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①特別な美術館
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「きょっ、今日は誘ってくれてありがとな」
「こっちこそ、ありがとう音峰くん。招待券があるとはいえ、無理に来てもらうわけにはいかなかったからさ。音峰くんが美術館に興味を持ってくれて嬉しいよ」
「っ……!そ、そうなんだよ、前から興味だけはあってさ。だから姫寺と一緒に来れて、よかったというか……」
「ふふ、それなら良かった」
そう言ってふわりと微笑む姫寺の顔の良さに、心拍数が異常なくらい上がっていくのを感じた。
姫寺アヤト。亜麻色の髪とキャラメルみたいな瞳はお菓子みたいに甘そうで、どこぞのアイドルのような外見だ。それに加えて、まるで御伽噺の王子みたいな性格とくれば、モテにモテるのは自明の理ってやつだ。高校の頃から女子に囲まれていたし、同じ大学に入ってもその光景は変わらない。
だからといって男友達がいないわけでもなく、寧ろ俺みたいな平々凡々その他大勢のような奴にまで気さくに話しかけてくれる。姫寺のことがずっと好きな俺は、この気持ちがバレないよう隠しているけど……、いつかうっかり零してしまいそうで不安だ。
特に今日は、姫寺とふ……二人で美術館に行くことになってるから余計にドキドキしてしまう。俺が勝手にデートみたいって思うくらいはいいよな?ああでも、にやけないように気をつけないと。
「そっ、それにしても、美術館なんてこの町にあったんだな」
上擦ってしまう声で話しかけると、隣を歩く姫寺は「特別な場所なんだよ」と声を潜めて教えてくれた。ああ、やばい、その落ち着いたトーンの声も好き。耳が幸せになる……、って、言ってる傍からにやけちゃ駄目だろ俺……!
「へぇ、なんだかわくわくしてきたや」
「オレもだよ。音峰くんがどんな反応してくれるのか楽しみ」
「は、反応なんて……、特に面白いことは出来ないと思うけど」
心地よい会話に浸りながら、姫寺に案内されること数分。辿り着いたのは、お洒落な洋館だった。とにかく大きいし、周りには色んな花が咲き誇っていて、噴水まで設置されている。美術館というよりお城みたいだ。
そういえば、姫寺と一緒に出かけることで頭がいっぱいだったけど、肝心の展示内容を聞いてなかった。まあ、姫寺と一緒なら俺には分からない物でも全部良いモノに見えるんだろうけど。
美術館なのに俺等の他に客の姿が見えないものの、それはそれでラッキーだ。姫寺とのデート気分をいっそう強く味わえるからな。
「じゃあ行こうか、音峰くん」
「ああ」
にっこり笑う姫寺は可愛くてかっこよくて、俺の心臓はずっと高鳴るばかり。
そうして、浮き足立ったまま美術館に入った瞬間……、眩暈がする程の甘い香りに包まれた。
「こっちこそ、ありがとう音峰くん。招待券があるとはいえ、無理に来てもらうわけにはいかなかったからさ。音峰くんが美術館に興味を持ってくれて嬉しいよ」
「っ……!そ、そうなんだよ、前から興味だけはあってさ。だから姫寺と一緒に来れて、よかったというか……」
「ふふ、それなら良かった」
そう言ってふわりと微笑む姫寺の顔の良さに、心拍数が異常なくらい上がっていくのを感じた。
姫寺アヤト。亜麻色の髪とキャラメルみたいな瞳はお菓子みたいに甘そうで、どこぞのアイドルのような外見だ。それに加えて、まるで御伽噺の王子みたいな性格とくれば、モテにモテるのは自明の理ってやつだ。高校の頃から女子に囲まれていたし、同じ大学に入ってもその光景は変わらない。
だからといって男友達がいないわけでもなく、寧ろ俺みたいな平々凡々その他大勢のような奴にまで気さくに話しかけてくれる。姫寺のことがずっと好きな俺は、この気持ちがバレないよう隠しているけど……、いつかうっかり零してしまいそうで不安だ。
特に今日は、姫寺とふ……二人で美術館に行くことになってるから余計にドキドキしてしまう。俺が勝手にデートみたいって思うくらいはいいよな?ああでも、にやけないように気をつけないと。
「そっ、それにしても、美術館なんてこの町にあったんだな」
上擦ってしまう声で話しかけると、隣を歩く姫寺は「特別な場所なんだよ」と声を潜めて教えてくれた。ああ、やばい、その落ち着いたトーンの声も好き。耳が幸せになる……、って、言ってる傍からにやけちゃ駄目だろ俺……!
「へぇ、なんだかわくわくしてきたや」
「オレもだよ。音峰くんがどんな反応してくれるのか楽しみ」
「は、反応なんて……、特に面白いことは出来ないと思うけど」
心地よい会話に浸りながら、姫寺に案内されること数分。辿り着いたのは、お洒落な洋館だった。とにかく大きいし、周りには色んな花が咲き誇っていて、噴水まで設置されている。美術館というよりお城みたいだ。
そういえば、姫寺と一緒に出かけることで頭がいっぱいだったけど、肝心の展示内容を聞いてなかった。まあ、姫寺と一緒なら俺には分からない物でも全部良いモノに見えるんだろうけど。
美術館なのに俺等の他に客の姿が見えないものの、それはそれでラッキーだ。姫寺とのデート気分をいっそう強く味わえるからな。
「じゃあ行こうか、音峰くん」
「ああ」
にっこり笑う姫寺は可愛くてかっこよくて、俺の心臓はずっと高鳴るばかり。
そうして、浮き足立ったまま美術館に入った瞬間……、眩暈がする程の甘い香りに包まれた。
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