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第3章 城壁都市ウォール
やっぱりバレていたようです
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「見えてきたぞ!」
見張り台の上から乗組員の男が水平線を睨みながら叫んだ。
「よぉし!アンタ達、上陸の準備だよ!」
見張り台の男の報告を受けて、艦長であるビビが甲板にいる船員達に指示を出す。
その言葉を聞いた屈強な海の男達は、一斉に持ち場へと走り出した。
「ついに、来たんですね」
僕の隣に立つイスカが、海風に髪を押さえながら声をあげた。
その隣にはフーシェが、気持ちよさそうに風に身を任せて目を瞑っている。
こんなに海の上で数日も過ごしているのに、隣に立つだけで良い香りがするのだから、女の子って不思議だ。
昨晩目が覚めた僕は、今は少しずつ回復するレベルのお陰か、体に力が戻ってくるのを感じていた。
それでも、今はレベル20台くらいの回復とセラ様A Iは告げて来るのだから、まだまだリハビリの途中といったところだ。
「ん。なんか懐かしい香りがする」
未だ陸地は遠く、水平線の彼方にうっすらと影を覗かせているだけなのだが、フーシェにとっては故郷であるレーベンは、やはり特別な何かを感じずにはいられないのだろうか。
「いよいよですな」
後ろに立つローガンが、隣に立つリズに向かって声をかけた。
昨晩は、僕の覚醒にとても喜んでくれたリズだったけど、レーベンが近づくにつれて緊張が高まっている様だった。
今朝に限っては、口数少なく何やら思案しているようだ。
「えぇ、戻ってきたかった気持ちと、このまま戻らずにいられたらって思う気持ちが、ぶつかり合っている感じよ」
リズにとっては、偽の情報を流布されて領民からの信頼は失墜しているだけでなく、帰るべき居城は部下によって掌握されており、衝突することは避けられない状況だ。
しかし、それでも彼女が逃げずに向き合っているのは、彼女が自分自身を『魔王』であると自負していることに他ならない。
「色々とケリをつけないとね」
言葉は強がってはいるが、その表情はどことなく暗い。
「ん。吹っ飛ばすのは手伝う」
フーシェはリズに向き直ると、その無表情な口元を少し綻ばせた。
「大丈夫です!私も勿論手伝いますよ!だってリスフィルさんは、私たちの大切な仲間ですから!」
しっかりとリズの偽名を使って、イスカがリズを元気付ける。
2人の言葉を聞いて、少しリズの顔に明るさが戻った。そして、次は僕の方に向き直ると何かを期待するかのように、軽く小首を傾げた。
「あら、ユズキからは何もないの?」
少しリズの頬が赤くなっているように見えて、僕は思わずドキリとしてしまう。
「辛くても向き合うって決めたんだよね。僕達とリスフィルの目指す所は一緒。もし全部片がついて、それでも僕たちと来たいって言うなら、一緒に行こう──いや、一緒に来てほしい」
少しフラグ地味た言葉のように思えたが、今のリズは目の前のレーベンのこと、父親の事にしか意識が向いていないように感じた。
彼女の抱える問題が片付いた時、その後のことを示してあげることが今のリズには必要なのではないか。
そう思った僕の口からは自然と、一緒に来て欲しいと言葉が溢れた。
僕の言葉にリズは目を大きく見開いたが、次の瞬間には顔を赤くしながらも二ヤリと笑みを浮かべた。
「あら?それは私へのプロポーズって捉えてもいいのかしら」
悪戯っぽく笑うリズは、僕の心音を跳ね上げるくらいに魅力的だ。
だけど、僕にはイスカという彼女がいる。
そんな僕の心情を察してか、リズは苦笑しながら僕の肩をポンと叩いた。
「ふふっ、困らせるつもりはないのよ。とりあえず、第一夫人にお伺いを立てなきゃ、立候補もしないわよ」
リズはそう言うと、含み笑いを浮かべてイスカの方を見た。
「ま⋯⋯まだ私はOKしてないですから!」
慌てて手を振り答えるイスカを見て、リズは腹を押さえて笑いだしてしまった。
「もうっ、ユズキの彼女は独占欲が強いんだから──、っと、冗談はここまでにして。──ありがと、ユズキ。自分に成すべきこと、それを全部終わらせてから、その話は考えたいと思うわ。⋯⋯心配してくれたんでしょ?ありがとう」
少し顔をそむけてお礼を言う、リズの耳は先までが赤かった。
「ホッホッホッ、ユズキ様。モテますなぁ」
一連のやり取りを見ていたローガンが羨ましそうに、髭をいじりながら笑いかけてきた。
「⋯⋯そういえばローガンの私生活を聞いたことがなかったけど。ローガンもモテそうに思うけど?」
僕の問いかけに、ローガンは片目を瞑るとウインクをした。
「これは、失敬。勿論、結婚もしておりますし、子供も3人おりますぞ。今度帝都に来られたら、ご紹介しましょう。ですが、まだまだ娘をユズキ様にはお出しできませんなぁ」
えっ?
