鋼の体に心は宿るのか?

アイアイ式パイルドライバー

文字の大きさ
3 / 11

3、ジョニー・ザ・ドッグ

しおりを挟む
3、ジョニー・ザ・ドッグ

 次の事件は2032年、米軍で試験運用されたロボットが犬型ロボットで別名バイザードッグです。

 全高約70センチ、体重約50キロで大型犬を模したシルエットです。

 基本フレームは銀色ですが、運用部隊によって塗装され、迷彩色や黄土色など様々な体色がありました。

 特徴的なのはアイセンサーを覆うバイザーです。

 バイザードッグという愛称はその外見から取られました。

 バイザードッグは主に荷物を運搬や警戒索敵といった機能を備えています。
 また、頭部に備えられた口に似た構造で、危険な場所にいる人を引っ張る事もできました。

 米軍は前線兵士へのセラピー効果を期待してバイザードッグを試験運用しました。

 第3次世界大戦の戦端と呼ばれるパルノフ戦線で、アメリカ陸軍の歩兵師団、その一部の部隊に配備されました。

 その一つの部隊が十人からなる■■分隊(検閲の為に削除済)です。
 ■■分隊は配備されたバイザードッグにジョニー・ザ・ドッグと名付けました。

 ロシア領パルノフに入った■■分隊は数日のうちに三度の戦闘を行います。
 戦闘後、十人の隊員は有意識無意識を問わずジョニーに接していると記録にあります。

 十人の隊員はジョニーに対して好意的に接して、ストレスの緩和を図っている事が分かりました。
 米軍の期待していたセラピー効果は十全に得られているように思えます。

 特にジョニーに対して好意的に接していたのはマイルズ士長です。

 マイルズ士長は■■分隊で一番若い二十五歳です。
 学生時代は電子工学分野を学んでおり、分隊長からジョニーの整備を命じられていました。

 毎晩、定期的にジョニーの状態を点検しており、■■分隊の中でマイルズが一番ジョニーの事を好意的に思っている様子がジョニーのメモリーに残っています。

 事件の被害者はダニエルズ2等陸曹。
 ■■分隊の分隊長です。
 そして、彼はロシアのスパイである事が判明しています。

 ダニエルズ2等陸曹はロシアに情報を提供し、ロシア領を進軍した■■分隊の行く手を阻もうとしました。

 ■■分隊が内通者に気付いたのは隊員の■■と■■(個人情報保護の観点から削除)が戦死した時です。

 秘密裏に動いていたはずなのにロシア軍からの攻撃を幾度も受けるのはおかしいと主張する隊員が現れたのです。

 隊員達が作戦当初よりこの強行的作戦に「兵士を消耗品として見ている」と疑問を抱いていた事はジョニーの記録にも残っています。

 そういった嫌疑が二人の隊員の死により発露したのです。

 このやり取りは八人の隊員を決裂させました。

 分隊長のダニエルズ2等陸曹は仲間割れを避けるために任務に疑いを持つ者に撤退するよう命じます。
 疑いを持たない隊員らで任務の遂行をするとしたのです。

 三名の隊員が離脱し、残った五名の隊員で任務を行うことにしました。
 五名の隊員にはマイルズ士長も含まれています。

 ですが、ダニエルズはロシアのスパイとして、隊員の戦力を削る事が目的でした。

 彼の計画は彼にとって功を奏し、翌日には五名の隊員のうち三名戦死し、二名だけが残ります。

 生き残ったのはダニエルズとマイルズでした。

 二人は森の中の廃屋に逃げ延びます。
 そこは森の中で作業をする人達が、斧やロープなどを置いておくための倉庫や休憩所でした。

 ダニエルズは最後の一人であるマイルズへ銃を突きつけました。

 マイルズを殺害し、米軍の任務を失敗で終わらせようとしたのです。

 ですがダニエルズの試みは失敗に終わりました。

 彼の誤算はジョニーの存在です。

 人に危害を加えることのできないはずのロボットが、ナイフを咥えてダニエルズへ突進したのです。

 ジョニーは傷病者を安全な場所へ引っ張るため、口に似た構造を頭部に有していました。
 その口で、小屋の中の錆びたナイフを咥えると、突進してダニエルズへ突き刺したのです。

 ダニエルズは脇腹から肝臓にまでナイフが達し、数秒の苦痛を感じた後に死にました。

 マイルズとジョニーはその後、パルノフ戦線が停戦するまでロシア領内で逃げ回り続け、停戦後に米軍によって回収されました。

 マイルズはジョニーが人を殺害した事に対して特に疑念を抱いていませんでした。
 また、停戦までの間、ともに過ごしていてジョニーに異常行動は見られなかったとマイルズは監査官に答えています。

 また、監査局がジョニー・ザ・ドッグを調査してもプログラムミスやエラーは見つけられませんでした。

 調査はおよそ一ヶ月に渡りましたが監査局はジョニー・ザ・ドッグに、『技術的トラブル』があったとして『廃棄』しました。

 ロボット法で、軍用ロボットは特定の人間に対して危害を加えても良い事と定められる一週間前の事でした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

焔と華 ―信長と帰蝶の恋―

歴史・時代
うつけと呼ばれた男――織田信長。 政略の華とされた女――帰蝶(濃姫)。 冷えた政略結婚から始まったふたりの関係は、やがて本物の愛へと変わっていく。 戦乱の世を駆け抜けた「焔」と「華」の、儚くも燃え上がる恋の物語。 ※全編チャットGPTにて生成しています 加筆修正しています

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...