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第3章 城壁都市ウォール
一緒に跳んだのは仲間ではなかったようです
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不敵に笑うジェイクの表情は、『勇者』という名を冠するには似つかわしくない、冷淡な印象を受けた。
「ここに『魔王』はいない!ローガンを離せ!」
傷が癒えたフーシェをそっと床に下ろすと立ち上がる。
僕は今にも飛びかかりそうなリズを右手で制して前へ出る。
「なんだい君は?君みたいな雑魚はお呼びじゃないんだよ」
声色だけは爽やかな好青年を装ってはいるが、吐き出される言葉は自分以外の者を見下す冷酷さが伺えた。
『マスター、今のレベル差ではきついですよ』
セライが脳内から警告を発する。
分かっている、フーシェを一撃の元に沈める強さだ。
しかし、それだと既にジェイクのレベルは魔王に匹敵するくらいの強さを持っているはずだ。
人族のレベルで急激に強くなることがあり得るのだろうか。
僕は、口元に笑みを浮かべるジェイクに向かって慎重に言葉を選ぶ。
「『魔王』はもっと奥地『レーヴァテイン』に住んでいるんだろ。こんな所で無関係の魔族に絡むなんて『勇者』らしくないんじゃないか?」
そう、確かローガンからの情報だと、ジェイクのレベルは52。
そして、そのスキルは──
『『魔を穿つもの』ですね。対魔族に対してのみ、全ての能力を1.5倍にする』
セライがローガンから教えてくれた情報を脳内で繰り返す。
つまり、単純計算でいけばジェイクはレベル70前後の魔族に対して戦いを挑めるということになる。
「いいんだよ。万が一君達が『魔王』じゃなくても。何しろ、二匹も人族にとって害を成す魔族が死んでくれるんだから」
こいつ、魔族のことを何だと思って⋯⋯
僕は腹の底から怒りがふつふつと湧き上がるのを感じた。
「だけど、そう。僕の見立てでは、そこの角の女。さっき黒い霧を出したお前、お前が『魔王』なんだろ?」
ローガンが抵抗を試みるが、ジェイクはさらに力を込めて動かすことを許さない。
「見た目は魔族を装っているけど、僕のスキルに反応しない、さえない君と後ろのエルフクォーター、そしてその小さな女の子は、そもそも魔族じゃない」
ジェイクは余裕たっぷりに僕達を順に指差す。
その時だ──
「なんだぁ?さっきからうるせぇなぁ!!」
だみ声と共にドカドカと他の宿泊客である魔族の足音が聞こえた。
「こっちに来るな!」
他の客が巻き込まれないように僕は声を張り上げる。
しかし、そんな言葉でこの宿に泊まる客が止まってくれるはずもない。
一直線に僕達の部屋へと向かってくる。
「ふん。君たちに興味はないね」
チラとジェイクが廊下に視線を写し、軽く右手を伸ばす。その視線の先には、この部屋へと向かう魔族がいるのだろう。
魔法を使う予備動作なのか、その手が客達へと向けられた瞬間を僕は狙った。
──今だ!!
「『レベル譲渡』!!」
僕はジェイクに突進すると同時に、取り押さえられているローガンに『レベル譲渡』をかける。
白い光がローガンに吸い込まれるのを、少し驚いたような表情でジェイクは見つめた。
「うるさいんだよ!お前ら!」
ジェイクは左手でローガンを押さえつけているため、自由なのは右手だけだ。しかし、その腕一本でもローガンを押さえつけるのは容易と考えていたのだろう。
僕の意図を察したローガンが、『レベル譲渡』を受け取った瞬間に渾身の力を身体に込めた。
「ぬおおおっ!!」
レベルを10譲渡させたローガンの今のレベルは50。
40レベルならば押さえつけることができたとしても、いきなり10もレベルが上がったならば、ジェイクとて片手で押さえつけることはできまい。
「うわっ!!」
ローガンが無理矢理上体を引き起こしたため、上に乗っていたジェイクの体勢が揺らぐ。
「はあああっ!!」
その一瞬の隙を見つけて、僕はジェイクに体当たりを食らわした。
──くっ!固い!
