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序章 総ての始まり
第7話 美沙緒、絶望する
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……沈黙が、辺りを支配した。その場にいる全員の視線が、一身にウチに向けられる。
今の言葉が本当なら……今までウチが描いてきたのは、その人の本性って事になる。だから皆、あんなに怒ってた?
思い返せば、ウチの似顔絵は確かにいつもモデルとは似てないんだけど、逆にモデルより綺麗な顔に描いてしまう事もあった。その度にモデルになった子には、盛りすぎだって恥ずかしがられてたけど……。
それって、その子が綺麗な心を持ってたって事? ……でも待って、それじゃあ……。
「それじゃあウチ……絶対まともな人物画が書けないって事おおおおお!?」
「……ハイ?」
ウチの魂の絶叫に、イケメンの笑顔が何故か強張った。他の皆も、これまた何故かすっごい微妙な顔になってる。
「あの……君、状況、解ってる?」
「解ってますよ! どう足掻いても、人物画の道は諦めるしかないって事が!」
そう、これは、画家を志す者にとっては深刻な問題だ。人物画の分野では、ウチは決して芽が出ないと宣告されたのだから。
一口に画家と言っても、各々が得意とする分野は様々だ。静物画、風景画、抽象画……。
どの分野で評価されるかは、とにかく描き続けない事には解らない。逆に言えばどの分野も、描き続けていればいつかは評価されるかもしれない。
けどウチは……どんなに頑張っても、評価されるような人物画は描けない。人物画で特に重要視されるのは、外見の特徴を上手く捉えてるかどうかだからだ。
つまり、どれだけ内面を表に出して描こうが外見が似ないならそれは人物画として失敗なのである。何と言う絶望。ウチの絵が認められる可能性が一つ、完璧に潰れただなんて……。
「……参ったなぁ。まさかここまで飲み込みが悪いとは思ってなかったよ。君って知能まで毛虫並だったんだ」
「私も、戌井さん以上に頭の悪い人って初めて見ました」
そんなショックを隠し切れないウチに、周囲から飛んでくるのはそんな心無い言葉の数々。くそぅ! どうせ人間じゃないアンタ達に、ウチの繊細な心は解りませんよーだ!
「あのね、解ってないみたいだからハッキリ言うよ。君は……」
「ほっほっほ。まぁまぁ、そうカリカリするものじゃないよ、君達」
イケメンがまだ何かを言おうとしたその時、またここにいる誰のものでもない声が響いた。え? ウチまだ誰かを見落としてた?
そう思って辺りを見回すけど、どう見ても、これ以上誰かが隠れてるようには見えない。ウチが狐につままれたような気持ちになっていると、美人さんがほう、と溜息を吐いた。
「……課長。ちゃんと姿を見せて下さいな。彼女が混乱しています」
「そうだな、すまんすまん」
そしてそんな軽い謝罪の後――一番奥の机、ドラマとかではお偉いさんが座る位置にある机に、頭禿げかけで太っちょのおじさんが突然姿を現した。本当に何の前触れもなく、突然。
「えっ……ええっ!?」
「ほっほっほ、ご挨拶が遅れたね。私は課長の只居。他人に存在を認識されなくなる力を持つ、『ぬらりひょん』の一族の者だよ」
驚きに目をまん丸くするウチに、おじさん――只居さんはにこやかに笑いかける。他の人達とは違う丁寧な名乗りに、ウチもつい姿勢を正してしまう。
「あ……どうも。ウチは円美沙緒……です」
「美沙緒君か、良い名だね。さて、急な話で悪いんだが……」
そこで只居さんは、一旦言葉を切る。そして笑みを崩さないまま、ウチにとって更なる衝撃の一言を告げた。
「君には今日から、我が捜査零課の保護下に入って貰う。でないと君……死ぬよ?」
「……え?」
瞬間、ウチの顔から、さあっと血の気が引いた。
今の言葉が本当なら……今までウチが描いてきたのは、その人の本性って事になる。だから皆、あんなに怒ってた?
思い返せば、ウチの似顔絵は確かにいつもモデルとは似てないんだけど、逆にモデルより綺麗な顔に描いてしまう事もあった。その度にモデルになった子には、盛りすぎだって恥ずかしがられてたけど……。
それって、その子が綺麗な心を持ってたって事? ……でも待って、それじゃあ……。
「それじゃあウチ……絶対まともな人物画が書けないって事おおおおお!?」
「……ハイ?」
ウチの魂の絶叫に、イケメンの笑顔が何故か強張った。他の皆も、これまた何故かすっごい微妙な顔になってる。
「あの……君、状況、解ってる?」
「解ってますよ! どう足掻いても、人物画の道は諦めるしかないって事が!」
そう、これは、画家を志す者にとっては深刻な問題だ。人物画の分野では、ウチは決して芽が出ないと宣告されたのだから。
一口に画家と言っても、各々が得意とする分野は様々だ。静物画、風景画、抽象画……。
どの分野で評価されるかは、とにかく描き続けない事には解らない。逆に言えばどの分野も、描き続けていればいつかは評価されるかもしれない。
けどウチは……どんなに頑張っても、評価されるような人物画は描けない。人物画で特に重要視されるのは、外見の特徴を上手く捉えてるかどうかだからだ。
つまり、どれだけ内面を表に出して描こうが外見が似ないならそれは人物画として失敗なのである。何と言う絶望。ウチの絵が認められる可能性が一つ、完璧に潰れただなんて……。
「……参ったなぁ。まさかここまで飲み込みが悪いとは思ってなかったよ。君って知能まで毛虫並だったんだ」
「私も、戌井さん以上に頭の悪い人って初めて見ました」
そんなショックを隠し切れないウチに、周囲から飛んでくるのはそんな心無い言葉の数々。くそぅ! どうせ人間じゃないアンタ達に、ウチの繊細な心は解りませんよーだ!
「あのね、解ってないみたいだからハッキリ言うよ。君は……」
「ほっほっほ。まぁまぁ、そうカリカリするものじゃないよ、君達」
イケメンがまだ何かを言おうとしたその時、またここにいる誰のものでもない声が響いた。え? ウチまだ誰かを見落としてた?
そう思って辺りを見回すけど、どう見ても、これ以上誰かが隠れてるようには見えない。ウチが狐につままれたような気持ちになっていると、美人さんがほう、と溜息を吐いた。
「……課長。ちゃんと姿を見せて下さいな。彼女が混乱しています」
「そうだな、すまんすまん」
そしてそんな軽い謝罪の後――一番奥の机、ドラマとかではお偉いさんが座る位置にある机に、頭禿げかけで太っちょのおじさんが突然姿を現した。本当に何の前触れもなく、突然。
「えっ……ええっ!?」
「ほっほっほ、ご挨拶が遅れたね。私は課長の只居。他人に存在を認識されなくなる力を持つ、『ぬらりひょん』の一族の者だよ」
驚きに目をまん丸くするウチに、おじさん――只居さんはにこやかに笑いかける。他の人達とは違う丁寧な名乗りに、ウチもつい姿勢を正してしまう。
「あ……どうも。ウチは円美沙緒……です」
「美沙緒君か、良い名だね。さて、急な話で悪いんだが……」
そこで只居さんは、一旦言葉を切る。そして笑みを崩さないまま、ウチにとって更なる衝撃の一言を告げた。
「君には今日から、我が捜査零課の保護下に入って貰う。でないと君……死ぬよ?」
「……え?」
瞬間、ウチの顔から、さあっと血の気が引いた。
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