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第1章 中立自由都市エラリア
ドラゴンを狩るようです①
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「フーシェ!」
「フーシェちゃん!」
僕とイスカが叫ぶ。
ゴムまりのようにフーシェの150に満たない小柄な身体は弾け飛ぶ。
途中フーシェの身体は2回程鍾乳石に激突したが、それでもなお威力は減殺されることなく、洞窟の壁にフーシェは激突する。
『警告、対象イスカへの『能力値譲渡』終了時間になりました。譲渡していた能力はユズキに還元されます』
脳内にセラ様AIの無情な宣告が響き渡る。
直後、フーシェの体内から青い光が飛び出し、僕の身体に戻ってくる。
僕は力が戻ってくると同時に、イスカを抱きかかえ駆け出した。
「キャッ!」
イスカが驚きの声をあげる。
イスカにかけた『能力値譲渡』が5分経って解除されたのであれば、次はフーシェへの強化が解かれるのも時間の問題だ。
僕達の距離が離れていることは望ましくない。
フーシェを吹き飛ばした何かが、視界の端に映る。
「ユズキさん!あれってレッサードラゴン!?」
僕にも、フーシェを吹き飛ばしたのは明らかに竜の種族であるように見えた。
ファイアリザードより一回り大きな土色の身体、頭部には2本の角が生え、背中にはドラゴンというイメージに容易い立派な羽。四肢には鋭い爪が並び、その身体はびっしりと鱗によって覆われていた。
「分からない!でも竜種であることは間違いなさそうだね!」
叫びつつ、僕は凹凸のある洞窟内を駆け、フーシェが激突した壁まで走り抜ける。
厄介なことに、今度は左膝を砕かれたゴーレムが上体を起こそうとし、ゆっくりと動き出そうとしていた。
「フーシェ!」
壁にめり込むように挟まっていたフーシェは、僕とイスカが近づいていることに気づいたのか、ゆっくりと身体を起こす。
「ん。ユズキのお陰で無事」
その身体は、ゴーレムの投擲した破片とレッサードラゴンからの攻撃を受けたせいで、砂埃にまみれ、身体中は無数の擦り傷が見て取れた。
「無事で良かった。『体力譲渡』」
すぐに僕はフーシェに回復をかける。
「ありがとう」
少し眼をそらしながら、フーシェは僕に感謝を伝えてくる。
フーシェを気遣ってあげたいが、驚異がなくなったわけではない。
僕はすぐにレッサードラゴンとゴーレムに向き直る。
「そんな!レッサードラゴンが2体!?」
イスカが悲鳴に近い声を上げた。
──!!
僕も、目の前の光景に眼を疑った。
ギャギャッ
右手に見えるゴーレム、左手に見えるレッサードラゴン。そして、新たにそのレッサードラゴンの後方からもう一体、同じサイズのレッサードラゴンが姿を現したのだ。
どうする!?
僕は頭を必死に回転させる。
『警告、対象フーシェへの『能力値譲渡』終了時間になりました。譲渡していた能力はユズキに還元されます』
分かってるんだよ!そんなことは!
次にかける強化を考えなければいけない。
レッサードラゴンはすぐに僕達に手を出そうとはしてこない。
ギャアッ、ギャッ!
威嚇の様な声を張り上げながら、油断なく僕達とゴーレムを牽制するように翼を広げている。
ここで、レッサードラゴンとゴーレムが僕達を集中的に狙ってこないのは有り難い。
三竦みの状態のお陰で、僕は戦略を練ることができる。
イスカは、レベルを上げたことによりスキルが増えている。
イスカもフーシェも今のレベルのままだとゴーレムにもレッサードラゴン達にも太刀打ちできない。
だが、かける強化を間違えてしまうと、先程ゴーレムに対して致命傷を与えられなかったように、下手をすれば一転窮地に陥ってしまうだろう。
「──イスカ、属性付与を僕にかけられる?フーシェ、イスカを連れて逃げ回れる?」
油断なく、ドラゴンとゴーレムから視線を逸らさないまま、僕は二人に声をかける。
二人は一瞬戸惑ったように息を詰まらせたが、すぐに同意してくれた。
「大丈夫です」
「ん。イスカには攻撃を掠らせない」
僕は小声で作戦を二人に伝える。
──
「分かりました、ユズキさん!」
「分かった」
今やゴーレムは完全に上体を起こそうとしていた。
「いくよ!『能力値譲渡』!」
青い光が二人に再び宿る。
「ユズキさん!行きます!『属性付与』!」
強化されたイスカが、フーシェが僕に新スキル『属性付与』をかけてくれる。
フォンッ!
