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【第一部】一章 したいこともできないこんな世の中じゃ
九、時計塔でのカミングアウト
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「おっしゃっている意味が」
「動揺してるね。澄ました顔してなんでもできますって割りに、中身は随分と子供っぽい」
当り前だ。僕はまだ十三だ。君だってまだ十五だろ! そう言いたい気持ちをグッと堪える。
彼が一体何をしたいのかが分からない以上、下手なことは言ってはいけない。最低限そこだけは死守しようと静かに奥歯を噛み締める。
「僕では何か力不足だという意味でしょうか?」
「そうは言わないよ。独りよがりで、身勝手だとは思うけど」
「随分、強い言葉をお使いになりますね……?」
僕の瞳は、彼が言うように分かりやすい感情が乗っているのだろうか。もはや睨みあってる状況じゃ、ちょっと揺れただけで色々と読み取られてしまいそうだ。
ブライトルはすでにスイッチを切り替えたようで、見事に瞳に乗せる感情を変えていた。
浮かんでいるのは分かりやすい蔑みだ。
「っ僕は何か嫌われるようなことを、してしまいましたか?」
「フェアじゃないな。俺は君に素を見せた。君も見せてもいいんじゃないか?」
何が望みだ。何を狙っている? 読めない。当り前だ。
僕たちは子供の頃から本心を隠す訓練を始めているけど、これはそういうレベルじゃない。この人はブライトルという性格を完全に演じ切っている。
一瞬だけを生きる役者とも違う。そもそもやっていることが違い過ぎる。ものすごく恥ずかしくなった。僕は、偉そうになにをしていたんだろう?
それよりも、一番分からないのは――。
「どうして、僕にそっちの顔を見せる気になったんですか?」
「へぇ? それが素? 違うよね。もっと色々持ってる。そうだろ? 本当の君はもっと複雑だ」
僕はとうとう顔をしかめてしまった。
この人、本当に十五歳か? こんなに色んなことが分かるものなんだろうか。日本ではここまで真剣な腹の探り合いなんて必要ないし、ここでの僕は無表情で乗り切っていたから分からない。
「何がしたいんですか? 弱みを握りたいわけでもなさそうだ」
「別に? そんなことをするなら普段通りに付き合った方が余程楽だよ。みんなすぐにボロを出してくれる」
「分からないな、本当に何なんだ、あんた」
「ただの好奇心だよ。『ニュドニアの鋼鐵』の孫がどんな人間なのか知りたいだけ」
ブライトルが誰もが騙されてしまいそうな顔で笑う。
自分でも驚くくらい感情が動いた。
ふざけるな!
「本当に嘘が上手だな。あんた僕が嫌いだろ」
こんなときでも中々動かない表情筋がビキビキと引き攣っている。目が燃えるように熱い。
ここまで言われれば嫌でも分かる。今まで親切にしてきたのも急に近づいてきたのも、僕を知るためじゃなくてバカにするためだ。
自国のために利用しとうとか、そんな大層な理由もない。本当に、ただただ僕という人間を貶めるためだ。
「そうだね。最初は興味なんかなかったんだけどな、ここ一週間くらいで今まで表面に出てなかったものがいきなり分かりやすくなった。うまく取り繕ってるのに変なところで隙がある。なあ君、そんなへたくそで何をする気だ? 何を成せると思ってるんだ? 大した向上心もないのに」
喉を震わせて冷笑される。
何故ここまで言われなきゃいけないのか。もしかしたら彼の怒りのポイントに触れてしまったのかもしれない。
でも、そんなこと僕には関係ない!
