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8、バルド556
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8、バルド556
ロボットの心について語る時、バルド556のストーリーは欠かせないものでしょう。
バルド556がプログラムの壊れているイカれたロボットだったのか、それとも心という有機的で複雑な機構を備えた存在だったのか。
専門家のあいだでさえ、答えはでません。
——バルド556はカナダの首都オタワで開催されていたロボット格闘大会のクリーガァでした。
クリーガァとは格闘大会に出場するロボットの選手のことです。
バルド556は第三次世界大戦に使用されたアンドロイドtypeーFの米軍横流し品だと推察されます。
メモリーやプログラム、プロテクトは強引に書き換えられ、これが後の異常性に繋がったと思われます。
ロボット格闘大会はロボットの破損、故障が激しいのですがバルド566は2040年頃から2055年頃まで、およそ15年前後の間、クリーガァとして活躍しました。
バルド556の命名由来はドイツ人男性名バルドの名前が与えられた556番目のロボットという意味です。
当時の観客からはチャンピオンと呼ばれて親しまれていたようです。
※注釈——ロボット格闘大会とは2020年代後半にイングランドで始まった人型ロボットの格闘大会です。
一対一の試合形式でボクシングに近いルールですが、リングを金網で囲み、拳をハンマーやドリルといった武器に換装して戦うため、過激で残酷な試合が多く、世界的に人気な競技です。
閑話休題。
バルド556はオタワのファイトクラブ■■・■■■の倉庫に保管されていたものをアメリカ避難民の老人■■(個人情報のため検閲済み)によって調整、起動されました。
■■はアメリカのファイトロボットの調整師でしたが第三次世界大戦に伴ってオタワへ避難した経緯を持ちます。
■■はファイトクラブ■■・■■■に雇われてバルド556の専属調整師となりました。
そのため、バルド556は■■をとても信頼していたと思われます。
バルド556はアンドロイドtypeーFの男性兵隊モデルで、身長は180cm。筋肉質な白人男性です。
ゴムを加工した人工皮膚が破けて人工筋肉やワイヤー、人工骨格がところどころ露見していました。
特に印象的なのは頭頂部から右目周辺までの人工皮膚が破け、頭蓋骨にあたる人工骨格が発露している点です。
この特徴から、某映画を模してターミネーターと異名をされていたようです。
表情機能は故障しており、無表情でした。
そのような外見や異名とは違い、普段のバルド556は穏和であったとされています。
アメリカ陸軍の調査では、戦闘に向かないプログラム傾向のあるアンドロイドが破棄された履歴があり、バルド556と思われる型番のアンドロイドも履歴にありました。
バルド556の穏和なプログラム傾向は出荷時の初期不良と思われます。
この穏和な傾向は■■も修正できなかったようです。
バルド556は手を凶器に換装せず、もっぱら素手による戦いをおこないました。
バルド556の戦い方は関節技によるオーバーロックで腕部や脚部を破壊する方法です。
これは、敵対する相手ロボットを完全に破壊しないための処置だと思われますが、腕や脚を派手に破壊するバルド556の戦い方は観客の興奮を誘いました。
また、バルド556は戦闘用のロボットと異なり、客への愛想も非常に良かったようです。
入場時に客が手を出せばタッチで応える事も多く、退場時に求められればサインに応じる事もあったようでした。
※補遺——ファンサービスに関する特徴は軍用ロボットのセラピー機能に依る行動の可能性が高く、異常性とは無関係と思慮されます。
バルド556の異常性は2040年、最初の試合を終えた時には既に見られたようです。
■■が大会運営に送った電子メールによると、バルド556が勝利の報酬として花を要望していることが記されています。
これ以降、バルド556が花の生育を好んだ事は複数の記録から確認できます。
戦争用として作られ、戦闘用に調整されたバルド556が花を愛でる事を好むのは明らかな異常でした。
バルド556は試合に勝つたび、花を要望しました。
事件の発生する2055年までの間に、バルド556のメンテナンスルームが花に埋め尽くされるのは当然の事だったようです。