心地よい風切り音と共に、僕の剣に緑色の風がまとわりつくように現れた。
僕がイスカにかけた強化は、『魔法力』と『防御力』。フーシェにかけたのは『敏捷力』と『防御力』だ。
今回は、イスカとフーシェにサポートに徹してもらい、レベルの高い僕が特攻を仕掛けるというものだ。
スキル攻撃がない僕にとって、僕が前線に出ることは大物相手だと余り相性は良くない。
しかし、イスカに強化してもらうことで、僕の不利点を解消しようとする狙いだ。
「いくぞ!」
僕は脚に力を貯めて跳躍する。
徐々にレベルに身体感覚が追いついて来ている僕の身体は、一瞬で手前にいるレッサードラゴンの一体の眼前へと躍り出る。
ギャオンッ!
一瞬驚いたような眼の動きをしたレッサードラゴンに隙を与えない。
「はあっ!」
僕は剣を下段から斬り上げるように振るう。
ヒュオンッ!!
風を纏った一撃は、剣の切っ先を2メートル程延長させた。
僕の手には、軽くバターにナイフを押し当てる様な感覚が伝わる。
斬れる!
確信を持って振り抜く。ズイとバターにナイフをあてがうような感覚と共にレッサードラゴンの首が吹き飛んだ。
ドサッ!
2メートルに満たない太さの首は両断されると、力なく地面へと転がり落ちた。
僕は両断されたばかりの、まだ暴れ狂うレッサードラゴンの身体から離れるように距離を取る。
「やった!」
「ナイス」
女の子二人の喜びの声が聞こえるが、次はもう一体のレッサードラゴンだ。
でも、何かおかしい。
もう一体へと距離を詰めようとするが、僕の心の中にはざわざわとした不安な気持ちが渦巻いていた。
先程、レッサードラゴンの首を斬った時の違和感を僕は思い出す。
ドワーフのオムニが話していたこと。
それは、レッサードラゴン級であれば国1つが対処するレベルであること。
だけど、どう考えても今戦っているレッサードラゴンは、先日倒したワイバーン亜種より強いとは思えなかった。
そう、驚異としてはワイバーン亜種の方が強そうに思えたからだ。
だが、この戦っている相手は間違いなく竜種だ。
他にも同じような竜種がいるのか?
「ユズキさん!」
イスカの声に僕は我に返る。
目の前には、頭部の前面に魔法術式を展開したレッサードラゴンがいる。
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!
洞窟の床が隆起し針のように変化すると、僕を突き上げんと真っ直ぐに向かってくる。
「はっ!」
僕は風を纏った剣で、迫りくる土柱を斬り伏せる。
レッサードラゴンは僕が土魔法をなぎ倒しながら真っ直ぐに向かってくることを知ると、大きな翼を広げて離脱するために力強く羽ばたいた。
「逃げるなよ!」
僕は眼前に迫る土柱を躱すと、地面に落ちていた鍾乳洞の石片を拾い上げると、レッサードラゴン向けて投げつけた。
命中率まで極限に高められた僕の一投は、唸りを上げてレッサードラゴンへと向かう。
ヒュボッ!
石片は大砲の砲丸のように空を切り、レッサードラゴンの左の翼の根本を撃ち抜いた。
ギャオオッ!
苦悶の声を上げて、レッサードラゴンは地面へと力なく降り立つ。
怒りの声を上げるレッサードラゴンの眼前に僕は迫ると、振り下ろされた爪の一撃を、剣で斬り落とした。
「いくぞ!」
僕は鋭く息を吐くと、レッサードラゴンの首を斬りつける。
先程と同じように風を纏った一撃は、レッサードラゴンの首をバターのように両断した。
ゴトンッ
瞳孔が見開かれたままレッサードラゴンの首が地面へと転がり落ちる。
倒せた!
その気持ちで、少しだけ心が軽くなる。
これで振り出しだ。そんな思いも一瞬。
──!!
危ない!
