石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

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38 忙しさは増々……なんだけど、一人で開発は難しいし寂しい! お爺ちゃんタキちゃん手伝って!

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 ――その後の一ヶ月とは、正に怒涛の一ヶ月でしたね。
 只管【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のアクセサリーを作って貰い続け、お父様部隊には水筒を頑張って貰い、なんとか最初の依頼である魔物討伐隊への80個の納品、水筒の発注が80人分の納品。レトルトに関しては調理ギルドに投げたので届いている事だろうと思う。

 先に魔物討伐隊に納品しに行って、その帰りに私は冒険者ギルドに立ち寄って只管鉱石を出す作業。
 夕方5時まで掛かったけれど、もう少しで使えなかった道が使えるように成るらしく、それまでは頑張って鉄鉱石や銅鉱石、銀鉱石やプラチナ鉱石を頑張った。
 お陰でスキルが上がった。

 商業ギルドも金が足りないのが問題らしく、商業ギルドでは金を沢山作って出したし、宝石も天然石も沢山出した。
 お陰でスキルが1やっと上がった。
 今のスキルはと言うと――。

【石スキルレベル:鉱石加工レベル10・宝石加工レベル6・貴金属加工レベル7・宝石細工6】

 大まかに1しか上がってないけど、1上げるのに凄く苦労する。
 流石に鉄や銀などは出しまくったのでカンストしたけれど、お陰で銀の延べ棒とか銀塊とかそう言うのが作れるようになった。
 最初金塊は歪ながら作れたけれど、銀塊作れるか試したら駄目だったのよね。
 スキル上げって本当に大事だわ。
 それでも、冒険者ギルドには鉄鉱石なら石の形を保って出すようにしているけれど、お店では石で出すんじゃなく、最早ドンと塊で出せるようになったので、凄く重宝される。

 最後に王国騎士団にもアクセサリーを納品し、私たちが貴族相手は大嫌いと言うのは随分と浸透した様で、貴族らしくしながらも「無理を言って申し訳なかった」と謝罪されつつお金はしっかりと受け取った。

 それからも人気の【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のアクセサリーは作っているし、一般市民にも広がって欲しいからと、石や宝石を小さい物に変えて安く抑えて売ると、飛ぶように売れた。
 国民だって暑かったのだ。
 一般市民や冒険者用には【ガーネット一号店】のお店で売るようにしている。
 アイテムを売る人員を雇い、都度無くなれば連絡をして貰うようにしたのだ。
 お陰で【命の花びら】だけではなく【迷わずの鈴】【帰還の護符】も良く売れている。
 ちなみに以前開発した速乾吸収でヒンヤリする肌着は魔物討伐隊で紹介したところ全員がこれに変える事に決め、裁縫ギルドは更に儲かったという。
 ガーネットに入ってくるお金も凄まじいらしく、センジュ君が「何に還元しましょうかね」と言いつつ魔物素材を買っているのを私は知っているのだ。

 まだまだ作るアイテムはあれど、そろそろアレを形にしたいと、本日は朝からエンジュさんとセンジュ君と一緒に【アナログ時計】と【懐中時計】を試作している。
 幾つか試作したが、時計と言うのは中の構造だって難しい。
 部品一つ一つがまた違う訳だし、時計職人があちらの世界にはいたのが理解出来るくらいには作るのが難しかった。
 それでも一か月黙々と部品をばらして作って繰り返したところ、何とか動く時計が完成した。
 流石に機密機械な為、本を取り寄せて毎回ばらして作って繰り返して、やっとだ。


「これは受注しても作れる人が限られるな」
「兄上スキル上がりました?」
「上がった、2もあがったな。完全に上がり切って彫金レベル10じゃないとまともに形にならない」
「かなり作るのに時間が掛かるアイテムだったんですね……安易にだしてすみません」
「【アナログ時計】と【懐中時計】は特許を取って置こう。彫金ギルドで出せば通して貰える」
「そうですね」
「でも、家の店に彫金レベル10は何人いますかね。一応聞いてきます」


