うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

文字の大きさ
68 / 166
第3章 城壁都市ウォール

やっぱりバレていたようです

しおりを挟む
「見えてきたぞ!」

 見張り台の上から乗組員の男が水平線を睨みながら叫んだ。

「よぉし!アンタ達、上陸の準備だよ!」

 見張り台の男の報告を受けて、艦長であるビビが甲板にいる船員達に指示を出す。
 その言葉を聞いた屈強な海の男達は、一斉に持ち場へと走り出した。

「ついに、来たんですね」

 僕の隣に立つイスカが、海風に髪を押さえながら声をあげた。
 その隣にはフーシェが、気持ちよさそうに風に身を任せて目を瞑っている。

 こんなに海の上で数日も過ごしているのに、隣に立つだけで良い香りがするのだから、女の子って不思議だ。

 昨晩目が覚めた僕は、今は少しずつ回復するレベルのお陰か、体に力が戻ってくるのを感じていた。
 それでも、今はレベル20台くらいの回復とセラ様A Iは告げて来るのだから、まだまだリハビリの途中といったところだ。

「ん。なんか懐かしい香りがする」

 未だ陸地は遠く、水平線の彼方にうっすらと影を覗かせているだけなのだが、フーシェにとっては故郷であるレーベンは、やはり特別な何かを感じずにはいられないのだろうか。

「いよいよですな」

 後ろに立つローガンが、隣に立つリズに向かって声をかけた。
 昨晩は、僕の覚醒にとても喜んでくれたリズだったけど、レーベンが近づくにつれて緊張が高まっている様だった。
 今朝に限っては、口数少なく何やら思案しているようだ。

「えぇ、戻ってきたかった気持ちと、このまま戻らずにいられたらって思う気持ちが、ぶつかり合っている感じよ」

 リズにとっては、偽の情報を流布されて領民からの信頼は失墜しているだけでなく、帰るべき居城は部下によって掌握されており、衝突することは避けられない状況だ。
 しかし、それでも彼女が逃げずに向き合っているのは、彼女が自分自身を『魔王』であると自負していることに他ならない。

「色々とケリをつけないとね」

 言葉は強がってはいるが、その表情はどことなく暗い。

「ん。吹っ飛ばすのは手伝う」

 フーシェはリズに向き直ると、その無表情な口元を少し綻ばせた。

「大丈夫です!私も勿論手伝いますよ!だってリスフィルさんは、私たちの大切な仲間ですから!」

 しっかりとリズの偽名を使って、イスカがリズを元気付ける。
 2人の言葉を聞いて、少しリズの顔に明るさが戻った。そして、次は僕の方に向き直ると何かを期待するかのように、軽く小首を傾げた。

「あら、ユズキからは何もないの?」

 少しリズの頬が赤くなっているように見えて、僕は思わずドキリとしてしまう。

「辛くても向き合うって決めたんだよね。僕達とリスフィルの目指す所は一緒。もし全部片がついて、それでも僕たちと来たいって言うなら、一緒に行こう──いや、一緒に来てほしい」

 少しフラグ地味た言葉のように思えたが、今のリズは目の前のレーベンのこと、父親の事にしか意識が向いていないように感じた。
 彼女の抱える問題が片付いた時、その後のことを示してあげることが今のリズには必要なのではないか。
 そう思った僕の口からは自然と、一緒に来て欲しいと言葉が溢れた。

 僕の言葉にリズは目を大きく見開いたが、次の瞬間には顔を赤くしながらも二ヤリと笑みを浮かべた。

「あら?それは私へのプロポーズって捉えてもいいのかしら」

 悪戯っぽく笑うリズは、僕の心音を跳ね上げるくらいに魅力的だ。
 だけど、僕にはイスカという彼女がいる。
 そんな僕の心情を察してか、リズは苦笑しながら僕の肩をポンと叩いた。

「ふふっ、困らせるつもりはないのよ。とりあえず、第一夫人にお伺いを立てなきゃ、立候補もしないわよ」

 リズはそう言うと、含み笑いを浮かべてイスカの方を見た。

「ま⋯⋯まだ私はOKしてないですから!」

 慌てて手を振り答えるイスカを見て、リズは腹を押さえて笑いだしてしまった。

「もうっ、ユズキの彼女は独占欲が強いんだから──、っと、冗談はここまでにして。──ありがと、ユズキ。自分に成すべきこと、それを全部終わらせてから、その話は考えたいと思うわ。⋯⋯心配してくれたんでしょ?ありがとう」

 少し顔をそむけてお礼を言う、リズの耳は先までが赤かった。

「ホッホッホッ、ユズキ様。モテますなぁ」

 一連のやり取りを見ていたローガンが羨ましそうに、髭をいじりながら笑いかけてきた。

「⋯⋯そういえばローガンの私生活を聞いたことがなかったけど。ローガンもモテそうに思うけど?」

 僕の問いかけに、ローガンは片目を瞑るとウインクをした。

「これは、失敬。勿論、結婚もしておりますし、子供も3人おりますぞ。今度帝都に来られたら、ご紹介しましょう。ですが、まだまだ娘をユズキ様にはお出しできませんなぁ」

 えっ?

