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終わりの始まり

告白

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「離婚してください」
うっすら涙を浮かべ、震えた声で菜美が言った。
冗談じゃないことはさすがの俺も直ぐに分かった。

確かに喧嘩したままの状況ではあったがどこの家庭でもあるような喧嘩ばかりだ。
数日経てば喧嘩の理由なんか忘れてる。

しかし今回は、いつもより内容が悪い!
菜美の夜遊びだ。それも嘘をついて……

てっきり謝ってくれるのかと思っていた自分がアホらしくなったがとりあえず理由を聞いた!
「え?何で急に?」と俺は少し明るめの口調で答えた。

「前から考えていた。決して思いつきで言ってるんじゃない」と菜美が言った。

待て待て……そうだとしても嘘ついてたのがバレたこのタイミングで言うのはおかしいぞ?
ちゃんと謝ってくれたら許そうと思ってた。
まさか今から俺が謝るのか? 謝らないと間違いなく離婚だぞ? 

俺は自分に言い聞かせたが何を謝れば良いのか何を話せば良いのか言葉が見つからず黙った……

沈黙が続く……
互いに目も合わさず時間だけが過ぎていく……

時間は深夜1時。だらだらしてもしょうがない!
俺が口を開いた。

「何がダメだったの?」

「言われないとわからない?」
呆れた口調で菜美が言う。

俺は耐えた……
また喧嘩になるとこだった。

「私はあなたの家政婦じゃありません」と菜美が言った。

内心それで家政婦と言うなら世間の家政婦さんに失礼だ……ぼったくりの家政婦……
こんな事言えるわけなく「知ってる」とだけ答えた。

うちは共働きだ。家事も分担てのが菜美の理想。
俺は頼まれたらたまに家事を手伝う程度しか正直していなかった。
家事を分担するくらいなら菜美は働かなくて良いから家事をして欲しいのが俺の理想。

今でこそようやく考えが変わってきて菜美の思う理想ほどではないが手伝ってはいる……

世間の女性からしたら「手伝う?」「進んでやれよ」と思っている人が多いだろう……

わかります……言いたい事は良くわかります……
ただ20代前半の頃の俺にはわからなかったです。
「ごめんね」とあの頃の菜美に言いたい……

今はもうお互い30歳。
そして今はあの頃に比べたら自分で言うのもあれだが結構家事もしてるよ?
その自覚があったので俺は答えた。

「昔は確かに協力的じゃなかった。ごめんなさい。今は結構頑張ってると自分では……」

「やったってる感がむかつく」と菜美の返しが早い!

あぁ……今日は何話してもダメだ。
結局どう動いても気に入らないのか……

まぁ菜美の言いたいことはだいたい分かったがこんな問題正直どこの家庭でもあるだろ?
思い遣りがあれば何とかなるなる。
「とりあえず時間遅いからまた今度はなそう?」
俺は明るく言った。

菜美は不満そうな顔で「私は本気だから。その為にいろいろ準備した。」と言う。

準備?
引っ掛かるセリフを言い残し俺たちの長い戦いが始まった……


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