うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

トナミカ戦の終わり

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 甲板を蹴る足に力を込めると、グンッと身体は前に飛び出し、その加速力にイスカは自信を深めた。

 ──速いっ!でも、思った通りに身体が動きます!

 今までの50レベルの譲渡とは違い、圧倒的な身体能力向上の体感はないが、自分の身体を動かす分には最適化されていた。

「コ、コロ⋯⋯ス」

 自我を失い、ヤンとリアーナによって傀儡とされた兵士たちが、剣や斧を振り下ろす。

「シッ!」

 イスカは短く息を吐くと、振り下ろされる剣を身体を捻って躱す。そのまま、兵士の懐に飛び込むと短刀を腹に突き刺す。

「クッ、思ったより硬い!でも!──『加速』!」

 基本的な移動スキルだが、能力が上乗せされた状態のイスカにとって、更に速度を増すことは、イスカ自身が一陣の風になったかの如く、剣先のスピードを加速させた。

 ──スシュンッ

 金属を擦ったかの様な音が響くと、兵士の脇腹が切り裂かれる。
 明確な殺傷を目的として人族を斬った感触は、イスカの気持ちに暗い陰を残したが、止まるわけにはいかなかった。

「き、キカ⋯⋯ない!」

 深々と脇腹を切られたはずなのに、兵士は傷口を開く事も厭わず、身体を捻ると、イスカに向かって剣を振るう。

「いいぞ、そこに止めておけ。『炎牢』」

 甲板に真っ赤な魔法術式が描かれると、イスカを囲む様にグリドール兵ごと、炎の檻が出現する。

「アヅっ、あづい⋯⋯」
「こ、焦げる、に、肉焦げ──」

 リアーナの傀儡と化した兵士達が、本能的な恐怖を口にした。しかし、身体を動かす意志は、リアーナのスキルによって剥奪されており、彼らは迫りくるう炎の中、身を焦がしつつもイスカを封じ込めるべく、包囲の輪を狭めることしかできない。

「ん。イスカ、気をつけ!」
「へっ?」

 炎牢の外に跳躍していたフーシェの大声に、思わずイスカは気をつけの姿勢を取って硬直した。

「『八八斬りははぎり』」

 フーシェの手元で双剣『アースブレイカー』がクロスする。
 瞬間キラッと、フーシェの剣が光ったかと思うと、不可視の8✕8の斬撃が、炎の格子を吹き飛ばした。

 ──チュインッ!

「ヒアッ!!」

 フーシェの斬撃が『大地龍アースドラゴン』から作られた、胸当ての先をかすった。

「フーシェ!私のむ、胸っ!チリッ、チリッていった!」

 イスカがフーシェに向かって怒った。

「ん。リズのおっぱいなら危なかったけどイスカなら大丈夫と思った」

 それは、リズの胸の大きさなら確実に当たっていたってこと?

 釈然としない思いがあったが、フーシェの一撃は、炎牢を吹き飛ばすだけでなく、狂戦士と化した兵士達に降り注ぎ、その動きを鈍らせたこともまた事実だ。

「いきます!『ウィルブレード』!」

 イスカは剣を握る手に力を込める。
 レベルが必要な『覚醒』や『進化』と違って、剣技の一つであるウィルブレードは、身体に覚えさせた動きと体内の魔素の放出によって、威力は落ちども、使用することは可能だった。

 居合の様に、イスカが剣を振り抜く。

 光を纏った斬撃が生み出され、10人程の兵士がグスタフ達の方へと吹き飛ばされる。

「『無敵インビンシブルシールド』!」

 グスタフが前方に盾を構えると、盾は鉄壁の防護となり、吹き飛ばされた兵士達を受け止めた。

「むうんっ!この技と力⋯⋯まさか『夜明けの魁星』のヴェイン殿と同じ技か!」

「父さんを知っているの!?」

 驚くイスカに、グスタフはニヤリと笑う。

「まぁ、この技を見たのは一回だけだけどな。だが、お前の技より、父親の技の方が強かったぞ!」

 ──そんなことは、分かっています!
 技も、力もまだまだ未熟。能力だってユズキさんから譲渡されないと、勇者パーティーの人達と戦うことは難しい。

「なら、私はっ!」


 イスカは、『加速』を駆使して身体を捻る。『ウィルブレード』には瞬間の加速と、絶対に勝つという意志の力が必要だ。
 どうすれば、敵を打ち破れるか?
 先の一撃を受け止められたイスカは思考する。

