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どうして暖がここに? 今日は一日映画村のはずなのに。
フォトグラファーはファインダーから顔を上げると、何やら考え込むようにあご髭をさすった。真剣な顔をして辺りを見回す。
その目が見物人たちの間を彷徨い、ある一点で止まった。アシスタント兼通訳に何やら話しかける。通訳は大きく頷くと見物人たちの方へと走った。
なんと通訳が引っぱってきたのは暖だった。
舞妓姿の琥珀と学生服の暖を一緒に撮りたいという。
伝統とモダン。時代を超えた若い二人の逢瀬がコンセプトらしい。
「困ったなぁ」
暖はチラリと琥珀の方を見ると、はにかむように微笑んだ。
琥珀はとっさに背を向け、バクバクうるさい胸に手を当てた。
暖は自分が琥珀だと気づいていない。そりゃそうだ。旅館で寝ているはずの琥珀が舞妓姿でここにいるはずがないのだから。
それからの時間はなんだか夢のようだった。暖が琥珀の後ろから手を回したり、向き合ってお互いの手を握りしめたりと、ラブラブなポーズをたくさん取らされた。
一メートル以上近づくなと言われてから、暖とこんなに密着するのは久しぶりだった。
嬉しかった。
暖も最初は緊張していたが、だんだん慣れてきたようで、琥珀を見つめる表情が柔らかくなってきた。
「すごく綺麗で可愛い」
暖は琥珀に囁いた。
暖が女の子にこんなことを言うとは意外だった。どちらかといえば暖はクールな方で、一昨日の夜、あの激白を聞く前までは、暖は女の子に興味がないのではと思っていたくらいだ。
暖の言葉に琥珀は耳の縁までじりじりと赤くする。女の子の姿をしているせいで、まるで心まで女の子になってしまったように感じた。
「かんざしも、着物もよく似合ってる」
琥珀は恥ずかしくてうつむいた。
お、いいね、いいねー! みたいなことを言いながらフォトグラファーがシャッターを切る。
「それじゃ、今度は二人で手を繋いでスキップしてみて」
通訳の言葉に耳を疑った。
ここでスキップ? 芸術家の考えることはよく分からない。
琥珀と暖が手を繋ぎスキップを始めると、琥珀のへんてこスキップを見た見物人たちから笑いが起きた。中には琥珀を指さし腹を抱えて笑っている子どももいる。
スキップを笑われることに慣れてはいる琥珀だったが、なんだか今日はどうしようもなく悲しくなった。
その時暖が英語でフォトグラファーに向かって何か言った。
「そんな高い下駄履いてたんじゃスキップなんかできないよな」
琥珀は舞妓用のおこぼと呼ばれるぽっくり下駄を履いていた。
どうやら暖は、この下駄じゃ琥珀にスキップは無理だとフォトグラファーに言ってくれたようだった。
暖の優しさに鼻の奥がツンとして目頭が熱くなった。
ふいに暖の手が琥珀に伸びてきたかと思うと、その指先が琥珀の目元をすくった。
「笑う奴らのことなんてほっとけ。世界一可愛いんだから、しゃんと胸を張ってろ」
すると暖はいきなり琥珀をお姫様抱っこした。
「スキップの代わりにこんなのどうですか?」
今度は日本語だったので、見物人たちから拍手が湧き起こった。
美しい夕陽を背景に撮った一枚を最後に、撮影は終わった。
「なんだかんだ言って、けっこう楽しかったな」
暖は夕陽に目を細めた。琥珀も何やら達成感のようなものを感じ、コクリとうなづく。
このまま、もっと暖と二人で一緒にいたかった。
けれど、撮影終了でわさわさしているうちに、琥珀は暖の姿を見失ってしまった。
フォトグラファーはファインダーから顔を上げると、何やら考え込むようにあご髭をさすった。真剣な顔をして辺りを見回す。
その目が見物人たちの間を彷徨い、ある一点で止まった。アシスタント兼通訳に何やら話しかける。通訳は大きく頷くと見物人たちの方へと走った。
なんと通訳が引っぱってきたのは暖だった。
舞妓姿の琥珀と学生服の暖を一緒に撮りたいという。
伝統とモダン。時代を超えた若い二人の逢瀬がコンセプトらしい。
「困ったなぁ」
暖はチラリと琥珀の方を見ると、はにかむように微笑んだ。
琥珀はとっさに背を向け、バクバクうるさい胸に手を当てた。
暖は自分が琥珀だと気づいていない。そりゃそうだ。旅館で寝ているはずの琥珀が舞妓姿でここにいるはずがないのだから。
それからの時間はなんだか夢のようだった。暖が琥珀の後ろから手を回したり、向き合ってお互いの手を握りしめたりと、ラブラブなポーズをたくさん取らされた。
一メートル以上近づくなと言われてから、暖とこんなに密着するのは久しぶりだった。
嬉しかった。
暖も最初は緊張していたが、だんだん慣れてきたようで、琥珀を見つめる表情が柔らかくなってきた。
「すごく綺麗で可愛い」
暖は琥珀に囁いた。
暖が女の子にこんなことを言うとは意外だった。どちらかといえば暖はクールな方で、一昨日の夜、あの激白を聞く前までは、暖は女の子に興味がないのではと思っていたくらいだ。
暖の言葉に琥珀は耳の縁までじりじりと赤くする。女の子の姿をしているせいで、まるで心まで女の子になってしまったように感じた。
「かんざしも、着物もよく似合ってる」
琥珀は恥ずかしくてうつむいた。
お、いいね、いいねー! みたいなことを言いながらフォトグラファーがシャッターを切る。
「それじゃ、今度は二人で手を繋いでスキップしてみて」
通訳の言葉に耳を疑った。
ここでスキップ? 芸術家の考えることはよく分からない。
琥珀と暖が手を繋ぎスキップを始めると、琥珀のへんてこスキップを見た見物人たちから笑いが起きた。中には琥珀を指さし腹を抱えて笑っている子どももいる。
スキップを笑われることに慣れてはいる琥珀だったが、なんだか今日はどうしようもなく悲しくなった。
その時暖が英語でフォトグラファーに向かって何か言った。
「そんな高い下駄履いてたんじゃスキップなんかできないよな」
琥珀は舞妓用のおこぼと呼ばれるぽっくり下駄を履いていた。
どうやら暖は、この下駄じゃ琥珀にスキップは無理だとフォトグラファーに言ってくれたようだった。
暖の優しさに鼻の奥がツンとして目頭が熱くなった。
ふいに暖の手が琥珀に伸びてきたかと思うと、その指先が琥珀の目元をすくった。
「笑う奴らのことなんてほっとけ。世界一可愛いんだから、しゃんと胸を張ってろ」
すると暖はいきなり琥珀をお姫様抱っこした。
「スキップの代わりにこんなのどうですか?」
今度は日本語だったので、見物人たちから拍手が湧き起こった。
美しい夕陽を背景に撮った一枚を最後に、撮影は終わった。
「なんだかんだ言って、けっこう楽しかったな」
暖は夕陽に目を細めた。琥珀も何やら達成感のようなものを感じ、コクリとうなづく。
このまま、もっと暖と二人で一緒にいたかった。
けれど、撮影終了でわさわさしているうちに、琥珀は暖の姿を見失ってしまった。
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