「それが何ですか? 何かご迷惑でもかけましたか。それとも、まさか自分のコンプレックスをただぶつけてるだけとか言わないですよね?」
ブライトルの目が一瞬硬直した。
図星か。
これでも精神年齢はこちらが上だ。そう簡単にやられたりしたくない。
「ほんと、君を見てるとイライラするね」
「それは、お互い様かもしれませんね」
とうとう僕らは分かりやすく睨みあった。身長差があるから僕の方が不利だけど、絶対に負けたくない。
何か言ってやりたいのに、核心を衝ける言葉が思いつかない。下手な言葉は向こうを有利にするだけだ。目を逸らすことだって負けになる。
これが漫画なら、バチバチと火花が散っている。そんな状態をどのくらい続けたのか、不意に目の端に土煙とモカト特有の発光した粒子が立ち上るのが映った。
この高さから見えるってことは、実際はかなり大きなものだと言うことだ。
ブライトルも気付いたのだろう目の勢いが削がれている。
「一時休戦」
「言われなくても」
別に示し合わせたわけでもないのに、二人同時に土煙の方向へ顔を向ける。
あれだけの強さのモカトの粒子ということは、恐らくモクトスタが起動されたのだ。
こんな街中で?
モクトスタは別名の通り、基本的に訓練か戦争でしか利用されることはない。下手に使うと重大な事故に繋がるからだ。
練習機すら登録が義務付けられていて、使用者も責任を持つ必要がある。
「赤い、モクトスタ……?」
様子を伺っていると怪訝そうな声でブライトルが呟く。ハッとした。
「イアン……?」
慌てて街並みを確認する。商業街の端っこ、市場の裏通り。日が沈みかけて薄暗い時間。
主人公イアンとヒロインの出会いのシーンだ! 彼が誰も起動したことのないグロリアスを起動した瞬間。後に、この赤いモクトスタの粒子はイアンの代名詞となる。
油断した。もう少し先だと思っていたから、まだイアンの素行を調べさせ始めたばかりだった。
「エドマンド。何か知ってるのか?」
何か負けたと感じているのだろうか、悔しそうな顔をしてる。
「あんた、本当に僕には隠さないことにしたんだな」
「君相手に隠してもね。それで?」
「ちょっと知ってる子がね、多分あそこにいるんだ」
何でそんなことが分かるんだって顔だな。
流石に言わないよ。この世界の未来を少しだけ知ってるなんて。
「ブライトル殿下、今日はこの辺にしませんか? どうやら忙しくなりそうなので」
「名前呼びでいいって言っただろ? お前はどうせ俺を敬ってなんかいないんだから」
「不敬罪で訴えられたら困りますからね」
「もう存在が不敬なんだよ」
またイラッとして睨みつけると、勝ち誇ったような顔をしていて更にイラついた。
「動揺してるね。澄ました顔してなんでもできますって割りに、中身は随分と子供っぽい」
当り前だ。僕はまだ十三だ。君だってまだ十五だろ! そう言いたい気持ちをグッと堪える。
彼が一体何をしたいのかが分からない以上、下手なことは言ってはいけない。最低限そこだけは死守しようと静かに奥歯を噛み締める。
「僕では何か力不足だという意味でしょうか?」
「そうは言わないよ。独りよがりで、身勝手だとは思うけど」
「随分、強い言葉をお使いになりますね……?」
僕の瞳は、彼が言うように分かりやすい感情が乗っているのだろうか。もはや睨みあってる状況じゃ、ちょっと揺れただけで色々と読み取られてしまいそうだ。
ブライトルはすでにスイッチを切り替えたようで、見事に瞳に乗せる感情を変えていた。
浮かんでいるのは分かりやすい蔑みだ。
「っ僕は何か嫌われるようなことを、してしまいましたか?」
「フェアじゃないな。俺は君に素を見せた。君も見せてもいいんじゃないか?」
何が望みだ。何を狙っている? 読めない。当り前だ。
僕たちは子供の頃から本心を隠す訓練を始めているけど、これはそういうレベルじゃない。この人はブライトルという性格を完全に演じ切っている。
一瞬だけを生きる役者とも違う。そもそもやっていることが違い過ぎる。ものすごく恥ずかしくなった。僕は、偉そうになにをしていたんだろう?
それよりも、一番分からないのは――。
「どうして、僕にそっちの顔を見せる気になったんですか?」
「へぇ? それが素? 違うよね。もっと色々持ってる。そうだろ? 本当の君はもっと複雑だ」
僕はとうとう顔をしかめてしまった。
この人、本当に十五歳か? こんなに色んなことが分かるものなんだろうか。日本ではここまで真剣な腹の探り合いなんて必要ないし、ここでの僕は無表情で乗り切っていたから分からない。
「何がしたいんですか? 弱みを握りたいわけでもなさそうだ」
「別に? そんなことをするなら普段通りに付き合った方が余程楽だよ。みんなすぐにボロを出してくれる」
「分からないな、本当に何なんだ、あんた」
「ただの好奇心だよ。『ニュドニアの鋼鐵』の孫がどんな人間なのか知りたいだけ」
ブライトルが誰もが騙されてしまいそうな顔で笑う。
自分でも驚くくらい感情が動いた。
ふざけるな!
