プライマルパワー〜ウルフとヒトと時々ベアー

アイアイ式パイルドライバー

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 冷涼な風の吹く荒野。

 獣の毛皮を身にまとった百人の人々が身を寄り添わせながら歩いていく。

「森が見えたぞ!」

 先頭を歩く男が声を挙げた。

 遥か彼方に森が地平を覆うように拡がっている。

 森を見た人々は安堵の息を漏らした。

――ああ、森の中なら少しは風も防げよう。

 疲れきった足取りの人々は、しかし森を見るとその速度を上げて前進した。

 7万年前。人類がアフリカからその生息域を広げて1万年の時が経とうとしている。

 生息域を中東一帯にまで拡げた人類は1万年の時間の中で同じ人間を同種とは看做(みな)さなくなっていた。

 近くの人々を襲い、食べ物を略奪する。

 そのような行為が横行した。
 そしてそれは冬の前、特に激しくなる。

 血で血を洗う戦い。

 そのような戦いに嫌気が差したのはルオ族の人々であった。

 秋の頃に突如として人間達に襲われたのである。

 家は焼かれ、洞窟は崩され、蓄えは奪われた。

 ルオ族では同じく略奪へ向かうべきだという声もあった。

 しかしルオ族一番の勇者であったトエツが「こんな事を繰り返しても仕方ない」と異を唱えたのである。

「ではどうするか?」とルオ族の人々は聞いた。

 問われたトエツは「誰もいない土地へ行こう」と言ったのだ。

 そしてトエツを中心に、女子供を含めた百人のルオ族が賛同者として北へと向かった。

 当時の人間は洞窟を転々と移動する遊動性の生態である。

 かなりの健脚で連日の移動距離は相当なものだ。

 彼らは中東地域から北へ何日もの間、歩き続けたのである。

「絶対に火を絶やすなよ!」

 先頭を歩くトエツが声を張り上げる。

 百人の人々は何人かが松明を掲げていた。

 この松明は彼らにとっての生命線である。

 冬を迎える風は冷たい。
 しかも彼らはより寒い北へと向かっていた。

 火が消えたらたちまち凍え死ぬ。

 しかし風は強く、なびく火はいつ風に吹き消されてもおかしくなかった。

 人々は時に火を囲み、風から身を守りながら進んだ。

  松明といっても無限に火を灯せる訳ではない。

 風に消える事もあれば、燃え尽きる事もあった。
 だから複数人で木の束を持って、火が消えかけたら順番に火を灯すのだ。

「トーチは幾らある!」

 トエツが聞くと「あと少しだ!」と声が返ってくる。

「だが、森に到着する分にはあるぞ!」

 その声にトエツは安堵した。

 人々が足を早めたのは、森に行けば木が沢山あるからという理由もある。

 火を絶やしたくないのは誰も同じだ。

 洞窟を出てから数日、広い荒野を歩き続けながら時折、単生の松から枝と松脂を補充しながら歩き続けたのである。

 そして、いよいよ森を見つけたのだ。

 百人は何とか森の中へと足を踏み入れた。

 強い風に木々が嫌に歪な音を立てている。

 しかし少し森の奥へ進むと、強い風は森の奥までは入ってこない。

 百人の人々はようやく人心地ついた。

 休憩のために木々を集めて焚き火をする。

「何か食べられそうなものはあるか?」

 トエツが聞いた。

 人々は周囲を確認していた。

 木の実、草、そして根っこ。
 とにかく手当り次第に食べられる物が無いか確認する。

 しかしいずれも口に含むとすぐに苦味が広がった。

