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60 熱きトークで商売の話は纏まり、各自持ち場へ消える中――。
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よし、これでいい!
悪い空気は外に出して、良い空気で一日を始めましょう!!
何と言っても今日は負けられない商談日ですからね!!
――勝ちに行きますよ!!
朝一番に向かった為、各種倉庫のチェックは早めに済んだ。
朝はタキちゃんが分裂してお掃除タイムだし、何時も工場内はピカピカにしている。
お爺ちゃんは空を飛んで巡回。怪しい動きがないかのチェックは欠かさないそうだ。
お客様にと紅茶も用意したし茶菓子も用意したし、取り敢えずは大丈夫かしら?
「応接室もタキちゃんが綺麗にしてくれましたよ」
「ああ、助かる」
「こういう時は、そのチートなイヤリングが欲しくなるな。俺もまだまだ弱い」
「あらあら、気持ち的に落ち着く物でしたら今度御つくりしましょうか?」
「強すぎないか?」
「石の力を引き出しているだけですよ?」
「宝石や石って、こんなに持っている力が強いとは思いませんでした……」
「そうだな、素材としては見るが、そのものの力を引き出すと凄い力だ」
「あ、そうでした。センジュさん、今度【速乾付与】の仮申請出して良いです?」
「良いですけど、どうかしました?」
「いえ、下着にもといいつつ忘れていましたので、この際自分で付けようかと」
「ああ、それは………そうですね! ご自分で付けた方が宜しいかと!!」
「忘れてたっ! しくじったっ!」
「兄上! お気を確かに!」
「あら、エンジュさんは申請出してお借りしたら、私の部屋に来るといいですよ? 下着くらいなら幾らでも見せますし」
「是非に」
よし、復活したな。
今から大事な商談。それで下着で元気になるなら安い物。
そうこうしていると受付の方がやってきて「ノルディス様とホスティー様がいらっしゃいました」と言う事で応接室にきて頂いた。
ホスティー様は緑の髪に金の瞳の優し気な方で、ノルディス様は薄い茶色の髪に濃いブラウンの髭を付けたおじ様だった。
「ああ、お会いしたかったですユリ様」
「え?」
「王家からの依頼だったインクが素材が海の底に消え、もう作れないかと思いましたが、貴女のお陰で何とかなりました。何とお礼を申し上げたらいいかとずっと悩んでいたのです」
「こちらこそ、お力になれて良かったと思います。これからも必要でしたらいつでも商業ギルドに仰って下さればお力になれるかと」
「ありがたい……その時は是非に。と、話し込んでしまいましたね。ガーネットの皆様、私は王家御用達インク会社社長のホスティーと申します。こちらは一緒に仕事をしている箱メーカーのノルディスです」
「この国の半分程ですが、商品の箱を用意しているノルディスと申します。良い商談になる事を望んでおります」
「ガーネットの社長、シンジュです。こちらは息子のエンジュとセンジュ。二人共良き彫金師であり、付与師です」
「ええ、存じております。平民でありながら初めて参加した王家主催のイベントで王家御用達になり、尚且つ魔物討伐隊御用達店となった。その力は飛ぶ鳥を落とす勢いだとも」
「ありがとう御座います」
「それで、そちらではまだ商品の箱をまだ作っていないとお聞きし、是非うちと提携して頂けたらと思いまして」
「我が社もです。何でも万年筆なる物をお作りになったとか」
こうして始まった商談。
我がガーネットの作っているアイテムである【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のアクセサリーを幾つかの見本と共に出し、更に万年筆、そして眼鏡やサングラス、補聴器と時計も出して見せると、それぞれ一つ一つの特徴や取扱の注意などを話す。
「確かにこれは素晴らしいアイテムですね……私も今すぐ欲しいくらいですよ」
「うむ、特に眼鏡等と、付与のついたアクセサリーは欲しいな」
