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113 動き出した道具屋と、撃退するライトの黒い笑み
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――ロキシーside――
その日も慌ただしい程の人の出で、商店街は賑わっていた。
オーナー代理として働くライトも忙しそうにしていたし、全員が忙しくしていたと思う。
「ライト、休憩入れなくて大丈夫かい?」
「この位は平気です。兄さんに比べたら全く問題ありません」
そう――ここ最近のカイルの忙しさは確かに凄かった。
王太子との会談に、大口依頼が来たことに加え、工場購入の後、必要な物を買いそろえ、更に怒涛の面接。
帰宅するとシオシオになっていたのはアタシも記憶に新しい。
「カイル様は本当に仕事一筋なんですね!」
「俺達も頑張らないとダメだなって気持ちになります!」
そう言って働くのはダンノージュ侯爵領道具店サルビアで働く従業員たちだ。
カイルの忙しさを告げると、一瞬死んだ魚の目のような状態になったが、彼らはカイルをとても信頼している。
無論その信頼は、店を任されているライトにも向けられていた。
今日も今日とて人通りが多い。
リディアの話では、酒場通りは閑散としていると言う情報だが、こっちに焼肉屋が出来たら更に閑散とするだろう。
そして、昼時――美味しそうな香りが『飲食店サルビア』から漂ってくると、冒険者も今では普通に飲食店サルビアに入っては主婦たちと混じって食事をするのが普通になっていた。
「今日は何を食べようか」といった会話があちらこちらから聞こえてくる。
だが丁度その頃やってきたのが、鳥の瞳のリーダーであるナインだった。
「カイルはいるかね?」
「申し訳ありません、兄さんは現在忙しく、私が代わりに店を任されております」
「カイルの弟か、随分と若いな」
「まだ11歳の若輩者です」
「と言う事は、貴方もダンノージュ侯爵家の孫と言う訳だな」
「はい」
「ダンノージュ侯爵家の孫二人はシッカリ者で、この先のダンノージュ侯爵領は安泰だな」
「そう言って頂けると嬉しいです。そして、そうあり続けたいと思います」
「ははは、シッカリした弟だ」
そりゃそうだろう。アタシのライトだ、そんじょそこらのガキとは違うんだよ。
――そう言いたいのをグッと我慢すると、ナインは必要な物を手に取り、しかもドッサリと買いこんでいく。
今回も石鹸の量が多い、やはり魔物を捌くときに臭いが軽減すると言う話は、冒険者の間では随分と広がった様だ。
「所でライト、一つお願いがあるんだが」
「はい、何でしょう」
「冒険者仲間でも話に上がっている事なんだが、石鹸を10個単位で売りに出すことは可能か?」
「10個単位……と言うと、箱詰めにしたりしてとかでしょうか?」
「ああ、この石鹸と言うのは実にいい。庶民の間でも随分と広がっている商品だ。だが、冒険者は魔物を捌いてアイテムを取る事も多い。故に使う量が多いのだ」
「分かりました、兄と相談して10個単位で売れるよう考えてみます」
「頼む。本当にこの石鹸は良いものだ。無論、君たちが売っているボディーソープもシャンプーも素晴らしい。冒険から帰った後、身体を洗うのがとても楽しみなんだよ」
「そう言って頂けると、とても嬉しいです」
天使のような笑顔のライトに、ナインの野郎もデレデレだ。
よくよく見ると、周りの冒険者達も癒されている。
流石アタシを選んだ男だと強く頷いた。
そんな時だった。
「おいおいおいおい、この店の商品を使ったら肌がかぶれたんだぜ? 一体どんな商品を扱ってやがるんだ!」
「慰謝料を払え慰謝料をよぉ!!」
そう言って入ってきたのはガラの悪い、カイルがうちの店には合わないといってアチラの道具屋に任せることにした冒険者達だった。
しかし、彼らもまさかSランク冒険者のリーダーであるナインが居るとは気が付かなかったのだろう。
ズカズカと入ってくると、ナインを押しのけてレジに立っているライトを睨みつけた。
