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19、異形

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 重々しい音をたてて大きな扉が開く。

 室内は広い空間だったが、光は無く暗闇であった。

 バルンが松明を室内に投げ入れる。

 カランカランと木の軽い音が室内に響いた。

 コツンと松明が部屋の中央で止まる。

 松明の明かりに照らされたのは剣の刃だ。

 床に突き刺さっている。

『恐らく』魔王の大剣だろう。

『恐らく』と注釈が必要なのは、剣の殆どが触手に覆われていたからだ。

 太い触手。
 一本が人間の胴体ほどの太さである。

 そのような触手が無数に剣を取り囲んでいた。

 触手はゼスティ達の存在に気付くと、大剣の周りから離れる。

 生々しい音をたてながら粘液が糸を引いた。

 魔王の大剣が姿を見せる。

 その大剣にもたれ掛かるように聖女フェーレンが立っていた。

 生気の無い顔。
 虚ろな目。
 半開きの口。

 意識は無いように思えた。

 だが、その粘液まみれの顔がゆっくりと上がる。

 四人の姿を見ると、彼女の背後の空間に黒い渦が巻いた。

 空間に浮かぶ黒い渦に四人は「なんだ?」と思う。

 直後、その渦の中から強力な魔力を感じた。

 あまりにも強大な魔力に四人は同時に危険を察知する。

 咄嗟に扉の横へ身を隠すと渦の中から強力な魔力が放たれた。

 青白い光が部屋から飛び出し、反対の壁を破壊する。

「あれは魔力じゃ。ただ魔力をそのまま放っただけであの威力か!」

 バルンが驚愕の声を上げた。

 魔力そのものを発するのはとても簡単な事だ。
 しかしそれは通常、温い圧迫感として感じられた。

 魔力(魔素)が明確な破壊力を持つ事は無い。
 だから火や水などの一つの魔素で構成される単物質を生成して扱うのだ。

 にも関わらず、明確な破壊力を持つほどのただの魔力である。
 あの渦の向こうにいる『何か』がそれほど強大な魔力を保有しているという事を示していた。

 その魔力の強大さをゼスティ達全員が感じている。

 室内を見ると、空間に現れた黒い渦から巨大な腕が伸びている。

 青白い肌の太くて大きな腕。
 筋肉質な腕がフェーレンに指を向ける。

 そして魔力を用いて彼女の体を操った。

 まるで操り人形のようにぎこちない動きでフェーレンは魔王の大剣を引き抜くと、頭をカクンカクンと動かしながらゼスティ達の方へ向かってくる。

「あの腕……恐らく触手と同一の存在だろう」

 ゼスティがそう推察した。

 腕も触手も、聖女の背後に浮かぶ黒い渦から出ているようだ。

「聖女様を操るなど……!」

 レゼンが怒りに歯を噛み締める。

「しかしどうする? あれほど強力な魔力。強敵だぞ」

 バルンが壁の裏からソッとフェーレンを見た。

 カクンカクンと歪に歩いてくる。
 太い触手が彼女の背後を蠢いていた。

「あの大剣のせい……だよな?」とイーナが聞く。

「だろうな」とゼスティは頷いた。

 恐らく魔王の大剣が何らかの呼び水になり、何か恐ろしい存在をこの世界に顕現(けんげん)させようとしているようだ。

 バルンが、まさか魔王はそのためにあえて殺されたのでは無いかと驚いた。

 だが、魔王がそのような真似をするとはゼスティには思えない。
 魔王デルビュイオルが持っていたから、あの大剣は恐ろしい存在を顕現できなかったのでは無いか?

