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第四章 もし望めば死亡フラグだって折れるんだ
三十七、トイメトアの決戦②
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(引き続き戦闘が続きます。BL要素は0.5%くらいです。すみません)
すぐに逃げ込む形で入ったホール跡地の中。できるだけ目立たないように行動しようとしたのは全くの無駄となった。
行く先々にモカト弾が仕掛けられていて、徐々に中央へと誘導されたからだ。
逃げることもできずに、仕方なく敵の思惑通りの道を進む。
辿り着いたのは、通路の先、明かりが広がる大きなスペースだった。
広さはサッカーコートくらいだろうか。何かのイベントの残骸が瓦礫となってあちらこちらに横たわり、背後から流れ込んできた爆発の煙と相まって災害現場のようにも見える。
「そういう、ことなんだな」
その瓦礫の一つ。モニュメントか何かだったのだろう高く尖った部分の先に、彼はいた。
真っ赤な長い髪を一つに結んだ精悍な男。年齢は隠されているが、実際はまだ二十二歳と若い。僕くらいの頃から戦争を経験し、傭兵として生きて来た。
アーチー・カメル。僕を殺す予定の人間。
ブライトルの作戦が決まった時点で彼との対峙がどうなるかと思っていたけど、やっぱり運命ってものは中々簡単じゃないらしい。左足が砂利を踏み潰す音がした。
「お前、エドマンド・フィッツパトリックか?」
オープン通信が届く。
「……そうだ。あんた、アーチー・カメルだな」
「へぇ! 俺も結構有名だな! に、しても。本当にまだガキじゃないか。底が知れるな! ニュドニア!」
「……何でこんな回りくどいことを?」
「本当の狙いはグロリアスとイアン・ブロンテだったんだけどな。お前でもそれなりに利用価値があるからさ。『若きエース』」
「光栄だな。『戦場の死神』」
「その名前は昔のものだ。今は『戦鬼の懐刀』で頼む。気に入ってるんでね」
名前に拘るような性格じゃないはずなのに、忠誠心か。本当に厄介だ。
「少し呼びにくいな」
「ははは! 確かにな! それだけが難点だ。――さて、じゃあ始めようか」
「――ああ」
僕らは同時に走り出した。
実力も体力も向こうが上。
こちらのアドバンテージは彼の機体情報を細部まで知っていることくらい。
だとしても……! 少しでも、時間を稼ぐ……!
ブースト・ダブルほどのスピードで、青白いモカト粒子を放ちながら切り合う。
僕のメインの武器は二本のショートソード。体格を考えてこれにした。
キィン!
クロスしたショートソードでアーチーの巨大な鎌を弾いて体勢を崩させる。
微かに空いた隙間に通すように剣を突き出しても、するりと躱された。
彼のすごいところは、強靭な体とテクニックもだけど、何より反射神経と柔軟性だ。
大鎌という武器を使っているのに、どんなに態勢を崩してもすぐに立て直す。
想像以上に厄介だ。
「ぐっ……!」
刃の部分を避ければ、今度は柄の部分で打撃される。一撃入れられた右脇腹に手を添える。
大丈夫だ。ダメージは少ない。
その後も何度か武器をぶつけ合って、一方的に僕が攻撃を受けた。
一度距離を取り呼吸を整える。緊張と恐怖、興奮、不安、高揚……。様々な感情で平静を保つのに苦労する。
「変わったモクトスタだな。最新型か」
「……モカトの加工技術で先を越されるとは思わなかった。通信障害はどうやって?」
「そんなん俺が知るかよ。知りたきゃ、捕虜にでもなるんだな」
「そうか。興味があったのに、残念だっ」
また同時に飛び出す。
ガンッ!