「それは、本当にうちの店で買った商品でしょうか?」
「そうだって言ってるだろ!?」
「俺達が言ってるのに信用しねぇってのか? ああ???」
「すみません。我が家に来ている冒険者さんは皆さん覚えていますので、初めて見る顔ですが何時ご来店しましたか?」
「嘘ぶっこいんてんじゃねーぞ!」
「冒険者の顔一人ずつ覚えるなんてことが出来る人間がいるのかってんだよ!」
「いますよ? まず右手に石鹸を持っていられる方はカーズさんですよね。好きな香りは百合の香の石鹸で、右奥にいらっしゃるのがノノンさん。薔薇が好きな方です。左手にいらっしゃるのは二日ぶりにこられたスーノさん。ボディーソープのお話をうちの従業員としてらっしゃいました。このように、人の名前と顔、そして好きな物の特徴は頭に入れていて当たり前なのが、道具店サルビアですが」
「う」
「でも、俺達だって」
「あなた方が来店したのは初めてですよね? お名前も好きな物も分かりませんし、一体どこで何を買われて、どうしてかぶれたのか教えて頂きたいです」
「だから! お前の店の商品使ったらかぶれたんだっていってるだろ!」
「良いからサッサと慰謝料寄こしやがれ!!」
「では、どの様にかぶれているのか見せて頂けますか?」
「それは……」
「何でお前に見せないといけないんだよ!」
「ええ、無論かぶれている場所がお尻だと言うのなら、ここでお尻を見せることは不可能ですね。恥ずかしいでしょうし、せめてどこがかぶれたのか教えてください」
「俺は腕だよ!」
そう言って難癖付けてきた冒険者が袖をまくり上げると、確かにかぶれていた。
かぶれていたけれど――。
「これは、草負けでのかぶれだな」
「ええ、草負けですね。ボディーソープやシャンプーではこうなる事はあり得ません」
「だーかーらー」
「ダンノージュ侯爵家では、人の名前と相手の把握は必須科目だったなライト」
「ええ、勿論です」
「君たちは、ダンノージュ侯爵家のお孫さんに文句が言える程偉いのかね? 下手をすればダンノージュ侯爵領で冒険者家業は出来ないぞ」
「「え?」」
まさかナインが隣で見ていたとは思わなったのだろう。
二人は青ざめてナインとライトを交互に見ている。
すると――。
「お二人は酒場通りにある道具屋を懇意にしている冒険者の方であることは、記憶してますよ」
「「なっ」」
「商品にケチをつけに行くように金でも積まれましたか? 正直に話せば、お爺様と兄に話すのは止めておきましょう」
「「それはっ」」
「私たちのお店、いいえ、商店街全ての店は、ダンノージュ侯爵家より、街の状態や冒険者の状態をシッカリと伝える義務を言い渡されています。それは、どの様な小さなことでもです。ですので、あなた方の情報はシッカリとお爺様にお伝えせねばなりません。どうなんでしょう? あなた方が個人で難癖をつける為にやってこられたのでしょうか? それとも……道具屋から依頼されてやってきたのでしょうか? この二つの違いであなた方の運命が決まると言って過言ではありませんよ?」
「「なっ……頼まれてきたんだよ!!」」
「誰にです?」
「酒場通りの」
「道具屋の店主に!」
「そうでしたか! 兄に伝えておきましょう。あなた方はもう帰って結構ですよ。ですが草負けは辛いですね。初級ポーションでしたら差し上げます。治していってください」
「「お……おう……」」
「それと、二度とこんな真似をしてはいけませんよ? 他の冒険者さんにもシッカリ伝えてくださいね?」
「悪かったな、嬢ちゃん」
「俺こそ悪かったよ」
「私は男です!」
と、多少バタバタあったものの、見事ライトは場を諫めて見せた。
これがナインにはたまらなく面白かったようで、「私は君のファンになりそうだよ!」と笑っていたのが、少々気に喰わない一件だった。
だが、もしナインが居なかったら、アタシと雑魚冒険者とで揉めたことは確かだし、有難かったと言うことにしておこう。
別にライトのファンが増えるのが悪い事じゃない。
若干冒険者の間では「美少女」で通っているのは内緒にしているけれど。
