私とタキさんの話

魚肉

文字の大きさ
1 / 3

私とタキさんの出会い

しおりを挟む
高校はかろうじて卒業できた。卒業して、糸が切れたように何もできなくなった。大学に行こうとも思わなかったし、働く気にもなれなかった。人間生きてくためにはお金が必要で、お金を手に入れるためには働かなくちゃいけないけど、体も頭も動かなかった。

おばあちゃんはそんなどうしようもない孫をみて、「気が向いたら何か始めたらいいのよ」とだけ言った。それが励ましなのか、見放されたのか、私には分からなかった。

おばあちゃんは80歳になっても背筋をピンと伸ばして、毎日外に出て、私にはどうやって作ってるのか検討もつかない凝った料理を毎日作った。無言でその料理を食べる私に「あんたは好き嫌いしないところしか良いところがないのかい」と冗談なのか本気なのか、分からないことを何度も言った。

漠然と、私はこの人ときっとこれからいつまでもそんな暮らしを続けていくんだろうと思った。おばあちゃんは私が家から一歩も出なくなっても、、家事を手伝わなくても、何も言わなかった。

ーーーだから、馬鹿で浅はかでどうしようもない私は考えもしなかった。

おばあちゃんが死ぬことなんて。


死んでから2日たって、おばあちゃんのお葬式が終わろうとしている今も、未だにおばあちゃんが死んだことの実感が湧かない。

お葬式にはおばあちゃんとどんな関係なのか検討もつかない人たちがたくさん来て、年齢層もバラバラで、このお葬式は本当におばあちゃんのお葬式なのかと疑ってしまう。

式が終わると、唯一の親族である私と、頼りない私の代わりに喪主を務めてくれた私が唯一知っている、おばあちゃんの友人の鈴木のおじいちゃんの2人で火葬場に向かう。

「ハルちゃん、冬子さんと住んでたあそこ、出るのかい?2人で住むにも大きすぎる家だったろう」
 
「…おばあちゃんのものとか、どうすればいい?」

「知り合いに遺品整理と買取やってるのがいるから、安く頼んでみるよ」

「ありがとう」

鈴木のおじいちゃんには、お葬式で泣きもせず、ニートで、全く孝行してこなかった冬子さんの孫娘がどう映っているのだろう。





鈴木のおじいちゃんと別れた後、おばあちゃんのいない家に帰ることが怖くて、半年ぶりくらいに近所を散歩した。近所といっても、生まれた場所でも育った場所でもないから、馴染みはない。高校を卒業してからはほとんど外にも出ていないから、土地勘もあまりない。


これからどうすればいいんだろうか。


頼れる親族なんていない。ひとりで生きていかないといけない。恐怖で頭が、背中が、足先が冷たくなる。もう、誰もいない。ひとりになった、私は。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...