石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

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63 ラフィリアちゃんを、本物のラフィリアちゃんに戻すために(下)

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「ラフィリア!!!!!」


 と、バタバタと走ってくるカシュールさんがいて、「父さん!!」と喜んだ顔を見せた。


「父さんこの家に下請けが居て良かったな!!」
「下請けって……本気で言ってるのか!?」
「は? だって下請けだろ?」
「ラフィリア、お前の製薬レベルは幾つだ。今ここで言ってみろ。三歳から初めて十年だ。無論高いと皆さんは思うだろう。最低でも4か5はある筈だと思うだろうな。さぁ、お前の製薬レベルは幾つだ」
「……」
「ハッキリ言いなさい!」
「2だけど……」
「「低すぎる!! あり得ない!!」」
「流石にないな……気移りしていたと聞いたが、それでもあり得ない」
「な、なんだよ……下請けだってそんなもんだろ?」
「えっと……」
「ラフィリアよ。ユリの製薬レベルは10じゃぞ。製薬レベル10を下請けと言うか。お主、中々面白い事を言うな!」
「!?」
「ちなみにレアキルを三つ程持っておる。お主は~~……ふんふん、何もないな。製薬スキルは2で、家事スキルも1、一番高いのは生活魔法じゃが、それですら3か。ゴミじゃな」
「お爺ちゃん!!」
「まぁ待てユリよ。ワシは何も馬鹿にしておるわけではない。身の程を教えているのじゃ。他人の家を勝手に借り、そこで自由奔放に喚き散らし、自分より高いスキルを持つ者を下請けと呼び、そのユリの事を自分の奴隷のように扱おうとする。まぁ、ワシの見立てではこうじゃが? それではお前さんをイジメていたメスガキどもと同じじゃあな。同じ穴のムジナじゃ。情けないのう」
「――っ!!」
「お主幾つじゃ? 十三じゃろうて。センジュと同じ年齢じゃ。それなのにこの差、埋まらぬ差はどうする。死ぬ気で頑張るしかないのにそこから逃げて逃げまくってどうする。その様な者、生きている意味すらないわ」
「お爺ちゃん、言い過ぎよ」
「なんだよ……なんでだよ!! 何でそんな酷い事言うんだよ!! 私が何したって言うんだよ!!」
「被害者面は良い加減にせんか!! このバカ娘が!!!」


 行き成りの咆哮だった。
 ラフィリアちゃんは悲鳴を上げて蹲り、皆も動けない。
 けれど――。


「一番の被害者を教えてやろう。無論お主でもないわクソッたれが。一番の被害者は、お主の父上じゃぞ!!」
「っ!」
「お主の所為でどれだけ苦労した。どれだけ苦労をさせ続けた!! 親不孝者め!! 恥を知れ!!」
「う……」
「ワシから逃げられると思うなよ? これからビシバシとワシから忠告を言ってやる。有難く思う事じゃな!!」
「うわあああああん!!」


 お爺ちゃんの言葉で子供のように泣きじゃくるラフィリアちゃん。
 すると「タキ今じゃ!」と叫んだお爺ちゃんに、タキちゃんが頭の上からジャバジャバと【破損部位修復ポーション】をかけ続けている。
 何度もキラキラ光って消え光って消えして行く光に眩しさを感じていると、ある程度破損部位修復ポーションを掛け終わるとタキが動いた。


「モウネ ワガママ ヤメタホウガイイヨ キラワレテ カナシクナイノ?」
「悲しい、悲しいよおおお!!」
「ウン ソウダネ? デモ キミノコトバハ タクサン ヒトヲ キズツケタヨ? ソレハ カナシイコトダネ?」
「うん……うん……お姉ちゃんもごめんなさい……お父さんもごめんなさい……だって、だって私駄目なの! イライラが止まらないの!! 頭がモヤモヤしちゃうの!! きっと病気なんだわ……」
「どうなの? タキちゃん」
「ウン コレハ……ラフィリアガ ワルイワケジャ ナイヨ。 ネェ ラフィリア? ヒトツキイテイイ? キミニ 【呪われの壺】 ツカッタノ ダレ?」


 その言葉を聞いて私は口に手を当てた。
【呪われの壺】は製薬レベル10ないと作れない薬で、一滴でも飲めばイライラが止まらず他人に迷惑を掛け続けるという【相手を陥れる為の薬】だった。
 これにはカシュールさんも呆然として膝をつき、「そんな、まさか」と口にする。


「ダレガ ツカッタノ?」
「友達だった人たち……お婆ちゃんがギルドマスターだからお願いして作って貰ったて……。抵抗したけど無理で……飲まされちゃって……でも人には言えない薬だって言われてて、口にしたら穢れてるって思われるって!! だから今まで言えなかったの! お父さんどうしたらいいの!? お父さん、お父さん!!」


【呪われの壺】の解除法は一つある。
 そうね、お陰で謎が解けたわ。
 破損部位修復ポーションでは治らない筈よ……。
 治療を根本から間違えていたんだわ……。


「【暁の魂】が必要になるのね」
「!」
「随分とラフィリアちゃんをイジメた相手は……それこそ、死んだ方が良いんじゃないかしら? そのギルドマスターの事も伝えておくわ。丁度私、今日製薬ギルドに行く予定だったの。禁忌の薬を作ったギルドマスターなんて、ギルドマスターには相応しく無いものね?」
「ユ、ユリ……ユリ殿!! 作って、つ、作って下さい!! 娘に【暁の魂】を!! どうかお願いします!!」


