石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

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42 お城の危機!? 陛下までお忍びでやってきてお願いされたことは――。

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「しかし子供用もか」
「女性用と男性用で眼鏡も違いますからね」
「確かに本を見るとそうだな。現物を出せるか?」
「ええ」


 そうして子供用と男性用のメガネとサングラスも出すと、エンジュさんは黙々と作っていたのは言うまでもなく、その間に三か所のアイテム置き場のチェックをしに向かい、足りないのをアイテム生成していたのは言うまでもない。

 そして次の日は朝から【ガーネット二号店】をお父様とセンジュ君に任せ、私とエンジュさんは馬車に乗って商業ギルドにきていた。
 そこで工場合計3か所を借りることになったのだが、ツケ払いが出来ない商業ギルドが出してくれる事になっているので大丈夫。
 従業員となる彼らを見ると、悪意察知や危険察知は感じられなかったので、雇う事となった。
 無論魔法契約はして貰うけれど。
 人数が人数なので、商業ギルドがてんやわんやになったけれど、それは仕方ない事。
 宝石を買うだけ買って払わず出て行った馬鹿が悪いのだ。


「では契約を行った方々は一週間後、【ガーネット二号店】にお越しください。その際スキル次第で振り分けます」
「先に彫金師で8から10ある方はいませんか?」


 そう問い掛けると、250人中110人がそうだったので、こちら半分ちょっとは時計に回って貰う事になった。
 その代わり、今時計を作るものの安定しない20人を眼鏡に回す予定となった。
 誰にでも得意不得意はあるのだ。
 万年筆は100人体制で作った方が良いだろうという事だったので、それはそれで他の人たちにお願いしようということになった。


「後は魔法契約を私達でしておくよ。一週間後には工場が出来上がるから、前日に入れたい物は入れて置いてくれ」
「分かりました」
「では失礼します」


 こうして一旦一緒に馬車で二号店に戻り、既に工事は始まっているようで壁を壊したりと忙しそうだ。
 すると二号店の本社からテリーさんが歩いて出て来た所に出くわし、挨拶をすると――。


「俺も今回やっと付与レベルが8になったんですよ」
「わぁ! おめでとうございます!」
「それで、何か出来る付与はあるのかセンジュさんに聞きに行ったら、俺は部署を今後変わる事になりまして」
「と言うと」
「ああ、付与レベル次第で人員移動があるとはセンジュから聞いていたな」
「ええ、医療関係の付与はレベル最低8からしか出来ないそうなので」
「「あー…」」
「なので、一週間後には医療関係に付与師として部署が変わります」
「なるほど、大変だと思いますが頑張ってください」
「はい」
「でも、自分でお店持ってるのに傘下のままでいいんですか?」
「ええ、正直今の生活に満足してしまって……今更自分の店で、と言う気はもう無いんですよ」


 そう笑顔で口にしたテリーさんに首を傾げつつ、エンジュさんは「なるほど」と口にする。


「でも彼女は……」
「ええ、この前酷いけがをして今は牢に入っていると聞きましたのでその心配はないです。無いですが、正直こちらでの仕事の方が集中できるし、困ったりすると他の仲間に気兼ねなく聞けて教えてもらえたり、一緒に考え合っていけるというのが……正直心地よくて」


 そう言って照れ笑いするテリーさんに、当時のピリピリした空気はない。
 余程今の生活があっているんだろうと分かった。


「それに家にいると、何時嫁貰うんだと煩くて……仕事に集中できませんよ」
「ははは」
「それに、俺も此処で新しい恋人が出来まして」
「「おお」」
「なので、このまま暫くは」
「そうですね、愛を深め合って下さい!」
「はい! では失礼します」


 そう言って去っていたテリーさんに、「良かったですね」と心からホッと安堵すると、エンジュさんも「新しく進める道があるというのは良い事だと思う」と口にした。
 そして二階の作業場へと向かっていると事務所が開き、ロザリオスさんが「も――!!」と怒りながら出て来た。
 一体何事!? と思っていると――。


「国王陛下からの依頼なんですけど、魔法騎士団の宝石を新しくしたいそうなんですが、良い石が無いそうなんです。それでユリさんの派遣をお願いされてるんですが、お爺ちゃんとタキちゃんの許可を欲しいとの事で」
「なんじゃ、魔法使うのに宝石使って居るんか」
「媒体としては使いやすそうですよ」
「媒体としてはか、なるほど」
「しかも馬鹿が決闘したらしくって、宝石が割れたりと被害も甚大だそうで」
「「うわー」」
「貴族相手の仕事はしたくないと此方からは伝えているんですが、杖に使う宝石がトコトン無いので困り果てているという事です」
「なしで戦えばええ。ワシ等は知らん」
「シランシンラン」
「伝えておきます」


