石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

文字の大きさ
28 / 106

28 傘下に入りたい魔道具店と、弾かかれる魔道具店、悪意と危険察知は伊達じゃない!

しおりを挟む
【王家御用達店】と【魔物討伐隊御用達】となると、どうなるかと言うと――城への納品が主となってくるという事だ。
 その上、貴族店よりも立場は上となり、多くのお抱え彫金師や付与師を雇う事が出来るようにもなる。
 寧ろ挙って彫金師や付与師が傘下に入りたくて仕方なくなるのだ。
 だけど、腐っても『ガーネット』は庶民的なお店。
 貴族を相手とする彫金師と付与師を持っている魔道具店と提携は余り考えていなかった。
 考えていなかったが――。


「ガーネットの皆さん! 是非家と提携を!!」
「何を言う、我々とだ!!」


 と、王族が去った後はこぞって貴族の魔道具師店がやって来た。
 私のスキル危険察知5と悪意察知4がビンビン反応してる。
 この人たちは駄目だわ。


「どうしましょう兄上」
「ここはユリに決めて貰おう。彼女は特別なスキルがある」
「あっ」
「どうなんだユリ」
「此処に来ている方は駄目ですね。悪意と危険察知が凄く反応してます」
「「「「!?」」」」
「お引き取り下さいませ」


 そう私が発すると、まさかそのスキルを持っているとは思わなかったのだろう。
 悪態を吐きつつ去って行った。
 だが、一つの貴族御用達店は「申し訳ありません……」と声を掛けてきたのだ。
 その人たちには悪意察知と危険察知は反応しなかった。


「あの、俺達『サファイア』は貴族相手を少ししかしていませんが、出来ればお手伝いを……させて貰えないでしょうか?」
「貴族相手でしたら何とか。その、家が窓口になって捌くことは可能だと思います」
「『サファイア』の方々はご夫婦でしてらっしゃるの?」
「はい、祖父の代から貴族相手の魔道具店なんですが、他の力ある方々にドンドン追いやられて、今では名ばかりですが」
「彫金師が10人、付与師が9人在籍しています」


 そう言って深々と頭を下げるこの方々からは悪意も危険も感じない。
 私がお父様やエンジュさんに頷くと、「是非お願いします」となり、サファイアの方々の顔はパッと明るくなった。


「貴族様相手の【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】が出来る付与師も欲しかったんです。ただとても付与スキルが高くないと出来ませんが、10に近い方はいらっしゃるんでしょうか?」
「8か9なら数名います」
「なら大丈夫そうですね。商業ギルドで契約をしましょう」


 こうして『貴族御用達店サファイア』は『ガーネット』の傘下へ入った。
 これで溜まっている貴族相手の【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】は恙なく終わりそうだ。
 問題は後もう少し傘下が欲しい所なんだけど――と思っていると、一般参加のお店の方々がやってきて、是非傘下に入れて欲しいという話になった。
 無論悪意察知と危険察知が反応した店は撥ねて、純粋に困っている、傘下に入りたいという店を選び、5つの店舗が傘下に入ったのだ。更に夫婦でしているという魔道具師店も5組入る事になり、彼らは一旦隣の店で仕事をして貰う事になりそうだが、商業ギルドで契約を行う事で合意した。

 これにて『ガーネット』には『貴族御用達店サファイア』と、5つの一般で参加していた店舗、更に夫婦でしているという魔道具師店も5組と大勢の傘下を持つことになり、帰りに商業ギルドに向かい、【王家御用達店】と【魔物討伐隊御用達店】になったとレイルさんは目を回しそうになりつつ彼等との契約をキッチリ破らないという約束をガッツリして貰って全員が『ガーネット』の傘下となった。


「本当にガーネットには驚くばかりだよ」
「本当ですね」
「いっそ広い作業用の場所で集まって仕事をして貰うという手もあるけれど?」
「そうですね……」
「そういうのも必要になってくるか」
「以前の王家御用達店は大きな土地を購入して、そこで作業させていたよ?」
「ん――今回は夫婦でしていらっしゃる方々はうちの店の隣を購入したじゃないですか。一旦はそこでして貰おうと思ってます。後は皆さんのお店でして貰おうかと」
「なるほど、確かにそれも一つの手だね」
「今後も傘下に入るという場合は私の面接必須ですが」


 そう笑顔で伝えるとレイルさんは「君ならちゃんとした人を選ぶだろうねぇ」とにこやかに言ってくれた。
 無論、うちの店の特許取得済み付与な為、そこは契約金としてお金を貰うが「絶対家族や他人には教えない事」を付与師たち全員に魔法契約して貰い、絶対外には漏らさないという厳しい契約をして貰う事になった。

