石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

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67 ラフィへの製薬の教え方は感覚派よりは丁寧に分かりやすく……ですよ?

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「今日はどれ位注文きているだろうかなぁ……近々城にも持って行かねばならないし」
「う、そっちはまた頑張ります……」
「お城、行くんですか?」
「俺が付いて行くからお前はお留守番だ」
「むう。ドマのいじわる」


 そんな会話をしつつ二号店に到着し、いつも通りの朝を迎えたのだが――。
 今日は今日でやるべき仕事は沢山あって、新たに来た注文の多さにちょっと眩暈を覚える彫金師二人。眼鏡とサングラスを一般販売して欲しいと言う要望書が届いたのだ。


「いっそ眼鏡屋でも作るか?」
「眼鏡とサングラスを売る店ですか?」
「ああ、後は文房具店と提携して万年筆の普及だな。これはホスティーさんと話し合って決めて行くしかないが」
「でも、眼鏡屋とサングラス、補聴器の三つを売るのは良いと思います。店舗はそこまで大きくなくても良いので、あると便利ですよね」
「確かに一般市民にまで普及をして欲しいと言う要望書が来ている時点でこの国が如何に目の問題を抱えているのか良く分かるな」
「まずは眼鏡屋を作るか……店舗を探すのはユリに任せる事になるが」
「構いませんよ。商業ギルドで聞いてきます。午後からでいいですか?」
「ああ、午後からで構わない」
「畏まりました」


 どうやら今日は午前中ラフィに製薬を教えた後は商業ギルドで眼鏡屋の店舗探しね。
 販売員は必須だし、そうなると眼鏡拭きとかケースが欲しくなる。


「あの、商業ギルドに聞きに行くのは良いんですが、眼鏡拭きや眼鏡ケースが欲しくなると思うですが、柔らかい布地を裁縫ギルドで作って貰うと言う事は可能でしょうか?」
「ああ、裁縫ギルドにも連絡しないと駄目か」
「そうですね。裁縫ギルドでも眼鏡は納品しているので、眼鏡拭きを使っている人は多いと思うので聞いてきます。後は眼鏡ケースの方も何とかしたいですね。メガネケースはまだ出来てきてないんですっけ? ロザリオスさん、ノルディス様に【眼鏡ケースは出来るだけ早く】とお伝え出来ますか?」
「畏まりましたわ」
「この二つが揃ってから店舗探しにしましょう。纏めてした方が早いですし」
「ユリは何でも思いつくな……頼りになる」
「姉様ですからね、流石です」


 いや、あちらの世界での知識ではあるんだけど……まぁ眼鏡を使うのならケースと眼鏡拭きは必須。まずは裁縫ギルドに行くことが先決になった。
 ケースに関してはノルディス様が作ってくれないとどうしようもない。
 ただ、箱よりは硬い物で作った方が良いんだけど……この世界プラスチックとかないしな。
 私の力でもプラスチックを出すのは無理だろう。


「では、午前中はラフィに製薬を教えて、その後裁縫ギルドに変更にします。もしノルディス様からご連絡があれば教えて下さい」
「畏まりました」
「では朝の仕事頑張ろうか!」
「「「「「はい!」」」」」


 こうして開発部にラフィとドマ、お爺ちゃんとタキとで入ると、まずはアイテム生成でポーション瓶を並べて行く。
 透明度の高いポーション瓶は製薬ギルドでも「いい品だね」と言われたくらいだ。


「本当にお姉ちゃんって色々な事が出来るのね」
「石を出す程度の能力って書いてあるんだけどね。石にも色々あるみたい」
「そう言えば、真珠とか珊瑚石とか言う珍しいものは石だから出せるんじゃないですか?」
「それは違うのよ。一応宝石の分類ではあるんだけど、珊瑚は珊瑚虫が生成するのね。で、真珠は貝から稀に取れるのよ」
「そうなの!?」
「初めて知りました。石だとばかり思ってましたが違うんですね」
「私もどうにかして出せないか夜に一度試したんだけど、アイテム生成は出来なかったわ」
「「ほお……」」
「あと生成出来なかったのはミスリルやオリハルコンね。この世界では当たり前でも、私が居た世界ではない鉱石だから出せなかったの。だから出せる鉱石にも縛りがあるんだわ」
「全部が全部出せる、という訳では無いんですね」
「そうみたいね」


 この辺り神様が何とか弄って出せるようにしてくれればいいのにとは思ったけど、この【石を出す程度の能力】と言うレアスキルを与えた時にきっとそこまで頭が回らなかったのかも知れない。
 本当ならミスリルとかバーン! と出して驚かせたかったな~って思うけど、それこそレアだからこそのミスリルの価値が下がるというのも考え物だし、これで良かったのかも知れない。


