン狩りに行くようです①

しおりを挟む
さて、外は少し曇った空模様。
僕とイスカ、そしてフーシェは星屑亭のホールに集まっていた。
そう、フーシェがパーティーに加入して1週間が経った。

うん、相変わらず僕はイスカの悩ましい寝相のおかげで少しばかり眠気が強いけれど、それ以外は体調は悪くない。

僕達は1週間、ドワーフ達から受けた依頼『レッサードラゴン亜種の討伐依頼』に向けて準備を進めてきた。

主に僕とイスカは買い物や装備の新調。
フーシェは星屑亭を離れても大丈夫なよう、レーネとカムイを業務の独り立ちをさせるために、教育を続けてきていた。

「あんたたち、今日が出発かい」

朝からミドラの放つ声は豪快だ。
ミドラの横には、すっかり給仕服が板についたレーネとカムイが立っている。

「行ってらっしゃいませ、フーシェ様」

「⋯⋯」 

落ち着いた声で主人を見送るレーネに対し、カムイは挨拶を言おうとしない。
少し膨れた顔で、床を見つめている。

「ほら、カムイも挨拶しなさい。フーシェ様の出発ですよ」

この1週間で、レーネのカムイに対するお姉さんぶりは眼を見張るものがある。
時に優しく、時に厳しく指導をする姿は、カムイのよき理解者であると共に、姉として振る舞おうとしているようにも見えた。

「カムイっ!」

レーネに促されるが、カムイは未だ口を開かない。

「ん、いい。言わされていう言葉より、その態度の方がよく分かる」  

フーシェはそう言うと、カムイの前へと歩いていく。
ここでもフーシェは給仕服だ。
曰く、給仕たるもの制服は戦闘の正装だとのこと。

「寂しい。でしょ?」

図星を当てられたのか、カムイは少しビクッとした。

「べ、別にそんなわけないし⋯⋯!」

顔を真っ赤にしていう姿は、ツンデレの波動を感じるね。

初対面が、余りにもショックの大きい出来事なだけに心配をしていたが、この1週間でカムイも大分フーシェに心を開くようになっていた。

そう思うと、表情少なく少し人族と感性が違うフーシェは、ある意味人の核心に迫ることをズバズバと言うだけに、信頼を勝ち取りやすいのかもしれなかった。

「ん。ここは、もう貴方の家。奴隷というより家族。⋯⋯お姉ちゃんの帰りを待ってて」

親指を立てるフーシェに対し、カムイは顔を赤くしながらも小さく頷いた。

「イスカ、気をつけて」

イスカに声をかけるレーネの方が年下ではあるが、エルフの血が流れているイスカと比べると、レーネの方が少しお姉さんのように見えるのだから不思議なものだ。

「えぇ、レーネもお仕事頑張って」

「ドラゴン倒したら、私にも見せるんだよ」

いや、レッサードラゴンですよ。
勝手にレベルアップさせないで下さい、ミドラさん。
それって、フラグってやつですから。

ミドラの不吉な言い間違いが的中しないことを祈りつつ、僕は皆の挨拶が済んだことを確認した。

「よし、行こう!」

「はい!」
「ん。リーダー了解」

僕の号令で出発する。
少し肌寒い風は北西から吹いてきていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ここで降ります」

エラリアからの乗り合い馬車に乗っていた僕とイスカ、そしてフーシェは目的地が近いことを確認して御者に声をかけた。

乗り合い馬車には、同じく次の町へと行こうとする3人組のパーティーがいる。途中で話をしたのだが、どうやら違う町のギルドに所属しているらしい。

「おっ、ここで降りるってことはローム大森林に挑むのか?」

パーティーのリーダー格の男性が、降りようと荷物をまとめる僕達に声をかけた。

「えぇ、少し素材を集めに来ました」

僕が返答すると、リーダー格の男性は心配そうに声をかけた。

「見たところ、ポーター一人とエルフの嬢ちゃん一人。厳しくないか?」

男は、山のような荷物をまとめるフーシェを見ると、僕達に忠告する。

「まぁ、なんの採掘か知らんが余り奥に行くんじゃねぇぞ。特に奥地にある大洞窟には近づくなよ。⋯⋯じゃあ、健闘を祈ってるぞ」

あー、すみません。その大洞窟のレッサードラゴンを倒しに行くのです。

なんてことは間違っても言えない。
フーシェが、珍しく空気を読んでくれることもナイスだ。

別れ際、彼と二人の仲間に挨拶し、御者にお金を払うと僕達は街道に降り立った。
北側はすでに深く生い茂った森林が、冒険者達を口を開けて待ち構えているかのように、深い闇を携えていた。

町中で買った地図は、現代の物と比べるまでもないような精度だが、比較的安全な踏破ルートが示されていることは有り難かった。

何もないと、どこから森に入らないといいか分からないよね。

比較的目印となりそうな所から、ローム大森林に入ることが記されていた。
さて、フーシェは小さな山のような荷物を軽々と背負うと、僕に出発を促した。

マジックポーチを持っている僕達が、何故荷物を背負っているかだって?

