うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第3章 城壁都市ウォール

【幕間】イスカの気持ち②

「寝てる隙にき、キスをしようなんてはしたないわよ」

 突然話かけられた声で背中がピーンとなってしまった私はギチギチと壊れかけの人形のように、ゆっくりと振り返った。

 呆れ半分といった表情のリズさんは、腰に手を当てて椅子に座る私を見下ろしていた。

 まさか、全く気付かれずに入ってきたのかと私はビックリしたが、すぐにそんな訳はないと、その考えを否定した。
 いくらリズさんが認識阻害の魔法をかけることに長けていたとしても、中に私がいることが分かったなら、わざわざ魔法をかける必要はなかったのだ。
 となると、答えは一つしかない。

「まさか──リズさん、初めから中にいました?」

 私は顔が火を吹きそうな程に赤くして、リズさんを睨みつけた。
 これは、一部始終を見られていたに違いない。
 思わず立ち上がった私は、顔を真っ赤にしてリズさんを問い詰める。

「私が入ってくるって分かって、認識阻害魔法を使ったでしょう!?リズさんの方こそ、一人で何をしてたんですか!」

 私が詰め寄ると、リズさんは所在なさげに瞳を宙に浮かした。

「あーっ!眼をそらしましたよね!」

 私の詰問に、眼を泳がせていたリズさんは、少し頬をかきながら口を開いた。

「り、理由は貴方と一緒よ⋯⋯」

 い、一緒?
 ということは、ゆ、ユズキさんと

「キスしようと?」
「違うわよ!お見舞いよお見舞い!」

 私の言葉を遮るように、リズさんは顔を真っ赤にするとそう言い放った。

「き、キスは⋯⋯ユズキとならしたいけど⋯⋯、しないわよ」

「どうしてですか?」

 認識阻害の魔法を使っておきながら言われると説得力は薄い。
 しかし、リズさんは少し顔をそらしながらポツリと呟いた。

「何故って⋯⋯イスカ、貴女に悪いからよ」

 そう言うと、リズさんは再び私の方を見ると苦笑した。

「これでも、魔族の中でも貴族よ。礼を失することはしないわ」

 うーん、本当だろうか?

「あー、もう!私がユズキに好意を持っているのは認めるわよ!でも、無理に奪って嫌われたら意味がないじゃない。これが、魔族なら一夫多妻の種族は多いし、人族でも貴族なら妻を多く持つことも普通だけどね」

 リズさんは腕を組むと、やれやれと言った風に首を横に振る。

「じゃあ、もしユズキさんがオーケーしたらどうなるのです?」

 私の少し意地悪な質問に、リズさんは笑みを浮かべた。

「勿論、その時はフーシェと一緒に彼女に立候補するわ。それも、堂々とね。──でも、まぁそれをもってイスカの反感を買うのだったら、立候補はしないわよ」

「私、『魔王』って、もっと自己中心的な人が──いえ、リズさんがそうとは思ってはいないのですが、色々と気に食わないことは潰していくってイメージがありました」

 かなり失礼な物言いだったかもしれない。
 そう思ったが、リズさんから返ってきたのは苦笑だった。

「まぁ、あながち『魔王』というものは、その認識で間違ってはいないわよ。──でも、私。もう疲れっちゃったのかも──嫌われることに」

 リズさんは、ポツリと呟くと暗い海が広がる窓の外へと視線を移した。

「理由を聞いてもいいですか?」

 聞いてほしいのかな?

 私はリズさんの横顔が見せる寂しそうな表情から、なんとなくそう感じた。
 リズさんは少し困ったような表情を浮かべると、私の方へと向き直る。

「──レーベンを統べる魔王の評価。聞いちゃったのよ」

 自虐的な笑みを浮かべたリズさんの顔は、確かに疲労感。
 いや、少しやつれているようにも見える。

「よく⋯⋯なかったのですか?」

 私の問いに、コクリとリズさんは頷く。
 その、頭を上げた瞳には大粒の涙が浮かんでいた。

「私──、結構頑張ってなのになぁ。レグナント号の船員達の話を聞いたら、レーベンの魔王。リズ=フォルティナ・ヴァレンタインは、レーベンの暮らしを豊かにするばかりか、城の中に閉じこもって贅沢三昧をしている。我々民のことを歯牙にもかけないクソ魔王だって──」