 苦味とは毒を感じる味だ。
 苦味を好んで食べるなどよほど生活が安定して、食事が娯楽になっている時くらいなものだろう。

 彼らにとっては苦味だけが食べ物を探す手段だった。

 そして、この場に食べられるものは何一つ無かったのである。

 その時、「おお!」と一部から歓声が上がった。

 トエツが見ると、小鳥が一羽、木の上から落ちてくるのが見える。

 矢が刺さっていた。

「フォーオンがやったぞ!」
「肉だ!」

 人々が歓声を上げる。

 トエツはそんな人々を掻き分けて前へと出た。

 そこには髭を生やした中年の男がいる。

 四十歳……中年とはいえるが、この時代では既に十分な老成だ。

 弓矢の達人である。

 フォーオンは眉一つ動かさない無感情な老人だ。

 周りの歓声に反して、何を言うことも無く立ち続けている。

「小鳥一羽か」

 トエツが地面に落ちた鳥を拾った。

 すると人々は「俺にくれ!」と叫んだ。

「お願いします! 私にください! 赤ん坊に乳を上げたいのです!」と頼む赤子を抱いた母親もいる。

 別に飢餓という訳ではない。

 しかし誰しも空腹は感じていた。

 明日、食べ物にありつける保証もない。

 今すぐ食べ物で腹を満たしたかった。

 トエツはフォーオンを見る。

「お前が食べろ」

 小鳥をフォーオンに渡した。

 感情を見せないフォーオンが眉をぴくりと動かす。

「トエツ。俺のような老人に食べさせるものでも無いだろう」

 フォーオンがそう異を唱えると、人々は「そうだ!」と異口同音に唱えた。

「駄目だ。明日、鹿を見つけたら誰が狩る? 誰が一番、弓矢を扱える?」

 トエツの言葉に人々は黙り込んだ。

 フォーオンは弓矢が得意である。
 それは唯一無二の特技だ。

 それに、弓矢はフォーオンの持っている一張りだけだった。

 他の弓矢は洞窟が襲われた時に損失したり、洞窟に残った連中の為に残してしまったのだ。

 トエツはこの弓矢こそが全員生き残る為の道具だと思う。

 そう、生き残る為に必要なもの。

 防寒具になる毛皮、それと生きるための肉。

 これを得るためには弓矢が必要なのだ。

 トエツの考えに人々は黙り込む。

 正しい意見だと思ったのもあるが、何よりトエツの下した決断だから反論できなかった。

「これは、トエツの期待に答えねばならんな」

 フォーオンはそう言って小鳥の羽毛を剥き、串焼きにして食べる。

 それから百人は森の中を進もうとしたが、すぐに方角を見失ってしまった。

 というのも鬱蒼と木が茂るので、太陽が傾くと方角が分からなくなるのだ。

「こりゃ夜まで待たなくちゃいかんぞ」と誰かが呟く。

 トエツもその通りだと思う。

「日が暮れるまで少し休もう」とトエツが言ったのはしばらく森の中をさまよってからの事だ。

 トエツの指示にルオ族は再び焚き火をして、何か食べられるものは無いか探した。

 だが、やはり食べ物は見つからないまま日は暮れる。

 さて方角が分からないから夜になるのを待つというのは一見すると奇妙に思えるだろう。

 しかし彼らは星を見るのに秀でていた。

 星の並びから方角を見る事ができる。

 夜になると百人は集まり、火を灯して森を進んだ。

 星を見ると方角が分かる。

 無数の星から特定の星を見つけて方向を確認しながら北へ向かった。

 まだ彼らは文字を発明していない。
 なのになぜ、星を見つける事ができたのだろうか?

