うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

文字の大きさ
125 / 166
第5章 戦争

開戦 3

しおりを挟む
 風魔法を纏い、イスカは瓦礫の中から粉塵を吹き飛ばして甲板へと戻ってくる。

「な、なんなんだ!お前は!」

 慌てたヤンは、杖を構えると術式を空中に描いた。
 赤き魔法術式から炎が吹き上がると、イスカに目掛けて降り注ぐ。

「『付与エンチャント』」

 クッと、イスカが剣先を上げて正面に構えた。
 飛来した炎が剣先に触れると、イスカは向かってきた炎を巻き取る様に剣を振るう。
 すると、炎はまるで主人に従順となった仔犬のようにイスカの剣に纏わりついた。

「僕の炎を奪うだと!そんな芸当、混ざりもののエルフ如きにできるなんて!」

「いくら、貴方の魔素で作られた魔法でも、根っこが外れたものなら、流れを見極めたら制御を奪えますよ。勿論、一対一だからできたのですけどね」

 イスカは自分の剣に纏った炎に己の魔素を流し込み制御を保つ。
 甲板の重力力場が壊された今、イスカを縛る物は何もなかった。
 イスカは軽く跳躍すると、剣を大上段に構える。

「自分の炎でも、くらって下さい!『炎風斬』!」

 剣の炎とイスカの風魔法が加わり、炎の嵐が吹き荒れた。剣先から伸びた炎が驚愕するヤンに向かって振り下ろされる。

二重ダブル水障壁アクアウォール』!」

 ヤンの後ろから女性の声が飛ぶ。
 二重に張られた水の膜の一枚目にイスカの炎がぶつかると、水蒸気爆発が生まれ水障壁アクアウォールが弾け飛んだ。
 爆発の勢いを二枚目の水の膜が受け止めると、ヤンは降りかかる水を浴びながら毒づいた。

「クッ!何するんだ。リアーナ!」

「助けられておきながら、相変わらず失礼な言い方ですね」

 ヤンの後ろから現れたのは、白い衣に身を包んだ神官と思わしき女性だ。
 荘厳な杖を掲げた女性は、長髪の金髪を後ろで結び、しっかりと杖を構えるとイスカと相対する。

「新手?」

 イスカは目の前で起こった爆発の爆風を利用するように後ろに飛ぶと、自身で開けた大穴の縁に着地した。

「はい、私はこちらのヤンと同じ、『希望の剣』のパーティーであるリアーナと申します。また、帝都ではラクサス教の聖女。敬虔なラクサス神の信徒として日々この身を神職に捧げております。以後お見知り置きを⋯⋯」

「おい!こんな紛い物のエルフに下手に出るなんて恥ずかしくないのか?」

 ヤンは濡れた髪をかき上げると、リアーナに向かって苛立ちを吐き捨てた。

「はて?その貴方はその見下していた者に、今まで押されていたように見えましたが?」

「チッ」

 バツ悪そうに口元を歪めるヤンから視線を外し、リアーナはイスカへと向き直る。

「さて、えぇと、貴女のお名前は?」

「──イスカ」

 イスカが答えると、リアーナはニッコリと笑みを作った。

「まぁ、素敵なお名前。どう?貴女も人族の血が流れているのなら分かるでしょう?私達は魔族を討伐するという崇高な目的の為に動いているのです。──私達の共通の敵は魔族そのものであって、本来私達が争うことはないのです」

 諭す様に優しいリアーナの声音を聞いて、イスカは背筋が寒くなった。

 ──この人、本気です。
 本気で、自分の考えが正しいと信じ切っています。

 そもそもセフィラム教の信徒であるイスカにとって、ラクサス教の教えに共感を覚えたことはない。
 また、そのイスカ自身も寝食を全てセフィラム教に捧げているわけではないため、盲目的に神の信徒を名乗るリアーナの言葉は、イスカにとっては異様なものに写った。

 ───ギィンッ!!