いきなりのカミングアウトに、パーティー皆が石の様に固まってしまった。
そんな僕達の様子をグルリと見渡したローガンは、再び髭を触りながらこう答えた。
「ふむ、心外ですな。⋯⋯ホントですぞ?」
ある意味、1番の勝ち組はローガンなのかもしれない。
僕はせっかく上がったレベルが、脱力によって下がったかのような錯覚を覚えるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3時間程経過し、レグナント号は港を目指して減速を始めた。
見えてきた港町は、交易都市であるトナミカに比べると遥かに小さい。
しかし、想像していたよりも栄えているのか、遠目にも往来する人影は多いように見えた。
「レーベンの玄関口、ウォールよ」
隣に立つリズが町の名前を教えてくれる。
しかし、その表情はどことなく冴えない。
「──思ったより、栄えててビックリしたよ」
僕は、見たままの感想を素直に口に出した。
カラフルなトナミカの町並みとはまるで異なる、灰色や茶色の外壁に覆われた町並みは、まるで要塞のようだ。
建物の屋根は先鋭的に尖り、見るものを威嚇しているようにも見える。
「首都であるレーヴァテインが全然復興しないから、みんな逃げてきたのさ」
後ろから声をかけられて僕は振り返る。
そこには、燃え盛るような赤髪を揺らしたビビがウォールの町並みを見渡しながら腕を組んでいた。
「クソ『魔王』が、ちっとも町の復興をしないから、皆地方都市に逃げて来たのさ。お陰で、今は首都よりも周りの町が栄えてしまっている始末。だからといって、私達魔族が大陸に渡っても良いことはないからねぇ」
ビビの言葉に、ビクッとリズの肩が揺らいだ。
──クソ『魔王』
その言葉に反応したのは明白だ。
僕は、大声で「違う!」と叫びたかったが、それでは彼女の正体を隠している今までの努力が水泡に帰してしまう。
グッとこらえて、僕は言葉を飲み込んだ。
「──と、思ってたんだけどね。どうやら、私は長年噂に踊らされていたようだよ」
汚名が晴れるのは、なんとビビの口からだったようだ。
ビビは、リズに身体を向けると静かに帽子を手に取り、恭しく礼をした。
「周りの連中がいるから、こんな挨拶で失礼します。『魔王』様」
ビビの言葉に、リズだけではない。ローガンまでもが驚きの顔を浮かべた。
フーシェは、⋯⋯うん、興味なさそうだね。
「な──なんで!?」
いきなり、正体を当てられたことに動揺したリズが、パタパタと自分の身体を見直した。
「フフ、私を口がデカいだけの船長と思われてましたか?実はエルフ族にも勝るくらいに耳がいいんですよ。──海戦の初めに船に乗り込んできた時、フーシェが『魔王』様の名前を口に出しかけたでしょう?口元を押さえられていましたが、あれ、名前が聞こえていたのです」
──フーシェ⋯⋯
僕達は白い目をフーシェに向けたが、当の本人は皆に見られていると気付くと、小首を傾げた。
一体、僕達の苦労はなんだったのか?
「そして、確信したのはクラーケンを倒した魔法ですね。氷と砂を混ぜた魔法ですが、あんなの普通の魔族にはできません。氷は水と風魔法の組み合わせ、そこに土と火を混ぜた砂魔法なんて、四重詠唱じゃないですか。それをサラリと『二重詠唱』と言って、一人で行っていることがそもそも尋常じゃない。でも、『魔王』様であるなら納得です」
いつものぶっきらぼうな口調を無理に直しているせいか、ビビの口調はたどたどしい。
「安心して下さい。知っているのは私だけです。あいつ等に言わないのは、酷い『魔王』によって職や家族を失った奴もいるからです。いきなり、本当の事を話しても受け止められないでしょう。私はずっと貴方を見てきましたが、ようやく分かりました。私達は、嘘の情報に踊らされて来たのだと」
みるみるうちに、リズの瞳が滲んでくる。
「お辛かったでしょう。現実を知ってしまわれて⋯⋯ですが、私は本当の『魔王』様を知ることができた。たった数日ですが、トナミカでの行動、この馬鹿みたいな領民への接し方。その全てが、私が如何に未熟であったかを思い知らされるものでした──」
ビビの言葉はそこで遮られた。
大きなビビの身体に飛び込むように、リズが身体を押し当てたからだ。
すぐに、声にならない声が、嗚咽が漏れてきた。
ビビは少し躊躇いながらも、優しくリズの肩を抱き寄せた。
静かに響くリズの泣き声も、波音によって直ぐに霧散してしまう。
接岸する岸は目の前に迫ってきていた。
見張り台の上から乗組員の男が水平線を睨みながら叫んだ。