また、バルド556は他にも、ファンとの交流が盛んでした。
クリーガァは試合の無い日にファイトクラブの前で展示される機会があります。
バルド556は展示のさい、子供を肩に乗せるなどの行為を命令も与えられずにおこなったのです。
これが異常行動なのか、それとも戦争用のセラピー機能が残っていたからなのかは、今では調べることもできません。
事件は2055年8月の中頃のことでした。
この日、ファイトクラブ■■・■■■の近傍で強盗事件が発生。
犯人はオタワで活動する十人の青年窃盗グループです。
通行人を路地裏に連れ込み、銃を突きつけて財布を強奪しようとしたところ、通行人からの抵抗で揉み合いになったため射殺。
騒ぎを聞きつけて急行した警察から犯行グループは逃亡し、■■・■■■の建物内に逃げ込みました。
当時、■■・■■■では昼の興行がおこなわれており、子供を含む三十人の観客がいます。
犯行グループは■■・■■■のスタッフを射殺し、子供を含む三十人の観客を人質にしました。
この時、バルド556はメンテナンスルームでスリープ状態で、■■が整備をおこなっています。
監視カメラの映像では、犯行グループがスタッフを射殺していく騒ぎを聞きつけた■■がメンテナンスルームから廊下へ出ていくのが記録されていました。
その時、■■は犯行グループの一人に撃たれます。
腹部を撃たれた■■がメンテナンスルームへと戻ると、バルド556をスリープ状態から立ち上げて倒れました。
その行為が偶然のものか、意図的な行為かは監視カメラの映像から分かりません。
バルド556は腹部から血を流す■■と会話をしましたが、その内容の記録はありません。
ただ、生命の死というものをバルド556は理解しているように思えます。
■■が動かなくなるとバルド556は花を一輪、■■の胸に置いてメンテナンスルームを出ていきました。
この行動はバルド556の異常性なのかしばしば議論されます。
あるいは、戦争で仲間を失った兵士に対するセラピー行動では無いのかと反論されることもありますが、専門家の間でも結論は出ていません。
バルド556は廊下の犯行グループを三人、倒しました。
この時、二人の青年が胸を殴られて胸骨を骨折。
一人は倒れた時に後頭部をコンクリートの床へ強打し、死亡しています。
バルド556は管理室を制圧していた青年二人を殴り、二人とも脳挫傷で死亡しました。
格闘用のロボットは本来、人間に加害しないようプログラミングされており、■■も同様のプログラムを施していたと考えられています。
それでも人間を殺害した理由はバルド556にシステムの異常があったからなのか、それとも敵国の兵士を殺す戦争用のプログラムが残っていたからなのかは不明です。
その後、バルド556は管理室で照明を落とし、スモークを焚きました。
この時、残った犯人五人は逃げ遅れた客を客席で人質にしていました。
スモークは演出用のものですが、大量に焚いたため犯人達の視界を遮ることに問題はありません。
臨機応変な対応を戦争用ロボットのプログラミングによるものとされていますが、バルド556は初期型のためここまで精緻な作戦行動を自ら計画して立案、実行することは不可能に近いと考えられます。
その後のバルド556はさながら優秀な特殊部隊のようでした。
スモークに乗じて四人の犯人を無力化。
闇討ちのため抵抗がなかったのでしょう。四人とも手足を折られる形で無力化しており、生命に異常はありませんでした。
この点から、バルド556に恣意的な殺傷行動は見られず異常性は無いと判断する者もいます。
ですが、バルド556にとって想定外だった事態が、最後の一人がリングに逃げ込んだ時に起こりました。
最後の犯人はリングを駆け抜けて反対側へと逃げました。
バルド556が犯人を追ってリングに上がります。
この時、リングでは二機のロボットが興行をおこなっていました。
事件が発生してから二機のロボットはプログラムに従って戦いを続けていたのです。
そのような二機の間をバルド556が通ったため、二機のロボットはプログラムに従ってバルド556に襲い掛かりました。
格闘用ロボットはリング内で格闘用マーカーの装置を取り付けられているロボットを狙うようにプログラムされています。
バルド556はそのような二機をただちに制圧、破壊しました。
ですが、破壊する間にスモークが晴れてしまいます。
