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恋する猫と幸運の穴

前編

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現パロ風だけど魔法が存在します。

ラッ〇ーホールというものをベースに、捏造妄想ふんだんにふりかけてます。

攻め①……クウィンス
人間。金髪。怠け癖がある美形。

攻め②……バジル
人間。銀髪。丁寧な物腰の美形。

受け……ライム
猫獣人。昔いじめられていた過去を持つ。


☆☆☆☆☆


 ずっと。

 ずっとずっと、想っていた。

 撃ち抜かれた心臓は、あの日から恋に浸されている。


*****


 一糸纏わぬ肢体で、彼はそこにいた。
 柔らかなクッションが敷き詰められ、数々の玩具やローション、名前も知らない器具が並ぶ、異質な部屋。
 ふかふかの布の上にぺたりと座った彼……ライム・ペリツェルは、目の前の壁をじっと見つめた。

 程なくして、壁に空いた二つの穴から、にゅっと男性器が生えてきた。片方はまだふにゃりと力なく、もう片方は既に緩く勃ち上がっている。それぞれの穴の近くに設置された画面には、選ばれたコースが表示されていた。

「(こっちはいつもの通り手コキか~。それでこっちは……オプションで乳首コキにフェラまで? 臨時収入にはなるけど、あんま気が乗らないなー……)」

 億劫な気持ちを胸に秘めながら、柔らかい陰茎をふにふに持ち上げる。もう一人の方には勃起を促すようにふうっと息を吹きかけて先端にキスをした。苦手なフェラに慣れるための前座にもなるだろう。

「んっ……、はぁ。相変わらず、大きくなんのが早いな」

 ローションを垂らし指で輪っかを作って扱く一方で、亀頭にちゅうっと吸い付いてざらりとした舌を這わす。咥えきれない根元は、手でカバーする。だらだらと先走りが溢れ出し、その独特な苦味に軽く嘔吐いた。こればかりは、美味しいと思える日なんて来ないだろう。
 けれども、今の自分は男ではあるがここの『嬢』。そして目の前の陰茎の持ち主は手放し難い太客なのだ。

「(満足、させないと……っ)」

 金曜の夜、必ずと言っていいほど同時に訪れる彼等の竿の感触を、ライムはすっかり覚えてしまっていた。
 それぞれ個室に入っているだろうに、決まって二人同時にプレイを始める彼等。防音魔法で互いの音は聞こえず、穴を覗いても認識阻害魔法で向こう側が見えることはない。分かることといえば、達してもすぐに元気になって復活する絶倫だということぐらいだ。

「んっ、……あ、もう、こんなに……」

 ちゅこちゅこ上下させていく内に、肉棒は完全に天を向いていた。あのふにゃちんがよくここまでというくらい、ビキビキと血管が浮き出ている。それは口で奉仕していた方も同様で、まるでシンクロしているかのように肉々しい楔が反り上がっていた。
 ここまでくれば、あとはゴムをつけて絶頂に導くだけだ。始めは慣れずに破いてしまったゴムも、今では口に咥えて装着出来るようになるまで上達した。正直、いらないスキルだ。

「っぷ、あ、んちゅっ、……んん……!」

 手淫の動きを早め、ジュポジュポ下品な音を立てて薄いピンクに包まれたペニスをしゃぶる。フェラに至っては自棄だ。こうでもしないと振り切れない。

「っあ、びくびく、して……っ、ん、でそ、ぅ……っ」

 びゅるるっ、と溢れ出したのはどちらが先か。
 早漏ではないだろうが、決壊は他の客と比べると些か早い。先端にたぷんと溜まった白濁の量は多く、禁欲したモノをここで吐き出しているかのようだ。
 手コキのみの方は労わるように優しく擦った後、ゴムを外してやった。ぽいっと放るようにして、傍らの小さなカゴの中に入れておく。

「(……あとは、乳首コキ、だったっけ)」

 フェラをしていた方もゴムを外すと、射精したばかりだというのに硬いペニスがぶるんと揺れた。
 女だと偽っているため、パイズリだったならば魔法薬で女体化していたが、乳首だけなら男の姿で問題ない。こんなのが本当に気持ちいいのか甚だ疑問だが、お金を貰っている以上働くだけだ。

「……っ、と……」

 唾液と精液で濡れた亀頭に、自らの乳首を押し付けて、捏ねるように動かす。気持ちいい、というよりは擽ったい。くりゅっ、ぴんっ、と弾く度に、甘やかな刺激がじくじくと胸を這う。

「(…………もし、これが。この客達が、)」

 こりこり固くなってきた乳首を転がしながら、思考するのはここ最近ずっと同じこと。脳裏に浮かぶのは同じ魔法大学に通う、金髪と銀髪の彼等のことだ。

「(バジルと、クウィンスだったら……)」

 引く手数多な彼等がこんなみだらな場所に来るわけがない。それでも、精の匂いと緩やかな快楽でふわふわする頭が、都合のいいように妄想してしまう。
 発情のスイッチが、入ってしまう。