ローガンに『譲渡』したレベル分が効いている。
このままでは押しきれない!
直感で僕は悟ってしまう。
「はっ、軽いんだよ!」
体勢を崩したジェイクが、ローガンを放した左手で僕の襟を掴む。
『マスター!フォローします!『強制回収』を実行!』
グンッ!
いきなり、手放したはずの力が四肢に戻るのを感じる。
これは──ローガンに『譲渡』したレベル10の力!
さらに踏ん張ることができるようになった僕は、そのまま壁に向かってジェイクを押し込んだ。
たった10レベルが上がるだけで、確実に力が漲る。
これでもまだジェイクのレベルには及ばないものの、態勢を崩した今はチャンスだ。
ドンッ!
壁に激突した僕達は、そのまま宿屋の壁を突き破る。
落下する瞬間、僕の耳元でジェイクが楽しむような声で告げる。
「まぬけだね。まさか僕一人だと思ったのか?」
──!!
いきなり、フォンッと無機質な音が虚空に響き渡った。
ジェイクともつれ合うように落下を始めた僕の頭上に見えたのは、宿屋を覆い尽くそうとする巨大な魔法陣だ。
怪しげな紫の紋様は、その光を地面へと降り注いだ。
その瞬間、周囲の景色が歪んで行くのを僕は知覚する。
『これは!転移魔法陣です!!』
セライが叫ぶ。
しかし、落下している僕には空に浮かぶ紋様をどうすることもできない。
「これで、僕達のアジトへ──なっ!なんだ!?」
ジェイクの言葉は途中で驚きの物へと変わった。
ジェイクともつれ合った僕が、空の紋様を見たのは一瞬。
周囲の視界はいよいよ歪んでいく。
まさに落下する直前。
その瞬間に、僕は思いきり違う方向へと何者かに引っ張られるように身体を投げ出された。
グニャグニャとした周囲の視界は、突然プツンとブラウン管が切れた古いテレビのように暗転する。
次の瞬間、僕の背中の遥か後方に光が現れた。
いつの間にか、組み合っていたはずのジェイクの姿はなかった。
僕の身体は、その光に吸い込まれるように落下していく。
フワッとした浮遊感。
光がすぐに大きくなる。
出口が来たのだ。
「あっ!」
声を漏らした瞬間、光に飛び込んだ僕の目の前に現れたのは鬱蒼と茂る大樹の枝々。下を振り向くと、なんと出口は地面から2メートル程離れた空中だった。
突如現れた地面と、落下の感覚から平衡感覚が取れなくなる。
しかも、背中から落下しているのだ。
「──クッ!」
せめてもの足掻きで、受け身の姿勢を取る。
ドンッ!
という衝撃が背中に伝わると同時に身体を回転させて、衝撃を分散させる。
元々S級レベルまでレベルは戻っている。
走行中の車から吐き出されたかのような速度による落下の衝撃で、軽く肺からは息を押し出されたが、内臓や骨を傷めた感触はなかった。
ゴロゴロと身体をなるべく丸くして衝撃を殺していく。
3回ほど天を見上げた所で、ようやく僕の身体は動きを止めてくれた。
「──ったぁ」
自分が転がった場所が、石がゴロゴロと転がる川原でなかったのは救いだろう。
すぐに見上げた空には、幾重にも重なり鬱蒼と茂る木々の葉が見えた。
大半の陽光が遮られているのか、僕がいる地面には僅かばかりの光しか届かない。
見渡せば、地面に生い茂る草は不十分な光からか生育が悪く、生気がないようにも見えた。
そうだ、みんなは!?
我に返って周囲を見渡す。
「あっ!」
僕は、自分より20メートル程離れた所に、2つの小さな影が倒れ込んでいるのを見つけた。
重い木の葉から地面へと落ちる影のせいで、ここからでは誰なのかが分からない。
僕は直ぐに立ち上がると、駆け出した。
ジェイクの言葉が脳裏に思い起こされ、彼の仲間が潜んでいないかと僕は周囲への警戒を行いながら倒れ込む人影へと駆け寄る。
「二人共大丈夫か!」
手前に倒れ込む姿は、華奢な身体。
その透き通る様な肌を覗かせているのは──
「セラ様!!」
思わず敬語が出てしまった。
駆け寄ると、セラ様は瞳は閉じているが目立った外傷はない。
口元に耳を近づけると、少し浅いながらも整った呼吸が聞こえた。
「人族としての生を終えるまで死ぬことはありません」
昨夜のセラ様の言葉が思い起こされる。
その言葉通りであるならば、セラ様は今の所大丈夫だろう。
もう一人は?
