【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)

文字の大きさ
49 / 274

49 カイルとリディアの失恋問題とすれ違いの新たな一歩。

しおりを挟む
久しぶりの王都は、帰り支度をしている方や冒険帰りの冒険者が沢山いらっしゃって、お店の近くではカイルが良く声を掛けられていましたわ。


「ようサルビアの旦那! 隣の可愛い子は妹か?」
「ははは! 可愛いだろう? 余りにも可愛くって店にも出してないんだ」
「そんだけ可愛けりゃ妹目当ての客だらけになっちまうわな!」
「あ! アレか! その子がアイテム作ってくれてるんだろ!」
「妹ちゃん! ハッカ水本当にありがとうな!」
「アイテムも一割から三割も安くしてほしいって頼んだのも妹ちゃんだっけか! 本当に優しい妹ちゃんだぜ!!」
「あ……ありがとうございます!」


冒険者の方々からお礼を言われ、妹と呼ばれたことに少しだけショックを受けつつも、きっとわたくしを守る為だろうと思い、皆さんに頭を下げてお礼を伝えていく。
すると――。


「お嬢ちゃんがサルビア店主の妹ちゃん? それもアイテム制作の担当なのかしら?」
「はい、アイテム制作はわたくしの仕事です」
「孫が毎年この時期になると汗疹で困ってたんだけど、サルビアのアイテムを使い始めてから痒がったりしないわ。本当にありがとうね」
「うちの子のオムツかぶれもよ! 沢山お友達に紹介したわ!」
「ハッカ水のお陰で虫に刺されないのも素晴らしいわ!」
「刺されても痒み止め作ってくれたでしょう?」
「子供の事を思い合ってくれる商品を売ってくれる道具屋ってあんまりないから、本当に助かってるのよ」
「ありがとうね」


――沢山のありがとうが降り注ぐ。
隣で手を繋いで経っているカイルを見ると、嬉しそうに微笑んでいて……わたくしが根詰めてアイテム制作をしていたから気晴らしに連れて行ってくれてるのかと思ったけれど、少し違うような気がするわ。


「妹は誰かを思いやる気持ちが強い子なんです。きっとこれからもそうでしょうね」
「本当にいい御兄弟ね」
「ライトくんも優しい子ですしね」
「本当に何時もありがとう」


何度も何度も。
公爵家にいる頃は、存在自体がイラナイ者扱いで。
庶民に落とされてからは、外に出ることも無く、人と関わる事も殆どなく。
カイルが、カイルや皆がいたからこそ、わたくしはわたくしを保てていたのに。
こんなにも周囲の人に感謝されるなんて、思いもしなくて。

二人、王国の端にある海岸沿いのベンチに座ると、カイルがわたくしの頭を撫でながら口を開いた。


「リディアが作ったアイテムが、皆をこんなにも助けてくれてるんだって、頑張ってるリディアに見て欲しかったんだ」
「カイル……」
「でも俺は……出来ればリディアを外に出したくない気持ちが強かった」
「え?」
「リディアは可愛いからな。店の中が男だらけのむさ苦しい空間になるのが嫌だった」
「まぁ!」


もっと甘い言葉を期待したのに、カイルから出てきた言葉に目を見開きつつも、少しだけムッとしましたわ。
でも他所の道具屋を見る限り、道具屋って大抵むさ苦しいイメージがありましたけれど、サルビアは女性が多いネイルサロンが二階にありますから、多少は華やかですわよね。


「そう言うカイルだって、綺麗な女性が沢山いらっしゃるお店を持てて良かったですわね!」
「綺麗な女性は一人だけだよ」
「まぁ、特別な女性が既に!」
「ああ」


なんてこと!!
わたくしが気づかぬうちに、既に心に決めた女性がいらっしゃるのね!
何方かしら……。従業員の皆さんの中にいらっしゃるのか……はたまたお店のお客様なのか。
これは少々、由々しき事態かも知れませんわ!


