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アタシの魔王たる器をみせてやろうかね!!
第64話 ついに危険と判断され、命を狙われる事となる魔王様
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――王国sideと???side――
徹底的に負けた。完膚なきまでに魔王にしてやられた……。
あの程度の人数ならば我が国が誇る騎士団で倒せるとさえ思っていた。
たかが女と子供、問題はドワーフ王だったが……そんな甘い考えはあった。
だが違った。ドワーフ王よりも女である魔王と子供の方が問題だった。
一見弱いと思えたあの二人はドワーフ王より多く、何かの武器で兵士を一撃で撃ち殺し、あっという間に血だまりが出来た……。
何より連れているモンスターだ。
あんな化け物の様なモンスター見たことも聞いた事も無い。
最早戦争を仕掛ける事も出来ないくらい衰えた人間国に何ができる……。
和平交渉も出来ないのであれば、攻め入られて終わるだけではないか。
弱った今、魔族が押し入れば国は亡ぶ。
あの魔王ならばどちらをするかは分からない。
魔王は言っていた。
ダンジョン経営をしていただけだと。
冒険者を引き留めた訳ではないのだ。
魔王のあの様子からして、確かに魔王は何もしていない。手を下してはいない。
冒険者達が、勇者たちが『戦闘困難状態』にある事だけは感じ取れた。
自分たちが守ってきた国を捨てるほどの――ナニカ。
それが何かまでは分からない。
だが、確実に魔王はそのダンジョンを、そのように経営しているのではないだろうか。
「王太子よ、天使族と会談して今後を決めねばならない。だがまずは……」
「ええ、スタンピードの片づけを……復興をしなくては……」
「それまでに魔王軍に滅ぼされなければいいがな……」
そう呟き、ワシは目の前に広がる血の海を見て背筋が凍った。
◇
その様子を一部始終見ていた私は、人間国の王が殺されるだろうとばかり思っていた。
ところが、魔王は人間国の王など気にもせず帰っていったのだ。
自分を殺そうとした相手だというのに、相手にならぬと言いたげに袖にしたようなものだ。
――恐ろしいと思った。
あれが魔王たる堂々たる姿かと。
以前の魔王には無かった、生気をあんなにもまとった魔王を見るのは初めてだった。
故に恐ろしい。
「あの魔王の弱点を作らねば」
だが、あれほどの魔王に弱点などあるのだろうか?
ダンジョン経営は凄腕と言っていい。
冒険者を堕落させ、最早『戦闘困難状態』にまで陥れた手腕は称賛に値する。
其れ故に恐ろしい。
生気を溢れんばかりに宿し、あらゆる困難を乗り越えてきたかのような魂。
魔王と言う器で何故居るのか不思議な程だ。
アレは【英雄の器】だろう。何故【魔王】如きに落ち着いている!!
【勇者】は扱いやすい。
だが、【英雄】はそうはいかない。
その上、【英雄の器】を持ちつつ【魔王】等……この世界に爆弾を抱えているのと同じだ。
――修正しなくては。
あの魔王の弱点を召喚し、消えて貰わねばならない。
恐らく魔王召喚でもやって、たまたまやってきたのだろうが、本来は我々が召喚すべき人間だった。
勇者の様な愚者しか召喚できなかった人間国とは違い、天使国こそが召喚すべき人間であった。
我ら天使族はあの【田中 絹】と言う魔王が欲しい。
だが、歪な形で召喚されてしまった彼女は今やとても危険で、どうすることも出来ない。
「英雄には、英雄をぶつけるしかあるまい」
キヌの弱点であり、英雄たる人物がいればだが――。
そして相打ちして貰い、二人一緒に消えて貰えれば、この世界は平穏を取り戻せる。
まだキヌの曾孫が魔王をしていた方が安定するというものだ。
今のままでは天使国も危ない。
血気盛んな天使族は今回のスタンピードを魔王が引き起こしたと思っている。
実際そうだろう。時間を掛けて人間国への復讐……いや、前魔王の仇討をしたのだろう。
それだけ【待つ】事が出来る異世界人等、恐ろしい上に魔王ときた。
とてもではない。
「会議を始める。すぐに集めよ」
「畏まりました」
これより、我が天使国は【魔王キヌ】をこの世界から追い出す為に、【魔王キヌの弱点】を召喚するための会議を始める。
多少の死亡者が出るのは覚悟の上だ。
――英雄の器である彼女に、弱点である英雄をぶつけるのだから。
我々天使族にとっても賭けになる。
上手くいけばいいが……。
「さて、あのキヌの弱点は……」
そう鏡で探ろうとした時、背筋が凍るようなナニカを感じたと同時に、鏡にヒビが入った。
まるで、何者かが【キヌを探るな】とでも言いたげに。
それが何かは分からない。
一瞬感じたゾッとした空気が何処から来たのか分からない。
辺りを見渡したが分からないまま、割れた鏡に映るキヌを見つめる。
――守られているのか? 何者かに。
この魔王を守るナニカとは誰なのか。
だが、英雄を守るのはその者の最も弱点とされている。
そのナニカ……魂を捕まえてやろう。
そして、上手く利用し、魔王キヌを殺して貰おう。
出来るか? 英雄を手のひらで動かせるか?
そう言われれば『難しい』としか言えない。それ以上に危険が孕む。
それでも――異世界人である魔王キヌは危険だった。
放置は最早出来ない。
「悩んでいる暇は無さそうだ」
我が天使族の若者たちが魔王領のダンジョンに行く前に、手早く倒さねば!!