セラ様より数メートル程離れた所に倒れ込む人影。
その姿は、僕の仲間たちとは違ったが見覚えがあった。
「──君は⋯⋯」
僕が近づくと、丁度気がついたのか人影はゆっくりと起き上がる。
少し頭を抑えているようだが、こちらも外傷はない。
「てててっ。何だったの──」
起き上がった人影は、エアだった。
昨夜と同じ従業員姿とは違う、ラフなパンツ姿。
人族より遥かにスラリとした肢体は、どこか妖艶さを持っている。
青白い肌は、ふとすれば地面へと落ちる大樹の影に溶けていきそうだ。
「大丈夫?」
僕は片足をついて彼女と目線を合わせる。
「わっ!誰──!って、何だ昨日のラーメンのお兄さんじゃない。──って、えっ!?ヒ、ヒトゾク!?」
エアの言葉に慌てて僕は自分の身体を見回してみる。
そうか、自分では認識してはいなかったが、ウォールでは常にリズが認識阻害魔法で、僕達を魔族に見えるように配慮してくれていたのだ。
彼女とはぐれたことで、認識阻害の魔法が溶けたか、若しくは効果範囲から離れてしまったのだろう。
慌てる僕の後ろでゆっくりと、身体を起こす気配が1つ。
「あれ?ここ、どこですか?」
フラフラと目をこすりながら起きるセラ様を見て、エアが卒倒しそうな声をあげる。
「ひ、人族が二人!!こ、殺さないで!」
エアの悲鳴に、バササッと何羽かの魔物が頭上の木々より飛び立った音が聞こえた。
ここにいるのは3人。周囲に他の人影はない。
どうやら、僕達は仲間とはぐれてしまったようだ。
「ここに『魔王』はいない!ローガンを離せ!」
傷が癒えたフーシェをそっと床に下ろすと立ち上がる。
僕は今にも飛びかかりそうなリズを右手で制して前へ出る。
「なんだい君は?君みたいな雑魚はお呼びじゃないんだよ」
声色だけは爽やかな好青年を装ってはいるが、吐き出される言葉は自分以外の者を見下す冷酷さが伺えた。
『マスター、今のレベル差ではきついですよ』
セライが脳内から警告を発する。
分かっている、フーシェを一撃の元に沈める強さだ。
しかし、それだと既にジェイクのレベルは魔王に匹敵するくらいの強さを持っているはずだ。
人族のレベルで急激に強くなることがあり得るのだろうか。
僕は、口元に笑みを浮かべるジェイクに向かって慎重に言葉を選ぶ。
「『魔王』はもっと奥地『レーヴァテイン』に住んでいるんだろ。こんな所で無関係の魔族に絡むなんて『勇者』らしくないんじゃないか?」
そう、確かローガンからの情報だと、ジェイクのレベルは52。
そして、そのスキルは──
『『魔を穿つもの』ですね。対魔族に対してのみ、全ての能力を1.5倍にする』
セライがローガンから教えてくれた情報を脳内で繰り返す。
つまり、単純計算でいけばジェイクはレベル70前後の魔族に対して戦いを挑めるということになる。
「いいんだよ。万が一君達が『魔王』じゃなくても。何しろ、二匹も人族にとって害を成す魔族が死んでくれるんだから」
こいつ、魔族のことを何だと思って⋯⋯
僕は腹の底から怒りがふつふつと湧き上がるのを感じた。
「だけど、そう。僕の見立てでは、そこの角の女。さっき黒い霧を出したお前、お前が『魔王』なんだろ?」
ローガンが抵抗を試みるが、ジェイクはさらに力を込めて動かすことを許さない。
「見た目は魔族を装っているけど、僕のスキルに反応しない、さえない君と後ろのエルフクォーター、そしてその小さな女の子は、そもそも魔族じゃない」
ジェイクは余裕たっぷりに僕達を順に指差す。
その時だ──
「なんだぁ?さっきからうるせぇなぁ!!」
だみ声と共にドカドカと他の宿泊客である魔族の足音が聞こえた。
「こっちに来るな!」
他の客が巻き込まれないように僕は声を張り上げる。
しかし、そんな言葉でこの宿に泊まる客が止まってくれるはずもない。
一直線に僕達の部屋へと向かってくる。
「ふん。君たちに興味はないね」
チラとジェイクが廊下に視線を写し、軽く右手を伸ばす。その視線の先には、この部屋へと向かう魔族がいるのだろう。
魔法を使う予備動作なのか、その手が客達へと向けられた瞬間を僕は狙った。
──今だ!!