 いきなりのカミングアウトに、パーティー皆が石の様に固まってしまった。

 そんな僕達の様子をグルリと見渡したローガンは、再び髭を触りながらこう答えた。

「ふむ、心外ですな。⋯⋯ホントですぞ?」

 ある意味、1番の勝ち組はローガンなのかもしれない。
 僕はせっかく上がったレベルが、脱力によって下がったかのような錯覚を覚えるのだった。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 3時間程経過し、レグナント号は港を目指して減速を始めた。
 見えてきた港町は、交易都市であるトナミカに比べると遥かに小さい。
 しかし、想像していたよりも栄えているのか、遠目にも往来する人影は多いように見えた。

「レーベンの玄関口、ウォールよ」

 隣に立つリズが町の名前を教えてくれる。
 しかし、その表情はどことなく冴えない。

「──思ったより、栄えててビックリしたよ」

 僕は、見たままの感想を素直に口に出した。
 カラフルなトナミカの町並みとはまるで異なる、灰色や茶色の外壁に覆われた町並みは、まるで要塞のようだ。
 建物の屋根は先鋭的に尖り、見るものを威嚇しているようにも見える。

「首都であるレーヴァテインが全然復興しないから、みんな逃げてきたのさ」

 後ろから声をかけられて僕は振り返る。
 そこには、燃え盛るような赤髪を揺らしたビビがウォールの町並みを見渡しながら腕を組んでいた。

「クソ『魔王』が、ちっとも町の復興をしないから、皆地方都市に逃げて来たのさ。お陰で、今は首都よりも周りの町が栄えてしまっている始末。だからといって、私達魔族が大陸に渡っても良いことはないからねぇ」

 ビビの言葉に、ビクッとリズの肩が揺らいだ。

 ──クソ『魔王』

 その言葉に反応したのは明白だ。
 僕は、大声で「違う!」と叫びたかったが、それでは彼女の正体を隠している今までの努力が水泡に帰してしまう。
 グッとこらえて、僕は言葉を飲み込んだ。

「──と、思ってたんだけどね。どうやら、私は長年噂に踊らされていたようだよ」

 汚名が晴れるのは、なんとビビの口からだったようだ。
 ビビは、リズに身体を向けると静かに帽子を手に取り、恭しく礼をした。

「周りの連中がいるから、こんな挨拶で失礼します。『魔王』様」

 ビビの言葉に、リズだけではない。ローガンまでもが驚きの顔を浮かべた。
 フーシェは、⋯⋯うん、興味なさそうだね。

「な──なんで!?」

 いきなり、正体を当てられたことに動揺したリズが、パタパタと自分の身体を見直した。

「フフ、私を口がデカいだけの船長と思われてましたか?実はエルフ族にも勝るくらいに耳がいいんですよ。──海戦の初めに船に乗り込んできた時、フーシェが『魔王』様の名前を口に出しかけたでしょう?口元を押さえられていましたが、あれ、名前が聞こえていたのです」

 ──フーシェ⋯⋯

 僕達は白い目をフーシェに向けたが、当の本人は皆に見られていると気付くと、小首を傾げた。
 一体、僕達の苦労はなんだったのか?

「そして、確信したのはクラーケンを倒した魔法ですね。氷と砂を混ぜた魔法ですが、あんなの普通の魔族にはできません。氷は水と風魔法の組み合わせ、そこに土と火を混ぜた砂魔法なんて、四重詠唱じゃないですか。それをサラリと『二重詠唱ダブルハウリング』と言って、一人で行っていることがそもそも尋常じゃない。でも、『魔王』様であるなら納得です」

 いつものぶっきらぼうな口調を無理に直しているせいか、ビビの口調はたどたどしい。

「安心して下さい。知っているのは私だけです。あいつ等に言わないのは、酷い『魔王』によって職や家族を失った奴もいるからです。いきなり、本当の事を話しても受け止められないでしょう。私はずっと貴方を見てきましたが、ようやく分かりました。私達は、嘘の情報に踊らされて来たのだと」

 みるみるうちに、リズの瞳が滲んでくる。

「お辛かったでしょう。現実を知ってしまわれて⋯⋯ですが、私は本当の『魔王』様を知ることができた。たった数日ですが、トナミカでの行動、この馬鹿みたいな領民への接し方。その全てが、私が如何に未熟であったかを思い知らされるものでした──」

 ビビの言葉はそこで遮られた。
 大きなビビの身体に飛び込むように、リズが身体を押し当てたからだ。
 すぐに、声にならない声が、嗚咽が漏れてきた。
 ビビは少し躊躇いながらも、優しくリズの肩を抱き寄せた。

 静かに響くリズの泣き声も、波音によって直ぐに霧散してしまう。
 接岸する岸は目の前に迫ってきていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...