 また、連絡用の魔道具を家に置いて貰う事もお願いし、随時発注や連絡などを行い、更に私たちは調理ギルドに足を運び事の内容を伝え、レトルトとなる料理を作って貰う事も契約したし、入れ物を作る彫金師も用意してくれたし荷物も運んでくれる事になっている。
 付与は調理ギルドと契約している付与師がしてくれるが【真空の付与】は特許技術な為、裁縫ギルドと同じく魔法契約書で情報漏洩を防ぐ。
 裁縫ギルドも付与師には【撥水の付与】を教えているが、こちらも前もって情報漏洩を防ぐ為に魔法契約書を取り交わしていたのだ。
 それでも実入りが良い事は間違いなかったので、裁縫ギルドも調理ギルドも両方喜んで魔法契約をしてくれた。


「一週間後には傘下の方々は全員の付与師の魔法契約書が終わるそうですので、その後からの動きとなりますね」
「その間に夫婦だけの経営をしている方々には、私とエンジュさんとで買った家に来て彫金や付与をして貰えるように机と椅子を用意しないとですね」
「やる事が一気に増えたが、頑張ろう」
「傘下が少なければもう少し声を掛けて増やしても良いですしね。それこそ商業ギルドに頼んで面接を行いましょう」


 こうして私たちはようやく家路につき、ホッと安堵したのは言う間でもなく、明日から机の運び入れや随時連絡等のやり取りをする事となった。
 また連絡の窓口は私が担当となり、各場所に指示を出すことになる。


「となると、事務室が欲しいですね」
「事務室ですか」
「ええ、私一人では捌き切れないと思うので、商業ギルドで事務要員をお借りしないと」
「事務室となると、隣の家の二階を使うか?」
「そうですね。リビングを事務室にしましょうか」
「となると色々と物入りだな。棚に会計係と事務係が何人いるんだ?」
「取り敢えず会計係と各所書類の整理担当、依頼担当が最低でも必要ですね。私は依頼担当は何とか出来るんですが……ギルドの定期的な仕事をしているので。明日エンジュさんと一緒に商業ギルドに行って場所が出来次第、派遣して貰うという事で、会計係と書類整理係と依頼担当者の三人を雇いたいです」
「分かった。明日一緒に行こう」
「はい!」


 こうして家具屋にはお父様が、店番にはセンジュ君が、私とエンジュさんは商業ギルドに向かう事になり、翌日直ぐに動き出した。まずは夫婦だけの傘下の方々5組には、ガーネットの隣にある店にて仕事をお願いし、次に商業ギルドに向かうと件の『会計士』『書類整理係』『依頼担当者』の三人を雇いたいというと、レイルさんは「無論いいよ~」と笑顔で答え、情報漏洩が出来ないように魔法契約をした三人を用意してくれることになった。


「私が育てた部下が丁度その三人なんだ。全員男性だけど問題ないかな?」
「はい、問題ないです。ユリに色目を使わない限りは」
「ははは! エンジュ君は相当ユリが可愛いんだね。気持ちは分かるよ。でも婚約者がいるのに手を出す馬鹿共じゃないから安心してくれ」
「ありがとう御座います」
「場所が出来たら連絡して欲しい。そしたら私が一緒に来て紹介するから」
「ありがとう御座います。態々すみません」
「ユリにはツケを待って貰っているっていうのがあるからね……これくらいはしないと」
「あははは。それで、ツケはどうにかなりそうですか?」
「何とかしたい! もう少し待って欲しい!」
「まぁ、今回仕事に真面目な方を貸してくれるならまだまだ待ちますよ」
「本当に有難い!! 本当にまじめな子を選んでくるからね!」


 こうして人員確保は何とかなった為家路につき、それから暫くはガーネットの店内改装と言うか、私とエンジュさんが買った家の二階を事務室にする為の改装と、一階で作業を行う付与師と彫金師の為の机や椅子の準備等もスタートした。
 彫金師たちが集中できるように、ガラス窓をなくして壁にしたりと忙しかったが、一週間後には綺麗に二階も一階も出来上がりホッとした。
 無論隣の家には鉱石や宝石を入れて置く棚も作って貰ったので、ここは私の作業スペースでもあり、彫金師たちは此処から鉱石を持って行ったり宝石を持って行って作ったりとなる。

 無論魔法契約をしているので、私のスキルの事も家族や他人には一切喋れない。
 その代わり、彫金師にとっては質のいい鉱石が使えるし、付与師も不純物が入っていない鉱石が使える為、付与がしやすくなるというメリットはある。
 また、他所に店を持っている人たちは、定期的にきてもらいアイテムボックスに鉱石や宝石を入れて仕事をする事が義務付けられたが、それらを転売する事は契約違反となる為出来ないように魔法契約をしている。
 そこまで徹底した結果――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。

向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。 幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。 最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです! 勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。 だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!? ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。 聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。 暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!? 一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

処理中です...