 最早藁にも縋る思いだろう……。
【暁の魂】は呪いを解く為の最高峰の製薬アイテムの一つ。
 私でも一本が精々ね……失敗は出来ない。


「今から作ります。ポーション瓶を一つ下さい」
「部屋から持ってくる!!」
「皆さんは料理を続けるなりしていて結構ですよ。私は少し離れた所で製薬しますので、朝ご飯はいりません」
「姉上?」
「ユリ?」
「【暁の魂】は、それほど作るのが大変なのですか?」
「……暁の魂はな、いわば、呪詛返しのようなものだと思えばええぞ。この戦い負けられんのう」
「「「「「呪詛返し」」」」
「ユリ ラフィリア ケッカイハルヨ? イイネ?」
「ええ、お願いね」


 そう伝えるとカシュールさんがポーション瓶を持って来てくれて、受け取ると私は違う部屋に移動した。作るのなら太陽が沢山当たる場所が良い。
 そう思い、元住んでいた部屋に戻ると、ラフィリアちゃんとカシュールさん、エンジュさんとドマが入ってくる。
 部屋全体に結界が施され「イイヨー」と声をタキに声を掛けられると、私はポケットからイヤリングを取り出して装着し、大きく深呼吸して――。


「アイテム生成・【暁の魂】」


 と口にする。
 眩しい金と赤に染まる魔法陣から生み出されるのは暁の光、暁の魂の輝き。
 丸い球体になって光り輝くと、それをポーション瓶に注ぎ込んでいく。
 汗が止まらない。
 一気に集中力を持って行かれる。
 最後まで踏ん張れ。此処で負ける訳にはいかない!!
 最後の一滴がポチャン……と音を立て蓋を閉めると、私はアイテムを手にしたまま倒れそうになったけど、すんでの所でエンジュさんが支えてくれた。


「凄い汗だな!」
「相当疲れます、この薬……。でもここからが本番です。私も結界を張ります」
「結界まで張れるのか!?」
「二重結界じゃな。そうでもせんと、タキ一人では辛かろう」
「カシュールさん、アイテムをラフィリアちゃんに飲ませてあげて下さい」
「分かった!! さぁ、ラフィリア……」
「う、うん!」


 そう言って一気にラフィリアちゃんが薬を飲み込むと、ブワッと煙がラフィリアちゃんから出て太陽の当たる部屋の中、老婆の悲鳴が響き渡る。
 さぁ、私の必死に作った【暁の魂】での呪詛返しは勝てるか、負けるか!?


 闇の煙が剣のように尖り、私とラフィリアちゃんに向けて飛んできた瞬間――二重結界のうち一つが割れた。
 もう一つの結界は私のしている結界。
 拮抗してる!!


「くっ!!」
「ボク モウイッカイ スルヨ!!」
「お願いっ!!」


 バンッ と更に二重結界にしても尚襲って来ようとする剣。
 あの呪いの壺の所為で、長い時間、とても女の子にとってもお父さんにとっても長い時間苦しめて!!


「許せないわ」


 そう冷静に口にした途端、結界が金色に輝き老婆の悲鳴はつんざくような悲鳴になり黒い煙は消えて行った……。
 煙は金の光に巻かれて消えていて、キラキラと金の粒子が舞っている。
 すると、お爺ちゃんとタキが私に擦り寄ってきて「流石ワシ等の主じゃのう」「サイコウダヨー」と甘えて来たのが可愛かった。


「これで、こちらの勝ちね」
「ラフィリア……大丈夫か?」
「う、うん……イライラもモヤモヤも落ち着かない気もしない……凄く心が安定……してる」
「――ラフィリア!!」
「ユリお姉ちゃんありがとう!!」


 そう言ってラフィリアちゃんが抱き着いてくると、私も「良かったわね! タップリ呪詛返ししてやったわ!!」と声を上げて笑った。
 それからの時間はと言うと、人が変わったかのように表情も変わったラフィリアちゃんが居て、私に抱き着いて今までの事を謝罪し、私もその事を許した。
 でも――。


「お爺ちゃんは何故あんな真似をしたの?」
「だってワシ、気づいておったもん」
「呪いに?」
「咆哮は呪いに対してじゃ。でないとラフィリアなんぞ塵になっとるわ。最初に弱らせて一気にタキに心を修復させ、呪いが弱ってる所で本音を言わせた。後はユリが【暁の魂】を作って呪詛返しで成功じゃ!」
「もう……心配したわ」
「しかし、綺麗な金の光だったのう……あれがお前さんの本当に心にある優しさの粒子なんじゃなぁ」
「トテモ キレイダッタネ」


 そう言ってスリスリしてくる二匹は可愛い。
 ラフィリアちゃんも私から離れないけれど――。


「いい加減姉様から離れて下さい!!」
「いや! 私も妹になる!!」
「貴女のような妹はいりません!!」


 と、ドマとラフィリアちゃんのやり取りが続きつつ、その後軽くシャワーを浴びてから出かける事になったのは言うまでもない。

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