妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~

寿明結未(旧・うどん五段)

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小話集

第72話 =小話=ミセス・マッチョスから届いた本で命の危機!③

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「そう言えば、今度キンムギーラ王国の王女が来られるそうですね」
「キンムギーラ王国の王女も確か、ミセス・マッチョスの本の愛読者でしたね」
「今回出た本は色々と思う所はあるけれど、一つの娯楽として使われているのならいい事だと思いますよ」
「なんと心が海の様に広くて深い事か。私だったら斬首刑にしてます」
「ははは」


 実際それくらいの内容だったので言われるのも無理はない。
 とは言え、キンムギーラ王国からやってくる王女様か。
 碌な事にならなければいいが――と思っていたら……キンムギーラ王国の王女、ギーラ様は何というか、アレだった。


「わたくし、マリカズは解釈違いなんですの」
「はぁ……僕もそう思います」
「まぁ、貴方もそう思ってましたのね!」
「いえ、書かれる分にはそう言う需要も一つの愛の形としてあるのは解るんですが」
「まぁ、確かに一部にはそう言う需要があるのは分かりますわ」
「あら、私はマリカズはアリですわ」
「キーラは何でも美味しく頂きますものね」


 そう、双子でお越しになるとは思っていなかった。
 姉のキーラ様、そして妹のギーラ様。
 この2人は若干僕でも苦手な……と言うと変だが、対応に困る王女様だった。
 と言うのも――。


「でも、私たちが読んでいて一番尊く感じるのは、カズマリでもマリカズでもありませんわ」
「そうなのか?」
「ええ、マリリン様の兄、ジャック様とその仲間であるマイケル様との掛け合いですわ」
「それは言えてますわね。男同士の友情と言うのは読んでいてたまりませんわ」
「そう、そこに愛はないけれど……愛があれば最高だけれど」
「「ブロマンスこそ至高」」
「「ブロマンス……」」


 まさか、そっち系だったとは……。
 腐ではないにしろ、そっち系だったとは思わなかった。
 カズマリやマリカズは僕とマリリンを題材にした恋愛ものだが、確かにジャックさんやマイケルさんも登場する。
 その2人に焦点が当てられているとは思っていなかったのだ。


「ブロマンスは良いですわよ」
「ええ、とても尊いわ」
「そこをちゃんと書かれているミセス・マッチョスの本は至高」
「私たちはそこを重点的に読んでますの」
「「なるほど」」


 色んな読者がいるな……それを感じた訳である。
 ただ、ブロマンスに関しては僕にはわからないし、マリリンは「あの2人がブロマンス? ははは!」と言った具合で、2人とは分かり合えそうにない。


「確かに男性にブロマンスは難しいですわよね」
「そう……ですね」
「マリリン様もあまりご興味は無さそうですわ」
「うむ! ブロマンスと言われてもな!」
「「残念ですわぁ~~!」」


 すみませんキンムギーラの御二方。
 マリリンは多分男性同士の云々には全く興味がないだろうし、僕も全く興味がない。
 僕たちでは荷が重いという事で、王太子殿下の婚約者様にお相手して貰う事になり解放されたけど、なんというか、頑張って欲しい。


「アレが所謂、お腐れ様と言う奴か?」
「どう、なんだろうな? お腐れとは違うと思うけど」


 一応こっちの世界にも腐女子ではなく『お腐れ様』と呼ばれる人たちは居る。
 彼女たちは彼女たちの世界があり、僕たちでは到底入る事は出来ないし、何より入ったところで火傷するのが目に見えている為、進んで関わろうという事はない。
 彼女たちは彼女たちで楽しく過ごしているだろうし、それはそれでいいのだが、こちらにまで火の粉が飛んでくることがない事を常に祈っている。


「人の趣味は千差万別だけど、理解出来ない事は理解出来ないね」
「それもそうだな! 物理的に火傷をする事はないが、精神的に火傷するのは遠慮したい!」
「ふはっ! マリリンでもそう思うんだね」


 思わぬマリリンの言葉に噴き出すと、マリリンは「精神的な火傷は痛いぞ!?」と言っていたので、過去に何か経験があるのだろう。
 しかしマリリンが火傷か……想像つかないな……。
 ドラゴンブレスすらも弾き飛ばす、素晴らしい肉体なのに……。


「まぁ、ミセス達も自分たちの小説がブロマンスで読まれてるとは思わないだろうね」
「だろうなぁ……。本人たちはあくまで『カズマリ』『マリカズ』だからな!」
「作家としても名を馳せたミセス達だけど、ファンはかなり多いんだろう?」
「ああ、かなり多いと聞いて居るな」
「その中にはブロマンスの人もいるんだろうねぇ……」
「いるだろうなぁ」


 そんな事を思いつつ、王太子殿下の婚約者様には頑張って貰いつつ、僕たちは各自仕事に没頭したのだが、なにもミセス達は人気が高いからこそ有名……誰にでも好かれる憧れの作家――と言う訳ではない事を、この時知る由もなく。

 作家には作家故の悩みもあるのだという事を、この時の僕たちはまだ知らなかった。
 と言うのも――。


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