 それは歌だ。

 彼らは先祖代々から多くの歌を受け継いできた。

 その中に星読みの歌がある。

 歌を口にしながら内容を確認し、星を見あげて方角を確認した。

 彼らが北を目指したのも星読みの歌で一番確認しやすいのが北極星を歌ったものだったからだ。

 北極星を中心に他の星の位置を確認して北へと向かう。

 最初は順調に進めたと思った。

 だが、夜も深まった頃、誰かが「唸り声がするぞ」と言った。

「獣か?」

 唸り声が後方から聞こえてくる。
 それに微かな風に乗って獣臭もした。

「毛皮をとるのに良い」と前向きな意見を言う者もいる。

「馬鹿! こんな夜闇でどうやって戦うんだ!」

「誰が馬鹿だ!」

 恐怖と虚勢で百人の人々は混乱に陥りかける。

 松明の灯りだけが頼りの夜はほんの数歩先までしか見えない。

 闇に潜む唸り声は恐怖を呼び起こす。

 人々の怒声、赤子の泣き声。
 ざわめきと焦燥。

「騒ぐな!」とトエツは一喝する。

「松明を持っている者は皆を囲め! 奴らは『夜闇の魔物』だ」

「夜闇の魔物!」

 人々は驚きながら、急いで松明を持つ者が外側へやって来て百人を囲んだ。

 夜闇の魔物とは先祖からの歌に言われる危険な魔物である。

 夜、外を出歩いていると唸り声が聞こえてくる。

 振り向いて松明を掲げると、闇の中に眼が浮かんでいた。
 その眼はゆらゆらと闇の中を漂いながらついてくるのだ。

 そして、一人、また一人と闇の中に引きずり込まれて……。

 というのが歌で語られる夜闇の魔物である。

 百人の人々が松明を掲げて闇を照らすと、確かに木々の合間に広がる闇に瞳が幾つも浮かんだ。

 その瞳は歌の通り、闇の中でゆらゆらと揺れながらトエツ達ルオ族を見ている。

「大丈夫だ。夜闇の魔物は光を嫌い、背中を見せない限り襲ってこない」

 トエツの言葉に人々は少し落ち着きを取り戻した。

「フォーオン!」

 トエツが老狩人の名を呼ぶ。

 夜闇に潜む魔物にはフォーオンの弓矢が有効だと考えたからだ。

 百人の中から三十歳となる老狩人が出てくる。
 彼は既にトエツの意を汲んでいた。

 弓に矢を番えて闇に浮かぶ瞳を狙っている。

「やれ!」

 トエツの合図にフォーオンが矢を放った。

――キャイン!

 甲高い悲鳴が闇にこだまする。

「当たった!」と人々は驚いた。

 夜闇の魔物は実体のない魔物じゃないようだ。

「もう一回だ!」

 トエツの指示にフォーオンは再び矢を放つ。

 再び闇の中に甲高い悲鳴が響いた。

 矢が再び当たったのだ。

 瞬間、闇の中の瞳が一対、ルオ族達へ向けて反撃だとばかりに飛びかかった。

 ルオ族達がギョッとして身を固める。

 そんな中、トエツだけが動いた。

 飛びかかる夜闇の魔物へ駆け寄り、石英を結んだ木の棒を思い切り振り抜く。

 バシッと強かに魔物を打ち、その影が地面に転がった。

 起き上がろうとする魔物だが、トエツはそれより早く棒の先に括られた石英を向けて突き刺す。

 いわゆる槍と呼ばれるその棒には石英による穂先があった。

 鋭く加工された石英の穂先が魔物の胸を突き刺す。

 魔物は細い手足をバタバタと動かしながら、その口から赤い血を勢い良く吐き出した。

  そして手足は動きを止め、代わりにピクピクと痙攣する。

「やったぞ! トエツが魔物を殺した!」

 人々かワッと喜びに声を挙げた。

 すると夜闇に浮かぶ瞳が慌ただしく動き回る。
 やがて瞳は夜闇の向こうへと逃げるように姿を消した。

 仲間の死に恐れおののいたのか?
 はたまた、人間達の歓声に驚いたのか?