「本当に嘘が上手だな。あんた僕が嫌いだろ」
こんなときでも中々動かない表情筋がビキビキと引き攣っている。目が燃えるように熱い。
ここまで言われれば嫌でも分かる。今まで親切にしてきたのも急に近づいてきたのも、僕を知るためじゃなくてバカにするためだ。
自国のために利用しとうとか、そんな大層な理由もない。本当に、ただただ僕という人間を貶めるためだ。
「そうだね。最初は興味なんかなかったんだけどな、ここ一週間くらいで今まで表面に出てなかったものがいきなり分かりやすくなった。うまく取り繕ってるのに変なところで隙がある。なあ君、そんなへたくそで何をする気だ? 何を成せると思ってるんだ? 大した向上心もないのに」
喉を震わせて冷笑される。
何故ここまで言われなきゃいけないのか。もしかしたら彼の怒りのポイントに触れてしまったのかもしれない。
でも、そんなこと僕には関係ない!
「それが何ですか? 何かご迷惑でもかけましたか。それとも、まさか自分のコンプレックスをただぶつけてるだけとか言わないですよね?」
ブライトルの目が一瞬硬直した。
図星か。
これでも精神年齢はこちらが上だ。そう簡単にやられたりしたくない。
「ほんと、君を見てるとイライラするね」
「それは、お互い様かもしれませんね」
とうとう僕らは分かりやすく睨みあった。身長差があるから僕の方が不利だけど、絶対に負けたくない。
何か言ってやりたいのに、核心を衝ける言葉が思いつかない。下手な言葉は向こうを有利にするだけだ。目を逸らすことだって負けになる。
これが漫画なら、バチバチと火花が散っている。そんな状態をどのくらい続けたのか、不意に目の端に土煙とモカト特有の発光した粒子が立ち上るのが映った。
この高さから見えるってことは、実際はかなり大きなものだと言うことだ。
ブライトルも気付いたのだろう目の勢いが削がれている。
「一時休戦」
「言われなくても」
別に示し合わせたわけでもないのに、二人同時に土煙の方向へ顔を向ける。
あれだけの強さのモカトの粒子ということは、恐らくモクトスタが起動されたのだ。
こんな街中で?
モクトスタは別名の通り、基本的に訓練か戦争でしか利用されることはない。下手に使うと重大な事故に繋がるからだ。
練習機すら登録が義務付けられていて、使用者も責任を持つ必要がある。
「赤い、モクトスタ……?」
様子を伺っていると怪訝そうな声でブライトルが呟く。ハッとした。
「イアン……?」
慌てて街並みを確認する。商業街の端っこ、市場の裏通り。日が沈みかけて薄暗い時間。
主人公イアンとヒロインの出会いのシーンだ! 彼が誰も起動したことのないグロリアスを起動した瞬間。後に、この赤いモクトスタの粒子はイアンの代名詞となる。
油断した。もう少し先だと思っていたから、まだイアンの素行を調べさせ始めたばかりだった。
「エドマンド。何か知ってるのか?」
何か負けたと感じているのだろうか、悔しそうな顔をしてる。
「あんた、本当に僕には隠さないことにしたんだな」
「君相手に隠してもね。それで?」
「ちょっと知ってる子がね、多分あそこにいるんだ」
何でそんなことが分かるんだって顔だな。
流石に言わないよ。この世界の未来を少しだけ知ってるなんて。
「ブライトル殿下、今日はこの辺にしませんか? どうやら忙しくなりそうなので」
「名前呼びでいいって言っただろ? お前はどうせ俺を敬ってなんかいないんだから」
「不敬罪で訴えられたら困りますからね」
「もう存在が不敬なんだよ」
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