突然、光が煌めいたかと思うと僕を1メートル程の光の束が急襲した。
ギリギリの所で躱し、攻撃の主を見る。
お前、そんな攻撃できるんだ!
見ると、ゴーレムの腕には魔法術式が組まれ、そこから迸る光が僕を目掛けて追尾してくる。
ジュオッと洞窟内が焼かれる度にヒカリゴケとヒカリキノコが焼かれ、洞窟内の光源が小さくなる。
「早めに倒さなきゃ!」
攻撃を避けながら、僕はどうやってゴーレムを倒そうかと逡巡する。
しかし、手持ちの攻撃にはゴーレムの巨体のどこかにある核を確実に潰す効果的な方法を考えつくことはできなかった。
ドスンッ
ドスンッ!
ドスンッ!!
突如、ゴーレムの足音とは異なる重量感を纏った足音が近づいてくるのが聞こえる。
それは、ゴーレムの足音のように緩慢とした動きではなく、かといってレッサードラゴンのように軽い足取りでもない。
そう、何かに怒り狂うような足音は、最早それだけで大地を揺るがす地震のようだ。
──オオオッ!
まだ距離は離れているのに、聞いた者が身震いするような遠吠えが聞こえた。
「逃げて!」
「逃げて!」
イスカどころではない。
フーシェの悲痛な声が聞こえたと思った瞬間。
文字通り、ゴーレムの上体は洞窟奥から放たれた一条の光によって融解することとなった。
そう、おかしいと思ったんだ。
先程のパーティーが、レッサードラゴンと遭遇し生き残ったということが。
ワイバーンよりも強大な敵と遭遇し、全滅を免れて帰還できることがあるならば、それは奇跡だと。
そして、2体いたレッサードラゴン。
対峙して分かったその驚異は明らかに、ワイバーンの上位種とは考えられなかった。
だとすると、結論は何か?
あぁ。
最悪なことはいつだって起こるものだ。
だって、僕が倒したのはレッサードラゴンではなかった。
そう、クリスタルゴーレムも霞む程の巨体。
50メートルはゆうに超える大きさの、ドラゴンの姿が僕の視界に映った。
あぁ、くそ。
そこには我が子を殺され、怒り狂ったドラゴンの姿がそこにはあった。
「フーシェちゃん!」
僕とイスカが叫ぶ。
ゴムまりのようにフーシェの150に満たない小柄な身体は弾け飛ぶ。
途中フーシェの身体は2回程鍾乳石に激突したが、それでもなお威力は減殺されることなく、洞窟の壁にフーシェは激突する。
『警告、対象イスカへの『能力値譲渡』終了時間になりました。譲渡していた能力はユズキに還元されます』
脳内にセラ様AIの無情な宣告が響き渡る。
直後、フーシェの体内から青い光が飛び出し、僕の身体に戻ってくる。
僕は力が戻ってくると同時に、イスカを抱きかかえ駆け出した。
「キャッ!」
イスカが驚きの声をあげる。
イスカにかけた『能力値譲渡』が5分経って解除されたのであれば、次はフーシェへの強化が解かれるのも時間の問題だ。
僕達の距離が離れていることは望ましくない。
フーシェを吹き飛ばした何かが、視界の端に映る。
「ユズキさん!あれってレッサードラゴン!?」
僕にも、フーシェを吹き飛ばしたのは明らかに竜の種族であるように見えた。
ファイアリザードより一回り大きな土色の身体、頭部には2本の角が生え、背中にはドラゴンというイメージに容易い立派な羽。四肢には鋭い爪が並び、その身体はびっしりと鱗によって覆われていた。
「分からない!でも竜種であることは間違いなさそうだね!」
叫びつつ、僕は凹凸のある洞窟内を駆け、フーシェが激突した壁まで走り抜ける。
厄介なことに、今度は左膝を砕かれたゴーレムが上体を起こそうとし、ゆっくりと動き出そうとしていた。
「フーシェ!」
壁にめり込むように挟まっていたフーシェは、僕とイスカが近づいていることに気づいたのか、ゆっくりと身体を起こす。
「ん。ユズキのお陰で無事」
その身体は、ゴーレムの投擲した破片とレッサードラゴンからの攻撃を受けたせいで、砂埃にまみれ、身体中は無数の擦り傷が見て取れた。
「無事で良かった。『体力譲渡』」
すぐに僕はフーシェに回復をかける。
「ありがとう」
少し眼をそらしながら、フーシェは僕に感謝を伝えてくる。
フーシェを気遣ってあげたいが、驚異がなくなったわけではない。
僕はすぐにレッサードラゴンとゴーレムに向き直る。
「そんな!レッサードラゴンが2体!?」
イスカが悲鳴に近い声を上げた。
──!!