そう、本来は必要のない荷物を運ぶ、ポーターという仕事をフーシェは買って出ていた。
しかし、その理由を聞けば僕はなるほどと考えさせられることとなる。

「ん。荷物を持たずにダンジョンや森の奥に入るなんて自殺行為って子供でも分かる。だから、レアスキルの『収納』や『マジックアイテム』持ちだって他のパーティーに宣伝しているようなもの」

理由は、僕達がマジックアイテムを持っていることを他のパーティーに気取られないこと。

僕達は能力の高い集団ではあるが、一応ギルド内の評価はD級だ。

ワイバーン討伐については、『城壁の守護者』の仕事ということになっているからね。
そういう意味では、僕達のパーティーの実績はいまだ0なのだった。

『『回収』スキルを習得しました。今後、譲渡したレベルを回収することができます』

久しぶりにセラ様AIが、僕の脳内に響き渡る。
確か、『回収』スキルはアマラ様が言っていたスキルだ。

「二人共、森に入る前に僕の新しいスキルの確認と、二人のステータスの確認をしてもいい?」 

僕の質問に二人は頷く。

「分かりました」
「ん。ユズキに見られるなら問題ない。⋯⋯あと、イスカにも」

二人の了解を得て、僕は久しぶりに『情報共有』スキルを、まずはイスカに対して使ってみる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イスカ
種族:エルフクォーター
性別:女
年齢:25
レベル:14(『回収』可能レベル11)
職業:魔法剣士

スキル:
【初級魔法】
【魔法矢マジックアロー】
【魔力付与マジックエンチャント】
【魔力障壁】
【重攻撃ヘビースラッシュ】
【剣舞踊ソードロンド】
【加速】

『生活魔法』『薬草学』『危険察知』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれ?ワイバーン亜種を倒した割にはレベルが全く上がっていないぞ?

そのことには、イスカも気づいていたのか小首を傾げる。

そう、あんな大物を倒したのだから、レベルが上がらない分けがないのだ。

しかし、イスカはすぐにあることに気づくと、レベルの欄を指さした。

なになに?『回収』可能レベル11だって?

確か僕が『レベル譲渡アサイメント』によって、イスカに譲渡したレベルは11だ。
それを、全て『回収』できるってことは?

「あのワイバーン討伐でイスカ自身のレベルが11上がったってことかな?」

『肯定です』

脳内でセラ様AIが同意する。

『ちなみに、一回『回収』して、再度レベルを譲渡することは可能?』

僕の質問に、セラ様AIから返答が来た。

『可能です。現在対象イスカに一度に譲渡できるレベルは15です』

おっ、譲渡できるレベルの上限が15になってフーシェと同じになったぞ。

「純粋に、ワイバーンを倒したからイスカのレベルが14となったってことみたいだよ」

セラ様からの脳内アドバイスを伝えると、イスカは信じられないといった風な顔をした。

「つい、1週間前レベル3だった私がレベル14!?──はぁ、なんか信じられないです」

イスカは衝撃を受けたかのように軽く頭を押さえた。

「ん。次はフーシェを頼む」

山のような荷物を持ったまま、フーシェが催促する。
荷物をおろしなよと言ってみたが、「トレーニング」と言って荷物はおろさないようだ。

仕方なく、僕は『情報共有』のスキルをフーシェにかけてみた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

フーシェ 
種族:半魔族
性別:女
年齢:16
レベル:25
職業:双剣使い

スキル:
【一つ斬り(ひとつぎり)】
【二二斬り(ふつぎり)】
【三三斬り(みみきり)】
【四四斬り(ししぎり)】
【五五斬り(ごさつぎり)】
【六六斬り(むむきり)】
【七七斬り(ななきり)】
【八八斬り(ははぎり)】

『魔力探知』『危険察知』『気配察知』『生活魔法』『隠密』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

おぉ、なんか見やすくなっている。

『表示項目が増加したため、戦闘スキルと基礎スキルを分別して表示するよう仕様の変更を実施しました』

脳内のセラ様AI⋯⋯メチャクチャできるじゃないですか!

本家セラ様は⋯⋯うん。これからの活躍に期待ってことですよね。

ところで、僕は一つ気になることがあった。

「あれ?そういえばレベルは仲間でモンスターを倒した場合は、分配されることになるんだよね?」

僕の質問にイスカは答える。

「はい、そうです。本来近くにいる人に対しても魔素やマナは吸収されるはずです」

やっぱり、でもそうなると不思議なことがあった。

「フーシェのレベルが全く上がっていないのは、レベル25は上がりにくいものなの?」

僕の質問に、フーシェは少し暗い顔をして、首を横に振る。
そして、ポツリとこう言うのだ。

「私のレベルは5年前から上がっていない」

表情は少ないがその声は、自嘲気味に聞こえる。
諦めと悔しさが混じったフーシェの声。

キッと、フーシェは首を上げると、その少し紫色を宿した宝石のような黒い瞳で僕を真っ直ぐに見つめる。

「そして、それが私がユズキ達と一緒に行きたい理由」

フーシェはそう言うと、「行こう」と僕達を促しローム大森林へと足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...