立ち上がり割れた鏡を机に置き、英雄たる器のキヌを見る。
とても残念でならない……。
「我らが召喚していれば、お主は命を狙われずに済んだのだがな」
徹底的に負けた。完膚なきまでに魔王にしてやられた……。
あの程度の人数ならば我が国が誇る騎士団で倒せるとさえ思っていた。
たかが女と子供、問題はドワーフ王だったが……そんな甘い考えはあった。
だが違った。ドワーフ王よりも女である魔王と子供の方が問題だった。
一見弱いと思えたあの二人はドワーフ王より多く、何かの武器で兵士を一撃で撃ち殺し、あっという間に血だまりが出来た……。
何より連れているモンスターだ。
あんな化け物の様なモンスター見たことも聞いた事も無い。
最早戦争を仕掛ける事も出来ないくらい衰えた人間国に何ができる……。
和平交渉も出来ないのであれば、攻め入られて終わるだけではないか。
弱った今、魔族が押し入れば国は亡ぶ。
あの魔王ならばどちらをするかは分からない。
魔王は言っていた。
ダンジョン経営をしていただけだと。
冒険者を引き留めた訳ではないのだ。
魔王のあの様子からして、確かに魔王は何もしていない。手を下してはいない。
冒険者達が、勇者たちが『戦闘困難状態』にある事だけは感じ取れた。
自分たちが守ってきた国を捨てるほどの――ナニカ。
それが何かまでは分からない。
だが、確実に魔王はそのダンジョンを、そのように経営しているのではないだろうか。
「王太子よ、天使族と会談して今後を決めねばならない。だがまずは……」
「ええ、スタンピードの片づけを……復興をしなくては……」
「それまでに魔王軍に滅ぼされなければいいがな……」
そう呟き、ワシは目の前に広がる血の海を見て背筋が凍った。
◇
その様子を一部始終見ていた私は、人間国の王が殺されるだろうとばかり思っていた。
ところが、魔王は人間国の王など気にもせず帰っていったのだ。
自分を殺そうとした相手だというのに、相手にならぬと言いたげに袖にしたようなものだ。
――恐ろしいと思った。
あれが魔王たる堂々たる姿かと。
以前の魔王には無かった、生気をあんなにもまとった魔王を見るのは初めてだった。
故に恐ろしい。
「あの魔王の弱点を作らねば」
だが、あれほどの魔王に弱点などあるのだろうか?
ダンジョン経営は凄腕と言っていい。
冒険者を堕落させ、最早『戦闘困難状態』にまで陥れた手腕は称賛に値する。
其れ故に恐ろしい。
生気を溢れんばかりに宿し、あらゆる困難を乗り越えてきたかのような魂。
魔王と言う器で何故居るのか不思議な程だ。
アレは【英雄の器】だろう。何故【魔王】如きに落ち着いている!!
【勇者】は扱いやすい。
だが、【英雄】はそうはいかない。
その上、【英雄の器】を持ちつつ【魔王】等……この世界に爆弾を抱えているのと同じだ。
――修正しなくては。
あの魔王の弱点を召喚し、消えて貰わねばならない。
恐らく魔王召喚でもやって、たまたまやってきたのだろうが、本来は我々が召喚すべき人間だった。
勇者の様な愚者しか召喚できなかった人間国とは違い、天使国こそが召喚すべき人間であった。
我ら天使族はあの【田中 絹】と言う魔王が欲しい。
だが、歪な形で召喚されてしまった彼女は今やとても危険で、どうすることも出来ない。
「英雄には、英雄をぶつけるしかあるまい」
キヌの弱点であり、英雄たる人物がいればだが――。
そして相打ちして貰い、二人一緒に消えて貰えれば、この世界は平穏を取り戻せる。
まだキヌの曾孫が魔王をしていた方が安定するというものだ。
今のままでは天使国も危ない。
血気盛んな天使族は今回のスタンピードを魔王が引き起こしたと思っている。
実際そうだろう。時間を掛けて人間国への復讐……いや、前魔王の仇討をしたのだろう。
それだけ【待つ】事が出来る異世界人等、恐ろしい上に魔王ときた。
とてもではない。
「会議を始める。すぐに集めよ」
「畏まりました」
これより、我が天使国は【魔王キヌ】をこの世界から追い出す為に、【魔王キヌの弱点】を召喚するための会議を始める。
多少の死亡者が出るのは覚悟の上だ。
――英雄の器である彼女に、弱点である英雄をぶつけるのだから。
我々天使族にとっても賭けになる。
上手くいけばいいが……。
「さて、あのキヌの弱点は……」
そう鏡で探ろうとした時、背筋が凍るようなナニカを感じたと同時に、鏡にヒビが入った。
まるで、何者かが【キヌを探るな】とでも言いたげに。
それが何かは分からない。
一瞬感じたゾッとした空気が何処から来たのか分からない。
辺りを見渡したが分からないまま、割れた鏡に映るキヌを見つめる。
――守られているのか? 何者かに。
この魔王を守るナニカとは誰なのか。
だが、英雄を守るのはその者の最も弱点とされている。
そのナニカ……魂を捕まえてやろう。
そして、上手く利用し、魔王キヌを殺して貰おう。
出来るか? 英雄を手のひらで動かせるか?
そう言われれば『難しい』としか言えない。それ以上に危険が孕む。
それでも――異世界人である魔王キヌは危険だった。
放置は最早出来ない。
「悩んでいる暇は無さそうだ」
我が天使族の若者たちが魔王領のダンジョンに行く前に、手早く倒さねば!!
立ち上がり割れた鏡を机に置き、英雄たる器のキヌを見る。
とても残念でならない……。
「我らが召喚していれば、お主は命を狙われずに済んだのだがな」
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