僕も、目の前の光景に眼を疑った。
ギャギャッ
右手に見えるゴーレム、左手に見えるレッサードラゴン。そして、新たにそのレッサードラゴンの後方からもう一体、同じサイズのレッサードラゴンが姿を現したのだ。
どうする!?
僕は頭を必死に回転させる。
『警告、対象フーシェへの『能力値譲渡』終了時間になりました。譲渡していた能力はユズキに還元されます』
分かってるんだよ!そんなことは!
次にかける強化を考えなければいけない。
レッサードラゴンはすぐに僕達に手を出そうとはしてこない。
ギャアッ、ギャッ!
威嚇の様な声を張り上げながら、油断なく僕達とゴーレムを牽制するように翼を広げている。
ここで、レッサードラゴンとゴーレムが僕達を集中的に狙ってこないのは有り難い。
三竦みの状態のお陰で、僕は戦略を練ることができる。
イスカは、レベルを上げたことによりスキルが増えている。
イスカもフーシェも今のレベルのままだとゴーレムにもレッサードラゴン達にも太刀打ちできない。
だが、かける強化を間違えてしまうと、先程ゴーレムに対して致命傷を与えられなかったように、下手をすれば一転窮地に陥ってしまうだろう。
「──イスカ、属性付与を僕にかけられる?フーシェ、イスカを連れて逃げ回れる?」
油断なく、ドラゴンとゴーレムから視線を逸らさないまま、僕は二人に声をかける。
二人は一瞬戸惑ったように息を詰まらせたが、すぐに同意してくれた。
「大丈夫です」
「ん。イスカには攻撃を掠らせない」
僕は小声で作戦を二人に伝える。
──
「分かりました、ユズキさん!」
「分かった」
今やゴーレムは完全に上体を起こそうとしていた。
「いくよ!『能力値譲渡』!」
青い光が二人に再び宿る。
「ユズキさん!行きます!『属性付与』!」
強化されたイスカが、フーシェが僕に新スキル『属性付与』をかけてくれる。
フォンッ!
心地よい風切り音と共に、僕の剣に緑色の風がまとわりつくように現れた。
僕がイスカにかけた強化は、『魔法力』と『防御力』。フーシェにかけたのは『敏捷力』と『防御力』だ。
今回は、イスカとフーシェにサポートに徹してもらい、レベルの高い僕が特攻を仕掛けるというものだ。
スキル攻撃がない僕にとって、僕が前線に出ることは大物相手だと余り相性は良くない。
しかし、イスカに強化してもらうことで、僕の不利点を解消しようとする狙いだ。
「いくぞ!」
僕は脚に力を貯めて跳躍する。
徐々にレベルに身体感覚が追いついて来ている僕の身体は、一瞬で手前にいるレッサードラゴンの一体の眼前へと躍り出る。
ギャオンッ!
一瞬驚いたような眼の動きをしたレッサードラゴンに隙を与えない。
「はあっ!」
僕は剣を下段から斬り上げるように振るう。
ヒュオンッ!!
風を纏った一撃は、剣の切っ先を2メートル程延長させた。
僕の手には、軽くバターにナイフを押し当てる様な感覚が伝わる。
斬れる!
確信を持って振り抜く。ズイとバターにナイフをあてがうような感覚と共にレッサードラゴンの首が吹き飛んだ。
ドサッ!
2メートルに満たない太さの首は両断されると、力なく地面へと転がり落ちた。
僕は両断されたばかりの、まだ暴れ狂うレッサードラゴンの身体から離れるように距離を取る。
「やった!」
「ナイス」
女の子二人の喜びの声が聞こえるが、次はもう一体のレッサードラゴンだ。
でも、何かおかしい。
もう一体へと距離を詰めようとするが、僕の心の中にはざわざわとした不安な気持ちが渦巻いていた。
先程、レッサードラゴンの首を斬った時の違和感を僕は思い出す。
ドワーフのオムニが話していたこと。
それは、レッサードラゴン級であれば国1つが対処するレベルであること。
だけど、どう考えても今戦っているレッサードラゴンは、先日倒したワイバーン亜種より強いとは思えなかった。
そう、驚異としてはワイバーン亜種の方が強そうに思えたからだ。
だが、この戦っている相手は間違いなく竜種だ。
他にも同じような竜種がいるのか?
