いちゃらぶ話あつめました

桜羽根ねね

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幼馴染みが俺のことを好きかもしれない件について

前編

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小中高と同じだった幼馴染みが、俺のことを好きなのかもしれないことに気づいてしまった──!

そんな猪突猛進系な受けくん、旭の行く末は如何に!

コメディになるはずだった幼馴染みものです。珍しく全年齢向けです!


☆☆☆☆☆


 俺には、けいちゃんとあきくんという幼馴染みがいる。

 小学生の頃、別のクラスの子がチビだ地味眼鏡だといじめられている現場に居合わせて、正義感だけはあった俺は無謀にも助けに入った。そうしたら今度は、お約束のようにいじめのターゲットが俺に変わってしまった。

 そんな流れで俺がいじめられていたところを、同じクラスのけいちゃんが助けてくれて、それからあきくんとも仲良くなった。

 昔から王子様みたいにかっこいいけいちゃんと、おっとりしていて優しいあきくん。
 彼等とは、小学生の頃からいつも一緒だ。俺は二人と違って頭が悪いから、高校入試はすごく頑張って同じところに合格した。俺が合格したってことに、けいちゃんもあきくんも驚いてたもんな。俺はやれば出来る奴なんだ。

 二人とはクラスが違ったものの、俺達の仲が悪くなるわけじゃない。一緒に登校して、昼食を一緒に食べて、一緒に帰って……。そんなルーティーンを繰り返してきた中で、三年に上がった今、俺は気付いてしまった。

 けいちゃんは、俺のことが好きなのかもしれないってことに。

「いや、それはないんじゃない?」
「あるんだって!三人で居る時、あきくんと仲良くしてるとけいちゃんがあきくんのこと睨んでるんだ。あれって絶対嫉妬だと思うんだけど」
「んー、直接見たわけじゃないしなぁ」
「それに、ジャージ忘れてあきくんから借りようとした時も、けいちゃんが横から貸してくれたしさ。これって他の男のモノを借りんなってことだよな?」
「違う気もするけど~」
「なんで否定ばっかすんだよ、いおくん……」
「否定じゃなくて、疑問かな。あんま猪突猛進で思い込み一直線にならん方がいーよ」

 甘ったるくて飲む人がほとんどいないというイチゴ練乳蜂蜜オレを啜りながら、いおくんこと友人の伊織がにべもなくそんなことを言ってくる。猪突猛進……なのは正直否定出来ないかもしれないけど、俺だって都合のいい勘違いをしてるわけじゃない、と思う。

 最近は二人と都合がつかなくて一緒に昼食を食べる機会が少なくなったけど、けいちゃんが座る時はいつも俺の前が定位置だし。二人がサッカー部に入ったから一緒に帰ることは出来なくなったけど、差し入れも笑顔で喜んでくれるし。試験勉強で困っていた時も、けいちゃんに頼んだら快く教えてくれた。ルーティーンが崩れてしまっても、けいちゃんの優しさは変わらないんだ。
 だからといって、あきくんを悪者にしたいわけじゃない。なるべく嫉妬させないように、ボディタッチをなくして程良い距離感を保つことにした。今のところ、不審に思われてはいないみたいだから大丈夫だ。

 けいちゃんに好かれていることは嫌じゃないし、寧ろ嬉しい。けいちゃんからアクションがないのなら、こっちから動いてもいいと思うんだ。

「とにかく、けいちゃんに告白しようと思うんだけどさ。いおくんだったらどんなシチュエーションでときめいたりする?」
「は?何、旭ちゃんはあいつのこと好きなん?」
「えっ、好きだけど。好意を向けてもらえて嬉しいんだから、つまり好きってことだろ」
「ほら、早速全速力じゃん……」
「何が?」
「……まあ、旭ちゃんがそう思うならいーけど。……オレなら普通に気持ち伝えてくれればそれでいーかな」
「へえ、意外。いおくん見た目チャラいから、エンタメ性があるの求めてると思ってた」
「告白にエンタメはいらないって。つーか、チャラくないでしょオレ」

 ずぞっ、と飲み終わったパックを潰して、教室の前にあるゴミ箱に投げ入れるいおくん。そのまま入るかと思ったけど、かつん、と縁に当たって外れてしまった。小さい舌打ちの音。耳が赤い。ちょっと照れてる。

「そうだな、チャラくないや。可愛い可愛い」
「ああもう、からかうなばーか」

 誤魔化すように大股で歩いていったいおくんは、外れたゴミをきちんと入れ直した。……ほんと、一年の頃初めて会った時はチャラそうで怖い人、って感じだったけど。三年間も同じクラスだからか、今では気が置けない友達だ。けいちゃん達に対する気持ちとは、なんというかちょっと違うけど。これはきっと幼馴染みかどうかの違いからくるものなんだと思う、多分。

「ん……?あれ。旭ちゃん、今日はあいつらのこと待ってるって言ってなかったっけ」
「え?けいちゃん達のこと?そうだけど……、それがどうかしたか?」

 いつもだったら先に帰ってるけど、今日は何を隠そうけいちゃんの誕生日だ。俺の部屋で、ちょっとしたサプライズパーティの計画も立てている。だから、部活が終わったら一緒に帰ろうってメッセージを送っておいた。あきくんの方には、パーティをするってことも伝えてる。去年も一昨年も試合の遠征が重なって出来なかったから、事前に料理やケーキも用意して準備はばっちりだ。

「あそこ。帰ってんの、あいつらじゃね?」
「え」

 窓の外を指差したいおくんの言葉に、思考を中断して慌てて席を立つ。俺達のクラスは三階で、窓から下を見下ろすと距離があるけど……、俺が幼馴染みを見間違えるはずがなかった。

 肩を並べて校門の方に向かっている背中は、けいちゃんとあきくんだ。日が暮れてオレンジ色に染まった中を歩くその光景は、どこか絵画のようだった。……いや、そうじゃなくて。

「あっ、スマホ確認してないのか……!だったら電話して……、あきくんの方がいいか」

 小さくなっていく背中を見つめながら、あきくんの番号を呼び出す。だけど、電源が切られているからか繋がらなかった。高校生になってから、こういうタイミングが悪いことが増えたんだよな……。仕方ない、繋がらないなら追うまでだ。

「ごめんいおくん、俺帰る!」
「ちょ……っ、旭ちゃん!」

 今からなら、帰り着くまでに間に合うはず。
 鞄を持つことも忘れて、着の身着のまま走り出した俺は、幼馴染みの二人を追いかけた。それこそ、前しか見えない猪のように。
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