中性的な顔立ちと身体が、尚更冒険者には受けがいいんだよなと、改めて納得した。
「しかし、良かったのかね? 初級ポーションをタダで渡してやって」
「二度とこのような真似をすることが無くなれば安いものです。それに、草負けはヒリヒリとして痛いですから」
「だが」
「彼らもダンノージュ侯爵領の冒険者です。我が侯爵家の大事な人材です。悪化して冒険が出来なくなるのは本意ではありませんし、本当に悪い人間ならば私を殴ってでも慰謝料を取ろうとするでしょう。けれど彼らはそんな卑怯な真似はしませんでしたから」
「何とも君も得難い人間だな」
「有難うございます」
こうして難を逃れたものの、その後も、もしかしたら難癖付けてくる奴がいるかもしれないとかいってナインは居座り続けた。
何と言うか……ライトの護衛のような感じだったのは、気に入らない。
でも、背に腹は代えられない。
結局、閉店時間まで居座ったナインは、お肌ツヤツヤで帰っていった。
ちょっと嫉妬してしまったのは仕方ないかも知れないけれど……。
「さて、酒場通りの道具屋が動き始めましたね」
「閑散としてるらしいからね。売り上げも相当悪いんだろう?」
「ええ、こちらも対策を練りましょう。今日の報告会でお話してみます」
「明日もナイン……来るのかね」
「どうでしょう? 冒険者とは何時いかなる時に依頼が入るか分かりませんから」
「ナイン……ライトをジッと見つめたままだったね。帰りはツヤツヤしてたよ」
「それで道具店の中が平和になるのなら安いものです。けれど、嫉妬して貰えるのは嬉しいですが、ロキシーも結構冒険者に見つめられていますからね? おあいこですよ」
「う」
「ふふふ、さぁ、どうやって叩き潰してやりましょうかねぇ」
笑顔なのに目が濁っているライトに、思わず背筋がゾッとしたが、こんな顔なんて見たことのない奴らからしたら、どこが天使だと言いたくなる。
「兄さんには悪いですが、もう少し忙しくなって貰いましょうか」
「い……忙しくなって貰うのかい?」
「ええ、まぁ、本格的に潰す時でも構わないんですけどね」
そう言って微笑むライトに、アタシはライト程、腹が黒い男を見たことがないと思ったのは言うまでもない。
その日も慌ただしい程の人の出で、商店街は賑わっていた。
オーナー代理として働くライトも忙しそうにしていたし、全員が忙しくしていたと思う。
「ライト、休憩入れなくて大丈夫かい?」
「この位は平気です。兄さんに比べたら全く問題ありません」
そう――ここ最近のカイルの忙しさは確かに凄かった。
王太子との会談に、大口依頼が来たことに加え、工場購入の後、必要な物を買いそろえ、更に怒涛の面接。
帰宅するとシオシオになっていたのはアタシも記憶に新しい。
「カイル様は本当に仕事一筋なんですね!」
「俺達も頑張らないとダメだなって気持ちになります!」
そう言って働くのはダンノージュ侯爵領道具店サルビアで働く従業員たちだ。
カイルの忙しさを告げると、一瞬死んだ魚の目のような状態になったが、彼らはカイルをとても信頼している。
無論その信頼は、店を任されているライトにも向けられていた。
今日も今日とて人通りが多い。
リディアの話では、酒場通りは閑散としていると言う情報だが、こっちに焼肉屋が出来たら更に閑散とするだろう。
そして、昼時――美味しそうな香りが『飲食店サルビア』から漂ってくると、冒険者も今では普通に飲食店サルビアに入っては主婦たちと混じって食事をするのが普通になっていた。
「今日は何を食べようか」といった会話があちらこちらから聞こえてくる。
だが丁度その頃やってきたのが、鳥の瞳のリーダーであるナインだった。
「カイルはいるかね?」
「申し訳ありません、兄さんは現在忙しく、私が代わりに店を任されております」
「カイルの弟か、随分と若いな」
「まだ11歳の若輩者です」
「と言う事は、貴方もダンノージュ侯爵家の孫と言う訳だな」
「はい」
「ダンノージュ侯爵家の孫二人はシッカリ者で、この先のダンノージュ侯爵領は安泰だな」