 だとしたら……。

「魔力だ」

 ゼスティはそう推論した。

「恐らく魔王の魔力があの化け物の顕現を抑えていたんだ。そして、恐らく聖女も――」

 恐ろしい何かが触手と両腕だけを見せているのは聖女が大剣の力を抑えているからに違いない。

「だが、その考えが正しいなら、聖女様をあのままにした方が良いということですか!」

 レゼンが怒鳴ったのも仕方あるまい。

 ゼスティの話が本当なら、聖女にはあのまま魔王の大剣を不完全とはいえ封印させた方が良いという事になる。

 そんな事を容認できなかった。

「落ち着けレゼン。聖女の他にもいるだろ? 天使から力を与えられた人は」

 ゼスティがそう言うと、全員がハッとした。

 まず聖女と大剣を引き離す。
 それからイーナが天使から授けられた力で大剣の力を抑え込むのだ。

 それしかないと誰もが思う。

 ゼスティとイーナが目を合わせ、互いに頷いた。

 二人同時に影から飛び出す。

 フェーレンの距離は先ほどまでの会話の時間で十分に引き付けていた。

 謎の手が魔力を放出する前に一気に接近する。

 すると、触手が二人へ襲いかかった。

 その触手に土塊がぶつかる。
 あるいはゼスティとイーナを光の壁が守った。

 バルンとレゼンだ。

 二人の術によって触手は大剣を守るのが難しいと判断する。

 そこでフェーレンごと大剣を包んで守ろうとした。

「させるか!」

 イーナが地面を思い切り蹴る。

 残像を置いて彼女の体が触手の内側に飛び込んだ。

 フェーレンが大剣を横に構えた。
 そんなフェーレンにイーナが剣を突く。

 しかしフェーレンの体を突き刺した訳では無かった。

 イーナの剣は大剣の下を通り、そしてフェーレンの肩の上を抜ける。

 イーナが剣を振り上げようとした。

 テコの要領で大剣を弾こうとしたのだ。

――メコ――

 嫌な手応えがする。

 フェーレンの肩を支点にしようとしたが大剣はビクともしなかった。

 代わりに剣の腹がイーナの左肩にめり込み、彼女の肩を脱臼させたのである。

「しま――」

 このままではフェーレンを殺してしまう。

 イーナが力を抜いた時、フェーレンは構えた大剣を横薙ぎに払った。

 今度はイーナの胴体がフェーレンに切断されるだろう。

 だが、その前にイーナはフェーレンの腹を蹴った。

 イーナの足はフェーレンの腹部にめり込んだ。

 腸のぐにゅぐにゅした嫌な感触が足の裏にあった。

 その蹴った反動でイーナは後方へ飛び、フェーレンの体は部屋の奥に吹き飛んだ。

 床に倒れたイーナは自分の腹を見る。

 服が少し切れていたが体は無事だ。

「大丈夫か?」

 ゼスティが助け起こすと「私は大丈夫」とイーナは答える。

「むしろ心配なのは……」

 イーナが前を見た。

 地面に倒れたフェーレンの体が触手に持ち上げられたあと、手によって立つ。

 左肩が右肩と比べて下に位置していた。

 腹部は凹んで彼女の口からは血がタラタラと流れている。

「あいつ。聖女様の事をなんとも思ってない」

 いや、むしろ聖女を殺させて、彼女の封印を解こうとしているのだろう。

「迂闊な攻撃はダメだ。やるなら一撃……最低限でやろう」

 最低限と言われても、しかしどうしろと言うのか?

