うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第3章 城壁都市ウォール

初めての組み合わせのようです

「そちらに行くのですか?」

 目の前のセラ様が、少し緊張した面持ちで口を開く。
 僕は静かに頷いた。

「うん、僕はリスフィルとフーシェから先に合流するよ」

 そう、僕は彼女であるイスカよりも先にリズ達と合流することを選んだ。
 エアもいる手前、リズの名前を出さない方が良いだろう。

「確かに、この方向ならどちらか一方としか合流できないけど⋯⋯お兄さん、あぁユズキさんだっけ?先に魔族の子達を助けるの?まさか、あの二人のどちらかが恋人ってこととか?」

 僕が、魔族であるリズとフーシェとの合流を目指すと言ったことは、エアにとっては驚きだったのだろう。

「いや、彼女はエルフクォーターの女の子。こっちの光の子だよ」

 僕が右手の上でコロコロと踊る、琥珀色の『レベル譲渡』のキューブを左手で指差すと、エアはさらに衝撃を受けたようだ。

「彼女を置いて、魔族から助けるって──どういう考えなのよ!」

 勿論僕はイスカを助けたい。
 ここで先にリズ達を助けに向かったことで、イスカの身に何かがあったとすれば、僕は一生後悔するだろう。

「『勇者』ですね」

 その言葉を聞いたエアの表情が蒼白になる。青白い肌は血の気が引いて、もはや真っ白だ。

「そう、ジェイクはリスフィルを狙っている。もし、二人の近くにジェイク達がいるなら、まず危ないのはリスフィル達だ」

「ヒッ!あの魔族絶対殺すべしの勇者が狙っているの!?」

 思わず後ずさるエアに、僕は頷く。

「うん、だから早く助けに行かないと」

 クラーケンと戦った時のように、リズが転移をしてくきてくれるかとも思ったが、あの時のリズは僕の服に転移陣を仕込んでくれていた。
 でも、その時の服はクラーケンとの戦いによって、ボロボロとなり既に捨てられてしまっている。

『もし、今マスターのレベルが60以上を超えていたら良かったのですが⋯⋯今はまだ、レベル48です』

 脳内でセライが残念そうな声をあげる。
 もし僕のレベルが60を突破していたならば、きっとリズは、スキル『万象のまなこ』を使って、僕の居場所を把握してくれるだろう。
 でも、今のレベルだと徘徊する高レベルモンスターと同じくらいかもしれず、リズにとって僕を判別することは容易ではないはずだ。

「悪いことって重なるものだよね」

 僕のため息を見たエアは、黙って僕の横顔を眺めていたが、やがてそろそろと近づいてくると、ポンと僕の肩を叩いた。

「行こう。正直人族はまだ少し怖いし、『勇者』は絶対に会いたくないけど、でも、ユズキさんが悪い人じゃないってことは分かったから、一緒に行くよ」

「ありがとう」

 セラ様がいるとはいえ、今まで一緒にいた仲間からはぐれてしまうことが、こんなにも心細いとは思わなかった。

「よし、じゃあ行こうか」

 僕は右手の上に宿る光を見つめながら歩き出す。

「──」

 ふと、僕の左手を温かい温もりが包んだ。
 ビックリして左を見ると、少し恥ずかしげにセラ様が僕の手をしっかりと握っていた。
 その顔は少し紅く染まっている。

「えっと⋯⋯その。ちょっと怖くて」

 その仕草は、悠久の時を生きる女神さまがやっていると思うと、とんでもないあざとさだと思うが、これは絶対に天然でやっているだけだ。
 何とも言えない、抗えないような気持ちが押し寄せてくるところが、女神様恐るべしだ。
 こう、ギュッと抱きしめたくなる衝動に駆られるのは、決して僕だけではないと思いたい。

「──もしかして、二人って⋯⋯」

 その様子を不思議そうに見ていたエアが口を開こうとした。

「えぇ、そうです⋯⋯」

 セラ様、何がそうです。なんでしょうか?

「親子?」

『違います!』

 どこをどう見てそういう結論になるのか。そもそも、昨日の夜はセラ様はいなかったじゃないか。

「あ、そうなんだ。てことは──いや、なんか訳がありそうだし、やっぱ止めとくね」

 エアは思いとどまったように、クルリと前に向かって歩き出す。

 僕とセラ様はお互いの顔を見合わせた後、先に進むエアを追いかけるために歩みを進めた。

 ──二人共、イスカ、ローガン。どうか無事で。

 心の中で念じつつ、僕達は仄暗い森林を歩きだした。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ──ん。はぐれた。

 私は目の前で目を閉じるリズを見ながら、ぼんやりとそう思った。
 これはまずい。
 なんだか、ユズキの近くに新しい女が近づいているような気がする。

「──はあっ」

 困惑したようなため息と共に、リズが目を開く。
 どうやら収穫なしらしい。

「なんたって、こんな時にユズキはレベルが下がっているの!」

 リズは怒りをぶつけるように、近くにあった枝を踏みしめる。
 バキッという音と共に、枝は真っ二つに割れた。

「さすが、魔王。それなりに大きな枝が棒切れみたい」

 素直な感想を口にしたつもりだが、リズの顔は少し不機嫌そうだ。

「何個か高めのレベルの反応は『万象のまなこ』で見つけたけど、ユズキが一人なのか数人なのかも分からないわ。せっかく、あのジェイクとかいう勇者の罠から、無理矢理転移魔法陣をねじ込んで見たのに、まさかこんなに離れることになるなんて」