「何よりこのアナログ時計と言うのが素晴らしい。時間に合わせて向かう時にはピタリな代物ではありませんか」
「ありがとう御座います。作るのに彫金レベル10は必要なので、数は作れませんが良く注文がくる商品でもあります」
「これに箱が無いのは頂けない。ですよねノルディスさん」
「うむ……これは直ぐに箱を用意したいな。俺はこういうアイテムがポンとある状態が兎に角駄目なんだ」
「彼は仕舞い魔なんだよ。だからケースを作ったり箱を作ったりする会社を作ったんだ」
「「「なるほど」」」
「ああ、駄目だ。これは後日お返しする。必ず似合いの箱を用意する。それ故アイテムボックスに入れていいだろうか!」
「余程ですね。どうぞ、後日素敵な箱をお待ちしております」
「ありがとう!」
「あああ、万年筆だけ置いてくれ。じっくり見たい」
「そうだったな」
そう言うと勢いで全てアイテムボックスに入れようとした手をホスティー様が止め、じっくりと万年筆を見つめ始めた。
それも食い入るようにみているけれど……何か気になる事でもあるのかしら。
「空気の入っていない素晴らしいガラス……素晴らしい。そして計算尽くされた持ち手部分にインクを入れる細い管の中もガラス。嗚呼、これが羽ペンの代わりとなる次世代のペンだというのか……なんて素晴らしい。これに見合うインクを俺は考え付いたよ。一切汚さず、液体を美しく入れる方法を……」
「凄いですね」
「例え無駄だと言われても作りたい、ああ、作りたいとも!! これは革命だ! 羽ペンを持って仕事をしていた人間達が変わる革命の時だ!」
熱い。このホスティー様、凄く熱い男だったのね。
いや、ノルディス様もかなり熱い人だったけれど、何て言うか、類は友を呼ぶって奴かな?
と思っていたら此方も凄かった。
「分かりますか! 素晴らしいまでに考えつくされた使い手が最も使いやすい作りが!」
「インクを入れる際の注意は何度してもやはり失敗するという連絡も来ている。どうかその辺りを改善できるインクが欲しい!!」
「折角美しい作りなのに、インクを入れる時に失敗なんてしたらイラっとしちゃいますよね!!」
「「「「分かる!!」」」」
全員熱かった……。
ドマは目を閉じ私の後ろで立っているようで、私は笑顔だけ顔に貼り付けて話を聞いているだけ。この戦いに入ってはならないと思う。
加熱するトーク。熱き男たちの咆哮。嗚呼、職人気質な人たちって大体こうよね。
「で、話は纏まりました?」
一時間半程熱く語り合っていた所に私が鈴を転がすような声で話しかけると、ピタリと止まって顔を真っ赤にしながらこちらを見てくる男性陣。
私は常にニコニコ笑顔。
「熱くなってすまない」
「冷静ではいられなくなってしまったんだっ!」
「レディーの前で不甲斐なし!」
「いえいえ、素晴らしいお話がどんどん飛び出て感動しました。やはり働く男性はこうでなければいけないわね」
「「ご理解のある奥様をお持ちですねエンジュさん」」
「ありがとう御座います!」
「ある程度既に形にしましたので、後はインクを作るだけです」
「俺も頭にケースは作り終えた。後は形にするだけだ!」
「ええ、私、と――っても楽しみにしてます。出来るだけ早く作ってくださったら嬉しいです!」
そこまで笑顔で言うと、皆さん頷き合って「それではこれにて!」「今後共良い取引を!」と契約書を御出しになり、シンジュさんが記入すると相手も記入して血判を押して魔法契約を交わしてお帰りになった。
「実に熱きトークでしたね」
「ユリが声を掛けなければまだ続いていただろうな」
「いかん、直ぐに作業の次の指示を出さねば」
「「俺もです!」」
「では、足りないアイテムを補充して、お昼まで薬を作ってますね」
「皆様行ってらっしゃいませ。姉様行きましょう」
こうして駆け出して行った男性三人をクスクス笑いながら一か所ずつアイテムチェックをして必要なアイテムを生成していき、昼になるまで【破損部位修復ポーション】と他のポーションを交互に作り続けた時間は過ぎて行き……いつも通り休憩室で倒れている私が居たのは、ラフィリアちゃん達には内緒にしたいかな? と思った日。
悪い空気は外に出して、良い空気で一日を始めましょう!!