「と、言う訳で製薬レベル2のラフィには、まず初級ポーションを作って貰います。今は元金の王国シャース王国がスタンピードで一夜にして滅亡したのは知っているわね?」
「はい」
「そこで三国は各自結界を張っているのだけれど、その結界が切れる前にスタンピードで溢れたモンスターを倒さねばならない。その為のポーションが不足しているようなの。製薬ギルドでも中級から上級のポーション依頼はとても多いわ。まずは中級を目指す為にも、一般市民が良く使う初級ポーションをラフィには頑張って貰います。製薬ギルドに所属している製薬師たちの殆どが中級からを作っているから、国民が買う予定の初級も不足気味なんですって」
「分かりました!」
「何度でも失敗していいし、ポーション瓶を駄目にしたと言う気持ちなんて捨ててドンドンやってみて頂戴。失敗品が出来た時はタキが何とかしてくれるわ」
「マカセテネー」
「ありがとうタキちゃん」
「スキル5まであがれば中級ポーションに挑めるようになるから、それまでは只管初級をモリモリ作ってね! 製薬ギルドで買い取って貰えるし、一号店でも売る事は可能よ」
「はい!」


 こうしてラフィは瓶を幾つか目の前に置くと、「アイテム生成・初級ポーション」と口にすると液体がフワリと出てグルグルと回っている。
 普通はあんな風に作るのね。私のやり方とはちょっと違うのだと理解した上で様子を伺う。
 キラッと光ればアイテム成功だけど、間違えば液体は飛び散る。
 それが製薬師のいわば、『通称パリーン』と言う奴で失敗と言う事だ。
 周辺に飛ぶ為被害が結構大きい場合もある。
 そこでラフィの周囲にタキちゃんが結界を薄く作り、周囲に飛び散らないようにしてくれた。


「タキちゃん、私も予防でお願い出来る?」
「アルジ シッパイ シタコトナイヨネ?」
「何時失敗するか分からないもの。予防があった方が良いわ」
「イイヨー」


 そう言うと分裂してもう一匹のタキちゃんが私に薄く結界を張ると、私もポーション瓶を前に「アイテム生成・破損部位修復ポーション」と口にして魔法陣を出していく。
 金色の液体が出来上がるとチカリと光り、それをポーション瓶に入れて行きながら瓶の蓋は閉まって行くのに対し、ラフィちゃんは――。


「く……ん……」
「ラフィ ガンバレ!」
「後一つ……これで十個!」


 と、10個の初級ポーションを続けて作るのがまだ精一杯の様子。
 私も50個の破損部位修復ポーションを作るのが精一杯だし、スキル10あっても難しい物は難しいのだ。
 それでも、何度も休憩を入れつつ50本の初級ポーションを作ったラフィは目を輝かせて喜んでいたけれど、60本目にしてパリーンが起きた。


「魔力の揺れ幅が大きくてやっちゃいました……」
「キモノモ ビショビショ ダネ!」
「むう。気合を入れ直します!!」
「ガンバレ! ラフィ! オウエンシテル!!」
「タキちゃんありがとう!!」


 そう言うとラフィは深呼吸を繰り返してから再度集中を始めた。
 私もその様子を伺いながら中級ポーションを間に作り、再度破損部位修復ポーションを作って行く。
 一度50個作れば呼吸を置いてラフィの様子を見ながら作り方に粗が無いか等のチェックを行う。
 スキル10もあれば、無駄な力を使っている箇所等も何となく分かるのだ。


「ラフィ、腕に力が入りすぎているわ。もう少し緩めた方が魔力の通りが早いわよ」
「リラックス リラックス」
「そうそう、その調子。少し呼吸を吸って……ゆっくり吐いて……今良い感じに注がれたわ」
「少し魔力の通りが楽になりました……。力の入れすぎも駄目なんですね」
「イメージは目の前で水の球体を作る感じ……そうそう、良い感じに形になってきたわ」
「いつもは洗濯の感じで作っていたんですけど、それじゃ安定しないんですね」
「そうね、球体が出来たらそこに魔力を注ぐ感じで……丁度良くなると光るから」
「あっ! 早く光った!」
「後は瓶に注いで行って」
「はい! えっと、注ぎ方は水道ジャバ―じゃなくて……」
「卵を両手で割る感じ?」
「あ、分かりやすい」


 そう説明しながらやるとスムーズに初級ポーションを30個も作れた。
 一度に30もの初級ポーションを作ったのは初めてらしく、目を輝かせて出来た初級ポーションを眺めている。


「今の要領を忘れずにやっていくと、50個までは簡単に出来るようになるわ。割れてもいいから最初は特訓と思ってやるといいわね」
「タキガ ケッカイ ハルカラ ゾンブンニ ヤレルヨ!!」
「うん! お姉ちゃんの教え方凄く上手なの。お父さんだとバーンとシュルルーンとしてジョワーっていうから良く分からなくて」
「それは教え方もどうかと思いますね。どう思います姉様」
「カシュールさんは感覚派なのね……教え方は私の方で合ってたみたい」


 そう言って苦笑いを零しつつ、午前中ラフィは初級ポーション作りを何度かパリーンしながらも進めて行き、私も倒れないギリギリで教えることが出来たので、「お互いに助け合いだね」と言いながら笑いあった。
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