スモークの晴れた犯人は十代前半の子供を人質にとりました。
バルド556は犯人の行動の意味を深く理解したのでしょう。
立ち止まり、近付こうとはしませんでした。
この時、犯人が使用していた銃はエレファントガンです。
象を撃つために使用された旧世代の単発銃ですが、ロボット対策に使用する無法者が増えていました。
犯人もまた、ロボット対策としてエレファントガンを不正取得していたのです。
立ち止まったバルド556に対して犯人はエレファントガンを用いました。
発射された弾丸はバルド556の頭部骨格装甲を破壊し、内部の人工知能を粉々に吹き飛ばしたのです。
バルド556はロボットとしての死を迎えました。
犯人は破壊されたバルド556に近付き、ロボットとしての死を確認しようと試みます。
すると驚くべきことが起こりました。
頭部を完全に破壊されたバルド556が上半身を起こして、犯人を引き倒すと、抱き締めて無力化したのです。
とうぜんながら、人工知能であるチップを破壊されたロボットが動くことはありえません。
しかし、これは人質が全員目撃した情報であり、全員が同一の証言をおこなったのです。
専門家の中には、集団ヒストリーによる幻覚だと主張する者もいますが、しかし、後にファイトクラブ■■・■■■へ突入した警察官の公開資料によると頭部の無いバルド556が犯人の一人を抱き締める形で無力化していたと記述があります。
また、犯行グループの搬送された病院においても、犯人の一人はキツく圧迫を受けたことによる肋骨の骨折が記録されていました。
バルド556が頭部を破壊されて人工知能チップを失ってなお、親しい■■の復讐のため、人質を救出するため、犯人を捕まえたのだと思えてなりません。
——人の心も元を辿れば単純なプログラム的反射でしかありません。単純なプログラムが複雑に作用しあうことが『心』ならロボットの心というものも確かにあるのではないでしょうか? バルド556の人工知能チップを回収できなかったのは非常に残念でなりません——トーマス・リチャード。
——トーマス博士はロボット格闘大会が個人的に好きなようでずいぶんと主観的な報告書に思えます。推察を書かれるのはけっこうですが、客観的な事実と事実に基づく推察のみ記述するよう努めてください——監査官。
ロボットの心について語る時、バルド556のストーリーは欠かせないものでしょう。
バルド556がプログラムの壊れているイカれたロボットだったのか、それとも心という有機的で複雑な機構を備えた存在だったのか。
専門家のあいだでさえ、答えはでません。
——バルド556はカナダの首都オタワで開催されていたロボット格闘大会のクリーガァでした。
クリーガァとは格闘大会に出場するロボットの選手のことです。
バルド556は第三次世界大戦に使用されたアンドロイドtypeーFの米軍横流し品だと推察されます。
メモリーやプログラム、プロテクトは強引に書き換えられ、これが後の異常性に繋がったと思われます。
ロボット格闘大会はロボットの破損、故障が激しいのですがバルド566は2040年頃から2055年頃まで、およそ15年前後の間、クリーガァとして活躍しました。
バルド556の命名由来はドイツ人男性名バルドの名前が与えられた556番目のロボットという意味です。
当時の観客からはチャンピオンと呼ばれて親しまれていたようです。
※注釈——ロボット格闘大会とは2020年代後半にイングランドで始まった人型ロボットの格闘大会です。
一対一の試合形式でボクシングに近いルールですが、リングを金網で囲み、拳をハンマーやドリルといった武器に換装して戦うため、過激で残酷な試合が多く、世界的に人気な競技です。
閑話休題。
バルド556はオタワのファイトクラブ■■・■■■の倉庫に保管されていたものをアメリカ避難民の老人■■(個人情報のため検閲済み)によって調整、起動されました。
■■はアメリカのファイトロボットの調整師でしたが第三次世界大戦に伴ってオタワへ避難した経緯を持ちます。
■■はファイトクラブ■■・■■■に雇われてバルド556の専属調整師となりました。
そのため、バルド556は■■をとても信頼していたと思われます。
バルド556はアンドロイドtypeーFの男性兵隊モデルで、身長は180cm。筋肉質な白人男性です。
ゴムを加工した人工皮膚が破けて人工筋肉やワイヤー、人工骨格がところどころ露見していました。