トップスピードで武器と武器がぶつかった衝撃で瓦礫が円状に四散する。僕とアーチーの周辺だけ何もなくなって、まるでリングのようだ。
さっきから腰を落として低い位置から懐に入ろうと試しているけど、ことごとく阻止されている。
攻め込めば攻め込むほど、攻撃を受ける頻度が上がってきていた。
器用に動く大鎌は、気を抜けば刃先が急所を狙ってくる。刃先を弾けば柄が迫る。
それを避ければ今度は回転の力を利用した蹴りが飛んできた。
辛うじて蹴りを左腕で防ぎ、右足に力を込めて一歩踏み込む。右手の剣で左から右へ一直線に切り付けた。
「ぉっと……!」
これも避けるかっ!
アーチーは軸足のモクトスタを逆噴射させたのだ。僕の攻撃は微かに相手の装甲を削るだけに留まる。
「エースの名前は伊達じゃないな! こんなに楽しめるのは久しぶりだ!」
こっちはどう攻めるかで頭が一杯なのに、向こうは軽口を叩く余裕すらあるようだ。
集中力が切れそうになる。
ダメだ。焦るな。
ホールに入って約十五分。イアンたちと別れてから一時間も経っていない。一斉攻撃の予定時間まであと三十分を切っている。本来ならすでに東側へ移っている頃合いだ。
作戦本部からの指示が届かない上に、逃げることも不可能。僕にできるのはこの男の足止めしかなかった。
「ご期待に、沿えて、なによりだ」
交渉はともかく、話術は得意じゃないけどなりふり構っていられない。
「あんたの機動力はさすがだな。足に重点的にモカトを使用することで、ブースト・トリプル以上のスピードを出す。その分他の装甲は脆弱。戦闘スタイルは大鎌を使った大ぶりな攻撃なように見せて、実は肉弾戦の方が得意だ」
「……よく調べてるじゃねぇか。どこからその情報を得た」
「知りたかったら、捕虜にでもなるか?」
「はははは! いいね! 中々面白いじゃねぇか! エドマンド・フィッツパトリック!」
「その褒め言葉は貴重だな。僕は真面目で通っているんだ」
「そうだろうな。なぁ、俺は時間稼ぎが嫌いだ。戦うのが好きなもんでね。でも……五回だ」
僕は無表情を貫いた。何の回数かがすぐに分かったからだ。
「俺がお前に致命的な攻撃を入れた回数だ。多少装甲でカバーできても、蓄積されて動きが鈍くなる頃だが、平気そうだな?」
「……最新型だからな」
「その技術、欲しいね。あいつが喜びそうだ」
アーチーが目を爛々と輝かせた。
僕は下手くそに口角を上げた。
攻撃が通らないのは当然だ。僕の専用機は、対アーチー・カメル用に造ってもらったからだ。
流動的に防御や攻撃ができるように、あえて全身のモカト量を限界まで低くしている。
そこへ任意の場所のみを必要に応じて強化できるようにした。
咄嗟の判断を間違えば、一度でモクトスタを破壊されてしまう諸刃の剣だ。でも、お陰で今のところは原作よりも戦えている。
「名前は? 何て付けた」
「ライト。灯という意味だ」
この名前は原作通りだ。僕は『灯』だと思っているけど、実際はシンプルに『光』かもしれないし、他にも『太陽光』という意味もある。
偶然とはいえブライトルの名前をもじっているのが少し複雑だ。
「ライト、か。『英雄』に『光』ね。実に前向きな名前だ」
「ナウト。『虚無』だなんて、あんたも大概だと思うけどな」
「っお前! どこで、それを……」
アーチーの顔が険しくなる。
知っているさ。あんたのことは、記憶の限りを尽くして調べ上げた。
「さあ? 人徳かもしれないな?」
「……そうか。もう、いい」
アーチーが鎌から手を離す。答える気のない僕に興味を失ったのだろうか。
次の瞬間には、男は僕の射程ギリギリのところまで来ていた。
来るっ……!
ガキィィィン……!
アーチーの強化された拳が、腕をクロスしてガードした僕を殴り飛ばす。
体が浮いてバランスを崩してしまいそうになる。腕の強化を解除して、モカトを両足に移動する。酷い土煙を上げて、瓦礫の中を後退した。
「なるほどな」
ああ、ライトの性能がバレたかもしれない。
僕はゆっくりと立ち上がると、足を強化した。
ドォォォン!
