石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

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69 足並みそろわぬ三国と、鉄の国サカマル帝国の内情。

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「貴女も根性見せるじゃないですか。少しだけ見直しましたよ」
「む、少しだけなの?」
「これからも精進することですね。姉様の一番弟子として恥ずかしくないように」
「当たり前でしょ!?」
「喧嘩しないの。今日は帰ったらお祝いね!」


 こうして二人は笑顔で頷き、私も満足して頷き合い、その後一日の報告をし合う時間がやって来た。そこで魔物討伐隊に【命の花びら】を納品してきた事とその書類、また【寄付】として【破損部位修復ポーション】を50個、ガーネットから差し上げて来た事も伝えた。
 それと同時に、ポーションがかなり魔物討伐隊でも不足していることから、今後ポーションの取引も始まる事を伝え、先だって持っていた本数を納品した事も伝え、それも納品書としてカラクさんとウィスパー君に手渡す。


「それと、こちらが裁縫ギルドにての契約書となります。眼鏡拭きは眼鏡ケースに必ず一つ付属して貰う事にしました」
「ああ、それだと二度手間がなくていいな」
「ノルディス様が言うには一週間後いい返事が出来そうだという事でしたので、それから商業ギルドにてお店をと思っています」
「その方法で問題はないだろう。俺達が動けない間すまんな」
「いえいえ、これも嫁としての務めですから」
「でも、増々開発が遅れますね……現状ではこれで手一杯ではありますが」
「この際開発は一旦置いて、スタンピードで荒れた土地を元に戻す方が先決だろう。怪我人が増えるのも良くない」
「そうですね……明日は冒険者ギルドに納品と週1の仕事に向かうので、午後は暫く留守にします。その間タキちゃんには分裂して貰ってラフィの方を見て貰うわ」
「イイヨー」
「ありがとうお姉ちゃん、一人はやっぱり寂しくって」
「タキは分裂してもタキそのままの力はあるからのう。ラフィをユリと間違える輩が来てもあっという間に叩き潰すじゃろう」
「エッヘン!」


 つまり、タキちゃんを分裂させたのは護衛の意味も強い。
 私にはドマもついて来てくれるけど、ラフィ一人にするのはとてもじゃないが心臓に悪かったのだ。


「多分この様子だとどこもポーション不足だと思うわ。カシュールさんにポーション瓶を沢山用意してお店の方のポーションは頑張って貰う事になりそうね」
「ラフィのポーションも売る方がええじゃろうな」
「そうね」
「えへへ、私も売り物になる初級ポーション作れるようになったの。ユリお姉ちゃんの教え方が分かりやすかったのよ!」
「流石ユリだな」
「ふふふ!」
「取り敢えず書類関係は把握致しました。今の所は他所からの依頼は一先ず来てないので、明日の朝次第と言う事になります」
「「「分かりました」」」


 こうして一日位の仕事が終わり、皆で鍵を掛けてから馬車に乗り込んで帰宅すると、カシュールさんがバタバタ走ってきて「ユリさんお願いが!」と慌てている。
 何でもあれだけ予備としても置いていたポーション瓶が全て無くなり、途中からポーションが作れなくなったのだと言う。
 そこで【お取り寄せ】で段ボールとガムテープを購入し、組み立ててカシュールさんとラフィが住んでいる一階の作業スペースに「アイテム生成・ポーション瓶」と口にすると一気に作って行く。
 合計5000個程作れば余裕もあるだろうと言う事で出し終えると、カシュールさんは暫く呆然としていたけれど――。


「ポーション瓶5000個あれば一日は持ちますかね?」
「そう、だね! 沢山あればあるほど嬉しいからね!」
「それは良かったです! 段ボールは水に弱いので、一度持って来ていたポーションケースに50個入れてから作った方が良いですよ」
「分かった、明日からはそうしよう」


 そう言って頷き空になっていたポーションケースを持ってこられると、ラフィは「お父さん聞いて!」とカシュールさんに抱き着いた。


「私一度も集中力切れずに50個の初級ポーションを作れるようになったの! しかも製薬スキルが1も上がったのよ!!」
「す、凄いじゃないか!!」
「鑑定して見ましたが、ちゃんと売り物になる初級ポーションでしたよ。明日から店に並べて売る事も可能です」
「おお……ラフィリアがそこまで……お父さん嬉しいよ!」
「頑張りましょうね、お父さん!」
「ああ、この国で再出発すると決めたんだ。頑張ろう!」
「後はスキル5まで上げて中級ポーションに取り掛かって見ましょうね。まずは上がり切るまでは初級ポーションでお金を稼ぎながらになるかしら?」
「了解です!」


 こうして明日からはラフィの作った初級ポーションも店に並ぶことになり、ポーションで稼いだ分は二人の稼ぎとなるように話し合いで決まり、ポーション瓶に関しては夜私が帰宅してから大量に作る事になった。
 無論タキちゃんも『ものまね』が出来るのであっと言う間に作り終えるのだけれど、大した仕事ではない。


