石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

文字の大きさ
70 / 106

70 スタンピード対策に、ついにお爺ちゃんとタキが動き出す。

しおりを挟む
「今も帝王様は【サクラギ】の名字を持つ者を一人でも探そうとしていらっしゃるが見つからない。見つかったとしても生きていられるかどうかも分からない。何故集団で自決する事になったのか理由を知りたいそうだが、誰一人としていないのだ……」


 その言葉にドマを見ると、ドマは口をギュと閉じ拳を握りしめていた……。
 ドマの名字はその【サクラギ】だけど、ドマ自身には記憶が一切ない。
【忘れじの薬】を飲んだからと言う結果だが、その事は敢えて言わなかった。


「では、鬼門は今もキサラギ一族だけで?」
「いいや、キサラギ一族は【今の帝王を帝王とは認めぬ】と言って鬼門の守りを放棄した」
「大丈夫なんですかそれ……」
「大丈夫なものか。今や鉄の国サカマル帝国は荒れに荒れているよ。帝王ともあろう方がキサラギからもサクラギからも見放されたとあっては示しもつかない。その責を取って、子を作れなくする手術が行われたそうだ」
「帝王から次の子が生まれなくしたんですか?」
「ああ、帝王が御した場合に限り、違う兄弟から帝王が選ばれる。子は成せないわ、毎日毒に怯えなくてはならないわ、今の帝王にまともな考えは出来ないだろう。その上で他の宰相たちから良い様に使わされていて、木偶の帝王とさえ呼ばれている。内戦が勃発しようかと言う時にスタンピードで内戦が起きなかったとさえも言われている。だからスタンピードが終わって貰っては困るのは、鉄の国サカマル帝国の方なんだよ」


 なるほど、それでワザと足並みを崩して言ってる訳か……ろくでもない。
 元々強い兵団を持っている事と、魔物討伐隊もまた強いらしく、三国でダンジョン撃破して行けば遠くない未来にスタンピードは落ち着く筈なのに。


「ちなみに、俺達が国を出る時に流れていた話では、帝王様は病床で倒れていると言う噂だった。次の帝王を選んでいる最中だとも」
「わー……」
「ズタボロじゃないですか」
「病床の帝王様がお亡くなりにならない限りは、三国の足並みは整う事はないだろうな」


 そこまで話したところで晩御飯となり、皆さんとで美味しく食べていたけれどドマは心ここにあらずで、私がツンツンと突くとハッとした様子で苦笑いしていた。
 考えても仕方ない事は考えない主義だけど、ドマの人生が狂ったのは今の帝王の所為なのね。
 もしかしたら他国にもドマと同じ子がいるかも知れないけれど、今はどうしようもない。
 あれ?


「でも、エンジュさんのお母様ってサクラギじゃない?」
「ああ、サクラギだな」
「では叔父様は?」
「母親違いなんだよ。俺とアリナシアは腹違いの兄妹なんだ」
「腹違いでしたか」
「だから、ある意味帝王様が探しているサクラギは、エンジュとセンジュにも血は流れていると言う事になるけれど、君たちは生まれも育ちも宝石の国ダイヤの国だ。鉄の国サカマル帝国とは関りなんか持たない方が良い」
「俺もそう思います」
「同じく、碌な事が無さそうだからな」
「それに鉄の国サカマル帝国は男尊女卑が酷い国でもある。ラフィリアをあの国で育てるなんて今考えてもゾッとする」


 男尊女卑の考え……私とは絶対合わなそうな国だなぁ……。
 うん、私はあの国には近寄らない!


「さて、皆さんご飯を食べ終わった所で、一つ良い物をお取り寄せします」
「お、何を取り寄せるんだ」
「ラフィが売り物になる初級ポーションを作れるようになったのと、スキルが1上がったお祝いとして……ジャーン!!」


 そう言って【お取り寄せ】のタブレットからとある甘味を買うと、机の上にポンと現れた為箱から中身を出すと――多種多様のケーキの詰め合わせだ!!
 見た目も華やかで私とセンジュ君がお皿とフォークを用意すると、まずはラフィに食べたいのを選んでもらい、一人贅沢に二つずつ選んでいく。
 全員に行きわたってから珈琲も用意して食べたんだけど――美味しい!!!
 流石三ツ星レストランのケーキ!! 大満足!!


「美味しい――!!」
「甘いな!! 確かに食べた事ないが甘味だ!!」
「美味しくて頬が落ちますね……」
「贅沢な味ですっ!」
「……うまいっ!」
「珈琲と合うな!」
「イチゴ オイシイヨー」
「ワシはモンブランなるものが好きじゃのう」


 と、和気藹々とケーキを食べて過ごし、嫌な事は忘れて綺麗サッパリ!
 ……とは行かないかな?