「『レベル譲渡』!!」
僕はジェイクに突進すると同時に、取り押さえられているローガンに『レベル譲渡』をかける。
白い光がローガンに吸い込まれるのを、少し驚いたような表情でジェイクは見つめた。
「うるさいんだよ!お前ら!」
ジェイクは左手でローガンを押さえつけているため、自由なのは右手だけだ。しかし、その腕一本でもローガンを押さえつけるのは容易と考えていたのだろう。
僕の意図を察したローガンが、『レベル譲渡』を受け取った瞬間に渾身の力を身体に込めた。
「ぬおおおっ!!」
レベルを10譲渡させたローガンの今のレベルは50。
40レベルならば押さえつけることができたとしても、いきなり10もレベルが上がったならば、ジェイクとて片手で押さえつけることはできまい。
「うわっ!!」
ローガンが無理矢理上体を引き起こしたため、上に乗っていたジェイクの体勢が揺らぐ。
「はあああっ!!」
その一瞬の隙を見つけて、僕はジェイクに体当たりを食らわした。
──くっ!固い!
ローガンに『譲渡』したレベル分が効いている。
このままでは押しきれない!
直感で僕は悟ってしまう。
「はっ、軽いんだよ!」
体勢を崩したジェイクが、ローガンを放した左手で僕の襟を掴む。
『マスター!フォローします!『強制回収』を実行!』
グンッ!
いきなり、手放したはずの力が四肢に戻るのを感じる。
これは──ローガンに『譲渡』したレベル10の力!
さらに踏ん張ることができるようになった僕は、そのまま壁に向かってジェイクを押し込んだ。
たった10レベルが上がるだけで、確実に力が漲る。
これでもまだジェイクのレベルには及ばないものの、態勢を崩した今はチャンスだ。
ドンッ!
壁に激突した僕達は、そのまま宿屋の壁を突き破る。
落下する瞬間、僕の耳元でジェイクが楽しむような声で告げる。
「まぬけだね。まさか僕一人だと思ったのか?」
──!!
いきなり、フォンッと無機質な音が虚空に響き渡った。
ジェイクともつれ合うように落下を始めた僕の頭上に見えたのは、宿屋を覆い尽くそうとする巨大な魔法陣だ。
怪しげな紫の紋様は、その光を地面へと降り注いだ。
その瞬間、周囲の景色が歪んで行くのを僕は知覚する。
『これは!転移魔法陣です!!』
セライが叫ぶ。
しかし、落下している僕には空に浮かぶ紋様をどうすることもできない。
「これで、僕達のアジトへ──なっ!なんだ!?」
ジェイクの言葉は途中で驚きの物へと変わった。
ジェイクともつれ合った僕が、空の紋様を見たのは一瞬。
周囲の視界はいよいよ歪んでいく。
まさに落下する直前。
その瞬間に、僕は思いきり違う方向へと何者かに引っ張られるように身体を投げ出された。
グニャグニャとした周囲の視界は、突然プツンとブラウン管が切れた古いテレビのように暗転する。
次の瞬間、僕の背中の遥か後方に光が現れた。
いつの間にか、組み合っていたはずのジェイクの姿はなかった。
僕の身体は、その光に吸い込まれるように落下していく。
フワッとした浮遊感。
光がすぐに大きくなる。
出口が来たのだ。
「あっ!」
声を漏らした瞬間、光に飛び込んだ僕の目の前に現れたのは鬱蒼と茂る大樹の枝々。下を振り向くと、なんと出口は地面から2メートル程離れた空中だった。
突如現れた地面と、落下の感覚から平衡感覚が取れなくなる。
しかも、背中から落下しているのだ。
「──クッ!」
せめてもの足掻きで、受け身の姿勢を取る。
ドンッ!