「そんな訳で、今日はご馳走作りたかったんですが、食事はセンジュ君が作ってくれてまして、食後にお祝いの甘味を出そうと思うんだけど、どうかしら?」
「「甘味!?」」
「楽しみにしててね!」


 こうしてラフィとカシュールさんに笑顔で伝えると、ご飯が出来上がるまで時間が掛かる為、その間二人でポーションを作る事になったようで、応援しつつ一号店へと戻る。
 そして白い割烹着を着ると私も料理のお手伝いをしながら、タキは掃除と洗濯へ、お父様は新聞のチェックを行いエンジュさんは新しい彫金師の本は無いかと言われた為【お取り寄せ】で幾つかの本を購入して手渡し、それを読みふけっていた。
 すると――。


「金の輸出国だった元シャース王国が滅んでから、他国でも金が不足し始めているようだな。他国でも金鉱山を先に守れないかと言う話になっているようだが、強い魔物が沢山いて手が出せないらしい」
「金銀財宝に群がるというと、ドラゴン系ですか?」
「恐らくな。そこで、現状小さなダンジョンは次々魔核を壊せているらしいが、中規模や大規模ダンジョンになると攻略が難しいらしい。宝石の国ダイヤ王国と鉱石の国ノシュマン王国は、まずはモンスターが湧き出てくるダンジョン攻略を目標にしているが、鉄の国サカマル帝国は別行動を開始すると書いてあるな」


 その情報に眉を寄せたエンジュさん、三国の足並みが整ってこその攻略だろうに、鉄の国サカマル帝国は金に目がくらんでいるのだろうか。


「数年掛かりでダンジョンを潰して行かなければ現状は変わらないのに……鉄の国サカマル帝国は何故」
「六年ほど前に前帝王が亡くなり、今は帝王の息子が跡を継いでいる。余りいい話は聞かない帝王だがな」
「そうなんですか?」
「金と女が何よりも好き……と言う話は聞いたことがある」
「「「最悪ですね」」」


 そう話しているとカシュールさんにラフィ達もやってきて「一仕事終えて来た!」と満面の笑みを浮かべるラフィとカシュールだったが、今日の新聞をお父様が読んでるのを見て眉を顰めたのはカシュールさんだ。


「鉄の国サカマル帝国の事が書いてある新聞ですね」
「ええ、今父上から今の帝王について聞いていた所です」
「俺も新聞でしか情報を得ていないがな。実際今の帝王がどんな人であるかは分からないな」


 そう語ったお父様に、カシュールさんは小さく溜息を吐き、「今でこそ話せますが」と口にすると次のような事を語った。
 元々、帝王は二つの名字の家を守る大事な役目があったらしい。
 一つは【サクラギ】と言う名字の家で、もう一つが【キサラギ】と言う名字。
 サクラギ家とキサラギ家の安泰こそが平和の象徴とさえ言われ、代々とても大事にしてきたそうだ。
 この二つの家は大国の鬼門を守り、民を守る存在でもあったらしいが――。


「サクラギ一族が、一夜にして滅んだんだ」
「一夜にして!?」
「そのような事ありえるのですか?」
「いや、本来はあり得ない。今も帝王かキサラギの陰謀ではないかと噂されている」
「何故」
「本来帝王はキサラギ家から花嫁を貰うはずだったんだ。帝王たちは交互にキサラギ、サクラギから嫁を貰う事が決まっていたからね。今回の帝王はキサラギ家から正妃様を貰う予定だのだが、何を思ったのかサクラギから嫁を貰うと言い出し、サクラギ家もそれに反発した。順番を違える事はテリサバース女神に反するとして断固として許さなった。無論キサラギ家も断固として反対したのだが、帝王はそれでもサクラギ家から正妃を貰うと言って聞かず、本来正妃になる筈だったキサラギ家の娘がショックで自害してしまった」
「じ……自害!?」
「それは帝王の責任であるとキサラギ家は帝王を批判。周囲の者達からも窘められたのだが……サクラギ家にどうしても欲しい正妃がいるから仕方ない犠牲であると言い放ってしまってな」


 相当おバカな帝王のようだ……。
 聞いてて頭が痛くなるような、そんな気分にすらなってくる。

 しかし、話はまだ続いて、仕方のない犠牲と言われる等言語道断とキサラギ家は帝王と王都を守る事を放棄。
 途端疾病などが流行り出したのが、ラフィが呪いの薬を貰う頃の出来事。
 そして、ある日一夜にしてサクラギ一族が消えたのだという。
 集団自決であったのだと言う。それこそ、お年寄りから赤子まで幅広くだったそうだ。

 何故そうなったのかは今も不明だが、国民たちは帝王の暴走ではないか、キサラギ家の暴走ではないかと囁かれているらしい。


「今も帝王様は【サクラギ】の名字を持つ物を一人でも探そうとしていらっしゃるが見つからない。見つかったとしても生きていられるかどうかも分からない。何故集団で自決する事になったのか理由を知りたいそうだが、誰一人としていないのだ……」


 その言葉にドマを見ると、ドマは口をギュと閉じ拳を握りしめていた……。


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