「『ウィルブレード』──!」

 魔素が一瞬にして枯渇する様に剣へと持って行かれる。父親であるヴェインが得意としていたウィルブレードは一撃に重きを置いた技だ。対して、イスカがレーベンで放ったウィルスラッシュは、威力を犠牲にした分攻撃速度に特化していた。
 しかし、ウィルブレードを防いだ盾を打ち破るには、更なる威力が必要とされていた。

「無駄だ!さっきも俺の盾には無力だった!俺の盾は、ヴェイン殿の技すらも超えるっ!」

「クッ、──アアアッ!!クロスッ!!」

 イスカは、剣を振り抜いた。
 一撃では足りない。
 その足りない分は、連撃で補う。
『加速』で振り抜いた瞬間に、更に『加速』を重ねがける。ウィルブレード分の一撃を、無理矢理二連撃に繋げるのだ。
 さっきの、甲板に大穴を開けた力から、身体能力が底上げされていることは分かっていた。
 イスカは筋繊維の悲鳴を無視して、本来一撃しか振れない斬撃を無理矢理、身体を軸として回転しながら、もう一度剣を振るった。

「何っ!」
「グスタフ!防御だ!」

 イスカの眼前に巨大な十字の光が生み出された。

 同時に、グスタフの驚きと、ヤンの叫びが響いた。
 リアーナは、操っている兵士達を盾にしようとしたが、先のイスカの一撃によって多くの兵士は吹き飛ばされており、間に合う兵士はいなかった。

「ウオオオッ!!」

 グスタフの盾がウィルブレードに触れる。 
 十字に連なった光の斬撃は、重なった瞬間に、剣戟の波長が同調し威力が膨れ上がった。
 共鳴するかの様に音が重なり、グスタフの盾が押され始める。

「な、なんだ!あらゆる物理攻撃を弾く無敵の盾がっ!!」

 ビキッ、ビキッ⋯⋯
 盾に亀裂が走り始める。

「こ、これは──波長が重なることで、何かに干渉しているとでもいうのか!?」

 グスタフの驚きは、直ぐに恐怖へと変わる。

「わ、私は逃げるわ!」
「ぼ、僕もだっ!こんなところでやられてたまるか!」

 グスタフの盾で、イスカの攻撃を防ぐことができると考えていたリアーナとヤンが、慌てふためいた様子で左右に避けようとした。

「ん。させない、『四四斬りししぎり』!」

 跳躍したフーシェが、不可視の斬撃を放つ。

 ──ザンッ!!

 まるでドラゴンの爪に抉られたかの様に、グスタフ達3人が立つ甲板の四方が、削り取られた。
 たまたま足元に支柱が入っていたのか、3人の足場は崩れることはなかったが、それが3人の行き場を失わせたことは必然だった。

「ぬおおおっ!」

 最早、グスタフの盾は無数のヒビが入り、今にも弾け飛びそうだった。

「ヒィッ!」
「こ、この神に仕えし聖女が──」

 リアーナの言葉は、弾け飛ぶグスタフの盾と直撃したイスカの攻撃によって掻き消された。

 ──キュオンッ

 十字の斬撃が戦艦の甲板を完全に破壊し、その縦に走った一撃は、船の竜骨を完全に破壊するのに十分だった。

 ミシリッ

 と、分厚い木がへし折れる様な音が響いた。

「ハッハッ──」

 力を使い果たしたイスカの身体に、更に『女神の調律』が降り注いだ。

「ハッ──ユズキさん⋯⋯」

 一気に呼吸が楽になったのをイスカは感じて立ち上がる。空っぽだった身体に力が戻った感触だ。

「逃げよう、イスカ」

 傾き始める甲板の上、隣に降り立ったフーシェがイスカの手を握る。

 甲板には、深く抉られた船の中がむき出しになっていた。

 ──アリガトウ、アリガトウ

 ふと、イスカの耳に突如船の奥底から声が聞こえた。

「イスカ、どうした?」

 フーシェには聞こえない声が、イスカにははっきりと聞こえた。
 そして、エルフの血が流れるイスカにとって、その声の正体を知り、イスカは悲しくなった。

「この声──この船の竜骨には、エルフの神木が使われていたんですね」

 イスカが呟く。

 ──カイホウサレタ。アリガトウ、アリガトウ⋯⋯

 竜骨から聞こえた声はどんどんと小さくなっていくと、直ぐに消えてしまった。
 
 イスカにとって、勇者パーティーに勝てたことへの高揚感など何一つ生まれなかった。
 残された破壊の後見て、虚しさだけが胸に広がるのをイスカは感じていた。

「これが、──戦争なんですね」

 レーベンで、カストールの記憶から見た、生々しい戦場の記憶がイスカの心に思い起こされた。
 そして、自分たちも、戦争という先の見えない世界へと足を踏み込んでしまったことを、イスカは理解するのだった。








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