何と言っても今日は負けられない商談日ですからね!!
――勝ちに行きますよ!!
朝一番に向かった為、各種倉庫のチェックは早めに済んだ。
朝はタキちゃんが分裂してお掃除タイムだし、何時も工場内はピカピカにしている。
お爺ちゃんは空を飛んで巡回。怪しい動きがないかのチェックは欠かさないそうだ。
お客様にと紅茶も用意したし茶菓子も用意したし、取り敢えずは大丈夫かしら?
「応接室もタキちゃんが綺麗にしてくれましたよ」
「ああ、助かる」
「こういう時は、そのチートなイヤリングが欲しくなるな。俺もまだまだ弱い」
「あらあら、気持ち的に落ち着く物でしたら今度御つくりしましょうか?」
「強すぎないか?」
「石の力を引き出しているだけですよ?」
「宝石や石って、こんなに持っている力が強いとは思いませんでした……」
「そうだな、素材としては見るが、そのものの力を引き出すと凄い力だ」
「あ、そうでした。センジュさん、今度【速乾付与】の仮申請出して良いです?」
「良いですけど、どうかしました?」
「いえ、下着にもといいつつ忘れていましたので、この際自分で付けようかと」
「ああ、それは………そうですね! ご自分で付けた方が宜しいかと!!」
「忘れてたっ! しくじったっ!」
「兄上! お気を確かに!」
「あら、エンジュさんは申請出してお借りしたら、私の部屋に来るといいですよ? 下着くらいなら幾らでも見せますし」
「是非に」
よし、復活したな。
今から大事な商談。それで下着で元気になるなら安い物。
そうこうしていると受付の方がやってきて「ノルディス様とホスティー様がいらっしゃいました」と言う事で応接室にきて頂いた。
ホスティー様は緑の髪に金の瞳の優し気な方で、ノルディス様は薄い茶色の髪に濃いブラウンの髭を付けたおじ様だった。
「ああ、お会いしたかったですユリ様」
「え?」
「王家からの依頼だったインクが素材が海の底に消え、もう作れないかと思いましたが、貴女のお陰で何とかなりました。何とお礼を申し上げたらいいかとずっと悩んでいたのです」
「こちらこそ、お力になれて良かったと思います。これからも必要でしたらいつでも商業ギルドに仰って下さればお力になれるかと」
「ありがたい……その時は是非に。と、話し込んでしまいましたね。ガーネットの皆様、私は王家御用達インク会社社長のホスティーと申します。こちらは一緒に仕事をしている箱メーカーのノルディスです」
「この国の半分程ですが、商品の箱を用意しているノルディスと申します。良い商談になる事を望んでおります」
「ガーネットの社長、シンジュです。こちらは息子のエンジュとセンジュ。二人共良き彫金師であり、付与師です」
「ええ、存じております。平民でありながら初めて参加した王家主催のイベントで王家御用達になり、尚且つ魔物討伐隊御用達店となった。その力は飛ぶ鳥を落とす勢いだとも」
「ありがとう御座います」
「それで、そちらではまだ商品の箱をまだ作っていないとお聞きし、是非うちと提携して頂けたらと思いまして」
「我が社もです。何でも万年筆なる物をお作りになったとか」
こうして始まった商談。
我がガーネットの作っているアイテムである【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のアクセサリーを幾つかの見本と共に出し、更に万年筆、そして眼鏡やサングラス、補聴器と時計も出して見せると、それぞれ一つ一つの特徴や取扱の注意などを話す。
「確かにこれは素晴らしいアイテムですね……私も今すぐ欲しいくらいですよ」
「うむ、特に眼鏡等と、付与のついたアクセサリーは欲しいな」
「何よりこのアナログ時計と言うのが素晴らしい。時間に合わせて向かう時にはピタリな代物ではありませんか」
「ありがとう御座います。作るのに彫金レベル10は必要なので、数は作れませんが良く注文がくる商品でもあります」
「これに箱が無いのは頂けない。ですよねノルディスさん」