「よぉし!アンタ達、上陸の準備だよ!」
見張り台の男の報告を受けて、艦長であるビビが甲板にいる船員達に指示を出す。
その言葉を聞いた屈強な海の男達は、一斉に持ち場へと走り出した。
「ついに、来たんですね」
僕の隣に立つイスカが、海風に髪を押さえながら声をあげた。
その隣にはフーシェが、気持ちよさそうに風に身を任せて目を瞑っている。
こんなに海の上で数日も過ごしているのに、隣に立つだけで良い香りがするのだから、女の子って不思議だ。
昨晩目が覚めた僕は、今は少しずつ回復するレベルのお陰か、体に力が戻ってくるのを感じていた。
それでも、今はレベル20台くらいの回復とセラ様A Iは告げて来るのだから、まだまだリハビリの途中といったところだ。
「ん。なんか懐かしい香りがする」
未だ陸地は遠く、水平線の彼方にうっすらと影を覗かせているだけなのだが、フーシェにとっては故郷であるレーベンは、やはり特別な何かを感じずにはいられないのだろうか。
「いよいよですな」
後ろに立つローガンが、隣に立つリズに向かって声をかけた。
昨晩は、僕の覚醒にとても喜んでくれたリズだったけど、レーベンが近づくにつれて緊張が高まっている様だった。
今朝に限っては、口数少なく何やら思案しているようだ。
「えぇ、戻ってきたかった気持ちと、このまま戻らずにいられたらって思う気持ちが、ぶつかり合っている感じよ」
リズにとっては、偽の情報を流布されて領民からの信頼は失墜しているだけでなく、帰るべき居城は部下によって掌握されており、衝突することは避けられない状況だ。
しかし、それでも彼女が逃げずに向き合っているのは、彼女が自分自身を『魔王』であると自負していることに他ならない。
「色々とケリをつけないとね」
言葉は強がってはいるが、その表情はどことなく暗い。
「ん。吹っ飛ばすのは手伝う」
フーシェはリズに向き直ると、その無表情な口元を少し綻ばせた。
「大丈夫です!私も勿論手伝いますよ!だってリスフィルさんは、私たちの大切な仲間ですから!」
しっかりとリズの偽名を使って、イスカがリズを元気付ける。
2人の言葉を聞いて、少しリズの顔に明るさが戻った。そして、次は僕の方に向き直ると何かを期待するかのように、軽く小首を傾げた。
「あら、ユズキからは何もないの?」
少しリズの頬が赤くなっているように見えて、僕は思わずドキリとしてしまう。
「辛くても向き合うって決めたんだよね。僕達とリスフィルの目指す所は一緒。もし全部片がついて、それでも僕たちと来たいって言うなら、一緒に行こう──いや、一緒に来てほしい」
少しフラグ地味た言葉のように思えたが、今のリズは目の前のレーベンのこと、父親の事にしか意識が向いていないように感じた。
彼女の抱える問題が片付いた時、その後のことを示してあげることが今のリズには必要なのではないか。
そう思った僕の口からは自然と、一緒に来て欲しいと言葉が溢れた。
僕の言葉にリズは目を大きく見開いたが、次の瞬間には顔を赤くしながらも二ヤリと笑みを浮かべた。
「あら?それは私へのプロポーズって捉えてもいいのかしら」
悪戯っぽく笑うリズは、僕の心音を跳ね上げるくらいに魅力的だ。
だけど、僕にはイスカという彼女がいる。
そんな僕の心情を察してか、リズは苦笑しながら僕の肩をポンと叩いた。
「ふふっ、困らせるつもりはないのよ。とりあえず、第一夫人にお伺いを立てなきゃ、立候補もしないわよ」
リズはそう言うと、含み笑いを浮かべてイスカの方を見た。
「ま⋯⋯まだ私はOKしてないですから!」
慌てて手を振り答えるイスカを見て、リズは腹を押さえて笑いだしてしまった。
「もうっ、ユズキの彼女は独占欲が強いんだから──、っと、冗談はここまでにして。──ありがと、ユズキ。自分に成すべきこと、それを全部終わらせてから、その話は考えたいと思うわ。⋯⋯心配してくれたんでしょ?ありがとう」
少し顔をそむけてお礼を言う、リズの耳は先までが赤かった。
「ホッホッホッ、ユズキ様。モテますなぁ」
一連のやり取りを見ていたローガンが羨ましそうに、髭をいじりながら笑いかけてきた。
「⋯⋯そういえばローガンの私生活を聞いたことがなかったけど。ローガンもモテそうに思うけど?」
僕の問いかけに、ローガンは片目を瞑るとウインクをした。
「これは、失敬。勿論、結婚もしておりますし、子供も3人おりますぞ。今度帝都に来られたら、ご紹介しましょう。ですが、まだまだ娘をユズキ様にはお出しできませんなぁ」
えっ?