「あっ……、ちく、びに……白いの、バジルの精液……、俺の母乳みたいだ……っ♡」

 ふるんと距離を取った赤い粒と陰茎の間に、白くねっとりとした糸が引く。苦い母乳に誘われるまま、ライムは舌を伸ばして精液を舐め取った。

「クウィンスも……っ、可愛がってやるな……♡」

 視界の端で、回復して不満げに揺れていた肉棒を再び手に取り、二回目の手コキを始める。ゴムをつけることなく行為に励んだせいで、部屋の中が更に青臭くなるまで、そう時間はかからなかった。

「バジル……っ、クウィンス……♡♡♡」

 丁寧に彼等の白濁をぺろぺろ舐めて掃除し、それでも足りないとばかりにゴムに出していた精液をじゅるんと吸い上げてしまう。二人分の精を口の中でうっとりと噛み締めた後、喉越し最悪なそれをごくんと嚥下した。
 そうして、にょっきり生えていたペニスが引っ込んだところで、──我に返る。

「っ……! げほっ、う、うぁ……、俺、また……、精液を……っ!ああぁ~~~!! もう!!!」

 羞恥でぼんっと発火したライムは、いつものように八つ当たり先をクッションへと向けた。

 そう、いつも、こうなのだ。

 違うと分かっているのに、金曜の夜の二人の客を、バジルとクウィンスだと思い込み、発情してしまう。自分にサキュバスの血でも混じっているのかと問いかけたいくらい、スイッチのオンオフが明瞭だ。

「他の客の時は、こんなことにならないのに……、はぁ……、完全にパブロフの犬になってるんじゃ……」

 ぼふん、と裸のまま横になったライムの陰茎からは、その言葉を裏付けるかのようにてらてらとした愛液が零れていた。


*****


 他界した親の借金をその身に背負ったライムではあるが、合理的で打算的な性格のため苦労することはない、はずだった。
 惚れてしまった彼等を追って、名のある子女子息が通う魔法学園に入学してしまったのが、貧乏で淫らな生活の始まりだった。富豪の息子でもなんでもないライムは、とにかくお金を稼ぐことに必死で──それこそ怪しいスカウトについて行ってしまうくらい、必死になりすぎていた。

 女のフリをして、男のペニスを可愛がる、決して表では言えない仕事。スカウトの男から提示された金額に目が眩んだのが、二ヶ月程前の話だ。その日からライムは、何本もの陰茎を握って扱いて時には舐めてきた。事務的に淡々と、心なく。

 それなのに、金曜の夜だけは。最初は平気でも、どうしても途中から身体が疼くようになってしまう。彼等の精をナカに取り込みたくて、無意識の内に動いてしまう。

「(……不毛というか、痛いというか……、記憶が残ってる分恥ずいんだよな……)」

 提出期限が迫っているレポートを研究室前のボックスに出した後、広々とした校内を歩く。人影はまばらだが、クラブに入っている学生があははうふふとすれ違っていった。どこのクラブも楽しそうであるが、如何せんお金がかかり過ぎる。三日働いた分が一日で飛んでいくかもしれないそれに、入りたいとは思わなかった。

「あれ、コネコちゃんじゃん。土曜にガッコーに来るなんて珍しいね」
「っっ!! ク、クウィンス……?」

 そんな折、ひょこっと現れたのは陸上部のユニフォームを身につけたクウィンスだった。晒け出された二の腕が眩しく、屈託なく笑う表情に心臓がきゅうっと収縮する。猫耳がピクピク動き、振り回しそうになった尻尾は慌てて股に挟み込んだ。

「レ、レポート、出しに来て。あ……、そ、そっちは、部活の練習?」
「そうだよ。でもめんどいから抜けてきちゃった」

 コネコちゃん、と親しげに呼んでくる彼とは、よく魔法星学や魔法薬調合術の授業で一緒になる。
 よく……というより、ライムが彼等の時間割を把握して合わせているだけなのだが。

 従兄弟同士だという彼等は、面白いものが好きだと言う。だから面白いものを見せようとはりきった結果、身体が巨大化して全裸を晒すという失態を犯したのが初回授業の話だ。
 それもあってバジルとクウィンスに認知されたのは嬉しいが、あまりにも恥ずかしすぎて暫くの間ベッドの中で悶えるしかなかったのを覚えている。

 閑話休題。

「も、戻らないのか?」
「うん、このままサボるつもり」
「え……、もったいない。クウィンスが走る姿、かっこいいのに。姿勢がいいのかな、フォームがすごく綺麗で……」
「え? なに、コネコちゃん。僕が走るとこ見てくれてたの? 自分で言うのも何だけど、サボリ癖があって走ること自体滅多にないのに」
「……っ、あ、それは、その……っ、ぐ、偶然というか……!」
「んー、コネコちゃんが応援してくれるならやる気出るかも」
「ひぷっ!?」

 突然、正面からぎゅうっと抱きしめられ、ライムの脳内回路がばちんとショートした。さっきまで走っていたからだろう、汗の匂いが鼻孔を擽るが、不快どころか心拍数が上がっていく。

 これは何のご褒美だ? このまま圧死されるフラグか?