 イーナが疑問に思うとゼスティはフェーレンの右手を指さした。

「あの手を切る」

 フェーレンと大剣を文字通り切り離す。

 手首を切断させるのだ。

「そんな……!」

「切り離してすぐなら聖術で治癒できるはずだ」

「本当に?」

「たぶん」

 イーナが顔をしかめた。

 そのような責める顔で見られてもゼスティは聖術に詳しくないのだ。
 切断された手を付けられるかどうかなど知らない。

 知らないが、やらねばならない。

 イーナは溜息をつく。

「それしかないね」

 二人は剣を構えると、バルンとレゼンに援護を伝えた。

 再び二人が魔術と聖術で援護し、二人はフェーレンに向かう。

 しかし今度のフェーレンは最初から触手で身を守った。

 代わりに空間から現れる大きな両腕が二人へ手を向ける。

 絶大な魔力が両手に込められた。

「うそ!」

 イーナが驚きの声を上げる。

 そんなイーナにゼスティが「俺の後ろに!」と伝えた。

 イーナがゼスティの背後に隠れる。

 ゼスティは剣を立てて体の中心に構えた。
 致命傷を極力回避するためだ。

 眩しい光と共に魔力波が放たれる。

 バルンとレゼンが「ゼスティ!」と叫んだ。

 バルンが地面を隆起させ、できる限りの岩の壁を造る。
 レゼンもあらん限りの光壁を創った。

 それでもなお魔術と聖術の防御を貫通し、魔力の衝撃がゼスティを襲う。

 過剰な魔力に冒されたゼスティの肌がブツブツと細かく膨れた後、皮膚が避けて肉が溶けだした。

 それはまるで生きたまま焼かれるような苦痛だ。

「魔王デルビュイオルよ! 俺に力をッ!」

 死してなおその足で立ち続けた強敵(とも)、デルビュイオル。

 ゼスティは友に祈った。

 この腕がもがれようと、この肉体が溶け果てようと、イーナを必ず守るという強い意志である。

 やがて魔力波が消えた。

 ゼスティは立っている。

 剣がどろりと溶けていた。

 剣で守れなかった手足の負傷は酷いものだ。

「はは。やれるものだな……」

 ゼスティは笑いながら片膝をつく。

 そんな彼の横を通ってイーナが駆けた。

 手は、まさかあの魔力波を正面から受けられると思っていなかったようだ。

 完全に虚を突かれ、イーナに反応できなかった。

 一瞬の間に触手球の前へたどり着いたイーナは全力で触手球を唐竹に割る。

 青白い体液と共に穴が空いて、中のフェーレンが姿を見せた。

 イーナは彼女の右手を見る。

 僅かに躊躇してしまった。

 イーナより少し歳下の少女。
 しかも、自分のことを救世主様と慕ってくれた無垢な子供。

 その手を切る事にほんの一瞬だけ躊躇した。

 ほんの僅かな隙にフェーレンが動く。

 大剣を予備動作無しで突き出したのだ。

 フェーレンの腕の骨が大剣の重さでひしゃげ、筋が断裂したが、お構い無しだ。

「く!」

 イーナが体を逸らしつつ、自らの剣で大剣の軸をズラす。

 イーナの躊躇はこの攻撃で吹っ切れた。

 やらねば聖女の体が壊れる!

 その思いから、空中で身を翻して剣を振り上げ、フェーレンの手首を切り払ったのだ。

 赤い鮮血と共に大剣が飛ぶ。

「ッ!! あああ!?」

 フェーレンが意識を取り戻し、同時に全身を襲う痛みに悲鳴を上げた。

 彼女を気にかける余裕は無い。

 今は大剣を手にせねばならない。

 大剣が床を回転しながら滑る。
 大剣を握ったままのフェーレンの手首が掠れた血糊を残した。

 そんな大剣の直上で空間が大きく歪んで黒い渦が巻く。

 フェーレンの力から解き放たれた大剣がその力を遺憾無く発揮している。

 ズズズと黒い渦がどんどん大きくなると、その向こうで赤い双眸(そうぼう)が輝いた。

 巨大な何かが渦の向こうにいる。

 その何かが渦から顔を出した。

 顔の下、まるで口髭のように触手が蠢いている。
 青い皮膚に大きな角。

 触手をもたげると大きな口から大きな声を発した。

 鋭い牙の並んだ口から地獄に響くような声が四人の耳をつんざく。

 大きな手で床を掻き、黒い渦から体を出そうとした。

 そんな化け物にゼスティが駆ける。

 目的はその顔の下にある大剣だ。

 化け物が叫び、口の周りの触手がゼスティに向かう。

 ゼスティは激しく痛む両腕を動かして腰の短剣を二振り抜いた。

 痛みに歯を食いしばる。

 一つ目の触手を踏んで飛び越え、二つの触手を短剣で払う。

 短剣を投げつけてさらに二本の触手を僅かに止めた。

 残った触手がゼスティに襲い来る。

 何本あるのかは計り知れない。

 とにかく大剣へ。

 一本、二本を避けた。

 三本目の触手を右手で払う。

 しかし触手が右手を掴んだ。

 即座に革ベルトを引っ張り、篭手を切り離して腕を抜いた。

 メキメキと篭手がひしゃげる音が聞こえる。

 その音を後ろにゼスティは駆け続けた。

 四本目、五本目の触手がゼスティの前を阻む。

 六本目の触手がゼスティの体を巻いた。

 ゼスティの体を潰そうとしたが、服を潰しただけだ。

 ゼスティは服を脱ぎ、床を滑走している。

 触手の下を通り抜けた。

 その瞬間、七本目の触手がゼスティの足を掴んだ。

 そして、グイとゼスティの体を持ち上げる。

 化け物は勝利の咆哮を上げた。

「勝ち誇るのは早いんじゃないか?」

 ニヤリと笑うゼスティの手には革の腰ベルトが握られている。

 その革ベルトの先には大剣が巻かれていた。

「勝ったのはボク達だ」

 ゼスティは革ベルトをブンと振って大剣をイーナに投げる。

 触手が大剣を追った。

 しかし岩石の弾丸が飛んできて触手を弾く。

 バルンだ。

「イーナ! ゆけい!」

 バルンの言葉と共にイーナが跳躍し、大剣へと飛んだ。

 化け物が大きな両手でイーナを握り潰そうとした。

「させるか!」とレゼンが光の壁を造る。

 ほんの僅かにだけ化け物の手を止めたが、しかし即座に光の壁が破られた。

 大きな両手がイーナを両脇から潰す。

――かに思えた。

 その手が指先から粒子になる。
 粒子は黒い渦の向こうへと戻っていくのだ。

「あと少しだったね」

 大剣を握ったイーナが手の隙間からするりと降りた。

「だけど、私達の勝ちだ!」

 イーナの魔力により化け物を呼び出す大剣の力が封じられたのだ。

 化け物は不服そうに目の間へ皺を寄せる。

 化け物は自分の計画が失敗した事を理解していた。

「悔しい? でも、ま、会うことも無いだろ」

 イーナが笑うと化け物も諦めて渦の向こうへと自ら姿を消すのであった。
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