「ユズキさん!」
イスカの声に僕は我に返る。
目の前には、頭部の前面に魔法術式を展開したレッサードラゴンがいる。
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!
洞窟の床が隆起し針のように変化すると、僕を突き上げんと真っ直ぐに向かってくる。
「はっ!」
僕は風を纏った剣で、迫りくる土柱を斬り伏せる。
レッサードラゴンは僕が土魔法をなぎ倒しながら真っ直ぐに向かってくることを知ると、大きな翼を広げて離脱するために力強く羽ばたいた。
「逃げるなよ!」
僕は眼前に迫る土柱を躱すと、地面に落ちていた鍾乳洞の石片を拾い上げると、レッサードラゴン向けて投げつけた。
命中率まで極限に高められた僕の一投は、唸りを上げてレッサードラゴンへと向かう。
ヒュボッ!
石片は大砲の砲丸のように空を切り、レッサードラゴンの左の翼の根本を撃ち抜いた。
ギャオオッ!
苦悶の声を上げて、レッサードラゴンは地面へと力なく降り立つ。
怒りの声を上げるレッサードラゴンの眼前に僕は迫ると、振り下ろされた爪の一撃を、剣で斬り落とした。
「いくぞ!」
僕は鋭く息を吐くと、レッサードラゴンの首を斬りつける。
先程と同じように風を纏った一撃は、レッサードラゴンの首をバターのように両断した。
ゴトンッ
瞳孔が見開かれたままレッサードラゴンの首が地面へと転がり落ちる。
倒せた!
その気持ちで、少しだけ心が軽くなる。
これで振り出しだ。そんな思いも一瞬。
──!!
危ない!
突然、光が煌めいたかと思うと僕を1メートル程の光の束が急襲した。
ギリギリの所で躱し、攻撃の主を見る。
お前、そんな攻撃できるんだ!
見ると、ゴーレムの腕には魔法術式が組まれ、そこから迸る光が僕を目掛けて追尾してくる。
ジュオッと洞窟内が焼かれる度にヒカリゴケとヒカリキノコが焼かれ、洞窟内の光源が小さくなる。
「早めに倒さなきゃ!」
攻撃を避けながら、僕はどうやってゴーレムを倒そうかと逡巡する。
しかし、手持ちの攻撃にはゴーレムの巨体のどこかにある核を確実に潰す効果的な方法を考えつくことはできなかった。
ドスンッ
ドスンッ!
ドスンッ!!
突如、ゴーレムの足音とは異なる重量感を纏った足音が近づいてくるのが聞こえる。
それは、ゴーレムの足音のように緩慢とした動きではなく、かといってレッサードラゴンのように軽い足取りでもない。
そう、何かに怒り狂うような足音は、最早それだけで大地を揺るがす地震のようだ。
──オオオッ!
まだ距離は離れているのに、聞いた者が身震いするような遠吠えが聞こえた。
「逃げて!」
「逃げて!」
イスカどころではない。
フーシェの悲痛な声が聞こえたと思った瞬間。
文字通り、ゴーレムの上体は洞窟奥から放たれた一条の光によって融解することとなった。
そう、おかしいと思ったんだ。
先程のパーティーが、レッサードラゴンと遭遇し生き残ったということが。
ワイバーンよりも強大な敵と遭遇し、全滅を免れて帰還できることがあるならば、それは奇跡だと。
そして、2体いたレッサードラゴン。
対峙して分かったその驚異は明らかに、ワイバーンの上位種とは考えられなかった。
だとすると、結論は何か?
あぁ。
最悪なことはいつだって起こるものだ。
だって、僕が倒したのはレッサードラゴンではなかった。
そう、クリスタルゴーレムも霞む程の巨体。
50メートルはゆうに超える大きさの、ドラゴンの姿が僕の視界に映った。
あぁ、くそ。
そこには我が子を殺され、怒り狂ったドラゴンの姿がそこにはあった。
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