「うむ……これは直ぐに箱を用意したいな。俺はこういうアイテムがポンとある状態が兎に角駄目なんだ」
「彼は仕舞い魔なんだよ。だからケースを作ったり箱を作ったりする会社を作ったんだ」
「「「なるほど」」」
「ああ、駄目だ。これは後日お返しする。必ず似合いの箱を用意する。それ故アイテムボックスに入れていいだろうか!」
「余程ですね。どうぞ、後日素敵な箱をお待ちしております」
「ありがとう!」
「あああ、万年筆だけ置いてくれ。じっくり見たい」
「そうだったな」
そう言うと勢いで全てアイテムボックスに入れようとした手をホスティー様が止め、じっくりと万年筆を見つめ始めた。
それも食い入るようにみているけれど……何か気になる事でもあるのかしら。
「空気の入っていない素晴らしいガラス……素晴らしい。そして計算尽くされた持ち手部分にインクを入れる細い管の中もガラス。嗚呼、これが羽ペンの代わりとなる次世代のペンだというのか……なんて素晴らしい。これに見合うインクを俺は考え付いたよ。一切汚さず、液体を美しく入れる方法を……」
「凄いですね」
「例え無駄だと言われても作りたい、ああ、作りたいとも!! これは革命だ! 羽ペンを持って仕事をしていた人間達が変わる革命の時だ!」
熱い。このホスティー様、凄く熱い男だったのね。
いや、ノルディス様もかなり熱い人だったけれど、何て言うか、類は友を呼ぶって奴かな?
と思っていたら此方も凄かった。
「分かりますか! 素晴らしいまでに考えつくされた使い手が最も使いやすい作りが!」
「インクを入れる際の注意は何度してもやはり失敗するという連絡も来ている。どうかその辺りを改善できるインクが欲しい!!」
「折角美しい作りなのに、インクを入れる時に失敗なんてしたらイラっとしちゃいますよね!!」
「「「「分かる!!」」」」
全員熱かった……。
ドマは目を閉じ私の後ろで立っているようで、私は笑顔だけ顔に貼り付けて話を聞いているだけ。この戦いに入ってはならないと思う。
加熱するトーク。熱き男たちの咆哮。嗚呼、職人気質な人たちって大体こうよね。
「で、話は纏まりました?」
一時間半程熱く語り合っていた所に私が鈴を転がすような声で話しかけると、ピタリと止まって顔を真っ赤にしながらこちらを見てくる男性陣。
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「熱くなってすまない」
「冷静ではいられなくなってしまったんだっ!」
「レディーの前で不甲斐なし!」
「いえいえ、素晴らしいお話がどんどん飛び出て感動しました。やはり働く男性はこうでなければいけないわね」
「「ご理解のある奥様をお持ちですねエンジュさん」」
「ありがとう御座います!」
「ある程度既に形にしましたので、後はインクを作るだけです」
「俺も頭にケースは作り終えた。後は形にするだけだ!」
「ええ、私、と――っても楽しみにしてます。出来るだけ早く作ってくださったら嬉しいです!」
そこまで笑顔で言うと、皆さん頷き合って「それではこれにて!」「今後共良い取引を!」と契約書を御出しになり、シンジュさんが記入すると相手も記入して血判を押して魔法契約を交わしてお帰りになった。
「実に熱きトークでしたね」
「ユリが声を掛けなければまだ続いていただろうな」
「いかん、直ぐに作業の次の指示を出さねば」
「「俺もです!」」
「では、足りないアイテムを補充して、お昼まで薬を作ってますね」
「皆様行ってらっしゃいませ。姉様行きましょう」
こうして駆け出して行った男性三人をクスクス笑いながら一か所ずつアイテムチェックをして必要なアイテムを生成していき、昼になるまで【破損部位修復ポーション】と他のポーションを交互に作り続けた時間は過ぎて行き……いつも通り休憩室で倒れている私が居たのは、ラフィリアちゃん達には内緒にしたいかな? と思った日。
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