「そう言って頂けると嬉しいです。そして、そうあり続けたいと思います」
「ははは、シッカリした弟だ」
そりゃそうだろう。アタシのライトだ、そんじょそこらのガキとは違うんだよ。
――そう言いたいのをグッと我慢すると、ナインは必要な物を手に取り、しかもドッサリと買いこんでいく。
今回も石鹸の量が多い、やはり魔物を捌くときに臭いが軽減すると言う話は、冒険者の間では随分と広がった様だ。
「所でライト、一つお願いがあるんだが」
「はい、何でしょう」
「冒険者仲間でも話に上がっている事なんだが、石鹸を10個単位で売りに出すことは可能か?」
「10個単位……と言うと、箱詰めにしたりしてとかでしょうか?」
「ああ、この石鹸と言うのは実にいい。庶民の間でも随分と広がっている商品だ。だが、冒険者は魔物を捌いてアイテムを取る事も多い。故に使う量が多いのだ」
「分かりました、兄と相談して10個単位で売れるよう考えてみます」
「頼む。本当にこの石鹸は良いものだ。無論、君たちが売っているボディーソープもシャンプーも素晴らしい。冒険から帰った後、身体を洗うのがとても楽しみなんだよ」
「そう言って頂けると、とても嬉しいです」
天使のような笑顔のライトに、ナインの野郎もデレデレだ。
よくよく見ると、周りの冒険者達も癒されている。
流石アタシを選んだ男だと強く頷いた。
そんな時だった。
「おいおいおいおい、この店の商品を使ったら肌がかぶれたんだぜ? 一体どんな商品を扱ってやがるんだ!」
「慰謝料を払え慰謝料をよぉ!!」
そう言って入ってきたのはガラの悪い、カイルがうちの店には合わないといってアチラの道具屋に任せることにした冒険者達だった。
しかし、彼らもまさかSランク冒険者のリーダーであるナインが居るとは気が付かなかったのだろう。
ズカズカと入ってくると、ナインを押しのけてレジに立っているライトを睨みつけた。
「それは、本当にうちの店で買った商品でしょうか?」
「そうだって言ってるだろ!?」
「俺達が言ってるのに信用しねぇってのか? ああ???」
「すみません。我が家に来ている冒険者さんは皆さん覚えていますので、初めて見る顔ですが何時ご来店しましたか?」
「嘘ぶっこいんてんじゃねーぞ!」
「冒険者の顔一人ずつ覚えるなんてことが出来る人間がいるのかってんだよ!」
「いますよ? まず右手に石鹸を持っていられる方はカーズさんですよね。好きな香りは百合の香の石鹸で、右奥にいらっしゃるのがノノンさん。薔薇が好きな方です。左手にいらっしゃるのは二日ぶりにこられたスーノさん。ボディーソープのお話をうちの従業員としてらっしゃいました。このように、人の名前と顔、そして好きな物の特徴は頭に入れていて当たり前なのが、道具店サルビアですが」
「う」
「でも、俺達だって」
「あなた方が来店したのは初めてですよね? お名前も好きな物も分かりませんし、一体どこで何を買われて、どうしてかぶれたのか教えて頂きたいです」
「だから! お前の店の商品使ったらかぶれたんだっていってるだろ!」
「良いからサッサと慰謝料寄こしやがれ!!」
「では、どの様にかぶれているのか見せて頂けますか?」
「それは……」
「何でお前に見せないといけないんだよ!」
「ええ、無論かぶれている場所がお尻だと言うのなら、ここでお尻を見せることは不可能ですね。恥ずかしいでしょうし、せめてどこがかぶれたのか教えてください」
「俺は腕だよ!」
そう言って難癖付けてきた冒険者が袖をまくり上げると、確かにかぶれていた。
かぶれていたけれど――。
「これは、草負けでのかぶれだな」
「ええ、草負けですね。ボディーソープやシャンプーではこうなる事はあり得ません」
「だーかーらー」
「ダンノージュ侯爵家では、人の名前と相手の把握は必須科目だったなライト」
「ええ、勿論です」
「君たちは、ダンノージュ侯爵家のお孫さんに文句が言える程偉いのかね? 下手をすればダンノージュ侯爵領で冒険者家業は出来ないぞ」
「「え?」」
まさかナインが隣で見ていたとは思わなったのだろう。