 リズさんの瞳から自然と溢れ落ちる涙を見て、私は少し狼狽えてしまった。
 いつもの、気丈な姿からは想像できない程の憔悴した顔から溢れる涙は、留まることをしらない。

「でも!私の知っているリズさんは、そんなことは絶対にしないです!それは、この数日一緒にいる私にだって証明できますよ!」

 バンッと私は自分の胸を強く叩いて力説する。
 魔族でありながら、トナミカの冒険者達の治療に奔走している姿を私は知っている。
 その看病する姿からは、敵であるはずの人族へのわだかまりを感じることはなかった。

「そんな!そんな評価なんて──まるで、誰かに──」

 その先を告げようとして、私はハッとした。
 しかし、その先の言葉はリズさん自身が一番分かっているようだ。

「フフッ、そうよ。嵌められていたってこと。私は、ドミナントのお父様の為、レーベンの民のためと思ってやっていたことは、何も領民に還元なんてされてなかった。それどころか、領内を見ることも放棄した怠惰な魔王として悪評に替えて流されていたの」

 私には、次の言葉を続けることができないでいた。
 でも、もし私がユズキさんに裏切られることがあったとしたら、きっと今のリズさんの様な気持ちになるのだろうか?

「道化よ」

 クシャクシャになった顔を、リズさんは躊躇いもなく袖でこすり上げた。

「──さてと、一通り泣いたら少しスッキリしたわ。とりあえず、私を貶めた奴の目星はついてるから、レーベンに戻ったら。その動向も調べなきゃね。あと、裏は⋯⋯きっとお父様よね」

 リズさんは、怒りと恥ずかしさ、そこに悲しみを混ぜ合わせた表情を浮かべる。

「きっと、私がレーベンで道化の魔王にするように仕向けたのはお父様。──おかしいわよね、そう断言できるはずなのに⋯⋯それでも、まだ認めてもらいたいって心が私には残っている。200歳を超えてもまだまだ、親離れできないお子様ってことなのかしら?」

 私は、スッと立ち上がると、そっとリズさんの肩を抱き寄せた。

 同性でも憧れるくらい、甘く素敵な香りが私の鼻をくすぐった。

「──いいんです、それが家族なんですから。私はもう父さんも母さんも返ってきません。だから、例えどんな親であっても、この世界にいてくれるってだけで、それはきっと、リズさんの心がお父さんに会いたがっているんですよ」

 まだ少し、涙の筋道が頬に残るリズさんは、私の胸に軽く顔を押し当てると、小さく「ありがとう」と呟いた。



 ──トン、トン

 !!

 突如聞こえてきた、この部屋に近づいてくる足音に、私とリズさんは思わず顔を見合わせた。

「だ、誰か来る!」
「どうします?」

 後で、思い返せば、ここで隠れることなんてなかった。
 だけど、片や人目を盗んでお見舞いに来ていた私と、私が来たことで魔法を使って隠れていたリズさんだ。

 だから、どういう訳だか私達二人は
『隠れなければいけない!!』
 という、思考に支配されてしまっていた。

 どうする?どうする?

 私とリズさんの慌てた視線が交錯する。

「あっ!」

私は小さい声を上げて、ユズキさんの布団を指差した。
 絶対に隠れられる訳がないのに、何故だかそれが最善手のように思えてしまったからだ。
 無論同じように、泣き腫らして目を赤くしていたリズさんも焦っており、建設的な意見が出ることもなく、力強く頷いたリズさんの顔に同意を得たとばかりに、私はユズキさんの布団をはぐと、ユズキさんの右側に。リズさんは、左側へと身を滑り込ませた。


 ふぅ、これで安心安心。
 ユズキさんの熱が籠もる布団の中で、私はホッと一息をつき。

 ──!!