 金属が打ち合う音が響き、小柄な黒い影が宙を舞った。

 クルクルと影は身体を丸めていたが、イスカの隣に舞い降りると身体を伸ばして、甲板に着地した。

「ん。あいつの盾。結構固い」

「フーシェ!大丈夫?」

 フーシェの身体に傷はない。 

「ふぅ、レーベンで会った時だと速すぎてヤバかったけどな。俺の『無敵インビンシブルシールド』に、物理攻撃は通用しねぇよ」

 しかし、大盾を構えたままグスタフがヤンとリアーナの前に出る。

「クソッ、攻め手が足りない。ローガンの爺さんがいればなぁ」

「やめなさい!魔族と組んだ裏切り者のことなんか。そして、エルフの貴女!その横にいる魔族の味方をするのですか!?なんと禍々しい!」

 カチューシャによって角を隠しているフーシェだが、リアーナには分かるのだろう。
 手の甲の血管が浮き出る程に、杖に力をこめる。

「ほら、レーベンで拠点に突っ込んできたって言ったやつがいるだろう。それが、そっちのチビっ子。その仲間がそっちのエルフだ」

 グスタフの言葉に、リアーナは杖を振りかざすとヒステリックに甲板を叩いた。

「あぁ!ローガンは『希望の剣』から追放されたことで、邪神と契約を交わし、ラクサス神の加護に背を向け、背徳者としての道を歩んだのです。それもこれも、全ては魔族のせい⋯⋯その忌まわしき角を、私がラクサス神への信仰の証として捧げましょう!」

 リアーナは、叫ぶと杖を天に向かって掲げる。

「『蘇生操作レイズマリオネット』!」

 光の術式が船の上空へと浮かび上がる。
 柔らかな白色の光が、イスカの穿った大穴へと降り注いだ。

 ガコッ、バタンッ

 光が降り注いだ瓦礫の中から、無数の手が現れた。

「お、おおっ」
「り、あーな様」
「奇跡だ⋯⋯」

 蠢く様に瓦礫を押しのけて、イスカが倒したはずの兵士たちが起き上がってくる。

「剣はなければ、作れば良いのです。死者さえも蘇らせる、これぞラクサス教における神の御業!」

 リアーナは狂気を含んだ声で、フーシェを睨みつけた。

「まっ、ローガンはいなくなったし、ジェイクは捕まった。なら、ここは僕達でやるしかないんでしょ?面倒くさいなぁ」

 ヤンはそう言うと、ローブの中から緑色の薬品が詰まった小瓶を取り出す。

「こいつら、使い物にならなくなるけどいいの?」

「チッ、胸糞悪いけどな」

 グスタフの言葉を免罪符に、ヤンが地面に小瓶を叩きつけた。
 乾いた音と共に、緑の液体が飛散すると液体は甲板に染み込むことなく、気化し始める。

「これで、ドーピング完了っと」

 トンとヤンが杖の先で甲板を叩く。
 ブワッと風が巻き起こると、帰化した煙がスルスルと生き物の様に蘇った兵士たちの鼻腔に侵入した。

「おっ!オオッ!」
「グゴッ!ゴホッ!」

 煙が入った兵士たちの身体が、ビクンッと波打つ。
 次の瞬間、兵士たちの身体が一瞬にして肥大化すると、身体を覆っていたアーマーが、まるで拘束具であったかのように弾け飛んだ。

「うっ、なんて酷い──」

 その醜悪な光景に、イスカが口元を抑えた。

 フーシェは、目の前で行われる惨劇に静かに眼を瞑る。
 その瞳の裏には、レーベンで出会った魔族達の営みが思い返されていた。そこには、人族と魔族の違いはなかった。
 ただ、それぞれの文化の違いが生み出した日々の営みだけが続いていた。

 フッと、息を吐くとフーシェは、双剣『アースブレイカー』を構える。
 フーシェの魔素が込められると、フーシェの怒りに呼応したかのように、『アースブレイカー』がブウンッと刀身を赤く染めた。

「ん。私達魔族を悪と言うなら、そっちは人の姿をした悪魔でしかない。悪の人族⋯⋯悪人は私が倒す」

 イスカは、フーシェの静かな怒りを見て、感情を露わにするフーシェの変化に驚いた。
 そして、目の前の『希望の剣』に対するイスカの怒りはフーシェと同じだった。

 ──ポウッ 

 イスカとフーシェの身体に、新たにユズキの『女神の調律』が舞い降りる。
 目の前の脅威に対して、能力が再配分されたのだ。
 二人は身体の中に、ユズキからの温かい力が満ちていくのを感じていた。

「フーシェ、いくよ!」
「ん」

 短い掛け合いの後、イスカとフーシェは申し合わせたかの様に左右に飛んだ。

 意識は支配され剣を構える、巨大な傀儡と化した兵士と『希望の剣』を一掃するべく、二人は突撃した。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...