いきなりのカミングアウトに、パーティー皆が石の様に固まってしまった。
そんな僕達の様子をグルリと見渡したローガンは、再び髭を触りながらこう答えた。
「ふむ、心外ですな。⋯⋯ホントですぞ?」
ある意味、1番の勝ち組はローガンなのかもしれない。
僕はせっかく上がったレベルが、脱力によって下がったかのような錯覚を覚えるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3時間程経過し、レグナント号は港を目指して減速を始めた。
見えてきた港町は、交易都市であるトナミカに比べると遥かに小さい。
しかし、想像していたよりも栄えているのか、遠目にも往来する人影は多いように見えた。
「レーベンの玄関口、ウォールよ」
隣に立つリズが町の名前を教えてくれる。
しかし、その表情はどことなく冴えない。
「──思ったより、栄えててビックリしたよ」
僕は、見たままの感想を素直に口に出した。
カラフルなトナミカの町並みとはまるで異なる、灰色や茶色の外壁に覆われた町並みは、まるで要塞のようだ。
建物の屋根は先鋭的に尖り、見るものを威嚇しているようにも見える。
「首都であるレーヴァテインが全然復興しないから、みんな逃げてきたのさ」
後ろから声をかけられて僕は振り返る。
そこには、燃え盛るような赤髪を揺らしたビビがウォールの町並みを見渡しながら腕を組んでいた。
「クソ『魔王』が、ちっとも町の復興をしないから、皆地方都市に逃げて来たのさ。お陰で、今は首都よりも周りの町が栄えてしまっている始末。だからといって、私達魔族が大陸に渡っても良いことはないからねぇ」
ビビの言葉に、ビクッとリズの肩が揺らいだ。
──クソ『魔王』
その言葉に反応したのは明白だ。
僕は、大声で「違う!」と叫びたかったが、それでは彼女の正体を隠している今までの努力が水泡に帰してしまう。
グッとこらえて、僕は言葉を飲み込んだ。
「──と、思ってたんだけどね。どうやら、私は長年噂に踊らされていたようだよ」
汚名が晴れるのは、なんとビビの口からだったようだ。
ビビは、リズに身体を向けると静かに帽子を手に取り、恭しく礼をした。
「周りの連中がいるから、こんな挨拶で失礼します。『魔王』様」
ビビの言葉に、リズだけではない。ローガンまでもが驚きの顔を浮かべた。
フーシェは、⋯⋯うん、興味なさそうだね。
「な──なんで!?」
いきなり、正体を当てられたことに動揺したリズが、パタパタと自分の身体を見直した。
「フフ、私を口がデカいだけの船長と思われてましたか?実はエルフ族にも勝るくらいに耳がいいんですよ。──海戦の初めに船に乗り込んできた時、フーシェが『魔王』様の名前を口に出しかけたでしょう?口元を押さえられていましたが、あれ、名前が聞こえていたのです」
──フーシェ⋯⋯
僕達は白い目をフーシェに向けたが、当の本人は皆に見られていると気付くと、小首を傾げた。
一体、僕達の苦労はなんだったのか?
「そして、確信したのはクラーケンを倒した魔法ですね。氷と砂を混ぜた魔法ですが、あんなの普通の魔族にはできません。氷は水と風魔法の組み合わせ、そこに土と火を混ぜた砂魔法なんて、四重詠唱じゃないですか。それをサラリと『二重詠唱』と言って、一人で行っていることがそもそも尋常じゃない。でも、『魔王』様であるなら納得です」
いつものぶっきらぼうな口調を無理に直しているせいか、ビビの口調はたどたどしい。
「安心して下さい。知っているのは私だけです。あいつ等に言わないのは、酷い『魔王』によって職や家族を失った奴もいるからです。いきなり、本当の事を話しても受け止められないでしょう。私はずっと貴方を見てきましたが、ようやく分かりました。私達は、嘘の情報に踊らされて来たのだと」
みるみるうちに、リズの瞳が滲んでくる。
「お辛かったでしょう。現実を知ってしまわれて⋯⋯ですが、私は本当の『魔王』様を知ることができた。たった数日ですが、トナミカでの行動、この馬鹿みたいな領民への接し方。その全てが、私が如何に未熟であったかを思い知らされるものでした──」
ビビの言葉はそこで遮られた。
大きなビビの身体に飛び込むように、リズが身体を押し当てたからだ。
すぐに、声にならない声が、嗚咽が漏れてきた。
ビビは少し躊躇いながらも、優しくリズの肩を抱き寄せた。
静かに響くリズの泣き声も、波音によって直ぐに霧散してしまう。
接岸する岸は目の前に迫ってきていた。
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