という衝撃が背中に伝わると同時に身体を回転させて、衝撃を分散させる。
元々S級レベルまでレベルは戻っている。
走行中の車から吐き出されたかのような速度による落下の衝撃で、軽く肺からは息を押し出されたが、内臓や骨を傷めた感触はなかった。
ゴロゴロと身体をなるべく丸くして衝撃を殺していく。
3回ほど天を見上げた所で、ようやく僕の身体は動きを止めてくれた。
「──ったぁ」
自分が転がった場所が、石がゴロゴロと転がる川原でなかったのは救いだろう。
すぐに見上げた空には、幾重にも重なり鬱蒼と茂る木々の葉が見えた。
大半の陽光が遮られているのか、僕がいる地面には僅かばかりの光しか届かない。
見渡せば、地面に生い茂る草は不十分な光からか生育が悪く、生気がないようにも見えた。
そうだ、みんなは!?
我に返って周囲を見渡す。
「あっ!」
僕は、自分より20メートル程離れた所に、2つの小さな影が倒れ込んでいるのを見つけた。
重い木の葉から地面へと落ちる影のせいで、ここからでは誰なのかが分からない。
僕は直ぐに立ち上がると、駆け出した。
ジェイクの言葉が脳裏に思い起こされ、彼の仲間が潜んでいないかと僕は周囲への警戒を行いながら倒れ込む人影へと駆け寄る。
「二人共大丈夫か!」
手前に倒れ込む姿は、華奢な身体。
その透き通る様な肌を覗かせているのは──
「セラ様!!」
思わず敬語が出てしまった。
駆け寄ると、セラ様は瞳は閉じているが目立った外傷はない。
口元に耳を近づけると、少し浅いながらも整った呼吸が聞こえた。
「人族としての生を終えるまで死ぬことはありません」
昨夜のセラ様の言葉が思い起こされる。
その言葉通りであるならば、セラ様は今の所大丈夫だろう。
もう一人は?
セラ様より数メートル程離れた所に倒れ込む人影。
その姿は、僕の仲間たちとは違ったが見覚えがあった。
「──君は⋯⋯」
僕が近づくと、丁度気がついたのか人影はゆっくりと起き上がる。
少し頭を抑えているようだが、こちらも外傷はない。
「てててっ。何だったの──」
起き上がった人影は、エアだった。
昨夜と同じ従業員姿とは違う、ラフなパンツ姿。
人族より遥かにスラリとした肢体は、どこか妖艶さを持っている。
青白い肌は、ふとすれば地面へと落ちる大樹の影に溶けていきそうだ。
「大丈夫?」
僕は片足をついて彼女と目線を合わせる。
「わっ!誰──!って、何だ昨日のラーメンのお兄さんじゃない。──って、えっ!?ヒ、ヒトゾク!?」
エアの言葉に慌てて僕は自分の身体を見回してみる。
そうか、自分では認識してはいなかったが、ウォールでは常にリズが認識阻害魔法で、僕達を魔族に見えるように配慮してくれていたのだ。
彼女とはぐれたことで、認識阻害の魔法が溶けたか、若しくは効果範囲から離れてしまったのだろう。
慌てる僕の後ろでゆっくりと、身体を起こす気配が1つ。
「あれ?ここ、どこですか?」
フラフラと目をこすりながら起きるセラ様を見て、エアが卒倒しそうな声をあげる。
「ひ、人族が二人!!こ、殺さないで!」
エアの悲鳴に、バササッと何羽かの魔物が頭上の木々より飛び立った音が聞こえた。
ここにいるのは3人。周囲に他の人影はない。
どうやら、僕達は仲間とはぐれてしまったようだ。
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