ナウトとライトが同時にブーストを使った衝撃でホールが揺れる。
崩れ落ちて空が覗く天井から、ガラガラと音を立てて照明だった物が落ちていく。
腹、防御。右手を強化、振り切った拳は避けられた! 蹴りがくる! 両腕でガー……。
「ガッ……ぁ、はっ……!」
上段蹴りが、フェイント……! 本命はボディー!
どんな体幹をしていたら、こんな動きができるんだっ! 高く上げられていた足がゆっくりと下りていくのが見える。腹への衝撃で呼吸が止まる。意識が白む。ギリギリの所で顔を上げれば、思い切りアッパーを食らった。
「ガハッ……!」
ブラックアウト。
完全に一瞬意識を刈り取られた。
「……はぁっ!」
呼吸が戻ったときには、モクトスタを破壊されかけて地面に倒れ込んでいた。
アーチーが僕に馬乗りになって拳を握る。
揺らされた脳のお陰で視界が定まらない。
「ラ、イト……」
「お前のライトはもう動かねぇよ、俺を暴いたこと、後悔して死ね」
ちがう。そうじゃな、い。
ブライトル……。……死にたく、ない……。
ゆらゆらと力の入らない両腕で頭を庇い、強化する。壊れかけたライトが精一杯腕と頭の防御力を上げた。
「へぇ? 随分悪あがきするじゃねぇか」
不意にアーチーが立ち上がった。
「……お前は今、確実に殺したほうがよさそうだ」
そう言って手にしたのはナイフのようだ。普通のナイフだ。
アーチーが僕の頭をわしづかみにする。恐らく、狙いは、首……強化……。
だめ、か……。
ライトは動かない。もう、装備するだけの体力が残っていなかった。
サラサラと青白い粒子が消えて行く。
もう何の手も残っていない。諦めるつもりはなかったけど、どうすることもできないと顔をしわくちゃにしたとき、視界の隅を真っ赤な粒子が通り過ぎた。
すぐに逃げ込む形で入ったホール跡地の中。できるだけ目立たないように行動しようとしたのは全くの無駄となった。
行く先々にモカト弾が仕掛けられていて、徐々に中央へと誘導されたからだ。
逃げることもできずに、仕方なく敵の思惑通りの道を進む。
辿り着いたのは、通路の先、明かりが広がる大きなスペースだった。
広さはサッカーコートくらいだろうか。何かのイベントの残骸が瓦礫となってあちらこちらに横たわり、背後から流れ込んできた爆発の煙と相まって災害現場のようにも見える。
「そういう、ことなんだな」
その瓦礫の一つ。モニュメントか何かだったのだろう高く尖った部分の先に、彼はいた。
真っ赤な長い髪を一つに結んだ精悍な男。年齢は隠されているが、実際はまだ二十二歳と若い。僕くらいの頃から戦争を経験し、傭兵として生きて来た。
アーチー・カメル。僕を殺す予定の人間。
ブライトルの作戦が決まった時点で彼との対峙がどうなるかと思っていたけど、やっぱり運命ってものは中々簡単じゃないらしい。左足が砂利を踏み潰す音がした。
「お前、エドマンド・フィッツパトリックか?」
オープン通信が届く。
「……そうだ。あんた、アーチー・カメルだな」
「へぇ! 俺も結構有名だな! に、しても。本当にまだガキじゃないか。底が知れるな! ニュドニア!」
「……何でこんな回りくどいことを?」
「本当の狙いはグロリアスとイアン・ブロンテだったんだけどな。お前でもそれなりに利用価値があるからさ。『若きエース』」
「光栄だな。『戦場の死神』」
「その名前は昔のものだ。今は『戦鬼の懐刀』で頼む。気に入ってるんでね」
名前に拘るような性格じゃないはずなのに、忠誠心か。本当に厄介だ。
「少し呼びにくいな」
「ははは! 確かにな! それだけが難点だ。――さて、じゃあ始めようか」
「――ああ」
僕らは同時に走り出した。
実力も体力も向こうが上。
こちらのアドバンテージは彼の機体情報を細部まで知っていることくらい。
だとしても……! 少しでも、時間を稼ぐ……!