 あるいはその両方かもしれない。

 とにかく夜闇の魔物を倒したのだ。

 今夜は少なくとも安全だろう。

 さて、それはともかくとしてルオ族の興味は夜闇の魔物の正体だ。

 今しがたトエツが殺した夜闇の魔物を我先にと人々は確認する。

 地面に転がった死体は灰色の毛に覆われていた。

 体高は低い。
 人の腰に届かないほどか。
 細い前脚と後脚に爪が生えている。

 とんがった耳と長い鼻。
 鋭い牙が並ぶ口。

「獣だ。魔物じゃないぞ」

 誰かが言った。

 そこに居たのは魔物ではない。
 獣なのだ。

 それはつまり、肉があり、毛皮があるという事である。

 人々は獣の皮を剥ぎ、肉を喰らった。

 一匹の獣の肉を百人で分け合ったからろくに腹も膨れない。

 そこで誰かが「フォーオンの矢が刺さった獣はどうなっただろう?」と聞く。

「おお! もしかしたら仕留めたかもしれないぞ」

 そう考えた人々は松明の明かりを頼りに矢の飛んで行った方へ向かった。

 果たしてそこには同じ獣が横たわっている。

 胴体に矢を受けてそのまま肺を貫かれたようだ。

 獣は既に事切れていた。

「待て。矢は二本射ったはずだ」

 誰もがそう疑問に思う。

 その疑問の答えはすぐに分かった。

 獣の影に小さな獣がいたのだ。

 幼獣なのだろう。
 膝丈にも至らぬ体高の子供の獣だった。

 その獣の後脚に矢が刺さっている。

 獣は耳を伏せ、前脚で顔を覆って震えていた。

 人間を恐れているのだ。

「まだ小さいが三匹の肉が食えるとは僥倖(ぎょうこう)」

 一人の男が手を伸ばした。

 だが、それより早く幼獣をバッと奪う者がいる。

「こんな子供まで食べるのは可哀想じゃないか!」

 そう叫んだのは声変わりもまだの少年であった。

「そこに倒れている獣は、きっとこの子の親だ。矢で倒れたこの子の盾になるため、自ら矢に当たったんだ!」

 そう少年が訴える。

 獣とはいえ親子の情があるのに、容赦なく食い殺して良いものか?

「それこそ獣じゃないか!」と少年は訴えた。

 トエツが「ノェト。いくらお前に母がいないからとて、獣に情が移りすぎだ」と諌める。

「獣にそんな情などない。こいつらに愛や情など分からないのだ」

「だけど!『父さん』!」

 このノェトという少年はトエツの息子だ。

 母はいない。
 ノェトを産んですぐに死んだからだ。

 それからは村の皆で育てた。

 しかし、やはり母の不在はノェトにとって思う所はあったようだ。

 幼獣を庇うように倒れていた獣を見て、ノェトは自分の想像する母親の姿を見たのである。

 そして幼獣を自分と同一視していた。

「あの襲いかかってきた獣は父親かもしれない。家族を守る為に反撃に来たんだ」

 そう訴えるノェトにトエツは呆れる。

 他のルオ族も苦笑し、「ご子息は想像力豊かですな」と皮肉を飛ばした。

「面目ない」

 トエツは申し訳なさと恥ずかしさで穴に入りたい気持ちである。

 その時、「別に良いんじゃねえか」という声が上がった。

 人々がその声の主を見る。

 その人はフォーオンであった。

 彼は相変わらずの無表情な顔である。

「どうせあんな小さいナリじゃ肉も少なかろう。ノェトが満足するなら連れて行くだけ連れて行きゃ良いだろう」

 そう言ってフォーオンは「俺はもう寝る」と木の根元に横たわって目をつぶった。

 もう寝たいからゴタゴタはやめろ。
 そうフォーオンは言いたいのだ。

 トエツは頭をかいたあと少し悩んで「分かった」とノェトを見る。

「その子供の獣は好きにしろ。だが、誰にも迷惑をかけるな。食べ物はお前の食べる分から出すんだぞ」

 トエツは周りを見渡して「皆もそれで良いか!」と聞いた。

 ルオ族の人々は異を唱えなかった。

 というよりトエツやフォーオンの決定に反対なんてできない。

 ノェトは父の選択に笑顔を浮かべた。

「ありがとう! 父さん!」

 そう喜ぶノェトの言葉にトエツは苦々しい顔を浮かべるのであった。
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