二人は青ざめてナインとライトを交互に見ている。
すると――。
「お二人は酒場通りにある道具屋を懇意にしている冒険者の方であることは、記憶してますよ」
「「なっ」」
「商品にケチをつけに行くように金でも積まれましたか? 正直に話せば、お爺様と兄に話すのは止めておきましょう」
「「それはっ」」
「私たちのお店、いいえ、商店街全ての店は、ダンノージュ侯爵家より、街の状態や冒険者の状態をシッカリと伝える義務を言い渡されています。それは、どの様な小さなことでもです。ですので、あなた方の情報はシッカリとお爺様にお伝えせねばなりません。どうなんでしょう? あなた方が個人で難癖をつける為にやってこられたのでしょうか? それとも……道具屋から依頼されてやってきたのでしょうか? この二つの違いであなた方の運命が決まると言って過言ではありませんよ?」
「「なっ……頼まれてきたんだよ!!」」
「誰にです?」
「酒場通りの」
「道具屋の店主に!」
「そうでしたか! 兄に伝えておきましょう。あなた方はもう帰って結構ですよ。ですが草負けは辛いですね。初級ポーションでしたら差し上げます。治していってください」
「「お……おう……」」
「それと、二度とこんな真似をしてはいけませんよ? 他の冒険者さんにもシッカリ伝えてくださいね?」
「悪かったな、嬢ちゃん」
「俺こそ悪かったよ」
「私は男です!」
と、多少バタバタあったものの、見事ライトは場を諫めて見せた。
これがナインにはたまらなく面白かったようで、「私は君のファンになりそうだよ!」と笑っていたのが、少々気に喰わない一件だった。
だが、もしナインが居なかったら、アタシと雑魚冒険者とで揉めたことは確かだし、有難かったと言うことにしておこう。
別にライトのファンが増えるのが悪い事じゃない。
若干冒険者の間では「美少女」で通っているのは内緒にしているけれど。
中性的な顔立ちと身体が、尚更冒険者には受けがいいんだよなと、改めて納得した。
「しかし、良かったのかね? 初級ポーションをタダで渡してやって」
「二度とこのような真似をすることが無くなれば安いものです。それに、草負けはヒリヒリとして痛いですから」
「だが」
「彼らもダンノージュ侯爵領の冒険者です。我が侯爵家の大事な人材です。悪化して冒険が出来なくなるのは本意ではありませんし、本当に悪い人間ならば私を殴ってでも慰謝料を取ろうとするでしょう。けれど彼らはそんな卑怯な真似はしませんでしたから」
「何とも君も得難い人間だな」
「有難うございます」
こうして難を逃れたものの、その後も、もしかしたら難癖付けてくる奴がいるかもしれないとかいってナインは居座り続けた。
何と言うか……ライトの護衛のような感じだったのは、気に入らない。
でも、背に腹は代えられない。
結局、閉店時間まで居座ったナインは、お肌ツヤツヤで帰っていった。
ちょっと嫉妬してしまったのは仕方ないかも知れないけれど……。
「さて、酒場通りの道具屋が動き始めましたね」
「閑散としてるらしいからね。売り上げも相当悪いんだろう?」
「ええ、こちらも対策を練りましょう。今日の報告会でお話してみます」
「明日もナイン……来るのかね」
「どうでしょう? 冒険者とは何時いかなる時に依頼が入るか分かりませんから」
「ナイン……ライトをジッと見つめたままだったね。帰りはツヤツヤしてたよ」
「それで道具店の中が平和になるのなら安いものです。けれど、嫉妬して貰えるのは嬉しいですが、ロキシーも結構冒険者に見つめられていますからね? おあいこですよ」
「う」
「ふふふ、さぁ、どうやって叩き潰してやりましょうかねぇ」
笑顔なのに目が濁っているライトに、思わず背筋がゾッとしたが、こんな顔なんて見たことのない奴らからしたら、どこが天使だと言いたくなる。
「兄さんには悪いですが、もう少し忙しくなって貰いましょうか」
「い……忙しくなって貰うのかい?」
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