ブースト・ダブルほどのスピードで、青白いモカト粒子を放ちながら切り合う。
僕のメインの武器は二本のショートソード。体格を考えてこれにした。
キィン!
クロスしたショートソードでアーチーの巨大な鎌を弾いて体勢を崩させる。
微かに空いた隙間に通すように剣を突き出しても、するりと躱された。
彼のすごいところは、強靭な体とテクニックもだけど、何より反射神経と柔軟性だ。
大鎌という武器を使っているのに、どんなに態勢を崩してもすぐに立て直す。
想像以上に厄介だ。
「ぐっ……!」
刃の部分を避ければ、今度は柄の部分で打撃される。一撃入れられた右脇腹に手を添える。
大丈夫だ。ダメージは少ない。
その後も何度か武器をぶつけ合って、一方的に僕が攻撃を受けた。
一度距離を取り呼吸を整える。緊張と恐怖、興奮、不安、高揚……。様々な感情で平静を保つのに苦労する。
「変わったモクトスタだな。最新型か」
「……モカトの加工技術で先を越されるとは思わなかった。通信障害はどうやって?」
「そんなん俺が知るかよ。知りたきゃ、捕虜にでもなるんだな」
「そうか。興味があったのに、残念だっ」
また同時に飛び出す。
ガンッ!
トップスピードで武器と武器がぶつかった衝撃で瓦礫が円状に四散する。僕とアーチーの周辺だけ何もなくなって、まるでリングのようだ。
さっきから腰を落として低い位置から懐に入ろうと試しているけど、ことごとく阻止されている。
攻め込めば攻め込むほど、攻撃を受ける頻度が上がってきていた。
器用に動く大鎌は、気を抜けば刃先が急所を狙ってくる。刃先を弾けば柄が迫る。
それを避ければ今度は回転の力を利用した蹴りが飛んできた。
辛うじて蹴りを左腕で防ぎ、右足に力を込めて一歩踏み込む。右手の剣で左から右へ一直線に切り付けた。
「ぉっと……!」
これも避けるかっ!
アーチーは軸足のモクトスタを逆噴射させたのだ。僕の攻撃は微かに相手の装甲を削るだけに留まる。
「エースの名前は伊達じゃないな! こんなに楽しめるのは久しぶりだ!」
こっちはどう攻めるかで頭が一杯なのに、向こうは軽口を叩く余裕すらあるようだ。
集中力が切れそうになる。
ダメだ。焦るな。
ホールに入って約十五分。イアンたちと別れてから一時間も経っていない。一斉攻撃の予定時間まであと三十分を切っている。本来ならすでに東側へ移っている頃合いだ。
作戦本部からの指示が届かない上に、逃げることも不可能。僕にできるのはこの男の足止めしかなかった。
「ご期待に、沿えて、なによりだ」
交渉はともかく、話術は得意じゃないけどなりふり構っていられない。
「あんたの機動力はさすがだな。足に重点的にモカトを使用することで、ブースト・トリプル以上のスピードを出す。その分他の装甲は脆弱。戦闘スタイルは大鎌を使った大ぶりな攻撃なように見せて、実は肉弾戦の方が得意だ」
「……よく調べてるじゃねぇか。どこからその情報を得た」
「知りたかったら、捕虜にでもなるか?」
「はははは! いいね! 中々面白いじゃねぇか! エドマンド・フィッツパトリック!」
「その褒め言葉は貴重だな。僕は真面目で通っているんだ」
「そうだろうな。なぁ、俺は時間稼ぎが嫌いだ。戦うのが好きなもんでね。でも……五回だ」
僕は無表情を貫いた。何の回数かがすぐに分かったからだ。
「俺がお前に致命的な攻撃を入れた回数だ。多少装甲でカバーできても、蓄積されて動きが鈍くなる頃だが、平気そうだな?」
「……最新型だからな」
「その技術、欲しいね。あいつが喜びそうだ」
アーチーが目を爛々と輝かせた。