特に印象的なのは頭頂部から右目周辺までの人工皮膚が破け、頭蓋骨にあたる人工骨格が発露している点です。
この特徴から、某映画を模してターミネーターと異名をされていたようです。
表情機能は故障しており、無表情でした。
そのような外見や異名とは違い、普段のバルド556は穏和であったとされています。
アメリカ陸軍の調査では、戦闘に向かないプログラム傾向のあるアンドロイドが破棄された履歴があり、バルド556と思われる型番のアンドロイドも履歴にありました。
バルド556の穏和なプログラム傾向は出荷時の初期不良と思われます。
この穏和な傾向は■■も修正できなかったようです。
バルド556は手を凶器に換装せず、もっぱら素手による戦いをおこないました。
バルド556の戦い方は関節技によるオーバーロックで腕部や脚部を破壊する方法です。
これは、敵対する相手ロボットを完全に破壊しないための処置だと思われますが、腕や脚を派手に破壊するバルド556の戦い方は観客の興奮を誘いました。
また、バルド556は戦闘用のロボットと異なり、客への愛想も非常に良かったようです。
入場時に客が手を出せばタッチで応える事も多く、退場時に求められればサインに応じる事もあったようでした。
※補遺——ファンサービスに関する特徴は軍用ロボットのセラピー機能に依る行動の可能性が高く、異常性とは無関係と思慮されます。
バルド556の異常性は2040年、最初の試合を終えた時には既に見られたようです。
■■が大会運営に送った電子メールによると、バルド556が勝利の報酬として花を要望していることが記されています。
これ以降、バルド556が花の生育を好んだ事は複数の記録から確認できます。
戦争用として作られ、戦闘用に調整されたバルド556が花を愛でる事を好むのは明らかな異常でした。
バルド556は試合に勝つたび、花を要望しました。
事件の発生する2055年までの間に、バルド556のメンテナンスルームが花に埋め尽くされるのは当然の事だったようです。
また、バルド556は他にも、ファンとの交流が盛んでした。
クリーガァは試合の無い日にファイトクラブの前で展示される機会があります。
バルド556は展示のさい、子供を肩に乗せるなどの行為を命令も与えられずにおこなったのです。
これが異常行動なのか、それとも戦争用のセラピー機能が残っていたからなのかは、今では調べることもできません。
事件は2055年8月の中頃のことでした。
この日、ファイトクラブ■■・■■■の近傍で強盗事件が発生。
犯人はオタワで活動する十人の青年窃盗グループです。
通行人を路地裏に連れ込み、銃を突きつけて財布を強奪しようとしたところ、通行人からの抵抗で揉み合いになったため射殺。
騒ぎを聞きつけて急行した警察から犯行グループは逃亡し、■■・■■■の建物内に逃げ込みました。
当時、■■・■■■では昼の興行がおこなわれており、子供を含む三十人の観客がいます。
犯行グループは■■・■■■のスタッフを射殺し、子供を含む三十人の観客を人質にしました。
この時、バルド556はメンテナンスルームでスリープ状態で、■■が整備をおこなっています。
監視カメラの映像では、犯行グループがスタッフを射殺していく騒ぎを聞きつけた■■がメンテナンスルームから廊下へ出ていくのが記録されていました。
その時、■■は犯行グループの一人に撃たれます。
腹部を撃たれた■■がメンテナンスルームへと戻ると、バルド556をスリープ状態から立ち上げて倒れました。
その行為が偶然のものか、意図的な行為かは監視カメラの映像から分かりません。
バルド556は腹部から血を流す■■と会話をしましたが、その内容の記録はありません。
ただ、生命の死というものをバルド556は理解しているように思えます。
■■が動かなくなるとバルド556は花を一輪、■■の胸に置いてメンテナンスルームを出ていきました。
この行動はバルド556の異常性なのかしばしば議論されます。
あるいは、戦争で仲間を失った兵士に対するセラピー行動では無いのかと反論されることもありますが、専門家の間でも結論は出ていません。
バルド556は廊下の犯行グループを三人、倒しました。
この時、二人の青年が胸を殴られて胸骨を骨折。
一人は倒れた時に後頭部をコンクリートの床へ強打し、死亡しています。
バルド556は管理室を制圧していた青年二人を殴り、二人とも脳挫傷で死亡しました。
