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 外を歩けば、どこからともなくクリスマスソングが聞こえてくる頃、外国から大きな封筒が届いた。

 中には千本鳥居の前で、暖が琥珀をお姫様抱っこしている写真が入っていた。

 結局、暖と修学旅行の話はしていない。暖も何も聞いてこなかった。この日以来、いや、もうずっと前から琥珀の頭は暖でいっぱいだ。

 琥珀は写真の自分をしみじみと眺めた。

 暖を見つめるその目はトロンと甘く潤んでいた。これは演技でもなんでもない。素人の琥珀に演技でこんな微妙な目つきはできない。

 写真の中の舞妓は、完全に暖に恋していた。

 誰がどう見ても、「あなたが好き」その目はそう語っていた。

 琥珀は長い間写真を手に持ったまま、項垂れていた。

 いつから? 

 いつから暖に対してこんな気持ちになった? 

 血の誓いその一、琥珀と暖は死ぬまで唯一無二の親友である!

 自分は血の誓いで一番大事なその一を破ってしまった。

 暖は琥珀の大事な親友なのに。

 琥珀の憧れる真の男の友情を結ぶのに、暖ほどふさわしい人物はいないのに。

 メロスとセリヌンティウスよりも、雪の日のあのお兄さんたちよりも、琥珀と暖は固い男の絆で結ばれるはずだったのに。

 暖には好きな女の子がいるのに。男の自分がこんな気持ちを抱いてしまって暖に申し訳なかった。

 暖の好きな子……。

 大きな岩に胸を押し潰されたような気分になる。悲しくて、悲しくて。

 琥珀は知った。

 悲しいがいっぱい集まると、悲しいは苦しいになるのだと。



 毎年クリマスイヴは暖と二人で青龍山から夜景を眺めるのが恒例だった。

 遠くに見える灯台がクリスマスの時にだけ、赤と緑色に光るのだ。

 その後、たいていは琥珀の家で夕食とクリスマスケーキを食べる。今年も暖のお父さんはイヴの夜は仕事のようだったので、いつもだったら琥珀の家で暖は過ごすはずだった。

 が、今年は事情が違った。

 暖が例の激白についでこんな爆弾発言をしたのだった。

『イヴはその子と一緒に過ごすよ』

 そのことを人づてに聞いた琥珀は地面にのめり込むほど落ち込んだ。

 暖のその言葉は自分との予定を自動キャンセルされたのも同然だった。

 それにイヴをその子と過ごすということは、もはや暖の片思いではないのではないか? 




 終業式とクリスマスイヴが重なったその日は、朝から雪が降っていた。

 琥珀の姉たちは明日はホワイトクリスマスになると興奮気味だった。

「イヴは暖君、うちに来るんでしょ? それとも今年は暖君の家?」

 大姉にそう聞かれた琥珀は、「暖は今年はうちには来ないよ」

 とだけ答えた。

 暖は暖の好きな女の子と一緒にイヴを過ごす。琥珀の出番はないのだ。それに……。

 琥珀は小さく唇を噛んだ。
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