 我に返ってしまった。

 こ、これじゃあ弁解もできない!
 病人に無理矢理添い寝をしにきた、残念な彼女といった絵面じゃない。
 慌てたが、カチャリとドアを開く音が聞こえて、私は布団から出ることもできなくなってしまう。

 ──うう、終わった⋯⋯

 そんな思いが脳裏に駆け巡る。

「さて、ユズキ様?」

 聞き覚えのある声。ローガンさんだ!
 しかし、傍から見ればこんもりとした布団。絶対にバレるに違いない。
 覚悟を決めよう。

 そう思い、パーテーションが開かれる音と共に私はギュッとかけられる言葉を待った。

 しかし、声はかけられることがなかった。

「ユズキ様、ユズキ様⋯⋯やはり、目を覚ましておられませんな」

 明らかに、私達のベッドが見えているはずなのに、そのことを指摘する声は聞こえてこなかった。

 違和感に気付いたが、すぐにそれが、リズさんの認識阻害魔法のお陰だと私は理解した。

「さて、意識はまだ戻りませぬか。それでは仕方ありません、尿を取りますかな」

 ローガンさんの言葉に私は絶句する。
 え!?
 私とリズさんがいるよ!?

 しかし、当のローガンさんは完全にリズさんの魔法の影響下に入っているのか、動きを止めることはない、

 優しく、ユズキさんの布団をめくってしまった。

「──!!」

 もう、完全に私とリズさんの身体はさらけ出されてしまっている。
 ユズキさんの身体ごしに、リズさんの左眼だけが見て取れた。

『絶対に動いちゃダメ』

 何故だか、その視線だけで私はリズさんの言いたいことが分かってしまった。
 頷くこともできないため、私も瞳で『了解』と返す。

 石の様に固まった私達をよそに、ローガンさんは尿瓶を取り出すと手慣れた手付きで、ユズキさんの下衣に手をかける。
 鮮やかな手付きで、リズさんにぶつかることもなく、ローガンさんはあっという間にユズキさんの下衣を脱ぎ去ってしまった。
 これで、ユズキさんの大事な所を隠しているのは下着1枚しかない。

『なんで眼を開けているんですか!』

 瞳で、私はリズさんを睨みつける。
 いや、私だって気にならないことはない。
 でも!さすがに意識のない状態の彼氏の陰部をみることはどうなのだろう?

『イスカ違うわ、これは医療行為を目撃しているだけなのよ』

 何故か、リズさんの瞳からそこまでの意思が読み取れる。
 いや、これは複雑な術式が込められた念話だ!
 私は、先程からのやり取りがリズさんからの念話の上で成り立っていることに驚愕する。

『何よ、認識阻害魔法を使ってまで、バレないようにしたの。せっかくだから見たくないの?』 

『気にはなります!でも、こんな間近で見ることもないでしょう?』

『そういう、プレイもあるわよ』

 不毛な念話が無言でやり取りされる中、ついにローガンさんがユズキさんの下着に手をかけた。

 ──!

 言葉なくして、思わず見つめてしまった。
 ついに、その下着が下ろされる──

「おっと、そうでした。カテーテルも準備しとかなくては。えーっと」

 すんでの所で、ローガンさんが物品の準備を思い出したのか、下着を下げようとした手を止めて後ろを振り向く。

『これ以上は耐えられないです!動きますよ!』
『あっ!バカ!』

 気恥ずかしさに耐えられなくなり、私は上体を起こそうとした。
 その動きにより、阻害魔法の効力が落ちたのか、ローガンさんが動きを止める。

 バレても仕方ない⋯⋯
 しかし私の思いとは裏腹に、ローガンさんがそれ以上動くことはなかった。

「はぁ、はぁ。魔法で強制的に意識を失わせているわ。でも、あと10秒くらいで起きるわ!撤収よ撤収!」

ぼんやりと立ち尽くすローガンさんを横目に、私とリズさんは風の様にパーテーションから飛び出し、転がるように廊下へと飛び出た。

 数メートル、部屋から離れた所でようやく一息つく。

「イスカ、貸しだからね」

 恨みがましい表情のリズさんに、私は息を整えて頷くことしかできなかった。
 まだまだ、ユズキさんと二人っきりという状況は程遠いみたいだ。

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