うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第1章 中立自由都市エラリア

レッサードラゴン(?)を狩るようです②

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絶望というものは、このような感覚なのだろうか。

フーシェの言っていた、「ヤバいやつ」と呼ばれる者の姿がそこにはあった。
見上げれば、壁──いや、小高い山が動いているようだ。

クリスタルゴーレム、深層に入る前にフーシェが話していた存在が眼前に現れる。
イスカの『危険察知』に反応しなかった理由は何となく分かってしまった。

そう、

壁として存在していたゴーレムに対し、イスカの『危険察知』は働かなかった。そして、もともと壁と同種の素材で構成されている身体はモンスター特有の臭いもなく、フーシェの嗅覚に反応することもない。
しかし、動きだしてしまったその巨体は、もはや圧倒的な質量をもって洞窟内を支配した。

「だめ。無理」

呆然とするフーシェの手を僕は掴む。

「──!!」 

驚いたフーシェに僕は叫ぶ。

「大丈夫!僕を信じろ!!」

何も大丈夫な要素はない。
現れた姿を見るだけで絶望することがこの世にはあるのか。
そんな思いは確かに僕の胸中をよぎった。

だけど、ここにいる僕だって敵から見れば絶望でしかない。
この世界のレベルの上限は99。対する僕は全力で9999なんだ!

心の中で自分を鼓舞する。

「イスカ!『魔法矢マジックアロー』最大出力!!」

「え、──はいっ!!」

一瞬の戸惑いの後に瞬時に僕の意図をイスカは理解してくれた。
僕はマジックポーチから購入していた弓を取り出すと、イスカに手渡す。

──オオオンッ

慟哭のような声を響かせながら、ゴーレムが僕たちへと向きを変える。
まるでのっぺらぼうのような頭部、身体の前面には洞窟内のヒカリキノコとヒカリゴケが付着しており、薄赤く光っている。
肩や下肢の関節と思われる場所には、クリスタルゴーレムという名の所以なのかキラキラとした水晶のような鉱物が挟まっていた。
ゴーレムは、体内がどのような構成をされているのか、まるで質量を無視した機敏な動きで僕たちへと歩み始める。

距離は約100メートル。

「準備いいです!」

イスカの声に僕は1日に3回しか使えない『能力値譲渡』を使うことを決める。
しかも、使える時間は約5分だ。

「いくよ!攻撃力と命中率を最大限に!『能力値譲渡アサイメント!!』」

青白い力の奔流が、イスカの胸部を貫く。

「そして『魔力譲渡アサイメント』!!」

魔法矢マジックアロー』を弓に番つがえるイスカに僕はレベル上限99分の魔力を譲渡する。
僕の右手から放たれた白い光がイスカと繋がると、イスカはその力の強さに少し身もだえた。

「くふっ──」

魔力酔いはしないでね!!

「撃って!!」

地響きを立てながら、助走を始めようとするゴーレムに対し、ワイバーンを打ち抜いた時よりも強力な一撃がイスカの弓から放たれた。

イスカの一撃は、ビリビリと洞窟内の大気を震わせながら、薄赤く染まる洞窟内をフラッシュライトのように白い閃光に染めると確実にゴーレムの胸部を貫いた。

3メートル程の巨大な穴がゴーレムの胸部に形成される。

一瞬、ゴーレムは自身の状態を確認するように立ち止まるが、それは一瞬のことだった。
まるで何事もなかったかのようにゴーレムは再び動き出す。

「第2射準備!!」

僕の言葉に、再びイスカが『魔法矢マジックアロー』を準備する。

ゴーレムは動き出す。距離約70メートル!

「『魔力譲渡アサイメント』!!」

さすがに、2回連続の最大魔力譲渡は、僕の体内から力が抜けていく感覚を与えてくる。

「発射します」

命中率の上昇に伴い、冷静さも極限まで高められたイスカが、再び全力の『魔法矢マジックアロー』をゴーレムに向かって解き放つ。

再び、洞窟内を眩いばかりの閃光が疾り、その一撃はゴーレムの直径5メートルはあるであろう頭部の中心を打ち抜いた。

5メートルの頭部に直径3メートルの穴が開く。
本来ならば、いや有機物ならばその一撃でほとんどの敵が絶命するのだろう。
だが、今度はゴーレムは歩みを止めることはなかった。

ドーナツ状と化した頭部を気にすることなく直進してくる画は間違いなくホラーだ。


ドゴォッ!
ドゴォッ!


巨体が洞窟を踏みしめる程にその距離は近くなり、僕たちは立っていられないほどの衝撃を地面から受けてしまい転びそうになる。

──まずい!!

イスカは何も失敗はしていない。
しかし、実際にゴーレムが歩みを止めていないという点で作戦は失敗だ。

立ち上がることができなくなる前に、僕はイスカとフーシェを抱きかかえると、跳躍する。
本気で抱えた僕にとって、イスカとフーシェの体は羽のように軽く重さを感じさせない。

「キャァッ!」
「スリリング……」 

余りの速さに2人が意識を失わないよう、ギリギリのスピードで僕はゴーレムとの距離を取る。

いったい頭部と胸部に巨大な穴を作られ、なぜゴーレムは倒れないのか?
その心の問いに答えるように、風によって乱れる髪を抑えながらイスカが叫ぶ。

「核を狙ったのに、頭にも胸にもないなんて!」

そう、イスカは確実に生物が相手であれば、確実に急所足りえる場所を的確に打ち抜いてくれていた。
だが、そこには核はなかったのだ。

だから、ゴーレムが足を止めることはない。
むしろ、自身の身体が傷ついたことに怒るように僕たちを追い求めて巨腕を振り回して暴れまわる。
何とか死角へと移動した僕は、ゴーレムが僕たちを見つける僅かな時間でできる次の一手を考えなければいけない。

膝の関節を狙っていれば、ゴーレムの機動性を奪うことはできたか?

