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 それから数日間、町は大騒ぎになった。

 普段何もない田舎町で、それは大事件だった。

 第一発見者でもあり、二人と接触した琥珀と暖は警察から何度も同じようなことを聞かれた。

「彼らは喧嘩しているようには見えなかったかい?」

 その問いに琥珀は激しく頭を振った。

「お兄さん達はすごい仲良しだったよ」

 警察官はなぜか困ったように眉毛を八の字の形にして、しばらくするとまた同じ質問をしてくるのだった。

 警察がおおやけにしていなくても、どこからともなく事件の詳細は噂となって二人の耳に入ってきた。

 警察がこの事件を殺人事件として疑っていると知った時、琥珀は心の底から驚いた。

 二人は出血死だった。

 琥珀が最初に見た赤は、細い布の赤だけではなかったのだ。

 一人は規定量を超えた睡眠薬を服用しており、肢体の傷の位置からもう一人の男に刺されたのだと推定された。

 その後、刺した方の男は自ら刃物を身体に突き立て自死した。

 殺人を犯した後、犯人は自殺。

 町の大人達はこの事件をそう解釈したようだった。

 ―あのお兄さん達がそんなことするなんてあり得ない。

 琥珀はそう訴えたが、みんな琥珀をまるで子ども扱いして聞く耳を持ってくれなかった。

 もうこの話はしたくないとでもいうように事件に蓋をした。みんな何かを隠しているように見えた。

 分かっているけど口にしてはいけない何か。そんなものを腹の中に溜め込んでいる。

 琥珀にはそう思えた。

 殺人事件であるはずなのに、死んだ二人のことはニュースにも新聞の小さな記事にもならなかった。

「絶対に絶対に殺人事件なんかじゃないって」

 学校の帰り道、力説する琥珀に暖は道端の石を蹴りながら「そうだな」と相槌を打つだけだった。

「俺さ、あのお兄さん達は究極の血の誓いを交わしたと思うんだ」

 二人はメロスとその友人セリヌンティウス以上の強い絆で結ばれていて、死を持って何かを誓ったのだ。

 それから琥珀は何かあると「俺は暖とだったら死の誓いができる」と口にするようになった。

 暖はそれに対して「死なんて言葉、簡単に使うもんじゃない」と、大人びた返事で返し、琥珀が拗ねると「琥珀が死んだら俺が悲しいだろ」と付け加え、なんとか琥珀を納得させた。
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