 確かに。
 あのまま転移陣を受けていたら、私達は『勇者』の仲間の待つ場所へと誘い込まれていただろう。

「ん。おかげで助かった。リズはえらい」

 精一杯背伸びをして、私はリズの頭を撫でる。

「──!!い、いきなり何よ!」

 顔を紅くして飛び退くリズ。
 知能派魔王と思っていた割に、動きが俊敏だ。

 伸ばした手を戻そうとして、私はその手が左手だったことに気がつく。

「──はっ」

 思い出すと、ジェイクに突撃した瞬間のことが思い出された。
 次に思い出すのは、辛うじて肉で繋がっていた左手と、焼き付くような痛みの感覚。
 今は、ユズキとリズの回復によって跡形もなくくっついた左手を見て、思わず声が漏れた。

「悔しい」

 弱ければ負ける。
 それが普通と思っていたのに、そんな言葉が自分の口から出るとは驚きだった。

「──なんだ。フーシェにも感情があるじゃない」

 私の様子を見ていたリズが、少し嬉しそうに微笑む。
 何を笑っているのだろうか?

「むぅ。私にだって感情はある」

 笑って見せたつもりだが、返って来たのは苦笑だった。

「そうかしら?私はフーシェが悔しいって言ったのは軽い驚きよ」

 確かに、そうかもしれない。
 下手をすれば殺されていたはずだ。
 左手一本なくなりそうな状況だったが、手も足も出なかったことに対する感情は、恐怖でも怒りでもなく悔しさだった。

「次はやられない。──でも、おかしい。いくら『勇者』といっても、そんなにレベル差はないはず。何故あんなに強いの?」

 私の質問に、リズはため息をつく。

「ローガンの言ってたスキルのせいね。『魔を穿つ者』だっけ?反則よ。魔族に対して能力1.5倍なんて」

「1.5倍って、何?」

 意味が分からない。

「え、えぇ。算術は分からないの?」

「ん。客のお金の計算くらいはできる」

 少し胸を張ってみる。この姿だと、張れる胸もほとんどないのが辛い所だ。
『限定進化』、あの姿になれるなら自分でやってみたいところだ。

「まぁ、つまり。あの勇者は魔族相手ならレベル70台でも戦えるってことね」

 それは、強い。リズよりも普通に強い。
 首を振るリズを見て、ますます自分も戦わなくてはと思ってしまう。

「じゃあ、どうする?」

 私は、素朴な疑問をリズにぶつける。
 対するリズは、少し口角を上げると意地悪そうな顔で頭を指さした。

「レベル差は、頭で埋めろってね。ユズキみたいなチートじゃなければ、やりようはあるわよ」

 そう言い放つリズ。
 おぉ、『魔王』っぽい。

「リズ、リズ」

 少し興奮した口調で私はリズに声をかける。
 少し高くなった声に、リズが一瞬ドキリとしたような顔をする。
 私は気にせず口を開く。

「ん。リズのこと、ユズキを狙ってる淫魔かと思ってたけど、頭良い!」

 お?
 なんか、リズが一気に冷めた瞳をしているような。
 何か私は間違ったことを言ったのだろうか。
 本心を言ったつもりなのだが⋯⋯

 こういう場合、次は大抵怒られる場合が多い。
 私は、『星屑亭』で客を怒らせてしまった時のことを思い出した。
 そう、あの時初めてユズキに出会ったのだ。

 私は次に来るであろう、リズの怒りの言葉を待った。

「──く、くくっ。もう、本当にフーシェは変わってるわね」

 怒りや罵倒といった言葉は来ず、笑いをこらえるようなリズの口調に面食らってしまう。

「私、初めは少しフーシェと二人きりってなった時、不安だったの。──ほら、口ではレーベンが滅んだことを何ともないって言ってくれたけど、私の父がやったことに変わりはないから」

 大丈夫、それは納得している。
 それにリズがやった訳でもないのだ。
 この話は済んだはずじゃなかったのか?

「もぅ、感情ってのは。そんなに割り切れるものじゃないのよ。それは、もしかして貴女が特別だからかしら?──貴女には、悩みはないの?」

 悩みと言われれば、勿論。

「ある」

 私の即答に、リズは気になったようで少し前のめりで近づいてきた。

「なになに?私で良ければ何でも相談に乗るわ」

 そう、それ。
 私は前のめりになったことでやたらと強調された、私にはないリズの胸についている巨大な2つの脂肪の塊を見つめた。

「じゃあ、その胸を半分くらい私に分けて」

 スカスカと、あまり出る所もない自分の胸を撫でてみる。

「な、何言ってるの!そういうのじゃないから、そ、それ以外で!!」

 私の言葉に、真っ赤になって胸を両手で抱きしめるリズ。
 むぅ、そんなに分けたくないということは、やっぱり淫魔なのだろうか?
 でも、それを口にはしない方が良いのだろうとふと思った。そして、その言葉を止めることができたことにも、私は自分自身驚いた。

 そうだ。
 ユズキとイスカに出会ってから、色んなことを覚えた気がする。
 今までは感じなかった心の波は、小さなことでも私の胸に波紋を広げた。
 例えば嬉しいことも。
 その他の感情は、正直未だにうまく表現できない。
 いや、今日私はもう一つの感情を覚えた。
 それが、悔しいだ。

 これでも、リズから見れば私はまだまだ感情を知らないらしい。
 私の心は、穴の空いたコップなのだろうか?
 感情を受け止めるための底がない。
 これが私にとっての普通のはずだった。
 でも、これは何かがおかしいと感じる自分もいた。
 そしてその気持ちは、レーベンに着いた時から少しずつ大きくなっていることに私は気づくのだった。

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