 そう言うとセンジュさんは事務所へと駆け込んでいき、一人ずつのスキルがどれだけ上がっているのか確認にいった。
 人数が多いと良いけれど。


「そう心配しなくとも、あれだけ毎日【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のアクセサリーを作っているから50人くらいは居ると思うぞ」
「50人ですか。大量生産はとても無理ですね。受注生産にして出来上がったらお届けがベストね」
「付与としては壊れにくくするために【強化付与】しか付けないが、この時計は彫金師の腕が凄く直結する。余り目立たない彫金師に光を当てるんじゃないか?」
「そうですか?」
「まぁ、スキルが高ければだが」


 そう言って既に5個時計を作っているエンジュさんの腕も凄いと思うけども。
 するとセンジュ君が帰ってきて、彫金レベル10超えている人が70人いたらしい。
 その内50人をエンジュさんが時計を教える為に時計を作ってばらして貰って作り直すという作業と、部品を一つずつ作って組み立てていくという作業を1カ月させると伝えると、時計は50人体制で作れるようになったら一日作れる個数を決めての生産ラインを作る事になった。
 最初に【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のアクセサリーを作っていた時と同じ個数限定販売と言う奴だ。

 その後エンジュさんは【アナログ時計】【懐中時計】を彫金ギルドに申請し、特許を取った。
 それから一か月、エンジュさんの指導の元、50人の彫金師が時計生産の為の練習期間を設けられ、約一か月後、財務部に売り込みに行ったら凄い勢いで「是非買いたい」と言う事になり、「作るのが大変難しい為、作れる個数が決まっており、それでいいのなら」と伝えると、まず財務部で働いている全員分、80個の受注がされた。
 取り敢えずは【アナログ時計】が40個、【懐中時計】が40個の計80個だ。
 出来上がり次第という事だったので、懐中時計の表面の蓋部分には彫金師が絵を施したりすることでより人気は高まった。

 ホッと一安心したのも束の間、水筒も冒険者相手に爆発的に売れ始め、水筒を作れるお父様部隊は大変忙しくなったそうだ。
 落ち着くまでは新しい生産は出来そうにないが、他に何か作れるものはないかと私は鉄塊や銀塊、プラチナ塊を出しつつ悶々とする。

 私が出せるのは石のみ。
 そう、宝石や天然石、鉄や銅やプラチナと言った石ならば出せるのだ。
 一度ミスリルを出そうとしたこともあったが失敗に終わった。どうやら元居た世界にある鉱石は出せても、この世界にあるレアな鉱石、ミスリルやオリハルコンと言うのは出せないようだ。


「宝石や石で作るアクセサリーでって縛りが、難しいのよね」


 初夏のようなこの国では、中々次のアイテムが考え付かない。
 他国で出ている付与アイテムの本も取り寄せて勉強はしているが……。
 そうよね、何もこの国だけでなくともいいのよねー……なんて考えながらアイテム生成を繰り返す。
 各倉庫がアイテムいっぱいになると本社と呼んでいる真ん中の建物に向かい、他国の付与アイテムを見ながら過ごす時間。

 ふと、事務室を思い出し皆さんが羽ペンを使っているのを思い出した。
 万年筆、もしくはガラスペンが作れたいいんだけど。
 ガラスは作る事は出来る。
 ガラスペンなんてどうなんだろうか?
【お取り寄せ】でガラスペンを購入し、これに強化付与すればいいのでは?
 でもガラスペンだけでは物足りない、もっと他のアイテムも考えてみよう。
 付与の勉強もしているけれど、特許を使っている所が多いので此方も特許を取っている物や発想で考えてみる。
【真空付与】【撥水付与】【体感温度が下がる付与】【速乾付与】……中々いい案が浮かばない。


「う――ん」
「なんじゃ、どうした主」
「うん、新しい商品って思うだけど、中々出てこないなーって」
「ふぁっふぁっふぁ! 開発陣は大変じゃのう! 今では主一人か!」
「皆さん忙しいですからね~」
「ヒトリジャ アン モ デナイヨー」
「お手伝いしてくれます?」
「いいぞい」
「イイヨー」


 こうしてお爺ちゃんとタキと一緒に案を出していくことになった。
 ガラスペンに関してお爺ちゃんは「画期的アイテムではないのか?」と言われたので、これは採用とする。
 すると――。


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