「ドマ、後でちょっとお話しようか?」
「え?」
「あらあら? 護衛は何時もボーっとしてていいのかしら?」
「!」
「と、いう訳で、後でお話しましょう?」


 そう言うとケーキを食べつつ頬を赤くして頷いていた。
 取り敢えずドマの不安は今日のうちに消して置く!!
 こうして食事を終えた後は先にエンジュさんに風呂に入って着て貰い、その間にドマから話を聞くことにすると、なんでも男尊女卑の事は覚えていたらしい。


「姉様、どうか鉄の国サカマル帝国にだけは行かないで下さい」
「余程男尊女卑が激しい土地柄なのかしら?」
「報酬で女払いがあるような地域です。とても姉様を連れて行っていい場所ではありません」
「なるほど、確かに酷い男尊女卑のようね」


 女払いって初めて聞いたわ。
 余程酷い土地柄なのね。
 ラフィが無事だったのは、きっとあの呪いの為の性格と、お父様であるカシュールさんが守ったからだと理解出来た。
 カシュールさんもエンジュさんのお母さんとは腹違いだと言っていたし、女払いはあながち間違いではないだろう。


「そうね、私はダイヤ王国から出ないわ」
「そうしてください……どうかお願いします」
「呼ばれてもいかないわよ」
「良かった……」
「ただ、覚えている所はそこだけなの?」
「はい、他は何もないですね。きっと幼いながらに男尊女卑に対して抵抗が強かったんだと思います」
「それで覚えていると言う事はあるのね……」


 確かに子供の頃のトラウマと言うのは残りやすい。
 どう足掻いても取れない場合がある。
 それが、ドマの場合は男尊女卑だったのだろう。
 母親か、姉か、妹か……辛い目に遭っていたのかも知れない。


「しかし、足並みが揃わないとスタンピードは収まらないわ。二国だけで進めるのか、それとも現帝王が崩御するのが先か……難しい所ね」
「帝王の崩御するのを待って居ったら何時まで経っても勝てんわ。それにスタンピードは厄介なモンスターを生み出しやすいと相場が決まっておる。どれ、ドマよ。ワシとタキの分身は魔物討伐隊に一時所属するわい」
「え!」
「お二人がですか?」
「タキハ ブンレツ デキルカラ イッピキ イッテクルヨ」
「なるほど」
「明日の朝陛下に伝えに行くぞい。鉄の国サカマル帝国待って居ったら取り返しのつかん事になるからのう」
「分かったわ。怪我だけはしないでね」
「うむ」
「ボクト オジイチャン フタリデ アルテイド オワラセテクルネー」


 ある意味心強い……のかな?
 取り敢えず明日の朝はラフィにはタキちゃんの分身と一緒に頑張って貰って、陛下に会いに行こう。
 お爺ちゃんがこんな事を言い出すなんて事は滅多にないのだし、任せておく方が無難かな?


「しかし!」
「ん?」
「ワシとタキが帰ってきたら、あのケーキとか言うのをたらふく食わせておくれ!」
「いいよ!!」


 こうしている間にエンジュさんがお風呂から上がってきてドマが入りに行き、お爺ちゃん達が魔物討伐隊と一緒に遠征というか、スタンピードを抑えに行く話をすると驚いていたけれど、「皆を守って欲しい」と言うエンジュさんの言葉に、お爺ちゃんは孫を見るような顔で「ふぉっふぉっふぉ!」と笑っていた。


「全員を守ると言う訳にはいくまいて。じゃが、出来る限りは守ると誓おう。ワシは一応宝石の国を庇護するレジェンドモンスターじゃ。そのワシの主が宝石の国ダイヤ王国民と言う事は、他国が欲しがっても動く事など不可能と言うことじゃ」


 その言葉に、ドマの言っていた男尊女卑を思い出した。
 お爺ちゃんなりに何か思い当たる節があるのかも知れない。


「それに、金塊の山に鉄の国サカマル帝国が向かったとしても、勝てはしないじゃろう。相手はドラゴンじゃぞ」
「やはりドラゴンがいるんだな」
「うむ、無駄に命が散るだけなのを鉄の国サカマル帝国は理解しておらぬ様子。まぁ、あのドラゴンの倒し方もワシが陛下に伝えよう」
「ありがたい!!」
「さて、ユリが風呂に入ったらワシ等も寝るかのう……。明日からは暫しの別れじゃエンジュたちよ」
「寂しくなるが……必ず戻って来てくれ」
「ふぁっふぁっふぁ! 言われずとも戻ってくるわい」


 こうしてドマも風呂から上がり、最後に私とお爺ちゃん達がお風呂に入ってから上がって早々に眠りについたけど、お爺ちゃんが居ない生活か……きっと寂しいだろうな。
 そんな事を思いながら眠りについた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。

向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。 幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。 最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです! 勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。 だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!? ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

処理中です...