 ぷすぷす混乱した脳は、全く働いてくれない。
 胸元にぎゅっと押し付けられたせいで、唇にふくりとした何かが当たる。薄いユニフォームの下、ここは、この位置はそう、胸の──。

「(クウィンスの、乳首……♡)」

 思ってしまったが最後、ライムはうっすらと入った発情モードのまま、そこにちゅうっと吸い付いていた。

「っえ!?」
「………………ぁ」

 驚いたようなクウィンスの声で、ふわふわした発情はすぐに霧散する。残ったのは、後悔と、羞恥。

「……っ!! ご、ごめん、口が、当たっちゃって……!!」
「…………ははっ、ピンポイントに当たりすぎじゃない?」
「気持ち悪かった、よな。本当にごめん」
「謝らなくていいよ。……仕返しするから」
「しか、……っひゃあ!!?」

 きゅむっ、と服越しに乳首を摘まれ、あられもない声が出てしまった。そのまま扱くかのようにこすこす上下に擦られ、びくんと身体が反応してしまう。
 ピンポイントすぎるだろうと叫びたくても、クウィンスから触られたことに意識が向きすぎて上手く言葉が出てこない。

「……クウィンス。それと、ライム? 往来で何をしているんですか」

 どこか呆れたような、落ち着いた声が割って入ったのは、そんな時だった。

「あ、バジル。ライムにえっちなことされたから仕返ししてるんだ」
「へえ……?」
「っち、違う! うっかり当たっただけで……っ!」

 クウィンスだけでも胸がいっぱいなのに、バジルまで揃ってしまえばライムの脳はもう更地だ。隠すものも隠れるものも何もない。

「そうやって真っ赤になっているのを見ると、思い出しますね。ライムが上から降ってきた時のこと」
「ああ、あれね。受け止めようとした僕等二人とも押し潰されてさ、すごい笑ったっけ」
「………………え、……ぁ、の。覚えて……るのか?」
「忘れるわけないじゃん。あの時は今よりずっとぷにぷにしてたけど、ライムのことを見間違えるわけがないし」
「もう階段から落ちたりしていませんか?」

 ──そう、ライムが彼等に惚れたきっかけ。
 単純だと言われても、好きになってしまったのだ。階段から落ちた間抜けで太った自分を、身を呈して助けてくれた、彼等を。
 中等部だった当時、横幅が大きかったライムはその見た目だけでいじめられていた。始めこそ泣くばかりだったが、泣くことにも疲れ、後に残ったのは闘志の炎。見返してやる、という復讐に近い原動力を元に勉学に励む毎日だった。
 バジルとクウィンスとはクラスが違ったため、顔が良い従兄弟がいるという噂を知っている程度だった。

 そんなある日、試験が近いからと徹夜を重ねていたのが原因で、ふらついた足が階段を踏み外してしまった。そして、不幸なことに階段の下にいた彼等を巻き込んでしまったのだ。巻き込むというより、二人して受け止めてくれようとしていたのだが、パニックになったライムはそれに気づけなかった。
 二人分のクッションのおかげで身体的な痛みこそなかったが、心臓が痛いくらいに脈打っていた。

 早くどけよこのデブ、慰謝料よこせ、そんな言葉を予想して、青ざめながら幾度となく謝るライムに、

『怪我はありませんか?』
『なんで君が謝ってるの?』

 そう、声をかけてくれたのだ。困ったような整った笑顔で、からっとした陽だまりのような笑顔で。
 嘘偽りない響きが、脳天を貫き、そのまま心臓を撃ち抜いた。同性という認識も、二人いっぺんにという倫理もどこへやら、頭の中でリンゴンと鐘の音がした。

「(……それから、必死にダイエットをして……。でも、高等部は別になって、この学園で再会は出来たけど俺の容姿が変わってるから……向こうは俺のことなんて覚えてないと、思って…………)」
「おや、黙ってしまいましたね。ライム、聞いていますか?」
「ひゃっ!」

 今度はバジルから乳首を捏ねられ、弾かれたようにクウィンスの胸を押す。ぐいぐい押しのけながら、揺れる瞳でバジルを睨んだ。

「さ、触らないでくれ……!」
「クウィンスには触らせたのに?」
「好きでそうさせたわけじゃないっ!」

 ざわざわと周りが騒がしくなってくる。ここは大学の廊下であり、自分達だけの場所ではないのだ。かあっ、と頬に熱が溜まる。それと同時に、発情のサインがちかりと明滅した。

「も、もう、離せっ! 俺はこれから行く所があるから!」
「わっ」

 力の限りクウィンスの腕を振り切ると、火照った顔を隠すようにして走り出す。抱きしめられた全身が、燃えるように、焼けるように熱い。服の上からとはいえ、二人から触られた乳首が快楽の余韻でじんじん痺れる。
 太陽が昇っている時分ではあったが、身体の熱を発散させるために向かう場所は、一つしかなかった。
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