後悔の念が頭をよぎるが、失敗を振り返る余裕はなかった。
すぐさま、ゴーレムは僕たちを見つけると、今度は天井から垂れ下がる無数の鍾乳石を、その腕で破壊し始めた。

バギャッッ!!
ドゴッ!!

洞窟内に破壊の音が響き渡る。

──!!

次の瞬間、ゴーレムは破壊した破片をおもむろにショベルカーのような手で掴み取ると大きく振りかぶった。

「危ない!!」

悲鳴のようなイスカの声。

「『能力値譲渡アサイメント!!』」

僕は、まだ『能力値譲渡』を使用していないフーシェに対し、攻撃力と防御力を最大限譲渡する。

ゴーレムの狙いは、一目で分かる。手に持った鍾乳石の破片で僕たちにショットガンよろしく投げてくるつもりなのだろう。
僕はイスカに『能力値譲渡』をかけてしまっているため、重ねがけを行うことができない。

「フーシェ信じて!レベル99相当の攻撃力と防御力を5分間だけかけた!」

僕は、ゴーレムが手にした破片を投げつける寸前で叫び、イスカをゴーレムの攻撃から守るようにしっかりと胸に抱きしめ、背中をゴーレムへと向ける。
そして次に、防御力を極限まで高めたフーシェを守るために手を伸ばしたのだが──
僕の手は虚しく空を切った。

「フーシェ!」

悲痛な声で僕は叫ぶ。

「ん。フーシェはユズキを信じてる。だから、このまま突っ込む」

そう言い放ち、ゴーレムへとフーシェが駆け出した次の瞬間──

ヒュゴッ!!

散弾と化した破片が、洞窟内に破壊の嵐を巻き起こした。



キュドッ!!



まるで隕石が降ってきたかのような衝撃。

「キャアッ!!」

僕の腕の中イスカが耳を押さえて小さくなる。

ドキャッ!
チュインッ!

僕の背中には、大小様々な石の破片がふりそそぐ。
本来なら、その衝撃で人間の身体なんてミンチのように穴が空くだろう。

だが、レベル9984の僕にとって、ゴーレムの攻撃は衝撃を感じるが、僕の身体にダメージを与えることはできない。

砂埃が舞う中で、僕は必死にイスカを胸に抱きながら、フーシェの姿を見失うまいと振り返る。

⋯⋯いた!

荒れ狂う石と砂の暴力の中、フーシェは立ち止まることなくゴーレムに向けて突き進む。

細かな破片には目もくれず、大きな破片は攻撃力の増した双剣で叩き落としながらフーシェは一直線にゴーレムへと駆けて行く。
十分な助走を得たフーシェは、勢い良く洞窟の床を蹴ると跳躍した。

──ダンッ!!

矢のように飛んだフーシェは、ゴーレムの膝関節をめがけて飛び込んで行く。

「『ハハ斬りははぎり』」

吹きすさぶ風の中、フーシェの言葉が届いたかと思うと、スキルは双剣から放たれ、砂煙を切り裂いた。

ガキュンッ!!

金属が切り裂かれるような音が洞窟内に響いたかと思うと、ゴーレムの左膝関節にヒビが入る。
さすがのレベル50超え、防御力に特化した身体は、ワイバーンをも細切れにした一撃でも耐えうることができていた。

「ん。大丈夫か」

手応えを感じたのか、フーシェはクルクルと空中を舞うと地面へと着地する。

その身体には、あちこちに擦り傷が見え、うっすらと血が滲んでいた。

ゴ、ゴッ

すぐにゴーレムの関節は、自重の負荷に耐えられなくなったのか膝にヒビが入り始める。

「も一つ、『一つ斬りひとつぎり』」

フーシェが渾身の一撃を込めた横薙ぎの一撃は、衝撃波を巻き起こしながら、止めとばかりにゴーレムの膝を急襲した。

バギャッ!

ヒビにより限界に達していた膝が、完全に崩壊する。
それにより、ゆっくりと、そして確実にゴーレムは態勢を崩し、失った左膝から着くように倒れ込む。
まるでビルの倒壊だ。
堅牢な身体は、ビルの倒壊のように崩れ落ちることはないが、形を保ったまま崩れ落ちるのだからその圧と衝撃は凄まじいものだ。

「くっ!」
「キャアッ!」

僕とイスカは姿勢を低くし、フーシェも衝撃に飲み込まれないように岩陰に隠れる。

爆風のような衝撃の後、まだ砂埃が舞う中、フーシェは立ち上がる。

「ん。やった」

ブイとピースサインを作ったフーシェが僕達に笑いかける。

良かった。

そう安堵の気持ちが湧き上がった刹那──

「フーシェちゃん!左!!」

腕の中のイスカが突然青ざめた顔で叫んだ。

「え──」

フーシェがイスカに視線を転じようとした瞬間、何者かの急襲を受け、フーシェの小柄な身体はボールのように弾け飛んだ。
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