「ただ、その特別な女性は、少々複雑な環境で育ってきたようだからな。人と関わる事が苦手らしい」
「そう……でしたの」
「スキルも関係しているんだろう。人に言えないスキルを持つ事は生きることが難しい」
「そう……ですわね」
「けれど、それに負けず頑張ってる姿を見ると、たまらなく愛しくなる」
「………」
「まぁ、相手は俺の事を好きだとか言う感情はなさそうだから、期待薄かな」


カイル……そんな大事な事をわたくしに話してくれるなんて……。


「失恋は……辛いですわね」
「いや、まだ失恋したわけじゃ」
「失恋ですわ! 新たな恋に生きるべきよ!」
「だから失恋してないって」
「カイルは良い男ですもの! 必ず次がありましてよ!!」
「だから………ああ、うん、お前はそう言う奴だよな」


何かしら? 凄い呆れた表情を為さってますわ。
折角慰めてあげてますのに、何かしら、小馬鹿にされてる気がしますわ。


「じゃあ次は、もう少しガンガン相手にいけるように、臆病にならずに行っても大丈夫だと思うか?」
「恋はがっしりと相手を掴んでおくものだと思いますわ! そう、監禁してでも!」
「監禁か……自分から閉じこもってる人の場合はどうするんだろうな」
「それは難しい人ですわね。意味がちょっと分かりづらいですけれど」
「じゃあリディアは自分が監禁されても良いと思うタイプか?」
「伊達に引き籠りじゃありませんもの。監禁されても多分気がつきませんわ」
「あ、うん、そうだな」
「でも恋……。監禁して閉じ込めて自分しか見えなくさせるような恋愛って、重いけど憧れますわよね」
「リディアはそっち系だったのか。良かった、相性が良さそうだ」
「?」
「よし、帰ろうか」
「そうですわね?」


なんだかモヤっとしますけれど、カイルの次の恋愛はもっとガンガンいくんでしょうね。
わたくしはちょこっとだけ、失恋した気分ですけれど……まぁ、それは仕方ありませんわ。
初恋は実らないと申しますものね。潔く諦めましてよ。
それに、カイルの恋愛様子を観察するのも、引き籠りとしてはアリなのかもしれませんわ。
こう……ストーカー的に観察するのも面白そう……なんて、思ってしまいますわ。


「次のスタートは、もっとガンガンせめていく事にするよ」
「応援してますわ!」
「リディアが重い男でも大丈夫な奴で良かったよ!」
「観察してますから頑張ってくださいませね!」
「期待しててくれ」
「はい!」


カイルの熱烈な恋模様を観察しますわ!
もうストーカー気味に!
そして、どの女性が好きな人なのか、ハッキリと見せて頂きましてよ!!


「今日はいいこと尽くしの一日だったと言う事にしましょう! カイルも新たなスタートを切れました事ですし!」
「そうだな、此れからは遠慮なく行かせてもらおう」
「応援してますわ!」
「ああ、覚悟して貰おう」


そう言うと、カイルはわたくしを抱き寄せたまま箱庭に戻りましたけれど、きっと監禁する相手とのやり方を試していらっしゃいますのね。
それに、箱庭だったら見られたとしてもロキシーお姉ちゃんとライトさんだけ。
仮令《たとえ》失敗しても、まだギリギリセーフでしょう。
新たなる恋の応援に、練習相手として身を差し出しますわ!
勘違いだけはしない様に心がけねばなりませんわね!!

さぁ、明日からはカイルの恋模様も観察しながら……また忙しい引き籠り生活になりそうですわね。
頑張りましょう!


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します

みおな
ファンタジー
 王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。  それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。  死んだはずの私が目覚めたのは・・・

親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!

音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ 生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界 ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生 一緒に死んだマヤは王女アイルに転生 「また一緒だねミキちゃん♡」 ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差 アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...