僕は下手くそに口角を上げた。
攻撃が通らないのは当然だ。僕の専用機は、対アーチー・カメル用に造ってもらったからだ。
流動的に防御や攻撃ができるように、あえて全身のモカト量を限界まで低くしている。
そこへ任意の場所のみを必要に応じて強化できるようにした。
咄嗟の判断を間違えば、一度でモクトスタを破壊されてしまう諸刃の剣だ。でも、お陰で今のところは原作よりも戦えている。
「名前は? 何て付けた」
「ライト。灯という意味だ」
この名前は原作通りだ。僕は『灯』だと思っているけど、実際はシンプルに『光』かもしれないし、他にも『太陽光』という意味もある。
偶然とはいえブライトルの名前をもじっているのが少し複雑だ。
「ライト、か。『英雄』に『光』ね。実に前向きな名前だ」
「ナウト。『虚無』だなんて、あんたも大概だと思うけどな」
「っお前! どこで、それを……」
アーチーの顔が険しくなる。
知っているさ。あんたのことは、記憶の限りを尽くして調べ上げた。
「さあ? 人徳かもしれないな?」
「……そうか。もう、いい」
アーチーが鎌から手を離す。答える気のない僕に興味を失ったのだろうか。
次の瞬間には、男は僕の射程ギリギリのところまで来ていた。
来るっ……!
ガキィィィン……!
アーチーの強化された拳が、腕をクロスしてガードした僕を殴り飛ばす。
体が浮いてバランスを崩してしまいそうになる。腕の強化を解除して、モカトを両足に移動する。酷い土煙を上げて、瓦礫の中を後退した。
「なるほどな」
ああ、ライトの性能がバレたかもしれない。
僕はゆっくりと立ち上がると、足を強化した。
ドォォォン!
ナウトとライトが同時にブーストを使った衝撃でホールが揺れる。
崩れ落ちて空が覗く天井から、ガラガラと音を立てて照明だった物が落ちていく。
腹、防御。右手を強化、振り切った拳は避けられた! 蹴りがくる! 両腕でガー……。
「ガッ……ぁ、はっ……!」
上段蹴りが、フェイント……! 本命はボディー!
どんな体幹をしていたら、こんな動きができるんだっ! 高く上げられていた足がゆっくりと下りていくのが見える。腹への衝撃で呼吸が止まる。意識が白む。ギリギリの所で顔を上げれば、思い切りアッパーを食らった。
「ガハッ……!」
ブラックアウト。
完全に一瞬意識を刈り取られた。
「……はぁっ!」
呼吸が戻ったときには、モクトスタを破壊されかけて地面に倒れ込んでいた。
アーチーが僕に馬乗りになって拳を握る。
揺らされた脳のお陰で視界が定まらない。
「ラ、イト……」
「お前のライトはもう動かねぇよ、俺を暴いたこと、後悔して死ね」
ちがう。そうじゃな、い。
ブライトル……。……死にたく、ない……。
ゆらゆらと力の入らない両腕で頭を庇い、強化する。壊れかけたライトが精一杯腕と頭の防御力を上げた。
「へぇ? 随分悪あがきするじゃねぇか」
不意にアーチーが立ち上がった。
「……お前は今、確実に殺したほうがよさそうだ」
そう言って手にしたのはナイフのようだ。普通のナイフだ。
アーチーが僕の頭をわしづかみにする。恐らく、狙いは、首……強化……。
だめ、か……。
ライトは動かない。もう、装備するだけの体力が残っていなかった。
サラサラと青白い粒子が消えて行く。
もう何の手も残っていない。諦めるつもりはなかったけど、どうすることもできないと顔をしわくちゃにしたとき、視界の隅を真っ赤な粒子が通り過ぎた。
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