格闘用のロボットは本来、人間に加害しないようプログラミングされており、■■も同様のプログラムを施していたと考えられています。
それでも人間を殺害した理由はバルド556にシステムの異常があったからなのか、それとも敵国の兵士を殺す戦争用のプログラムが残っていたからなのかは不明です。
その後、バルド556は管理室で照明を落とし、スモークを焚きました。
この時、残った犯人五人は逃げ遅れた客を客席で人質にしていました。
スモークは演出用のものですが、大量に焚いたため犯人達の視界を遮ることに問題はありません。
臨機応変な対応を戦争用ロボットのプログラミングによるものとされていますが、バルド556は初期型のためここまで精緻な作戦行動を自ら計画して立案、実行することは不可能に近いと考えられます。
その後のバルド556はさながら優秀な特殊部隊のようでした。
スモークに乗じて四人の犯人を無力化。
闇討ちのため抵抗がなかったのでしょう。四人とも手足を折られる形で無力化しており、生命に異常はありませんでした。
この点から、バルド556に恣意的な殺傷行動は見られず異常性は無いと判断する者もいます。
ですが、バルド556にとって想定外だった事態が、最後の一人がリングに逃げ込んだ時に起こりました。
最後の犯人はリングを駆け抜けて反対側へと逃げました。
バルド556が犯人を追ってリングに上がります。
この時、リングでは二機のロボットが興行をおこなっていました。
事件が発生してから二機のロボットはプログラムに従って戦いを続けていたのです。
そのような二機の間をバルド556が通ったため、二機のロボットはプログラムに従ってバルド556に襲い掛かりました。
格闘用ロボットはリング内で格闘用マーカーの装置を取り付けられているロボットを狙うようにプログラムされています。
バルド556はそのような二機をただちに制圧、破壊しました。
ですが、破壊する間にスモークが晴れてしまいます。
スモークの晴れた犯人は十代前半の子供を人質にとりました。
バルド556は犯人の行動の意味を深く理解したのでしょう。
立ち止まり、近付こうとはしませんでした。
この時、犯人が使用していた銃はエレファントガンです。
象を撃つために使用された旧世代の単発銃ですが、ロボット対策に使用する無法者が増えていました。
犯人もまた、ロボット対策としてエレファントガンを不正取得していたのです。
立ち止まったバルド556に対して犯人はエレファントガンを用いました。
発射された弾丸はバルド556の頭部骨格装甲を破壊し、内部の人工知能を粉々に吹き飛ばしたのです。
バルド556はロボットとしての死を迎えました。
犯人は破壊されたバルド556に近付き、ロボットとしての死を確認しようと試みます。
すると驚くべきことが起こりました。
頭部を完全に破壊されたバルド556が上半身を起こして、犯人を引き倒すと、抱き締めて無力化したのです。
とうぜんながら、人工知能であるチップを破壊されたロボットが動くことはありえません。
しかし、これは人質が全員目撃した情報であり、全員が同一の証言をおこなったのです。
専門家の中には、集団ヒストリーによる幻覚だと主張する者もいますが、しかし、後にファイトクラブ■■・■■■へ突入した警察官の公開資料によると頭部の無いバルド556が犯人の一人を抱き締める形で無力化していたと記述があります。
また、犯行グループの搬送された病院においても、犯人の一人はキツく圧迫を受けたことによる肋骨の骨折が記録されていました。
バルド556が頭部を破壊されて人工知能チップを失ってなお、親しい■■の復讐のため、人質を救出するため、犯人を捕まえたのだと思えてなりません。
——人の心も元を辿れば単純なプログラム的反射でしかありません。単純なプログラムが複雑に作用しあうことが『心』ならロボットの心というものも確かにあるのではないでしょうか? バルド556の人工知能チップを回収できなかったのは非常に残念でなりません——トーマス・リチャード。
——トーマス博士はロボット格闘大会が個人的に好きなようでずいぶんと主観的な報告書に思えます。推察を書かれるのはけっこうですが、客観的な事実と事実に基づく推察のみ記述するよう努めてください——監査官。
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