 お爺ちゃんとタキちゃんの言葉に頷いたロザリオスさんは事務所に入って行き、陛下にその旨を伝えると、数十分後「今回だけお願いしたい」と連絡があり、それもお爺ちゃんは拒否。そのやり取りが数回続くと――。

「そもそも、壊したアホウ共が悪いんじゃ。なんでユリを連れて行かねばならん。嫌な思いするのが関の山じゃろ。金は倍払わせるぞ」
「ソウダソウダー」
「決闘した挙句他の人の魔法石、つまり宝石にまでヒビが入ったんですね?」
「本当馬鹿よね~」
「魔物討伐隊に被害が無かったのなら私は必要ないかと」
「そう伝えます」


 そう言って再度手紙を送ったロザリオスさん。
 それから連絡は無くなってホッとしながら宝石細工のスキルを上げているとガラガラと馬車が走ってくる音が聞こえ、馬車から頭からフードを被った男性が四人降りて来た。
 お客さんかな、しかも貴族の。と思っていると受付のお姉さんが上に駆け上がり――。


「応接室に御通しすべきお客様です」
「そうですか……やだなぁ、貴族の相手。お爺ちゃんたちと一緒に入ってますね」
「分かりました。御通しします」
「俺も一緒に行こう。ユリとお爺ちゃんたちだけじゃ不安だ」
「お願いします」


 こうして貴族様のお相手をする為に応接室に入ると、暫くしてフードを被った四人が入ってこられた。
 そして椅子に腰かけられるとフードを取り、私たちが目を見開く。


「「国王陛下!」」
「ははは、お忍びだ。秘密にしてくれ」
「二人共、お久し振りだね」
「「ノヴァ様!」」
「初めまして。この度王太子となりましたバルと申します」
「お初にお目にかかります。魔法騎士団隊長のロイドと申します」
「「お初にお目にかかります」」
「で、大物ばかり連れて来てなんじゃ。石寄こせか?」
「本当に申し訳ない。魔法騎士団の媒体となる宝石が半分吹き飛んだのだ」
「その残った半分がひび割れ状態でして。決闘した貴族のクソ馬鹿野郎共は弁償金を払わせたんですが、家が傾くほど出して貰ったんですが、何分国で取れる宝石で大粒が今本当にありませんで……」
「どうか力を貸してやってくれないだろうか? 私からもお願いしたい」
「俺からも頼むよ。友人が困る姿は見ていて苦しい」
「むう」
「これこれユリ。流されてはいかんぞ」
「ノヴァ様には借りがあるんです。これで貸し借りなしにするなら良いですよ?」
「無論構わないよ」
「ユリは甘いなぁ……でも貸し借りが無くなるのなら俺も賛成だ」
「寧ろお釣りが欲しいくらいのお返しじゃと思うがな?」
「そうだね、此方も何か返さないといけないくらいの物になるね。何か俺にして欲しい事はないかな?」


 そうノヴァ様が仰ったので、「それなら」とアイテムボックスから【万年筆】と【懐中時計】【アナログ時計】【眼鏡】【サングラス】【補聴器】と取り出した。


「今後ガーネットで販売する物です。宣伝お願いします」
「そう来たか」
「いや、しかし万年筆とはどう使うのだ? 随分と美しいが」
「インクを垂らさないように、あとペンに直接注ぎ口が当たらないようにこうインクを入れまして……」


 と実践しつつ見せ――。


「インクが一杯になる前に線がありますのでそこまで入れて、蓋をして、後は文字を書けば中のインクが無くなるまで文字が書けます」
「「「「画期的アイテムっ!!」」」」
「是非、私からこれは依頼したい。そうだな、王太子になった祝いに王太子にも作ってやって欲しい」
「ガラスで良いですか?」
「ああ、色違いのガラスだと尚良いな。色はブルー系で二つ頼む」
「ダイヤ王国ではブルーは王族の色なんだ」
「なるほど」
「それは私も欲しいですな。私は是非透明ガラスでお願いしたい」
「分かりました」
「ノヴァ様、分かっていると思いますが宣伝できますよね?」
「あ――陛下が愛用しているって言うだけで宣伝だもんね……他の物はなんだい?」


 そうノヴァ様が仰ると、私はプレゼンを開始した。


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